転生しても戦争だった  ~数多の転生者が歴史を紡ぎ、あるいは歴史に紡がれてしまう話~   作:ガンスリンガー中年

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お嬢様と町娘の組み合わせたは鉄板だと思いますよ?







第335話 ”スターリングラードの白百合(Белая лилия Сталинграда)”になり損ねた女

 

 

 

 ”撃墜判定”による自分のターン終了を告げられ、地上へ降りてきたクリスティアーナは、未だ元気に同僚(VG39)を返り討ちにしているJu187隊を恨めし気に見上げながら……

 

「や~ら~れ~たぁーーっ!!」

 

 こみあげてくるのは悔しさばかり。

 ごめん、噓。「豚がアドリア海のエースになった芸当」を目の前で見られて、悔しさの中にちょびっと、いやかなり嬉しさを混じるクリスティアーナだった。

 とりあえず疑似体験的に撃墜される目にあって悔しがってるあたり、戦闘機パイロットとして必須の鼻っ柱の強さは持っているようだ。

 普段からロスマンたち教官有志一同からしごかれている賜物かもしれないが。

 

 

【挿絵表示】

「”クリス”、何騒いでいるのよ?」

 

 そう声をかけられる振り向くと、

 

「あっ、”リア”!」

 

 彼女の名は、”リーリア・リトヴァク(・・・・・)

 そう、某ストパンの”たーにゃん”の元ネタになった女性パイロット……今のところ史上二人しかいない”女性エース・パイロット”の一人によく似た名前の元ソ連人女性パイロットだ。

 

 さて、史実のリトヴァク女史と比べてどっちが幸運かは、皆さんに是非判断して欲しい。

 何しろ彼女、その初陣があの”バトル・オブ・スモレンスク(スモレンスク直上航空戦)”だ。

 いきなり掛け値なしの激戦である。

 少しだけリトヴァク、いや識別上リーリアと呼称しよう。リーリアがサンクトペテルブルグに居る経緯を語っていいだろうか?

 まず女流パイロットになった経緯は史実のリトヴァクと変わらない。

 ヘルソン飛行教官航空学校を卒業後、30年代後半には飛行教官の資格を得てカリーニン航空クラブで働いていたあたりも同様だ。1921年生まれだから二十歳前でこの実績は何気に凄い。

 

 大きく運命が変わったのは、やっぱり独ソ戦。

 史実では結局陥落しなかったレニングラード防空戦で活躍し、「スターリングラードの白百合(Белая лилия Сталинграда)」などと祭り上げられたリトヴァクだったが……

 ソ連にとって残念なことに、この世界線ではリーリアが戦闘機パイロットデビューを果たす前に陥落してしまっていた。

 

 そして予期していなかったバルチック艦隊の壊滅と予想以上に早かったレニングラードの陥落を受けて、ソ連は慌ててあちこちで破綻していた赤軍の再編に着手した。

 その中の一つが、”ソ連女性パイロットの母”と言われるラスコーヴァ少佐が提唱した『女性だけの飛行隊』だった。

 Yak-1戦闘機を主力とする”第586戦闘飛行連隊”、Pe-2爆撃機を主力とする”第587爆撃飛行連隊”、Po-2複葉機(練習機)を主力とする”第588夜間爆撃飛行連隊”である。

 これらは『女性戦闘飛行連隊(Женский ИАП)』と呼ばれていたのだが……史実では、ヴォルガ川沿の都市サラトフに近いエンゲリスでそれなりの訓練時間が確保された後に実戦投入となったのだが、この世界線では”バルバロッサ作戦”においてあまりにも『一方的な航空消耗戦』となったために男性パイロットばかりだった赤農空軍は事実上破綻しており、そう悠長な事を言っている場合ではなかったのだ。

 

 こうなった原因は……

 ・バルバロッサ作戦(独ソ戦)発動前に北アフリカ・ギリシャから手を引き、チトーのいるユーゴスラビアには最初から手出しをしなかった。

 ・バトル・オブ・ブリテンは史実よりずっと小規模、一当てしただけで強制終了させて消耗を防いだ。

 ・日英との停戦が成立し、独国防軍全体の損耗が抑制された。

 ・レニングラードを包囲せずに一気呵成に陥落させた為に消耗戦を避けられた。

 ・ボトルネックのウーデッドとゲーリングとイェションネクの”害毒トリオ”が空軍の運営から排除されていた。

 ・”メッサーシュミット・スキャンダル”俗物と駄作機(国力と税金のムダ)が排除されていた。 

 

 などでドイツ国防空軍(ルフトバッフェ)は、損耗軽微なまま、優秀なパイロットと航空機を良好な状態で独ソ戦に全力傾注することができたのだった。 

 如何に品質はともかくソ連の生産力と動員力が巨大だったとしても流石にキルレシオ1:10、つまりドイツ機が1機落とされる間に10機のソ連機が撃墜されてはひとたまりもない。

 しかもムルマンスク、アルハンゲリスクと北海ルートのレンドリース受け入れ港が潰されドイツが占領、搬入口は渤海ルートとペルシャ湾ルートに絞られてしまったのだ。

 おまけに日英はレンドリース船団の自国領海通過を「独ソ戦争当事国の片方への一方的な加担はできない」と禁じている。これは紛れもなくドイツの外交的勝利だった。

 

 その空軍の再建の一環として『女性戦闘飛行連隊(Женский ИАП)』は背に腹は代えられない状態で受理され促成栽培……もとい。必要最低限の訓練で男性パイロット同様に実戦へ投入される運びとなった。

 

 当然、リーリアが志願したのは”第586戦闘飛行連隊”、愛機は性能も史実通りの”Yak-1”、初陣はよりによって前述の通りドイツ空軍のエースが最新鋭機に乗って目白押しなスモレンスクだった。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 想像して欲しい。

 当時のスモレンスクに配備されていたドイツ空軍の戦闘機とパイロットの質だ。

 綺羅星の如くエースパイロットやその卵が集結した”ドイツ版梁山泊”のような”KLK1”に、高火力なMG151/20㎜機関砲を搭載し、戦闘重量でも600㎞/h出ない機体が無かった戦闘機群……

 最高速が最良の状態で570㎞/hに届かず、実用航続距離700㎞以下のYak-1と新人に下の毛が生え始めたようなパイロットの組み合わせでどうにかなるような相手では無かった。

 

 しかし、リーリアは実に強運だった。

 撃墜されたのに当たり所が良かったせいで脱出成功。落下傘で降りたのがスモレンスクのど真ん中で、ドイツ兵に婦女暴行されることもなく……というより、女が戦闘機パイロットだったことにひどく驚かれつつそのまま無事に捕虜になったのだ。

 

 本当に幸運だ。多分。

 何しろ、このスモレンスク上空の戦いでの”第586戦闘飛行連隊”の損耗は半数以上、その大半が戦死確定かMIA、あるいは被弾損傷による帰投中の墜落や着陸時の事故死だ。

 命は助かったが再起不能なケガを負った者も少なくなく、赤軍パイロットとして復帰できた者は元の3割に届いていないという惨状だった。

 

 しかもこの数字、作戦参加ソ連空軍の中では悪い数字ではなく、むしろ良い方だというのだから言葉を失う。

 そこまでスモレンスクとは(ソ連軍にとり)地獄だった。

 

 その後、特に波乱なく捕虜になったリーリアは、彼女を惜しんだらしいドイツパイロット(マルセイユかクルピンスキーあたりだろう。きっと)の強い勧めもあり、何となくドイツに亡命した。

 これは正解だろう。

 これは史実のリトヴァク女史の話だが……最強の女流エースパイロットと目され、アイドル扱いされていたにも関わらず、戦時中にMIAになった彼女が1990年5月6日まで「ソ連邦英雄」になることはなかった。

 その理由というのが、『行方不明なのでドイツ人の捕虜になった可能性があったから』。

 は?と思うかもしれないないが、「どんな英雄でも生きてドイツ人の捕虜になった時点で裏切り者で粛清対象」、流石は赤十字の捕虜リストを粛清リストに使う国である。面構えが違う。

 

 そして、気がつくと流されるまま流れるままにレニングラード改めサンクトペテルブルグへようこそっ!!

 異世界(別世界線=史実)の「スターリングラードの白百合(Белая лилия Сталинграда)」因果でも変に発動したのだろうか?

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 まあ、史実のリトヴァク女史のようにエースになる前に被撃墜→捕虜→亡命ルートとなったリーリアだったが……

 サンクトペテルブルグで吞気に……いや、気の抜けたように過ごす日々の中で、ふと上空から響く爆音に見上げれば、

 

 

【挿絵表示】

「あっ……」

 

 視線の先には、よく晴れたサンクトペテルブルグの空を駆ける、ソ連ではまず見ることのできない洗練された機体……

 ”Mc205B”のデモフライトだった。

 

 その時、リーリアの胸にこみ上げる物があった。

 そう、彼女は久しぶりに”焦がれる”ような懐かしい感覚がじわじわと湧き上がってくる……

 

 リーリアはそれを思い出したのだ。自分が飛ぶことを選んだきっかけ、”蒼空への渇望(・・)を。

 そう、思い出してしまったのだ。

 空には主義主張や思想などどこにもないということを。

 そう、空の果てには共産主義も天国もない。ただ、どこまでも続く”蒼”があるだけだ。

 

「”蒼き(・・)聖なる花十字”、か……」

 

 だから、稀代の傑物と名高いサンクトペテルブルグ大公フォン・クルスが”パイロットの女性枠”を募集し始めたと聞いた時、志願に躊躇は無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、クリスティアーナとの出会いなどがあったのだが、そのエピソードなどはまたいずれ……

 

「それで、どうしてぶー垂れてたのよ?」

 

「……”捻りこみ”で捻られた」

 

 その言葉で、ピンときたリーリアは、

 

「ああ、ルーデル少佐ね。そりゃ相手が悪いわよ」

 

 いくらなんでも相手が悪すぎると呆れるが、

 

「でも、悔しいものは悔しい!」

 

「はいはい。次は一捻りされないように頑張りなさい」

 

(これで一つ年上なんだものねぇ……)

 

 でもそんな部分も含めてクリスティアーナが嫌いではないリーリアであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




新キャラ(女の子)がイラスト付きで登場♪
いや、女っ気が少ない作品だから素直に書いてて楽しいw

という訳で、新キャラはこの世界線のリトヴァク女史、リーリアちゃん?さん?です。

史実だと歴史上、二人しかいない女性エース・パイロットですが、この世界線では初陣が初陣だったせいでエースになる手前どころか撃墜0段階で被撃墜されましたw
まあ、相手が相手だし仕方ないかな?

だけど何故かここで強運発動! 落下傘降下に成功してケガ一つなく捕虜になり、ドイツ軍の一部パイロットの強い勧めで亡命ルート。
因果律が仕事したのか流れ流れてレニングラード改めサンクトペテルブルグに漂着。
そして、空への未練が立ち切れなかったようで……

なんかクリスティアーナとは妙に気が合う模様w
次回はもうちょっとリーリアのエピソードでも書いてみようかと。

それでは、次回もどうかよろしくお願いいたします。



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