転生しても戦争だった ~数多の転生者が歴史を紡ぎ、あるいは歴史に紡がれてしまう話~ 作:ガンスリンガー中年
「なんでよりによってこんな時に”イタリア社会共和国”の歴史再現なんてしてるんでぇいっ!! ”サロ”なんて七面倒臭ぇ妙なフラグ回収してんじゃねぇよぉっ!!」
1943年9月中旬、日本皇国首都東京永田町、首相官邸執務室で”その報告”を受け取った近衛公麿のその日の朝は、怒りの第一声から始まった。
ちなみに”イタリア社会共和国”とは、史実の”サロ共和国”の正式名称だ。
「近衛君、その”イタリア社会共和国”というのはなんだい? 聞いたことのない国名だが……あとサロがどうかしたかい? たしかガルダ湖の畔にある街だったと思うが……」
さすがは伊達に官房長官をやってる訳じゃない、博識の広田剛毅である。
近衛は一瞬「しまった!」という顔をしてから、
「あー、なんでもねぇよ広田サン。怒りで錯乱してイタリア王国と社会主義者が混じっちまった」
「……君がそう言うならそう言うことにしておいても良いけどね。問題はないんだろ?」
「ああ。俺っちは問題ねぇよ。黒シャツ隊共と共産ゲリコマ共が
(きっと今頃、陛下の事だからリチャードIV世充ての親書でも書いてるんだろうなぁ……)
内容まで想像がつく。きっと内容を突き詰めれば『シチリア島は英国の好きにしていいから、こっちはこっちで好きにやっていいか?』だ。
「でも実際、少々手が出し辛ぇんだよなぁ」
まず、”イタリア社会党・共産党連合”なる組織によれば、『これは”王族を
何が上手いのかと言えば、
・サヴォイア王家を”王族僭称”と称しムッソリーニごと全否定していること。
・民族自決、つまり「イタリア人同士の問題であり他国家・他民族の干渉は無用」と言い切ってること。
この2点だ。
まずサヴォイア王家、「エマヌエーレⅢ世もまたイタリア国王である」と窘める、いや事実を「アオスタ王家」を推している皇国が公言すれば、事態は確実にややこしくなる。
ほぼ間違いなく、臆面もなく「イタリア
そして”民族自決”なんて国際連盟憲章にも出てくる文言を出されると、建前や大義名分を大事にする日本皇国としてもやりづらいのだ。
それでも本当に不味い状態になれば、それをかなぐり捨てるのも吝かでは無いが……少なくとも(皇国軍に直接的ダメージが来ない)今はまだその時ではない。
結局、今は「バカ同士が食い合いをしてる」状況なのだから。
「これがギリシャん時みてぇに”王族が推してる味方”であればよかったんだが、今回は”どっちも敵”なんだよなぁ」
まあ、そういうことなのだ。
とてもじゃないが「どっちかの味方につける状態では無いし、つく気も起きない」のである。
そもそも「敵の敵は味方」となる状態では無い。
サヴォイア王家&ムッソリーニ一味もイタリアン・アカも手を組むのにデメリットしかない。
「じゃあどうする?」
「セオリー通りなら、共倒れを待つのが筋道ってもんだがな……まあ、今できるのは”最悪の状況”に備えて”北伐”の準備を万全にするくらいか?」
「”最悪の状況”とは?」
「双方まとめて問答無用の皆殺し」
「ヲイヲイ」
流石に物騒すぎる発言にたしなめるような顔をする広田官房長官だったが、
「まあ、そうはならんと思うよ? よほど下手を打たん限り……それこそ皇国軍にちょっかいかけてこねぇ限りはな。変な色気出さずに本気でアカが脇目もふらずに北部に戦力集中させるなら、今年中には決着つくんじゃないかな?」
「その根拠はあるのかい?」
「イタリアン・アカはソ連からの支援もらえてねぇから重装備は無いが、戦前から叛乱にそなえてしこたま軽火器の類は蓄えてるし、北部にゲリコマ・ネットワークもある。対して、ムッソリーニ一味はドイツから見限られている上に這う這うの体でローマから逃げ出してる。じゃあ、どっちがマシな状態かと言やぁな」
「あー、納得だな」
だが、近衛は少し考え……
(連中がトチ狂ってバカをしでかさなきゃ良いが……)
「……そうなったときの陛下の反応が怖ェけど」
「何か言ったか?」
「いんや。あー、そういやサヴォイア王家っていやあ別の問題もあったな」
「確か子息……ウルベルトⅡ世も一緒にミラノだったな?」
エマヌエーレⅢ世には五人の子供が居るが、王位継承権を持つ男子はウルベルトⅡ世ただ1人だ。
だから日本の出方が読めない以上はローマにはおいて行けず、ミラノに同行させたのだろうが。
「そっちじゃなくて娘っ子の方」
「確か全員結婚していて、長女はベルゴロ伯爵夫人、次女はヘッセン=カッセル方伯フィリップ夫人、三女はブルガリア王ボリス3世妃、四女は パルマ公子ルイジ夫人だったか?」
何気に錚々たる顔ぶれだった。
ベルゴロ伯は地元イタリアの貴族軍人だが、ヘッセン=カッセル方伯フィリップはドイツの地方知事で義理の弟はナチ党幹部、凄いのは三女でブルガリア王国王妃となり、四女も中々で旦那はオーストリア皇后の同母弟だ。
「問題なのは長女、”ミランダ・ベルゴロ”伯爵夫人さ。旦那のベルゴロ伯ってのはイタリアの機甲総監、まあドイツのグデーリアンや皇国の原サン(原富実雄)みたいな立ち位置なんだが、これが旧王やムッソリーニにつかずにパドリオ首相についたのさ」
「結構なことじゃないか?」
「それだけならな」
途端に近衛は苦虫を嚙み潰したような顔をして、
「いるんだよ。ベルゴロ伯とミランダの長女、つまり旧王の孫娘がローマの王城に残ってるんだ」
「それが?」
「娘の名は”マリアンナ”。生まれは1925年で今年18歳。未婚。癖のある長い黒髪とブルネットの瞳が特徴のかなりの美少女らしいな」
ちなみに史実のエマヌエーレⅢ世の長女の娘、初孫になる”マリーア・ルドヴィーカ・カルヴィ・ディ・ベルゴロ”が生まれたのは1924年。つまりは全くの別人であろう。
「……で?」
「広田サン、”天草宮”殿下がバチカンへ行くって話は?」
「無論、聞いているが……」
「今回の使節、バチカンと”陛下”、そして皇室外交が絡んでる」
「おい、まさか……」
「陛下、いい歳して女に興味がからっきしで、飛行機にばっかご執心の殿下の変人ぷりをいつも嘆いていたろ?」
「いや、だが、しかし……」
「元王様の孫娘で体制派伯爵の娘さ。相手としてそう悪い血筋じゃねぇだろう?」
ホント、まだまだ日本皇国の悩みは尽きないようである。
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「うふふふ♡ どんな素敵な殿方が来て下さるのか今から愉しみだわ♡」
ここはローマ市内の”ポーリ宮殿”
有名な観光スポット”トレヴィの泉(トレドの泉)”が眼前の広場にあることで有名な宮殿だが、そのゲストルームの一角を私室として使うことを許された少女がいた。
「”マリアンナ”お嬢様、あまり過度な期待をいたしますと後悔なさいますわよ?相手は皇族とはいえ、極東の野蛮な民なのですから」
サヴォイア家の分家筋でエマヌエーレⅢ世や王子のウルベルトⅡ世に並々ならぬ忠義を持つ専属世話係のメイドは、どうやら旧王をミラノに追いやった日本人が気に食わないらしいが、
「そんなこと言うものでは無いわよ、ルイーゼ。お相手は世界でも稀に見る長い時代を誇る王朝の皇子様ですもの。失礼があってはいけないわ」
「ですがお嬢様がお労しくて…」
「そうかしら? 所詮、王族や貴族の娘なんて政略の道具でしょ? そのくらいは割り切ってるわ。出来れば素敵な人に嫁ぎたいけどね」
「アオスタ公爵様も公爵様です。なぜ分家の当主が日本人などと手を組んで本家の……」
「ルイーゼ」
マリアンナは凛とした声で、
「それ以上は口にしてはダメよ? 経緯はどうあれ、次の国王はアオスタおじ様よ。身分をわきまえない発言は身を滅ばすわ」
「……はい。お嬢様」
(やれやれ。これじゃあルイーゼもミラノに送った方がいいかしら?)
どうやら悩みは本当に人それぞれのようである。
(まあ、幼い頃から一緒にいたって訳でもないし。むしろ、お爺様から斡旋だったし……まあ、いいわよね? 皇族の機嫌を損ねるよりは、ね)
後日、何故かミラノに居る叔父のウルベルトⅡ世から直々にルイーゼに招聘の密書が届き、ルイーゼは上機嫌でマリアンナに暇を申し出たらしい。
その手紙が本当にウルベルトⅡ世直筆の物だったのかは今となっては不明だ。何故なら手紙を持っているはずのルイーゼその後の消息が用として知れないからだ。
果たして彼女はミラノに辿り着けたのだろうか?
とりあえず……”マリアンナ・ベルゴロ”伯爵令嬢は見た目よりずっと強かな少女なようである。
という訳で……ある意味、日本皇国にとって超弩級地雷娘(笑)の登場ですw
いや、性格はそうでもないけど(多分)、家柄がねぇ~。
サヴォイア家なんで本来は申し分ないし、叔母たちの嫁ぎ先はまあ問題ないけど……爺様と叔父が思い切り皇国と敵対してるという。
でもね、プロパガンダとしてはとっても愉悦だと思ってしまったりw
さて、いよいよ混迷を極めるイタリア篇、果たしてどこに転がってゆくことやらw
次回もどうかよろしくお願いします。
そして、盛り上げておいてなんですが……
このエピソードでストックが切りました(泣
いや、やっぱり平日に執筆はやっぱり無理がありまして、週末に書き溜めるにも限度ガガガ……
一応、次話は八割がた出来上がっていて、明日には投稿できそうなんですが、その先はちょっと不明です。
連載再開して何とか連日投降を続けて参りましたが、ちょっと更新ペースが落ちます。多分。
まあ、幸いネタは未だ尽きてない、というか44年のイベントとかまでは考えてあるので、のんびりお待ちいただければ幸いです。