転生しても戦争だった ~数多の転生者が歴史を紡ぎ、あるいは歴史に紡がれてしまう話~ 作:ガンスリンガー中年
「……という訳で、ナポリを中心として活動する”カモッラ”は、何とか復権を狙って
さて、ここは観光名所”トレヴィの泉”の背景として知られるが、実は名前を知ってる人が意外と少ない”ポーリ宮殿”、その一角にあるマリアンナ・ベルゴロ伯爵令嬢に与えられた私室だ。
今年18歳になるマリアンナ嬢……日本皇国やアオスタ新王と敵対関係にあり、今は北イタリアに立て籠もっている旧イタリア国王(前国王と書けないのが現状を良く表している)のエマヌエーレⅢ世の孫娘ではあるが、いわゆる”外孫”で、父親はイタリア陸軍の装甲総監で恭順を示したことで新王朝でも爵位が約束されているガッツリ現体制側のベルゴロ伯爵だ。
聞くからにややこしい、あるいは厄介な立場の少女であるが、更に面倒なのはイタリアに来訪した……
「ふん。ラッキー・ルチアーノ”ごとき”にいい様にされたヤンキーと皇国軍が同格だと思われるのは……随分と見くびられたものだな」
腕と脚を組み、不機嫌そうに鼻を鳴らす青年……日本皇国”天草宮和仁”親王殿下の
それも仲介役はバチカンだったらしい。
もう、状況からして政治的腐敗臭が鼻を突く話である。
「それ、”前世”の話でしょ? シチリア島上陸の時の……”ハスキー作戦”だっけ?」
「いや、英国によれば今生でも米国政府は『日英のイタリア攻略作戦を妨害する依頼』をシチリアン・マフィアにしたらしいぞ?」
「ああ、それ聞いたのアメリカが本家とか言われてる”コーサ・ノストラ”くらいじゃない? 確かにマフィアってアメリカのイタリア系移民にも広がってるけど、一番でかいのはあそこだし、ルカーニア(ラッキー・ルチアーノの本名)はあそこの大幹部でしょ?」
厳密にはラッキー・ルチアーノはアメリカに進出したシチリア系マフィア”コーサ・ノストラ”の幹部で、アメリカにおけるコーサ・ノストラの出先機関である”ルチアーノ・ファミリー”のゴッドファーザーだ。
ちなみに映画”ゴッドファーザー”のドン・コルレオーネのモデルになった実在のマフィア、フランク・コステロはラッキー・ルチアーノの部下だった男で、その跡目を継いでゴッドファーザーとなったらしい。
「ほう……イマイチ理解できてないんだが、マフィアというのはヤクザと一緒で犯罪組織の総称か?」
それにしても余人を交えず、若い男と女が密室に二人きりだというのに、マフィアの話題とは何とも色気のないことだ。
まあ、食いつきからしてねだったのは殿下の方っぽいが。
大方、軍や政府からの”正規情報ルート”からでは「自分の耳には届かない情報」を聞きたかったのだろう。
誰だって好き好んで仮にも皇室の御方にイタリアヤクザの情報を聞かせたいとは思わないだろう。
「概ね正解よ。狭義な意味では『シチリア島を起源とする犯罪結社』だけど、今となっては犯罪結社やら組織やらの総称になってるわね」
「主だった組織は?」
「話に出したけどナポリを拠点にしている”カモッラ”、相変わらずシチリア島が拠点だけど分派したアメリカで勢力拡大している”コーサ・ノストラ”。後はカラブリア州(ブーツのつま先)を根城にしている”ヌドランゲタ”にプッリャ州(ブーツの踵)を拠点にしている”サークラ・コローナ・ウニータ”ってとこかしら? これがイタリアの四大マフィアってされてるけど、シチリア起源はコーサ・ノストラだけよ? カモッラはナポリの監獄の収監者ネットワーク、ヌドランゲタはカラブリアの農地管理人と私兵とした武装自警団、サークラ・コローナ・ウニータはプッリャ州トラーニの刑務所が起源だって言われているわね」
マリアンナも外孫とはいえ王族の端くれ。イタリア王国はその国の成り立ちからして犯罪結社とは切っても切り離せない。
そもそも少なくともコーサ・ノストラ誕生の発端は、史実では戦後まで自治権を与えられなかったシチリア島住民の抵抗運動であり、ヌドランゲタは悪徳管理人が発端であり、どちらもイタリアが統一国家になる前から存在していた。
事実、上に挙げたイタリア四大犯罪結社は、いずれも”両シチリア王国”時代には存在していたらしい。
つまりそれだけ根深く土地に根差しているわけで……
「ああ、なるほど……”ローカル支配者気取りのならず者集団”ってわけね。納得した」
「なんか、それだと某”世紀末救世主伝説”みたいね?」
クスクスと笑うマリアンナ。
いや、もう二人とも転生者である事を全く隠す気は無い様だ。
もしかして……本当に”波長が合った”のだろうか?
「いや、リアルでもそう珍しい話じゃないぞ? 例えば、1920年代の”KKK(カー・クラックス・クラン)”とかもそんな感じだったし。確かルイジアナ州知事までなったクラン構成員もいたな」
「えっ? KKKってアメリカの? それに20年代って私が生まれた頃じゃないっ!? 結構、最近の話なのね……」
「ああ。俺の子供時代の話だ。アメリカにどんな幻想を抱いてるのか知らないが、お前自身も言ってたろ? あそこ、シチリア生まれの犯罪結社がブルーオーシャン扱いして幅を利かせるような国だぞ? 現職大統領は、共産主義シンパの反日政治家で、おまけに国内は現在進行形で赤色感染症だ……自分で言っててなんだが、凄いなアメリカ。流石は原住民を
「それって悪人面ってこと?」
「骨の髄まで犯罪者気質ってことだ。だから超弩級のロクデナシ共と相性が抜群に良いんだろうな」
殿下、和仁は真面目な顔で、
「結局、米ソは本質的には”同じ穴の狢”ってことだろうな……なんとも嘆かわしい話だ」
☆☆☆
さて、興が乗ったのか二人の話し合いは夜まで続いていた。
マリアンナは一回、食事とシャワータイムを挟んでから再開することにしたようだ。
「ところでマフィア共は皇国軍に接触してどうするつもりなんだ? まさかまともに相手にされるとは思ってないだろう?」
「まあね。新王朝にはまず木っ端役人を買収して……なんて常套手段をカモッラは使おうとしてるみたいだけど」
どうやらナポリ組は平常運転らしい。
「お前……皇国軍にそれやったら組織ごと根絶やしにされるぞ? 冗談抜きに。ご当地犯罪者ごときに鼻薬嗅がされた奴は問答無用で不名誉除隊になりそうだが。いや、銃殺か? それとも”戦死扱い”かな?」
「多分、そこまで無謀なことはしないわ。世紀を跨いで生き延びてる連中だもの。相応に強かよ?」
それは良くも悪くもだろうが。
「多分だけど、コネがあるイタリアの要人を通してになるでしょうね。新王朝にだって関わりのある人間は事欠かないでしょうから」
「……やれやれだな。いや、待て。接触して何かを要求してくるなら、せめて取引材料は要るだろう? 連中が持ってる物で、皇国が価値を認めるもの」
するとマリアンナはうっすらと微笑み、
「”情報”よ。おそらく北イタリアのかなり詳細な、ね」
「……なに?」
「マフィアの本来の意味って知ってる?」
「浅学ゆえに知らんな」
「”生活協同組合”とか”互助会”って意味よ。連中の根は深いだけでなく広いのよ。それこそイタリア全土どころか大西洋を越えてアメリカまで伸びてるくらいにね。北部でバカ騒ぎを起こそうとしてる”アカいの”が物資を調達しようと思ったら、どこかしらには引っかかるわ。パンとミルクとチーズの配達量が増えただけでも、『居なかった住人が増えた』くらいは察せられるわよ? それが集約されれば……」
「察した。つまりは”情報屋”としての売り込みか……やっぱりロクでもないな。ルチアーノとやり口が変わらん」
「それこそ根っこは同じだからねぇ~」
「軍情報部や外務省諜報課がどう扱うかはわからんが、まあ、なるようになるか」
「えっ? 皇国の外務省に諜報課なんてあるの?」
「”公式には存在しない”。それで察してくれ」
……何となく、
そりゃあ東欧の鉄火場だか火薬庫だかを周回プレイさせられる筈だ。
「りょーかい。なるほどね~。皇国もやることはやってるのね?」
「そりゃあ綺麗事だけじゃあ国家は回らんさ。そういうのは理解はしているが……やるせない気分になるのは仕方ないだろ?」
「まあ、これもある種の”
「……お前は良く耐えられたな? 物腰や言葉使いから察するに、”前世”は平民だろ? 俺も言えた義理じゃないが」
するとマリアンナはウインクしながら、
「女の過去には秘密がいっぱいってことよ♡」
「さいですか」
という訳で、ほのぼのとした和やかな雰囲気の中、ただひたすら物騒で無味乾燥なマフィアの話題というw
ある意味、流血って意味では湿気はあるか?
しかし……ホントに色気ねぇな!
まあ、それを補う為にイラストだけでもちょっとは色気のある物にしたんですけどね~w
とりあえず、ナポリ・マフィアの”カモッラ”が何とかしてせめて新王朝に絡みたがってるのと、ロックがやっぱり只者では無かったという事がはっきりしたってことで。
さて、今回の話が伏線となって、次回はまたしても話が動くかも?
次回もどうかよろしくお願いします。