転生しても戦争だった  ~数多の転生者が歴史を紡ぎ、あるいは歴史に紡がれてしまう話~   作:ガンスリンガー中年

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サブタイ的にラブコメ展開を引きずると思いきや……





第375話 ”Project Roman Holiday(ローマの休日計画)”

 

 

 

 さてさて、前回に引き続きラブコメ(?)ターンはまだ続くようで……

 

「ただし弟よ。今回は『日伊のビッグネーム・ハイソ同士の婚約発表』というだけで終わらせるつもりはない。さっきも言ったがプロパガンダとしても存分に用いる所存だ」

 

 まあ、それはそうだろうが。

 明らかに和仁とマリアンナの婚姻は、『イタリア完全攻略』の布石だろうし。

 

「そこで、お前達にはローマの休日計画(Project Roman Holiday)を遂行してもらう」

 

 ……何か皇国陛下が変なことを言い出した。

 

 

 

「いや、兄上、ツッコミ所満載だが……とりあえずその計画名はまずいだろう。最後、身分違いで別れるやつじゃん」

 

 とは婚姻する片割れの和仁親王のコメント。

 

「確かプリンセスが記者会見の場での『Thank you』で〆る奴だっけ?」

 

 ちょっと記憶が曖昧らしいマリアンナ。

 

「別に脚本通りにする必要はあるまい? そもそもお前たちは身分違いでも何でもないであろう」

 

「そりゃそうだけどさ……そもそもどんな計画なんだ? 軍事作戦じゃないのか?」

 

「ヲイヲイ。統帥権もあるし名目上は大元帥ではあるが、我に軍籍はないぞ? 軍事作戦の立案指揮(プロデュース)などできるわけはあるまい?」

 

 少しややこしいが、日本皇国の皇室典範と憲法を含む法的にそうなっている。

 日本皇国・明治天皇・明治政府が成立した当初より、『天皇ならびに天皇家は超法規的な存在ではなく、法的に定義された存在であることが好ましい』とされて憲法や数々の法が制定された。

 そして統帥権(勅令)は存在するが、それも超法規的な、原則として議会の承認がないとそれは正式に発令されない。

 実際、先に”勅”が発令された折りもそういう流れであった。

 つまり建国時点から日本皇国は『議会制立憲君主国家』だった。

 そして”大元帥”という位も膨大な権威に付帯する、あるいは国軍が皇国軍を名乗る論拠となる一種の名誉称号という扱いであり、事実、陸海空三軍どこの正規命令系統にも照仁陛下の名はない。

 そもそも和仁親王殿下と違い軍籍自体が無いのだから当然だろう。

 皇国軍自体がシビリアンコントロールを大前提とした軍事組織であり、故に近衛首相→皇国議会→皇国軍という流れになるのだ。

 

「という訳で、”ローマの休日計画”は、軍事作戦ということはない。いささか政治色は強いがな。そしてその骨子は……」

 

 照仁は一度言葉を切り、

 

「和仁、マリアンナ、徹底的にイチャコラしろ。特に大衆の目がる場所、レンズの前ではだ」

 

「……兄上は、一体何を言ってるんだ? 理解できないってことは、もしかして兄上は俺が認識できる言語で喋ってないのか……?」

 

”馬鹿者”

 

「うわっ!? 声が直接脳ミソに響いたっ!?」

 

 どうやらこれも照仁陛下の異能、いやむしろ権能とか神威、神通力の類か?であるらしい。

 

「兄上、こんな隠しアビリティを……」

 

「それはどうでもよい。言うまでもなく意味はある。プロパガンダと言ったであろう?」

 

 

【挿絵表示】

「あのぉ……それにいったいどんな意味が? あっ、もちろん嫌じゃないです。むしろ望むところといいますか……」

 

 控えめに挙手して困ったような笑みを浮かべるマリアンナだったが、

 

「無論、意味はある。目的は『映画のようなラブロマンスの人工生成』だ」

 

 どうやら作戦名は的外れではないらしい。

 

「お前たちの仲睦まじい姿を映像・音声記録に残し、ニュース映画・ラジオ・新聞・書籍など現状のイタリアでできるあらゆるメディアミックスで喧伝する。また大衆の前でというのは、インターネットがないこの時代、市民レベルの噂話の拡散力はバカに出来んぞ?」

 

 未だにイタリアではテレビは普及していないが……何やら徹底的にやるようだ。

 

「それを行う表向きの目的は単純明快。『皇国今上天皇の末弟が、共産主義者が処断した旧王族の血を引く貴族令嬢を娶り、その家名を引き継ぐと同時に新王朝の公爵となる』。イタリアに軍事介入している皇国の『イタリア新旧王朝、ならびに北部を不法占拠してる赤化勢力に対する立ち位置(スタンス)』を内外にこの上なく示すことだ」

 

 確かに立ち位置の表明は、行動指針の明確化と同義で重要なのだが……

 

「だが、それらの事象は付帯に過ぎない。お前たちの報道は、”北部にも(・・・・)伝わる”のさ。滞りなくな。そういう手筈になっている」

 

 誰が音頭をとったかは記載しないが、つまり既に仕込みはしてあるという事だ。

 

「北で我が物顔をする赤化人への影響はこの際どうでも良い。問題は、”北部在住のイタリア人”がそれをどう見るかだ。和仁、北部……”北イタリア社会主義共和国”とやらの現状は知っているか?」

 

「……いや」

 

「芥川の”羅生門”が可愛く見える世紀末っぷりだ。公然と旧王派や富裕層を路上に引っ張り出し、女なら年齢を問わずに死ぬまで輪姦。男ならリンチを平然と行っている。罪状は『反革命的な存在』とからしいな。アカい輩のやりたい放題、要するに公開処刑の見本市状態だ。まあ”総本山”らしく言うならば、差し詰め『現代に蘇ったソドムとゴモラ』というところか?」

 

 どうも想像以上に酷い有様であるらしい。

 

 

「さて……そのような状況で、『新たな後ろ盾となる国家の皇族が、旧王族の血を引く新王族の貴族令嬢と結婚する』ということを皮切りに、”幸せそうな二人”が『新たなるイタリア王国』のシンボルとなる。ロイヤルウェディングの使い道としては、定番だろう? そして、それに伴い『ファシスト政権からの解放を経て急速に戦後復興する”北部以外(・・・・)のイタリア”』の情報も抱き合わせで」

 

 そして照仁はにんまり笑い、

 

「ところでイタリアというのは、歴史的背景から『工業化に成功した豊かな北部』と『農業中心の貧しい南部』という大雑把な認識がある。また、その理由から北部の方が都市ごとの居住人口が多い。細かく言うなら都市労働者が多く、農業従事者が比例して低い。つまり、必然的に地域食料自給率が北部以外の地区にと比べて低い。農民が赤色勢力に感化され、都市に流入して革命ゴッコやギロチンショーを耽溺していたら尚更だろうな。今は秋で実りの時期、収穫シーズンだというのに」

 

 しかも現在、戦後復興の一環としてこの世界線流の”緑の革命”。品種改良された作物、化成肥料と農機を主軸とした『皇国式現代農業』の導入準備が南イタリアを中心に始まっている。

 品種改良により寒冷地に強いコシヒカリの開発されたのは第一次世界大戦中の1917年、皇国のモータリゼーションは農機から始まったとされてるから、まあこれもお家芸と言えばその通り。

 化成肥料についてはドイツ(ハーバー・ボッシュ法)の方が先進なのだが、イタリアでの普及は進んでいなかった為、改めて導入となった。

 実は史実の大日本帝国ですらも第1次世界大戦時の1917年にハーバー・ボッシュ法の特許権を敵国資産として確保していたりしており、この世界線の皇国も第一次世界大戦の戦後処理が落ち着いた1920年代序盤より化成肥料の大量生産を始めていた。

 

「元々食糧自給率が高く、着々と復興を遂げる”ヴェネツィア、パルマ、ジェノヴァ、トリノライン以南のイタリア”を、”かつて豊かだった(・・・)が今は食うにも困りだした非赤色化の北イタリア人”は、果たして何を思うだろうねぇ」

 

 うっすらと笑みを浮かべる照仁陛下である。

 人間というのは、現状から何かを失い現状から転落しようとする時(現状にしがみつこうとする時)、途轍もなく残酷になることは歴史が証明している。

 付け加えるなら、北イタリアと国境を接する国々からの食糧供給はほぼほぼ見込めない。

 ムッソリーニ・ファシスト政権があまりにもあちこちに喧嘩を売り、結果としてドイツに見限られたことがここにきてより強く深く響いていた。

 

「兄上、なんか怖ェって。凄味があるっていうか」

 

「そうか? とりあえず、それらの情報が十分に北部に浸透した頃合いを見て”王家とバチカンは動く”だろう。そのあたりで”下拵え”は終わりになる」

 

 おそらくだが、本格的な”北伐”は始まるのはそれからだろうが……

 

「絶対ろくでもない事になりそうな確かな予感ガガガ……」

 

 と思わず予言してしおまうマリアンナ。

 

「それ多分正解。兄上の表情的に」

 

「和仁、もはや状況は真っ当な戦争ではない。ならば、相応な終わり方になるのは必然だ」

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「とはいえ、血生臭い事象は我の担当でも、お前たちの担当でもない」

 

「いや、そりゃそうだろうけど」

 

「お前たちは”明るい話題”とやらを提供すべく、精々励んでくれ」

 

「あ、ああ。いいのか、それで……?」

 

 ちょっと釈然としない表情の和仁だったが、

 

「それも計画、あるいは作戦の内だ。存分にデートでもしてくるがよい」

 

 

【挿絵表示】

「えっと、それって”Operation DATE A LIVE(デート・ア・ライブ作戦)”って感じ?」

 

「「それだ」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




お花畑的なインペリアル&ロイヤル・デートかと思いきや、割とえげつない計画が動いてたりしてw

いや、まあ『戦時下のプロパガンダ工作の一環』ですからさもありなん。

陛下:「軍事作戦でもない政治工作的側面支援ならこの程度であろう」

なお、遠慮なく関係各国王族やらバチカンやらに根回し(?)してる模様。

陛下:「根回しというほどのものではないぞ? 我が家の紋様透かしの入った親書くらいは送っているが。無論、各国の言語で」

いや、それはもしや受け取り手によっては、命令書や脅迫状になる奴では?
透かし入りの最上質和紙に直筆の親書とか……しかも誤訳や誤認を許さない、各国の言葉と文字でダイレクトアタックとか(怖ェ……

さて、次回は作戦(デート)の様子でも?
どうか次回もよろしくお願いします。


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