転生しても戦争だった  ~数多の転生者が歴史を紡ぎ、あるいは歴史に紡がれてしまう話~   作:ガンスリンガー中年

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本日は午後出勤で夜中まで勤務なので、こんな深夜? 早朝?にアップと相成りました。
読者様は少ないだろうなぁ~と。

さて、今回は久々に5000字超えの長いエピソードになりましたが、どうも皇国政府は本気で「戦争扱いを停止する」みたいですよ?






第382話 沿岸警備庁の”SST”と警察庁の”SAT” ~日伊両政府は露骨な手を使うみたいですよ?~

 

 

 

 1943年11月初旬、トリノ、ピアチェンツァ、プレシア、ベルガモ、コモのライン以北のイタリアは端的に言って”地獄絵図”だった。

 物資の奪い合いに端を発する流血は恒常化し、”北イタリア社会主義共和国”の構成員同士の抗争が日常化していたのだ。

 

 実際に下剋上を起こした(”国籍剝奪並びに破門通知。および指名手配書”)記載外の中堅構成員が、手下を引き連れてリスト記載の上位者(=賞金首)を生け捕りにし、南部に向かうも途中で追手となった賞金首の手下に逆襲されて皆殺しの憂き目にあう……までは良いが、今度はその部下が元上司の賞金頸を『暫定国境線』まで運んで、皇国が準備している報奨品物資をトラックごと受け取る、あるいはそのまま南部、いや正当な”イタリア王国”に避難するなんてシチュエーションもみられた。

 ただし、イタリア王国に避難しても”北イタリア社会主義共和国”の一員であるのなら、既にテロリスト認定(おまけに国連も承認済み)であることは、「賞金首を運んできた報奨品は当然支払うが、それはそれとして」という形で明示される事になる。

 その場合、ある意味は恩赦とも言うべき処置……構成員としての本当の身分を捨て去り、「生涯監視下におかれる」事を条件に別の名で生きるか、あるいはそのまま北部へ帰るかの二つに一つを選ぶことを迫られる。

 どっちがよりマシなのかは、個人差があり過ぎて何とも言えない。

 

 そして、この「この世への地獄の現出」を憂いたイタリア新国王アルヴァトーレ・アオスタは、ついに再建途上のイタリア王国軍を動員して北部平定と治安回復の”勅”をついに出した事が大きくイタリアメディアに取り上げられた。

 そして、「今上天皇の末弟が、先王家の血を引く娘の婚姻によりイタリア王国の公爵位を得る」事による「道義的責任」を大義名分に、今村元帥率いる日本皇国軍遣伊統合方面軍も”イタリア国王からの要請”を受諾し、全面協力する運びとなった。

 酷いマッチポンプもあったもんである。

 

 書類上はイタリア王国軍が主力、いや”兵力数の上”でなら実際に主力なのだろうが……

 先陣を切り”積極的(・・・)治安回復”を、当然のように皇国軍、そして後詰めを請け負い、実際に占領統治と回復後の治安維持を行うのがイタリア軍……アオスタ王が公爵時代に率いていた”イタリア解放軍(リベリツォーネ・イタリアーノ)”時代に編成した、北部出身者で編成された郷土連隊が主力となっていた。

 まあ、北部郷土連隊も装備面では以前より充実していたのだが……やはり、正面戦力としては些か心許ない。

 対して日本皇国軍はと言えば……

 

 

 

 

 

 

「何ともまあ、お久しぶりの”お花部隊(・・・・)”かい。確かリビア以来だったか?」

 

 なんか久しぶりだな? 現在、皇国陸軍大尉の下総兵四郎、アラビア的にはヘイシロー・シモサだ。

 あー、”お花部隊”ってのは、端的に言えば皇国陸軍には『公式には存在していない部隊』、まあ実質的に『非公開の特殊部隊』だ。

 ちなみに俺と小鳥遊君がアルバイダ(アルベイダって発音の方がメジャーか?)の戦いでエンカウントしたのは”沈丁花(じんちょうげ)”って部隊だった。

 他にも”金鳳花(きんぽうげ)”、”芍薬(しゃくやく)”、”躑躅(つつじ)”、”杜若(かきつばた)”、”梔子(くちなし)”とかって部隊もあるらしいが……名前から漢方薬的というか、そこはかとなく某『学生服を都市迷彩にしているガンスリンガーな少女達が登場する作品』っぽくもあるが、残念ながら構成員は少年(スズラン)どころか、いい歳したオッサンばかりだそうだ。

 ただ、このお花部隊……他国にも生まれつつある特殊部隊、例えば俺に創始者自ら拉致予告してきた英国の”SAS(Special Air Service)”とかとは大分趣が違う。

 おそらくだが、元ネタになっているのは、前世でもあった『陸上自衛隊のレンジャー制度(・・・・・・・)』だ。

 割と誤解されがちなのだが自衛隊において、独立特殊作戦任務群としての”レンジャー部隊”というのは元々は存在していない(・・・)

 自衛隊の”レンジャー”とは『陸上自衛官の付加特殊技能の一つ』であり、広義においてはその教育・訓練制度その物であり、「所定の課程教育(レンジャー課程)を修了することでレンジャー徽章を授与され、それを得た者がレンジャー隊員となる」、つまり元々は個人技能資格だ。

 どうも21世紀に入ってようやくレンジャー資格保有隊員のみで小隊を編成する”レンジャー小隊”などができたらしい。

 

 ただ、”この世界線”の皇国陸軍においては、個人ではなく部隊単位で『都市戦を含むあらゆる環境での対ゲリコマを想定した特殊作戦訓練』を受けるようだ。

 そして、その訓練課程を修了した部隊は、普段……戦時かどうかはではなく、特殊作戦への参加以外は、「ごく普通の部隊」のように振る舞う。

 これがかなり「変わっている」事が伝わるだろうか?

 例えば、俺は狙撃手で、参加作戦の度にコロコロ参加部隊規模は変わるが、原則として”狙撃兵”であり”狙撃部隊の一員”としての参戦で、他の兵科への配置展開などは無い。

 だが、驚いた事に”お花部隊”に指定されている部隊は、普段は前線の戦闘部隊ではなく後方、通信や補給を担当している事が多いらしい。

 まあ、通常戦闘で特殊技能持ちを消耗・疲弊させるにも馬鹿らしいが、かといって精鋭部隊を温存だけで過ごさせるほど皇国陸軍は人材豊富な組織じゃない。

 それに「いざ戦闘になれば、護衛が無くとも自衛できる後方支援部隊」というのは、なるほど確かに頼りがいがある。

 付け加えるなら、後方部隊を狙うのは前線で友軍部隊と戦う正規戦力より、少数で奇襲を仕掛けてくる部隊、言ってしまえばゲリコマ的な行動・規模の襲撃が多いことは数々の戦史が証明しているので余計に合理的かもしれない。

 そして、この”何食わぬ顔で通常部隊の顔をしている部隊”が真価を発揮するのが、主にゲリコマ相手の非対称戦・不正規戦だ。

 そして、この手の作戦参加の時に名乗るのが、”花の名を冠した部隊名”、つまり正体を隠すための”作戦時の秘匿名称(コードネーム)”だ。

 

 

 

 ただ、皇国陸軍が何故こんな『面倒臭い特殊部隊編成と運用』を行っているのかと言えば……

 特殊部隊その物の国ごとの”方針の違い”だ。

 現実のSASやデルタフォース、GSG9のように『対テロ特化の最精鋭部隊の存在を公言し、それ自体を抑止力とする』方法も、無論ある。

 というか、それが王道だろう。

 しかし、皇国は逆に『対ゲリコマ特殊部隊の存在を隠蔽し、”公的戦史には残らない特殊作戦(シャドウ・ミッション)”の完遂率を上げる』事を選んだのだ。名より実を取ったと言うべきか?

 まあ単純に不正規戦・非対称戦のノウハウ吸収が現状では不十分という判断かもしれないが。

 無論、皇国とていずれ……大国間の戦争が小康状態になり、代理戦争や地域紛争が戦形態の主流となる時代には、「存在を公言し、抑止力として使う常設特殊部隊」の編成を考えているが、少なくとも「大国が正面から殴り合う第二次世界大戦での優先度は低い」と判断しているっぽい。

 

 とまあ、ここまでつらつら話しておいてなんだけど、実は実際の戦力でなく書類上は、皇国軍全体が”イタリア北伐”では「脇役」だったりする。

 

 

☆☆☆

 

 

 

 無論、イタリア王国軍が政治的主力というのは当然だが、今回の”北伐”は既に日伊の正規軍は参加すれど『軍事作戦ではない(・・・・)のだ。

 名目的には、『”北イタリア社会主義共和国”を僭称する国際テロ組織にに実効支配されていたイタリア北部であるが、その統治が破綻し治安が悪化の一途を辿っている為、イタリア王国の要請によるテロ組織の摘発と北部の治安回復を目的とした”警察行動(・・・・)”』なのだ。

 ただ、通常の警察装備(それでも史実の日本警察よりは装備が充実しているが)だけではイタリアンな赤色テロリズム相手どるには火力が足りないので、何やら既に実績のある”警察行動の代行軍”としての参戦がお題目となっている。

 じゃあ、皇国正規軍が脇役なら、書類上の”主役”はと言えば……一つは、前述のイタリア王国軍。

 もう一つは、わざわざ日本皇国本土よりやってきた援軍、もとい”支援隊”。

 内務省管轄にある警察権保有の特殊治安組織、”沿岸警備庁(・・・・・)”と”警察庁”ならびに”内務省公安部”が保有する『重装特殊警護部門』の紳士淑女諸君、平たく言えば、前世日本で言う海上保安庁の”SST( Special Security Team)”と警視庁や各県警が持っている”SAT(Special Assault Team)”みたいなもんだ。

 厳密に言えばけっこう違うんだが……だが、名前がまんま沿岸警備庁の方は”SST”で、警察/公安系は”SAT”だった。

 設立に関わった転生者、実は存在隠す気ねーだろ?

 

 

 

 あー、とりあえずまずは”沿岸警備庁”から解説な?

 コイツの元ネタは、同盟国のイギリスが19世紀に創設した”王立沿岸警備隊(His Majesty's Coastguard:HMCG)”だ。

 これが中々ユニークな組織で、元々は関税庁が密貿易などの水際阻止目的で創設した”水際取締部隊(Preventive Water Guard)”が前身だが、”王立沿岸警備隊”に組織改編と拡大がされる時に商務庁の管轄となり、現在は王立海軍本部の傘下になっている。

 ただし、日本皇国ではそもそも『国防を司るのが軍、国内治安は内務省各警察組織の管轄』という明確な住み分けがあるので、日本皇国領土の主要港の警備や工作船や密輸船・密漁船などの不審船の取り締まりが責務になる”沿岸警備庁”は警察庁や警視庁同様に設立時から国内治安担当の内務省の管轄となった。

 おそらく計画を出したであろう転生者(推測)が”海上保安庁”にしなかったのは、おそらく『任務内容が海難救助より領海を侵犯する不審船対策なんかの米国コーストガード的な内容』が多かったからじゃないだろうか?

 あと考えられるとすると、”海上保安庁”にすると、転生者以外には「大きな意味に聞こえる」だろうから、皇国海軍の”海上護衛司令部(欧州遠征を契機に第一次世界大戦後に新設された海防艦や哨戒機を用いた海上通商路(シーレーン)自体の維持と保守が任務の部門)”とイメージが被るのを避けたのかもしれない。

 

 んで、前世なら警視庁と県警がそれぞれ持っていたが、”この世界線”では(現在のところ)、各県警の監督上位組織である警察庁が『特殊警備隊を一括管理し、各地に派遣する』という形になっていた。

 ちなみに内務省直轄の公安部は、FBIばりの国内の広域捜査権限があるので、特殊部隊は寧ろ必須だろう。

 

 まあ、それぞれの「特殊作戦を行う特別な警備部門」の連中が、今回は助っ人として作戦参加するって訳だ。

 これは別に宇垣和成内務大臣率いる内務省が、「戦争に一枚嚙ませろ」と無茶ぶりした訳じゃないだろう。

 

(おそらくは『警察行動をより強く内外にアピール』するための露骨なプロパガンダ)

 

「まあ、確かにテロリスト相手するのは、治安組織ってのが本来は鉄板だしな」

 

「どしたんすか? 大尉殿」

 

 そう声をかけてきたのは、未だに下の名前がイマジナリーな小鳥遊君だ。

 そういえば、この腐れ縁が延々続きそうな我が麗しの観測者(スポッター)、もう曹長なんだとなぁ~。

 二等兵からの叩き上げで、今や『一兵卒にとっての元帥』だぜ?

 

「いや、戦場で警察組織の方々見るのは何だか新鮮だと思ってさ」

 

「あー、そういう。上が『北イタリアでやるのは軍事作戦じゃない』って言ってるからしゃあないんじゃねーですか?」

 

「ご苦労なことだな。まあ、警察系の対テロ部隊も『海外での活動実績と経験、対テロ作戦での”生きた最新ノウハウ”の蓄積』ができるから、意味が0って訳じゃないだろうけど。いや、考えようによっちゃあゲリコマ相手なら正規軍人より”使える”可能性も無きにしも非ずか?」

 

「大尉殿、連中をあんまナメない方がいいっすよ? 俺が知ってるのは”沿警”の方だけど、停船警告無視した不審船沈めるのに艦砲やら船に持ち込んだロタ砲(二式九糎対戦車噴進砲)を平気な顔してブッパしたり、沈まなかったり停船した・させた船に海式短機(海兵28式短機関銃)片手にブッコミかけたりする連中ですし」

 

 いや、リアル・ブラックラグー〇かよ?

 

「警察系の連中も、『テロリスト死すべし慈悲は無い』みたいな連中だって話ですし。いや、そりゃあ警察だけあって少なくとも建前だけでも”捕縛”を言うでしょうけど」

 

 いや、捕まえられてイタリア王国に引き渡された方が悲惨じゃね? 無国籍のテロリストだし……

 

「沿岸警備隊やら警察やらにハーグ条約やジュネーブ条約は関係ないしな」

 

 例えば、ハーグ条約で軍の戦時での使用が禁止されているダムダム弾(柔らかい金属を使い体内で変形しやすい拡張弾頭=マッシュルーミング現象を起こす弾頭)だが……警察組織では、ほぼ同じ効果の”ホロ―ポイント弾”が、警察組織では「柔らかい弾頭の方が硬い弾頭より壁などで跳弾しにくく、貫通もしにくいので二次被害を起こしにくい」という理由で普通に使われているんだよ。

 無論、「警察機構が警察行動で使う場合」には、特に制約はない。

 今回の北イタリアは「戦争ではない」し、「軍以外が使う分には」問題がないんだ。

 

(ショットガンとかをテロリスト相手の対人戦に使っても文句は言われんだろう)

 

「まあ、お手並み拝見といこうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




という訳で、顔見せ程度ですがお久しぶりのシモヘイと小鳥遊君のスナイパーコンビの登場でしたw

近衛首相:「もう戦争じゃねぇってんなら、別に軍隊以外の公的機関入れても問題ねぇだろ? 治安回復だのゲリコマ狩りだのってんなら、ある意味、本職だしな」

という事で、「警察行動に則った対テロ掃討作戦」アピールのプロパガンダを兼ねて、”SST”と”SAT”が海外発展開と相成りました。

ただし、現実の同名組織とは成り立ちも設立年代も違う為、「かなり内情は異なる」模様。
次回に少し両組織をもう少し掘り下げる予定ですが……ぶっちゃけ皇国政府はテロリスト捕縛する気が無いんじゃないかとw

兎にも角にも、イタリアをめぐるファイナル・ステージの火蓋が、いよいよ切って落とされそうです。

ご感想、高評価、お気に入り登録してくださると大変嬉しいです。
次回もどうかよろしくお願いいたします。


☆☆☆


”前書き”にも記しましたが、今のお仕事がシフト制で早朝出勤だったり午後出勤だったりで、この先も投稿できる時間帯もかなり不規則になりそうです。
ご了承頂ければ幸いです。




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