転生しても戦争だった  ~数多の転生者が歴史を紡ぎ、あるいは歴史に紡がれてしまう話~   作:ガンスリンガー中年

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今回は前話と打って変わって、イラストが1枚もない硬派(?)なエピソードです。
いや、イタリアとの戦争は、”この人”も重要ポジションでしたし。

あとお久しぶりなご老体が、ある意味無双します(えっ?)



※読者様よりご指摘があったので、すっかり忘れていた”タグ”を整理しました。
そういえば、連載再開どころか2年前くらいから全然見直してませんでしたw





第399話 ”政治的怪物”と”外交的妖怪” ~三通の親書とユーゴスラヴィアの将来像~

 

 

 

 さて、全世界的に43年のクリスマスまで1週間を切った。

 しかし、神を殺した社会主義や教唆主義者には関係ない。

 むしろ、クリスマスパーティーなぞ開いたら粛清対象になる。

 クリスマスミサを行った聖職者が生き埋めにされたり、クリスマスパーティーを行った村が住民全て粛清されたのもフィクションではなく純然たる”史実”だ。

 

 そんな赤色な一人である”イソップ・ブロンズ・チトー”は、やがて生まれる”ユーゴスラヴィア社会主義共和国”の首都(予定)、ベオグラードのオフィスにてその複雑な内面が滲み出た味わい深い表情をしていた。

 決して不快なわけでは無いのだろうが……

 

「まさか、シデハラのみではなくイタリア新王やイタリア討伐皇国軍の首魁からも早速、”親書”が届くとはな……」

 

 まあ、内容的にはどちらかと言えば”密書”に近いが……要するにイタリアから叩き出されてユーゴスラヴィアに逃げ込んだ”北イタリア社会主義共和国”残党の取扱いに関する書簡だ。

 

 イタリアのアオスタ新王からは貴族らしい持って回った文章を読み砕けば、『もうイタリア国民じゃないから好きにしていいよ。どんな扱いをしようと我々は関知しないし、今後、一切政治問題にもしない』という内容だった。

 

 遣イタリア皇国総軍の最高司令官である今村元帥からは、『残党狩りを名目にユーゴスラヴィア暫定政府が定めた国境線を皇国軍が侵犯することはない』という内容を軍人らしい実直な文章でしたためられていた。

 何気にチトーにはとても喜ばしい文面だ。

 

(跳ねっ返りのイタリア人程度ならどうとでもなるが、日本人に力任せに殴られたら、今のユーゴスラヴィアではどうにもならん……)

 

 後世に”群雄割拠で魑魅魍魎の巣窟たるユーゴスラヴィアの天下統一を成し遂げた政治的化物(チート)”と揶揄されるチトーは、その評判を裏切らず「ヒトラーが最大限に警戒するに相応しい」極めて有能な男であった。

 だからこそ、隣国であるイタリア、特にその北部における”殲滅戦”をつぶさに観察してきた帰結がそれだった。

 

「日本人が国家間の約束や国際条約を”病的なほど律儀に遵守する”民族であることは信じて良いだろうな」

 

(まあ、日本にユーゴスラヴィアを侵略するメリットなど何もないだろうが……)

 

 そして、最後……他の二通と共に(令和の世では著しく衰退した風習の)”お歳暮”なる名目で化粧箱入りの贈答品と共に届いた幣原の親書だ。

 ちなみにお歳暮の中身は英国の老舗フォートナム&メイソン社の上質な茶葉の詰め合わせだった。何気に英国も了承しているという意思表示だとチトーは受け取っている。

 そして、同封されていた皇国高等外交官の中で唯一知己のある幣原の親書こそが、チトーに複雑な表情をさせる内容だった。のだ。

 

「あの、老人……何を考えている?」

 

 ”拝啓 親愛なるチトー殿”という感じで始まる丁寧な文面……

 幣原は本来、在ギリシャ特使なのだが……いつの間にか曲者揃いの地中海方面皇国外交官達の取り纏め役に落ち着いてしまったようだ。

 吉田在英特使が欧州外交統括とされている通り、既に幣原は”幣原地中海外交統括(幣原統括)”なんて呼ばれ始めてるらしい。

 まあ、来年の4月には外務省(野村外務大臣)から正式に辞令が出るんじゃないだろうか?

 間違いなく日本人が苦手とする適材適所が叶った人選ではあるが……「敬老精神はどこへ行った?」と小一時間ほど問い詰めたくなる人事とも言える。

 それはともかく、その後に”幣原文書”として名を残すその手紙は……

 

イタリアからの赤化した脱走者は、君がどう扱っても構わないと思う。無論、単純作業の労役で使い潰し、ユーゴスラヴィア国家の正式な建国や祖国発展の人柱にするのも悪くないだろう。

しかし、脱走者の中には工業系を中心に高度技能保持者も混入しているはずだよ? それを人柱として潰すのは惜しい。人材として発掘し、建国後の祖国発展の一助にすることの方が有益だと思う。

無論、君が何をどう考えるかが一番重要なのだろうけど、だが人選というのは『如何にして(ふるい)にかけるか?』がとても重要なんだよ。

善き人材は、必ず国を豊かにする。そして、君の立場はその善き人材を「いかに見極め発掘し、雇用し使いこなすか?」さ。それが上に立つ者がすべきことだ。

粛清をするのであるのなら、その必要性と正当な理由、あるいは大義名分があるのなら私も反対はしない。しかし、それは同時に「人材と労働力の損失」を意味することも考えねばならない。ソ連の現状を見ればそれもわかるだろう?

そして、建国後に指導者たる君に求められるのは、「いかに多くの国民を食べさせられるか?」だ。貧富の差を認めない社会主義であるのなら、余計にそうだろう。社会主義の完成形の一つは、私は『国民すべてが中産階級となる』事だと考えているんだよ

 

 この先にも、何か「仲の良い後輩に充てたようなアドバイス」が続くのだが……

 

 

 

「これが、『押し付けられた植民地を片っ端から独立国に押し上げる』という、”日本外交の真骨頂”か……」

 

 無論、幣原や皇国外務省あるいは政府も友好と善意だけをこの文書にしたためたわけでは無い。

 無論、国外逃亡した赤化元イタリア人の身柄を心配した訳でも無い。

 アオスタ王と今村元帥が「ユーゴスラヴィア入りした元イタリアンの処遇と皇国軍の行動指針」を明示するなら、外務省いや外交官としては、『この先の時代のバルカン半島の安定化』に寄与するべきと考えるのは必然だった。

 地政学的にも国家規模的にもその要になるのは、戦後すぐに正式に建国宣言が行われるだろう”チトー率いるユーゴスラヴィア社会主義共和国”に他ならないと考えていた。

 

 相手が社会主義を標榜する以上、軍事支援などは表立ってできないが……「簡単にソ連に屈しない程度に国家としての足腰を強くする」ことはできるはずと判断された。

 そもそも、史実の幣原喜重郎外相の示した”幣原外交”の骨子とは、”国際協調と経済外交の重視”だ。

 であるのならば、”この世界線”の幣原の親書にもなんら矛盾はない。

 というより……むしろ、この”幣原外交”のスタンスこそが、「幣原が自然発生的に(あるいは流れるように)地中海統括に召し上げられる必然」のような気がしてならない。

 このバルカン半島を含む地中海沿岸・周辺諸国の歴史的因果を含む政治経済状況というのは、「日本人が如何にシンプルな歴史を歩んできたのか」を自覚させられるくらい本当に面倒臭いのだ。

 

「それにしても、”緑の革命”か……まず字面が良いが、農村部の近代化と改革から推し進めるというのが実に悪くない」

 

 幣原が推していたのは、「ユーゴスラヴィアの温暖な気候と肥沃な土地を最大限に活かした産業の基軸化」だ。

 こうして”この世界線”のユーゴスラヴィアは、戦後すぐに「適正価格での化成肥料と農業機械の輸入」を開始し、”国策”として共産圏で逸早く農業の近代化と農地改革を成し遂げ、やがて技術移転と工業化の進歩でで自国でもこれらを生産できるようになる。

 ゆくゆくは「欧州の食糧庫の一つ」と目される陣営を問わずに輸出するウクライナと並び称されるほどの食料品輸出国となり、やがて「共産圏唯一の富裕国」とまで呼ばれるようになるのだが……

 

「”締めるべきところは締め、緩めるべきところは緩める”……厳格さの一辺倒ではなく、寛容さを取り込むことで政治的弾性を生み、国家運営の流動性と躍動性を維持する、か……確かに政治の固着化は、旧来の政治体制となんら変わらんか」

 

 そう幣原からの長い手紙を読みふけるチトーの姿があったという。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 蛇足ではあるが……史実におけるチトー死後、冷戦終結後のユーゴスラヴィアの末期とはどういうものだったかおさらいしてみよう。

 元々、ユーゴスラヴィアは、

 

 ”7つの国境、6つの共和国、5つの民族、4つの言語、3つの宗教、2つの文字を持つ、1つの国家”

 

 であり、実は「民族対立よりむしろカトリック、セルビア正教、イスラム教などの宗教対立という側面の方が強かった」とも言われている。

 加えて、ユーゴスラヴィア解体に大きな意味を持つボスニア・ヘルツェゴビナ紛争では、ボスニアが「アメリカの広告代理店を雇って」国際社会へイメージ戦略、「セルビア人がボスニア人を虐殺して民族浄化しようとしている」といわゆるネガキャンを展開、それに乗ったアメリカが「窮地に陥っているボスニア人を救うため、アメリカを中心とする国際社会は正義実行!と軍事介入……いや、これって露骨なマッチポンプじゃね?

 しかもこの時の米大統領が、クリントンって時点でお察しくださいというか……

 ちなみにコソボの時も似たような感じだったという説がある。

 

 

 

 では、この世界線のユーゴスラヴィアの将来はどうなるのだろうか?

 無論、未来はまだ未確定だ。

 だが、この幣原喜十郎とチトーの書簡のやり取りは後年、幣原の死去まで続いたとされる。

 前述の化成肥料や農機の輸入、ユーゴスラヴィア自国生産開発に技術協力したのが皇国であるのは、この交流の結果だったとされる。

 また、チトーの死後に時代の暴風雨を何とか切り抜け何とかソフトランディングして誕生した”ユーゴスラヴィア共和国同盟(・・・・・)のとあるチトーに批判的な歴史家によれば、

 

『チトーが政治家として大成したのは、シデハラという老人が生きてる間は常にそれが背後にいたからだ。チトーは所詮、外交政治家としてはシデハラの思想を受け継いだだけの弟子に過ぎん』

 

 これは流石に過言な気もするが……

 そう……チトーは確かに”政治的怪物”なのかもしれない。

 しかし、幣原もまた”古い時代の外交的妖怪(・・)”だったのもまた事実だった。

 

 とにもかくにも、こうしてユーゴスラヴィアのイタリアに関連する戦いは、終わりを告げたのである。

 

 

 

 ところで、皆さんはお歳暮の紅茶の香りを楽しんでいるチトーが、作中で妙な発言をしていた事にお気づきだろうか?

 

『まさか、シデハラのみではなくイタリア新王やイタリア討伐皇国軍の首魁からも早速、”親書”が届くとはな……』

 

 どうやらチトーにとり、幣原翁から親書が届くのは特に「不思議はない」という認識であるらしい。。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




【悲報? 朗報?】やっぱり幣原の爺様も皇国外交官らしく、来栖や吉田、杉浦とは違う方向性で化物だった件について【それとも順当?】

幣原さん、無自覚にチート野郎(チトー)飼いならしやがったよ……(驚愕
ヒトラーは泣いてよいw
お陰で、ユーゴスラヴィアと呼ばれる地域の未来も大きく変わりそうですよ?

まあ、本編でも触れましたがユーゴスラヴィアが分裂した理由に『内包していた宗教対立とそれを煽った大国(アメリカ)の介在』がありますからね~。

どうやら、”この世界線”ではその未来は回避されそうですよ?
いや~、イタリア篇終了までにチトーとユーゴスラヴィアを書けて良かったですw
実はどこに入れようかずっと迷っていたんですw

さて、次回は400話……予定ではイタリア篇のラストエピソードになる予定です。

ご感想、高評価、お気に入り登録してくださると大変嬉しいです。
次回もどうかよろしくお願いいたします。







物書きの独り言(笑)
いや~、覚悟と予想はしていましたが案の定、前話で評価が下がりました。
基本、エロオンリーでしたからねぇ。
とはいえ、真面目な話ばかり書いてると脳味噌が疲れえるのか執筆スピードもモチベーションもだだ下がりになるし、何よりリアル(仕事)のストレスが一定値超えると無性にエロいのとかバカいのとか書きたくなるというw
とりあえず、まずはイタリア篇を終わらすとしましょう。
まあ、元々がgdgdな戦記っぽいような別のナニカのような作品ですが、これからも気長にお付き合い頂ければ幸いです。






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