転生しても戦争だった  ~数多の転生者が歴史を紡ぎ、あるいは歴史に紡がれてしまう話~   作:ガンスリンガー中年

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今回は、皇国軍視点です。
どうもドイツ軍の装備から、何やらこの時点ではありえないない物が発見されたようですよ?






第41話 勝って鉄兜の緒を締めつつ、次世代個人携行対装甲兵器について語る話

 

 

 

1941年6月某日、クレタ島防衛総司令部

 

 

 

 

 さて、反省会というのはクレタ島攻略に失敗したドイツ側だけが行えばよいというものではない。

 当然、クレタ島防衛に成功した日本皇国側とて、反省すべき小さな失敗は無数にある。

 それを一つ一つ検証し、戦訓として蓄積し、次の戦いに活かす……実は、大日本帝国で最も整っていなかったシステムがこのあたりだ。

 何が成功につながり、何が失敗につながったのかを検証し、解析し、経験として蓄積しなければ次の成功に結びつかないのは、戦争も日常生活も変わらない。

 

「やはり、ドイツの空軍力は侮れんな……今回は、多少なりとも戦闘機の総数で押し切った感があるが、実質的にはこちらのやや優勢、強いて言うなら判定勝ちというところだ」

 

 とはクレタ島防衛の総司令官、”栗林忠相”中将だった。

 

「ええ。予想はしていたこととはいえ、手ごわかったですね。むしろ、対空砲……特に機動式や自走式の対空砲に不慣れなようで不意打ちじみた撃墜も多かったのが幸いしました」

 

 と答えたのは、空軍航空隊だけでなく海軍の水上機部隊も指揮下に持つ”航空統括指揮官”の地位にある皇国空軍少将”鈴木 頼道”であった。

 

「それにしても驚いたのは……ドイツ空挺兵の兵装コンテナにおそらくは試作品と思しき”個人携行型の対装甲火器”があったことですな。降下されてから即座に迎撃できたからよかったようなものの、あれの戦術が確立され効率的に使われていたら、装甲車両もうかうかしていられませんな」

 

 と感心していたのは、栗林の直轄である皇国陸軍の装甲騎兵連隊を預かる”西 竹善”大佐であった。

 

 

 そう、西大佐の言う通り、中身が回収できたいくつかの兵装コンテナの中からは、いくつか”この時代、この戦場にはありえないはずの兵器”がパッケージングされていたのだ。

 

 それが、”ラケーテン・パンツァー・ビュクセ”、通称”パンツァー・シュレック”と呼ばれる「88㎜個人携行型対戦車ロケット砲」だ。

 これは明らかにおかしいのだ。

 というのもドイツのパンツァー・シュレックは、「”1942年11月”より始まるチュニジアの戦い(トーチ作戦)でアメリカ軍から鹵獲したM1バズーカを手本として完成した兵器」なのだ。

 だが、それはこの世界線では未来の時間軸の出来事であり、因果事象が違う以上、その戦いが起きるかもわからないのだ。

 

 まだ防盾が付いておらず、発射にガスマスクと手袋の装着が必須の試作型とはいえ、この時点である訳のない兵器だった。

 個人携行型対装甲擲弾発射機”パンツァー・ファウスト”なら、まだ技術加速などで説明が付くのだが……いや、これも登場は1943年なのだが。

 

 

 

***

 

 

 

 ただし、これにはトンデモないオチ(・・)が付く。

 これから数日後、クレタ島防衛戦後の戦況分析、情報のすり合わせに来た英国王立陸軍の情報将校に、「ドイツ人がもう対戦車ロケットや対戦車擲弾発射機を開発している」と皇国陸軍の情報参謀が告げたところ、非常にジト目で見られて、

 

皇国陸軍(おまえら)が言うか?』

 

 と返されたという。

 どういうことかと真意を聞きただすと、

 

『いや、トブルク防衛戦の時、おまえら試作品の3in対戦車ロケットランチャー使ってたじゃん』

 

『あっ……』

 

 そうなのだ。

 実は物語の冒頭で某転生狙撃手(狂言回し)が無駄話はくっちゃべってたその同じ戦場で、日本人は明らかに転生者が計画段階から関わっていることが丸わかりな史実の試製四式七糎噴進砲とおそらくは”M9”型バズーカのハイブリッドっぽい外観の”試製零式三吋噴進砲”という口径76.2㎜(3in)の対戦車ロケットランチャー、通称”プロト・ロタ砲”を試験的に投入しており……

 

『おそらく、それを見たドイツ人が本国に報告したんだろうさ』

 

 そして最後に、

 

『英国は満足な歩兵用の対装甲兵装が無いこと、その重要さにドイツ人と正面から殴り合うことでようやく気づいて大慌てしてんだ。上層部に掛け合って公文書ださせるから、試作品でも構わんからさっさとまとまった数よこせ』

 

 と締めくくられたという。

 こうして、”未完成な部分が多々ある実験兵器”だったはずの”プロト・ロタ砲”は急遽制式化が決まり、主に英軍向けに大量生産されたらしい。

 無論、日本皇国陸軍にも相当数が配備されたが、皇国陸軍が本命としていたのは実戦でプルーフされた改良を施し、確実視されている戦車の重装甲化に対応すべく大口径化した”二式九糎噴進砲(9㎝ロタ砲)”だった。

 

 後の話になるが実はドイツの歩兵用対装甲装備の強化に影響を受けたのが日本で、「パンツァー・ファウストがもうあるならRPGもいるか……」と言いだし、最終的に”和製RPG未来先取り仕様(つまりRPG-7準拠)”の”試製五式複合噴進砲”の開発につながることになる。

 アメリカとソ連は泣いてよいと思う。

 

 まあ、それでなくとも日本皇国は対装甲装備の開発に熱心な国であり、大きく喧伝しているわけでは無いが……何度か出てきているモンロー・ノイマン効果の成形炸薬弾である航空機用”夕弾”だけでなく、同じく成形炸薬式の個人携行型の火器が複数開発されている。

 例えば、現在の皇国陸軍主力小銃である”チ38式半自動歩兵銃”と同時開発された”一〇〇式小銃擲弾”がそうだ。

 史実に似た名前の兵器があるが別物で、カップ式ではなく銃口に装着するタイプのアドオン(ロケット)型でバレットスルー方式。外見は、ほぼほぼ”ENERGAライフルグレネード”の亜流と考えて良い。

 チ38式は擲弾用照準器を起立させると自動的にガスカットオフ機能が働くようになっており(同種の機能は史実のイタリアのBM59ライフルやユーゴスラビアザスタバM70ライフルが備えている)、セットで開発された事がよくわかる。

 

 他にも現在、先行量産型が前線に回ってきている……”村田式擲弾銃”以来の擲弾銃で、”八九式重擲弾筒(実質的に個人携行可能な小型簡易迫撃砲)”と小銃擲弾の間を埋める物として肩付けで発射できる”試製二式擲弾銃”なる、どう見ても「M79の和風アレンジ」にしか見えない物も配備されているようだ。

 

 

 

「二式擲弾銃の試作品は中々に有効なようだね? 小銃擲弾や八九式との使い分け、住みわけも上手くできてるようで何よりだ」

 

「ロタ砲もですが、二式擲弾銃が分隊ごとに配備されるようになれば、我が国の陸兵はまた一段高い火力を得られることになるでしょうね。中折れ式の単発散弾銃を模したような単純な構造なので故障少なく信頼性が高い、威力も丁度小銃擲弾と重擲の中間で、肩付けで撃てる分、有効射程も命中精度はそれらより上なのも使い勝手が良い。武人の蛮用に耐える良い野戦兵器だと思いますよ?」

 

 と手放しでほめるのは、歩兵部隊の活躍をつぶさに見ていた西大佐だった。 

 

「しかし、こうなってくると戦車にも成形炸薬弾対処の方法を考えると同時に対歩兵装備を拡充するように進言した方が良いかもしれませんな? 正直、ドイツ式のロタ砲の直撃を食らえば、最新鋭の一式改とはいえ無事では済まないでしょうし。我々のロタ砲同様に射程が短く、弾速が遅いのが救いですが、いずれにせよあれを装備した歩兵は、強力な”戦車キラー”になりかねません」

 

 事実、実験の結果、後にパンツァー・シュレックと呼ばれ赤色戦車相手に猛威を振るう事になる個人携行対戦車ロケットランチャーは、一式改の最も分厚い砲塔正面装甲を高温メタル・ジェットで容易く焼き貫いてみせたのだ。

 西大佐にとり、それは戦慄を覚える情景だったという。

 

「我々がクレタ島の防衛に成功したのは事実だが、それには勇戦した日英海軍の活躍もだが、それ以上に実力だけでは説明できない多分の幸運があった事も事実だろうな。実際、我々の下した判断の一つが誤っただけでも、戦線が崩壊はせずとも破綻する恐れがあった……例えば、飛行場の一つを確保され、少数でも後続が空挺作戦を強行したら、最終的に防衛は成功したとしても、今とは比べ物にならない被害が出た可能性があったことを肝に銘じなければならん」

 

 栗田中将の言葉に、鈴木空軍少将や西大佐だけでなく、会議場にいた全員が頷いたのだった。

 

 

 

 

 

 だが、ドイツ人の脅威を再認識しながらクレタ島を守る彼らに、驚愕のニュースが飛び込んできたのは、それから半月も経たないうちだった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




オチが酷かった件についてw

「日本って対戦車装備で苦労すんだよなー」と日本皇国の転生者がロタ砲を試作する→テストモデルがトブルク防衛戦に投入される→ドイツ軍がそれを見ていた→鹵獲できたかは不明だが、「なんか良さげだしドイツでも作ってみっか」となる。ちなみに回収した損害車両から成形炸薬弾であることも一発でバレた。

という「アメリカ関係ないじゃん!」というオチで、この世界線ではパンツァー・シュレックは生まれました。
ええ。”バルバロッサ作戦”前に。
まあ、ドイツにもそこそこ転生者いそうだし。

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