攻殻機動隊 -北端の亡霊-   作:変わり種

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第17話

小筆で描いたような細い雲が棚引く冬の寒空に、ぽつんと輝く白い半月。時折、空っ風が吹きすさみ、電線を揺らしてびゅうびゅうと音を立てる。すっかり夜も更けた住宅街の家々からは明かりが消え、蒼白い街路灯だけが煌々と灯っていた。

 

そんな中をうごめく透明な影。道路を走っていたそれは、忍者の如く音も立てずに跳躍すると、近くの電柱の上に絶妙なバランスのもと着地する。

 

《タチコマ、状況はどうだ?》

 

《外から確認できる限り見張りの姿は見えません。周辺道も問題なしです》

 

起動した光学迷彩で周囲に溶け込んでいるタチコマは、バトーにそう報告した。

 

ここは前アジア局長の武田氏が居を構える新浜市郊外の高級住宅街__桜ヶ丘地区。6課が軟禁状態に置く本人と接触すべく、昨日、今日と昼夜を問わずバトーとトグサが屋敷を観察した結果考え出したのは、テレビアンテナを利用するという奇策だった。タチコマを利用して屋敷の屋根に張り付かせ、アンテナからの信号に受信機器のファームアップデートに偽装したウイルスを混ぜることで、屋敷と外部を繋ぐ通信回線にトンネルを開通させようと考えていたのである。

 

多少なりともリスクのある作戦ではあるものの、課長の許可は案外すぐに出た。回線の盗聴や電波妨害が存在する厳しい状況の中で、他に有効な手立てがない以上やむを得ないと、課長も判断したのだろう。だが、これだけの作戦にゴーサインを出すということは、裏を返せば課長も腹をくくったということに違いはない。それだけ、2人を信頼しているのだ。

 

《よし、そのまま屋根伝いに屋敷に接近。見張りには注意しろよ》

 

《りょうかい!》

 

タチコマは元気よくそう答えると、再び跳躍して近くの民家の屋根に飛び移る。普段より注意を払い、脚の関節を最大限に駆使して衝撃を吸収したため、住民にもせいぜいカラスか何かが飛び乗った程度の音にしか聞こえないだろう。

 

その様子を、借り上げたアパートの一室から望遠鏡を通してじっと見つめるバトーとトグサ。この距離で、しかも夜間ともなると、望遠鏡で光学迷彩を使うタチコマの姿を捉えるのは至難の技だった。今のところは電通を介して位置情報を共有しているので、見失っても後を追うことはできるものの、もう少し屋敷に近づいたらそれに頼ることはできなくなる。6課が周辺の電波を妨害している可能性が高いからだ。

 

ゆっくりと屋根を移動し、慎重に家々を飛び移っていくタチコマ。屋敷まではあと3ブロックといったところで、また一つ道路を飛び越えた彼は、アイボールを使って再度屋敷を隈なく観察する。

 

熱探知には特に監視要員とみられる反応はみられない。目的のアンテナは3階建ての屋敷の北東側、ちょうど切妻屋根の頂点部分に据え付けられていた。根本にはブースターと思しきいくつかのケーブルが繋がった機器も見え、あれに割り込めば屋内の機器にウイルスを流し込めると思われた。

 

同時に、前もってダウンロードしていた見取り図とも比較し、最適な侵入経路を割り出す。タチコマにとってはこの程度のタスクは、コンマ1秒も掛からずにできることだった。

 

《ここから無線を切りますね。見失わないでくださいよ、バトーさん!》

 

《ああ、勿論だ。そんなヘマしねえよ》

 

これですべての準備は整った。バトーにそう伝えたタチコマは、合図代わりに一度だけ手を振ると、一切の電脳通信を切断する。ここから先は、たとえ何が起ころうともタチコマだけで対処しなければならない。迂闊にバトーと電通を繋げれば、それだけで6課に察知される恐れがあるのだ。

 

間もなく、一人進み始めるタチコマ。導き出した経路に従い、屋根を飛び越えて塀の上を歩き、徐々に屋敷への距離を詰める。途中、飲み会帰りの客を乗せたタクシーが走ってきたものの、タチコマは動きを止めてやり過ごした。出発してから5分あまりで、彼は難なく屋敷の隣の家の屋根にたどり着く。

 

(ここからが問題なんだよねー)

 

タチコマは声には出さずにそう呟いた。屋敷の周囲には生け垣と芝生が広がり、建物まではどの方位から近づいても10メートル近い距離がある。生け垣を飛び越えて地面に降りられれば何も問題はないが、タチコマほどの重量ともなると芝生では確実に跡が残り、気づかれる可能性は濃厚だった。それを踏まえると、やはり一気に屋根に飛び移る以外に手はない。

 

覚悟を決める彼。狭い屋根上でモーターを唸らせ、短距離の間に一気に助走をつけると、人工筋肉を最大限まで駆動させて脚部に溜め込んだ力を解き放つ。空高く跳躍したタチコマだったが、それでもまだ距離は十分ではなかった。徐々に失速し、高度が落ちる。このままでは届かないのは、誰が見ても明らかだった。

 

(このっ!)

 

しかし、タチコマも何の考えもなしに飛んだわけではない。2門の射出口から勢いよく液体ワイヤーを発射し、屋敷を越えた先の電柱に撃ち込んだのだ。瞬時にそれを巻き取った彼は、まるで吸い寄せられるように一気に水平方向に加速し、屋敷の屋根に肉薄する。

 

間もなく脚を大きく広げると、脚の関節全てをクッションにして音もなく着地した。あと数センチ足りなければ、後ろ脚が届かずにバランスを崩していただろう。けれども、何とかタチコマは武田邸の屋根に降り立つことに成功したのだった。

 

(よし、それじゃ仕事を始めるとしますか!)

 

喜ぶのもそこそこに、タチコマはすぐに作業に取り掛かる。脚部の先を平らな歩行形態に変え慎重に屋根の上を移動すると、目的のアンテナに取り付いた。

 

ここまで行けば、あとはあらかじめ組み上げた手順通りに事を進めるのみだ。ブースターからケーブルを引き抜き、その間に割り込むタチコマ。本来なら規格が合わないが、作戦に備えて赤服に左腕のプラグを改造してもらっているので、問題なく接続することができた。そして、事前に組み上げていたファームアップデートに偽造したウイルスを放送電波信号に混ぜて流し込む。

 

基本、この手の機器はファームウェアに悪意のあるコードが含まれていることを想定していないため、弾かれる心配はないはずだった。それに、あらかじめ電器店の購入履歴から機種も割り出してあるので、互換性も問題ない。唯一、データの流れが一方通行である都合上、流し込んだウイルスが無事に機器に潜り込み、活動し始めたかを確認できないのが不安要因だが、そこは信じるほかなかった。

 

(もうそろそろかな…)

 

数分が経ち、データの注入も9割近くが完了する。あと数十秒もすれば注入作業は完了し、あとはウイルスが密かに起動してトンネルを掘削するのを待つだけだ。最大の山場をほとんど乗り切ったことに、タチコマはすっかり安堵してアイボールの1つを動かすと、バトー達のいる方を見つめる。そして、余裕たっぷりに軽く腕を振った。

 

だがその時、予想だにしないことが起こる。

 

あろうことか突如、タチコマのいるすぐ下の一室に明かりが灯ったのだった。

 

 

 

 

 

「くそ、あいつ何やってるんだ!」

 

焦りに満ちたトグサの怒声が響く。真っ暗なアパートの一室から作戦の様子を固唾を飲んで見守っていた2人だったが、突然の出来事にさすがの彼らも驚きを隠せなかった。何の前触れもなく急に灯った明かり。しかもそれはタチコマのすぐ真下の部屋のもので、順当に考えればタチコマが気づかれてしまったと考えざるを得ない。

 

時間的にはあと数十秒足らずでウイルスの注入は完了する頃だが、潜入に気づかれてしまえば元も子もなかった。すぐにでも、タチコマを退却させなければならない。

 

しかし、何を考えているのかタチコマはまだアンテナに取り付いたままだった。窓から漏れる光を見れば、タチコマも明かりに気づかないはずはない。なのになぜ、残り続けているのだろう。もしかして、ギリギリの最後まで粘ろうと考えているのか。だとしたら、すぐに止めさせなければ。

 

極度の焦燥の中そう考えるトグサだったが、電通を繋げることができない以上、ここで指を咥えて見ていることしかできなかった。だが、一方のバトーは冷静に望遠鏡を覗くと、明かりの灯った部屋の様子を探っている。もしかすると、タチコマが気づかれたわけではないのではないか。彼はそう考えていたのだった。

 

そしてそれは、見事に的中することとなる。

 

「やっぱりだな。トグサ、覗いてみろ」

 

部屋を確認したバトーはそう言うと、トグサに望遠鏡を代わらせる。落ち着かない様子で覗いた彼は、思わず「あ…」と小さく驚きの声を漏らした。

 

何と、その部屋にいたのは6課の人間ではなく、武田氏本人だったのだ。一度、見本市の会場で顔を見てはいるので、間違いはない。すなわち、明かりはタチコマとは無関係に、彼がつけたものだったのである。

 

武田氏はパジャマ姿で寝付けないというような様子で、何度か部屋の中を行ったり来たりしていた。そうしてしばらくそれを繰り返すと、おもむろに立ち止まって窓からぼんやりと外を覗く。その顔は、どこかやつれているようにも見えた。

 

「何か顔色悪そうじゃないか?」

 

「ずっと家に閉じ込められてちゃ、まともな人間なら少しずつ気が狂ってもおかしくねえ頃だろうな。それに、一度は殺されかけてるんだ。怯えていても当然ってとこだろ」

 

望遠鏡を覗きながら口にしたトグサの言葉に、バトーはそう返す。間もなく、武田氏は大きく溜め息をついたのち、カーテンを閉めて明かりを消した。

 

ちょうどその時にはウイルスの注入も終わったらしく、タチコマの方に目をやると、アンテナから離れてまさに隣の家の屋根に飛び移ろうしているところだった。念の為、もう一度屋敷の様子を観察してみるが、明かりの消えた後は特に動きはみられない。どうやら、6課には気づかれずに作戦を遂行できたようだ。

 

やがて、通信が可能なエリアまで後退したタチコマから電通が入る。

 

《バトーさん、ウイルスの注入は無事に完了しました!途中で明かりがついたのにはちょっとビックリしましたけど、それ以外にセンサには反応なく、人の動きもなかったので強行しちゃいました》

 

《ああ、見てたぜ。お前の読み通り、明かりが灯ったのはお前とは無関係だ。的確な状況判断、やるじゃねえか》

 

《えへへ》

 

照れ笑いで返すタチコマ。バトーはそのまま彼に、自分たちのいるアパートとは逆方向に退避するよう命令を出す。可能性は薄いものの、万が一6課がタチコマに気づいて監視していた場合、一気に自分たちの居場所まで突き止められる恐れがあるからだ。相手が6課となると、念には念を入れたほうが良い。

 

命令に従い、タチコマが方向を変えて街の奥へと消えていく。その様子を最後まで見届けたバトーは、続いて屋敷の回線の監視に取り掛かった。

 

タチコマの注入したウイルスが正常に起動していれば、もう間もなくトンネルが開通する頃だった。しかし、未だに屋敷からの通信はない。さすがにアンテナ信号にまで6課は監視の目を光らせてはいないと踏んでいたものの、徐々に不安になってくる。

 

それでも、5分ほどが経ったところで、ようやく屋敷内のデバイスから自動通信が入った。

 

「よし、来たな」

 

安堵するバトー。通信には、制圧したデバイスのほか屋敷内のローカルネットに接続するデバイスやユーザー名全ても含まれていた。これを見る限り、ウイルスは一通りのデバイスを制圧し、ルーターやゲートウェイも制御下に置いているようだった。その中には、屋敷内の各所に設置された監視カメラもある。

 

それに気づいた彼は、早速それらの映像を転送させる。武田氏の姿は、先ほど外から見えたのと同じ部屋にあった。まだ寝付けていないのか、明かりは消えているものの、ベッドではなく机に向かってぼんやりと佇んでいる。一方の6課の課員はというと、1人は1階のリビングに、もう1人は先ほど武田氏の姿が見えた3階の部屋の隣にいるようだった。昼間の配置と特に変わりはない。

 

「旦那、トンネルの方の暗号強度も問題なさそうだ。6課の枝がついてる様子もない」

 

「なら、行けるな」

 

別のエージェント・タチコマの助けも借りて、同時並行で開通したトンネルを解析していたトグサから報告が入る。あとは、武田氏本人と電通を繋げるだけだ。幸いにも、ウイルスから送られてきたユーザー名の一覧の中には、武田氏のものも含まれていた。すなわち、ローカルネット経由でアクセスすれば、容易に武田氏に接触を図ることができると考えられる。

 

しかも運の良いことに、監視カメラの映像を見る限りでは武田氏はまだ起きていた。常時トンネルを開ける訳にもいかない以上、彼とは接触できるうちに接触するに越したことはない。つまり、今がまさに絶好のタイミングだったのだ。

 

「今から繋げる。お前は記録とサポートだ」

 

「了解」

 

バトーはトグサに指示を出すと、彼が準備を整えたのを見計らって電通を繋げる。

 

最初に聞こえてきたのは、見本市の会場で見た武田氏とは思えない弱々しい声だった。

 

 

 

《だ…、誰だ?》

 

《あんたが元局長の武田だな。俺は公安9課のバトーだ》

 

《9課…?9課が私に何の用だ…。どうやって、私に電通を繋いだ?》

 

余程困惑しているのか、恐れ慄いたような声でそう訊いてくる武田氏。無理もない。こんな時間にいきなり電通が掛かってきたら、誰も警戒せずにはいられないだろう。しかも、軟禁下に置かれている彼には電通自体、掛かってはこなかったはずだ。それが急に、しかも9課と名乗る男から掛かってきたら、驚くのは仕方のないことだった。

 

《詳しい話は後だ。俺たちはいくつか聞きたいことがあって、あんたに接触している。まずは今の状況を聞かせてくれないか?》

 

《…ああ、分かった》

 

相手の言葉を制すように、落ち着いた口調ではっきりと続けるバトー。こういう時は、まずは相手に冷静になってもらうことが必要だった。そうでなければ、無関係の事を次から次へと喋られてとても会話にならないからだ。

 

《まず、1つ目だ。あんたは今、6課に軟禁されている。そうだな?》

 

《そ、そのとおりだ。もしかして、助けに来てくれたのか…?》

 

バトーの言葉に、武田氏は縋るような声でそう訊いてきた。外から様子を見る限りでも薄々分かってはいたが、これで6課が武田氏を軟禁していたことは疑いようのない事実となった。問題は、その理由といったところか。バトーは少しだけ間を開けて息を吸い込むと、声色一つ変えずに答える。

 

《それは、あんたの協力次第だ。なんで6課に軟禁されるハメになったのか。それを聞きたい》

 

《6課に…?それは…、その…。あれのせいだよ、あれの》

 

《あれ?アレってなんだ。はっきり言ってくれなきゃ、わからないぜ》

 

ここに来て急に言葉を濁す武田氏に、バトーは迫る。

 

《さっきも言ったが、助けるか助けないかはあんたの協力次第だ。俺たちはいま、あるテロ事件を追っている。その延長線上にあんたが浮上したから、こうやって接触を図っているんだ。役に立つ情報が出せないんなら、残念だがこちらも協力はできない》

 

ほぼ脅しに近いようなバトーの言葉に、横からやり取りを聞いていたトグサは「おい!」と声を上げて止めに掛かる。だが、武田氏への効果は絶大だったようで、「待ってくれ!」と必死に呼び止めてきた。

 

《どうだ?話す気になったか?》

 

《あ…、ああ……。詳しくは長くなるが、戦時中の沖縄絡みの一件だ。去年あたりから、頻繁に私のもとに脅迫状が来るようになったんだ。その件を世間に明らかにしなければ、命はないと…。最初のうちは相手にしなかったんだが、次第に本当に命を狙われるようになった》

 

《そのうちの一つが、この間の見本市襲撃事件ってわけだな?》

 

《ああ…、そうだ。あれは、本当に堪えた…。それで、まあ、現局長の浅沼君に、その一件の公開について相談してみたんだよ...。そしたら…》

 

《急に黒服の男たちが来て、この屋敷に軟禁されたって訳か》

 

事の顛末は思ったよりも単純だった。彼は襲撃を受けるのに耐えかねて、要求に屈することを選んだのだった。だが、外務省がそれを黙っているはずはない。浅沼局長か、6課か。どちらが主導的な役割かはまだ分からないものの、その情報が明らかにならないよう武田氏を軟禁したのだろう。消すことまではしなかったのは、しばらく落ち着かせれば考えを変えてくれると思ったためかもしれない。

 

何はともあれ、これで軟禁の件については明らかになった。だが、果たしてその脅迫状を送りつけてきた人物とは何者なのか。自分たちが追っている、例のウイルステロ事件の犯人と同一なのだろうか。同時に浮かんでくる疑問に、バトーは本人を刺激しないよう静かに訊く。

 

《その脅迫状を送りつけてきた人間に、心当たりは?》

 

《手紙には差出人もなかった。メールも、6課がデータを持っていったが、送信者が分かったのか定かでない。でも、たぶん、あれは…。あれは、奴の仕業だ…》

 

電通越しでも、次第に彼の息が荒くなっていくのが聞こえる。よほど、怯えているのだろうか。

 

《奴って、誰のことだ?》

 

《や…、奴は奴だ!た、助けてくれ…。あいつは死んだはずなんだ!奴は幽霊か化け物なのか!?お願いだ、なんとかしてくれ!何でも教えるから…》

 

急に興奮して、必死の剣幕で訴えかけてくる武田氏。バトーは「落ち着け!」と声を掛けるものの、しばらく彼の呼吸は荒いままで、ヒューヒューという過呼吸に近い息の音が聞こえる。

 

死んだはずというのは、どういうことなのだろう。一度、死亡確認がなされたということなのだろうか。謎は深まるばかりだった。だが、すっかり感情が昂ぶってしまった武田氏は、恐怖に慄いて「助けくれ…、助けてくれ……」とブツブツと小声で呟くだけで、こちらが話しかけても何も聞こえていないようだった。

 

こうなると一度落ち着くのを待って、改めて連絡を取るほかない。それでも、この短時間の間にここまでの情報が得られただけで大きな収穫だった。ただここで監視を続けていただけでは、これらの情報は絶対に得られなかっただろう。

 

場合によっては、課長と掛け合って彼の救出を考えてみてもいいかもしれない。バトーはそう考えていた。今は興奮してあまり聞き出せなかったが、おそらく彼は脅迫状を送りつけてきた人間の正体も知っていると思われた。だとすれば、例のウイルステロの犯人に繋がる有力な手掛かりが得られる可能性が高い。

 

《分かった。今日はもうこれで十分だ。近い内に必ず、あんたを救出する。それまで、6課には悟られないよう行動してくれ、いいな》

 

そのバトーの言葉には、ずっと独り言を呟いていた彼も反応する。

 

《た、助けてくれるのか…?たのむ、早く助けてくれ…。亡霊なんかに、殺されたくない!》

 

必死の叫びだった。バトーは「ああ、勿論だ」と力強く答えると、電通を切る。

 

外務省が彼を軟禁してまで隠す沖縄絡みの出来事と、それを公表するよう迫る脅迫犯。そして、襲撃事件とウイルステロを起こした首謀者。氷が溶けるように徐々に明らかになる真実が、欠けたピースを少しずつ埋めていく。

 

そのことに興奮を覚えるバトーだったが、未だに重要な部分が抜け落ちていた。それらがどう関係し、結びついているのかということだ。もし武田氏がその間を埋めるピースを握っているのだとしたら、何としてでも手に入れなければならない。そして、この血生臭いテロの連鎖に終止符を打つのだ。

 

バトーはそう強く自分に言い聞かせた。

 




変わり種です。少し前ですが、2020年の攻殻新作公開発表来ましたね!昨年の新作制作発表から全く音沙汰なく少し心配でしたが、進展していて本当に良かったです。監督も神山監督でタイトルも「攻殻機動隊 SAC_2045」とSACシリーズの続編らしき雰囲気が。これは2020年を楽しみに待つしかないところです。ネトフリ配信なので観るには登録するしかなさそうですが。
2018年も残すところあと1日ですね。皆様、良いお年を。
最後に申し訳ないですが、論文に忙殺されているため次回の更新は2月頃になる見込みです。何卒ご了承をください。

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