あと、あの作品のキャラがルイズに召喚されました、の避難所のほうにも同じものを投稿してあります。
ブリミル暦6243年、ハルケギニアは未曾有の危機にさらされていた。
無能王ジョゼフ一世の命によって大国ガリアの軍勢が聖国ロマリアに突如侵攻を開始したのだ。
ロマリア軍はこれを迎撃、しかしジョゼフの側近シェフィールドの率いる巨大装甲ゴーレム・ヨルムンガントの猛攻の前にはかなわなかった。
ロマリア危うし! この危機に聖女ルイズと水精霊騎士隊も立ち向かうが、ヨルムンガントは圧倒的に強力であった。
そんなとき、平賀才人はジュリオからロマリアの地下墓地に隠されたガンダールヴの『槍』を託される。
「こ、こいつは俺の世界の!」
「そう、君の世界のものさ。僕らロマリアは聖地に召喚されたガンダールヴの『槍』。つまりその時代の最強の武器を極秘に収集している。すごいね、鉄の道の上に鉄の車を走らせるなんて、僕らじゃ想像もつかないよ」
「武器? ああ、確かにこりゃ武器かもな」
才人にとって、それは記憶に新しい出来事であった。
彼が召喚される少し前、平成28年に突如東京に出現した巨大不明生物。自衛隊のあらゆる攻撃を寄せ付けない圧倒的な力を誇るそれを倒すために、自衛隊は巨大生物災害対策本部の矢口プランを元に、一世一代のどんでんがえしたる「ヤシオリ作戦」を展開した。
そして、その中で巨大不明生物に対して奥の手として繰り出された必殺兵器こそが、この。
「これはガンダールヴである君のものだ、準備はできてるよ。あとは君の好きにしたまえ」
「ああ、好きにさせてもらうぜ!!」
しかしその頃、ルイズと水精霊騎士隊は大ピンチに陥っていた。
「エクスプロージョンが効かない! なんで? 前は破壊できたのに」
「あっはっはっ! バカな小娘だねえ。装甲に焼きいれを施してあるのよ。あんたの虚無でもこいつはビクともしないわ」
起死回生にと放たれたルイズの虚無も、ヨルムンガントの新装甲にはばまれて通用せず、シェフィールドの高らかな笑い声ばかりが響いていた。
「ル、ルイズを援護しろ!」
なんとか足止めをしようとするギーシュたちの魔法もまるで効果がない。当然だ、この鎧をまとった全高20メイルの騎士人形ヨルムンガントは一部隊で一国の軍勢を相手にできるよう作られている。学生の魔法ごときでどうこうできる代物ではないのだ。
しかも、主力として戦うべき聖堂騎士団もここにはいなかった。ギーシュたちに命令を残して、どこかに行ってしまったのだ。
「くそっ、街道の出口まで少しでも敵を足止めしろったって、もう限界だぞ!」
「ああ、愛しのモンモランシー、もうすぐ君ともお別れだね。さようなら、さようなら」
「バカ言ってる場合か。くそっ、ルイズをかばいつつ後退しよう、僕たちの役割は足止めだ、全滅じゃない。サイトならそう言うだろうね」
レイナールに言われて、玉砕ムードになっていた水精霊騎士隊は迫り来るヨルムンガントに魔法をぶつけつつ街道を下がっていく。
対して、ヨルムンガント部隊は足元の蟻をなぶるようにじわじわとゆっくりと足を振り上げ、剣を振り下ろしつつ迫ってくる。
泣き喚くルイズをギムリとマリコルヌが抑えてひきずっている様を見てシェフィールドは愉快そうに笑い続けている。
このまま渓谷を出て広い街道に出ればなんとかなるか? いや、広い場所ではかえって不利になるばかりだ。
どうすればいい? 絶望か? このまま逃げ疲れたところで、プチリと虫けらのように踏み潰されるしかないのか?
だが、あきらめかけて街道に出たギーシュたちの前に、信じられない光景が広がっていたのだ。
「な、なんだいこりゃ!?」
「て、鉄の道?」
なんと、街道を埋め尽くすように、こちらに向かって多数の鉄の棒の道、つまりレールが10車線分も並べられていたのだ。
こんなものいつの間に? 驚くギーシュたちに続いて、ヨルムンガントたちも街道に踏み込んでくる。
そして、街道の先から鉄の道に乗って、すさまじい速さで白い何かか突っ込んできた!
『N700系新幹線 (無人運転)』
危ない、避けろ! とっさに身をかわしたギーシュたちのすぐ横を、猛烈な速さで新幹線2両が通り過ぎていき、そのまま進行方向にいたヨルムンガント2体に直撃した。
大爆発。新幹線には爆薬が満載されていたようで、直撃を食らったヨルムンガントはエクスプロージョンさえ花火に見えるような爆発に飲まれて粉々に粉砕された。
「なんだありゃ!?」
「すげえ」
呆然と見守るギーシュたちも爆風で吹き飛ばされそうになったほど、その威力はすさまじいものであった。
だが、その効果に口元を歪ませている者たちは他にもいる。街道を少し離れた丘の上では、望遠鏡でその様を見ていたコルベールが喜びの声をあげていた。
「無人シンカンセン爆弾、効果あり!」
「なんとか間に合ったようで、よかったですな」
コルベールの横で、聖堂騎士団の指揮官であるカルロが土に汚れた顔で言った。
そう、ギーシュたちが時間を稼いでいるうちに、聖堂騎士団は突貫工事で街道に線路を敷き詰めていたのだ。
「ありがとうございます。あなたたちがいなければ、この作戦はありえませんでした」
「礼はいりません、仕事ですから」
ダンディに笑うカルロとコルベールは硬く握手をかわした。
さあ、ここからがクライマックスだ。ふいを打たれたヨルムンガントの残りは混乱して線路上で立ち往生している。
「この機を逃すな! 無人ザイライセン爆弾、全車投入!!」
コルベールの声とともに、線路の先からとんでもない何かが轟音を響かせて突撃してくる。
そう、それこそはあの伝説の!
『無人在来線爆弾 (E233系・E231系電車流用)』
日本人にはなじみ深い、四角い形をした電車が8路線を列を成して突撃してくる。
その先頭車両に乗るのはもちろんこの男!
「行きは特急で帰りは鈍行だぜぇ!」
才人の左手のガンダールヴのルーンが輝き、日本最強の兵器である無人在来線爆弾を操る。いや、有人ガンダールヴ爆弾と呼ぶべきか。
各車両にはもちろん爆薬が満載。ロマリア中から集められたありったけが詰まっている。
たかが列車とあなどってはいけない。列車は陸上における最高の物資輸送手段であり、各路線10両編成で8路線分の車両に積み込まれた爆薬の総量は、なんと2000t以上。これを上回る破壊力を持つ兵器は核しかない。
ヨルムンガント部隊はやっとシェフィールドが我に返ったものの、もう無人在来線爆弾は足元まで来ている。
勝った! 皆がそう確信したとき、キュルケがふとつぶやいた。
「でもあれって、サイトが乗る意味ないんじゃない?」
「え?」
コルベールがハッとしたときには時すでに手遅れ。才人はテンションにまかせて突っ込んでいた。
「地球なめんなファンタジーーーーーっ!!」
大・大・大爆発。無人在来線爆弾はヨルムンガント部隊に突っ込んで跳ね上がり、次々に起爆してすべてのヨルムンガントを爆炎の中に呑み込んだ。
「サイトーーーーーーっ!!??」
コルベールやギーシュたちの叫びがこだまする。才人に関する記憶を消していたはずのルイズも、あんまりにもあんまりな光景に記憶が戻ったようだ。
爆炎は天まで届き、ヨルムンガントは一体も残さず影も形もない。すべてが跡形もなく消し飛んでしまっていた。
なんという威力。あの巨大不明生物に対しては転ばせるのが精一杯で物理的なダメージは与えられなかったが、これが日本の総力を結集した超兵器『無人在来線爆弾』の本当の威力なのだ。
しかし才人は……尊い犠牲だった。皆が彼の冥福を祈って黙祷したときだった。
「しぇぇぇーーーーー」
間抜けな声をあげて爆炎の中から才人が吹き飛ばされていくのが見えた。
「サイト!」
皆の顔が喜びに輝く。そのまま妙なポーズで飛ばされていった才人は、飛んでいったタバサのシルフィードに咥えられて無事回収された。
一件落着。ヨルムンガントの壊滅でガリア軍は決定打を失い、戦争は硬直状態を迎えた。
水精霊騎士隊にも平穏な時が戻る。なんとか全員が無事に帰ってくることができた……約一名を除いて。
「まったく何考えてんのよあんたは、”無人”ザイライセン爆弾なのに乗り込んでいくバカがどこの世界にいるのよ?」
「うるせー! でも、あれ動かせるんだってわかった瞬間にテンション上がりまくって訳わかんなくなっちまったんだよ。こう、頭の中に軽快なマーチが流れてきてさあ」
ベッドの上で包帯グルグルのミイラ男になった才人と、もう帰ってきたことを責める気も失せてしまったルイズの怒鳴り合いが仲良く響く。
「でもルイズ、俺は後悔してないぜ。あれは日本人なら当然のことなんだ、未来に向かって突撃するんだ!」
「なにを訳のわからないことをゴチャゴチャと。もういいわ、あんたにはやっぱり薬よりおしおきが必要なようね! 覚悟なさい」
「げっ! ル、ルイズ、俺はけが人だぜ。む、鞭はかんべん。おしおきは今すぐより退院後に限るぜ」
「ふぅ……やっぱりご主人様の躾が足りない使い魔はダメね。うん」
ルイズのにこやかな笑顔、そして響いてくる才人の悲鳴。それを病室の外で聞きながら、ギーシュたちは揃って笑い声をあげるのであった。
終