野蛮な男の生きる道(第3話までリメイク済)   作:さいしん

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変わらない信条、というお話



第137話 強さの最小単位

「はぁっ.....ふぅっ......何で付いて来てるんですか?」

「肩で息してる人に言われたく無いわよん」

 

痛む傷を押してまでレインに会う理由は何か。

地下牢を閉ざす重い扉を開ける恭一の後ろには、楯無の姿が在った。

レインが収容されている牢屋の手前で息を整える恭一。

 

「ふぅ......居ても良いっスけど邪魔しないで下さいよ?」

「はーい♪」

 

カツカツと足音を鳴らし、鉄格子の前までやって来る。

 

「傷の具合はどうですかい」

「オメェは......渋川か?」

 

ベッドの上でボンヤリしていたレインが、声の主に顔を向ける。

 

「束姉ちゃんの開発したナノマシンですからね、アンタの傷も直に全快しますよ」

「......オレはオメェらの敵だぜ? 情けを掛けたつもりか?」

 

どうやらレインは自分を治療した事に不満があるようだ。

 

「情けついでにアンタの正体を知っているのは俺と楯無先輩、そして織斑先生に山田先生の4人で打ち止めだ」

「あ゛ぁ?」

 

どういう意味だ?

 

「他の奴には話さねぇってこった。無論、アンタの恋人にもな」

「テメェッ!! あぐっ......っ......!」

 

急に叫んだせいで、傷口が開くがそれ以上に、恭一の言葉はどうやら彼女のプライドを大きく刺激したらしい。

 

「ふざけんなよガキが! 何様のつもりだ、あ゛ァ!? テメェみてぇなクソガキがオレ

を憐れんでやがんのか!?」

 

アリーナで闘り合う前からそうだった。

コイツの眼が何故か気に入らなかった。

その理由が何となく分かったような気がする。

 

「スカしやがって!! テメェにオレを―――」

 

レインはベッドから這い出て、鉄格子の前に来ては更に声を

 

「吠えるな」

「ッッ!?」

 

悪魔的な、言の葉なのに寧ろ暴圧。

 

「あ......う......」

 

レインよりもボロボロな状態の恭一に、氣だけで圧倒されてしまい、言葉が続かない。

 

「俺達が生きてる地球には一体何億、何兆の生物が存在してるんだろうな?」

「......急に何の話だ?」

 

いきなり話が飛んだようで、先が見えてこないレイン。

 

「ククッ......なに、簡単な話だよ。この地球上、全生物の生殺与奪は俺にあるって事だ」

「はァ? オメェ頭イカれてんのか?」

 

常識ある高1が真面目な顔で話して良い内容じゃねぇ。

小学生ですら躊躇う程、幼稚な妄想だ。

 

(一体、何が目的だコイツ......)

 

困惑するレインを余所に恭一は続けていく。

 

「ライオンより北極熊より癌細胞より俺の方が強ェ......そしてISを刃とするお前達よりもな」

 

(眼がマジだ......コイツ本気で言ってやがる)

 

「世界の頂きに居る奴ってのはよォ、何しても良いんだよ」

「何してもだァ?」

「何者かを殺傷するも、愛でるも自由。相手が受け入れようが拒否しようが無関係。条件に一切左右されやしねぇ。自らの意志を希望む通りに実現させる事が出来る」

 

―――それが世界の頂点に立つ者にのみ、許された地上最強の我侭

 

「それを持ってんのが、テメェだってのか? どんだけ傲慢なんだテメェはッ!! 神にでもなったつもりか!?」

「神じゃねぇ......地上最強の生物だ。間違えんなよ」

 

駄目だコイツ。

マジで狂ってやがる。

コイツはオレを試そうだとか、冷やかそうだとか、そんな事は一切思って無ェ。

マジで自分が世界で一番強ェって思ってやがる。

 

畏怖い程伝わってくる一点の翳りすら無い自負心。

0が0であるように、黒が黒であるように。

目の前の少年からは己こそが最強だという想いに、一切の揺らぎが感じられない。

レインはアリーナで闘り合った時以上に、恭一に恐怖した。

 

「俺を否定したけりゃ簡単だ。俺に勝ってみろよ。俺を跪かせてみろ。俺を敗者にしてみろ......何なら今からもう一度、闘るか?」

「......闘らねぇよ」

 

今度闘ったらオレは殺される。

そんな未来が見えてしまったレインに抗う気力など、もう無かった。

 

.

.

.

 

「スコール・ミューゼルにはもう連絡してある」

「......えっ?」

 

これから話す内容こそ、恭一の本題だ。

 

「10日後の修学旅行で『亡国機業』と決着を付ける。その後になるが、アンタは自由の身になるな」

「自由......? どういう意味だ?」

 

まるで伝わってこない。

 

「スコール・ミューゼルが倒れりゃ、アンタはどうするつもりでいる?」

「オレは......」

 

自由だと言われても、そんな事今まで考えた事など無かった。

オレが叔母さんに従う理由。

腐りきったこの世の中を、狂ったこの世界を切り裂くため。

しょうも無ェ世界に嫌気を差したオレの我侭。

ISを持ち、力を持ったオレの我侭。

 

仮にスコール叔母さんがコイツに敗れたとして。

 

(コイツの我侭に負けたオレはこの先、何を目的に生きていけば良い......)

 

「道は無限大だぜ? ダリル・ケイシー」

 

いつの間にか下を向いていたレインは、はっと顔を上げる。

 

「このまま『亡国機業』に依存するも良し、目の前の気に入らねぇ色男にリベンジ咬ますも良し、残りの学園生活を謳歌するも良し......ってな」

 

オレは―――

 

「18の小娘が勝手に終わってンじゃねぇ。これからだろうがよ」

「......オメェほんとに15のガキかよ?」

 

コイツ、年齢詐称してンじゃねぇか?

 

「実は最近16歳になりまして」

「そう云う事、言ってんじゃねぇよッ!!」

「おお、ナイスツッコミ」

 

し、しまった。

何てベタなツッコミしちまったんだ。

 

「う、うっせぇな!! 用が済んだらとっとと出てけよ!」

「んじゃあ、そう云う事で......養生しておくんなまし、ウヘラヘラ」

 

奇妙な笑い方しやがって。

ホントにムカツク野郎だ。

 

 

恭一の姿も消え、再び静寂が訪れた牢屋内。

 

「狂った世界を壊すつもりが......それ以上に狂った奴が居たもんなぁ」

 

あんな奴、逆立ちしたって勝てやしねぇ。

強さとかの次元を超えてやがる。

少なくとも、あんな天然記念物に会った事は今の今までねぇな。

大丈夫かねぇ、スコール叔母さん。

 

「まずは傷を治して、その後は―――」

 

その後は―――

 

直ぐには考えつかねぇが、1つだけ。

 

「取り敢えず、フォルテに逢いてェなぁ」

 

本心から出た言霊が部屋の隅々に、緩やかな余韻を残した。

 





この考え方だけは1話から変わらないしぶちー。
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