ブロロロロロロロロロロロロ ロ ロ ロ ロ ロ …。
横須賀港に一機の二式水戦が降りてきた。といっても、艦娘用の小さいサイズだ。
「来たわ!」と、赤城が回収に向かう。
「赤城さん。その機体は…。」
「あっ、これは瑞鶴の機体ね。」加賀の言葉に、赤城はそっと返した。乗っていた妖精さんが赤城に声をかける。
「…えっ?」
コンコン!
「どうぞぉ!」
執務室で書類を作成していた柏木提督のところに、赤城と、前線に復帰したばかりの加賀がやって来た。
「おや、加賀じゃないか?体の具合は大丈夫かい?」
「ええ、体調は万全です!提督、先日のご無礼をお詫びいたします。申し訳ございませんでした。」加賀は提督に向かって頭を下げた。すると、「まぁ、あれだけ大きな戦闘だったんだ…。無理もない。君の妹が大怪我をしてずっと、君が看病していたのを赤城から聞いているよ。」という提督の言葉を聞き、加賀の顔は真っ赤になっていた。「ところで、ここへ来たのには理由があるだろう?」と、提督が二人に聞く。「はっ!提督!敵の偵察に向かっていた部隊から緊急電です。」と、赤城が説明を始めた…。
「…なるほど、182と書かれた船体に。大きなマストと一門の砲台、そして…艦尾の航空甲板…。」
「そこに、我が海軍旗を掲げているのにも関わらず、見たこともない加速、旋回性能であったそうです。」と、提督のと言葉に加賀が付け足す。すると提督は立ち上がり、窓の外を見ながら「…しかし、草加が行方不明になった上に。不明艦が出現するとは…。」と呟く。
「敵の偽装艦でしょうか?」
「ですが、赤城さん。仮にそうだとしたら、私たち身内の中にも敵がいる可能性が…。」
三人はしばらくの間沈黙した…。
「私たち…。いや、この横須賀鎮守府の中に敵が忍び込んでいる可能性も否定はできないが…。俺は、君たちを信じている!」その言葉を聞き、赤城と加賀は「はい!!」と、提督に敬礼する。「この件についてだか、まだ秘匿にしていてもらいたい。先日の戦闘が終った直後だ。余計な混乱を招きたくない。」
「わかりました。」赤城と加賀はそれぞれ了解の返事をした。だか、執務室の扉の外で聞いている人物がいた…。「まさか、その船って…。」
その頃…海上自衛隊のみらいの艦内では隊員達が昨夜の戦闘について話していた…。
「いや~訓練をしていたからとはい、魚雷が来たときはアドレナリンがぶわっ!と出るかと思ったけど…。思ったより冷静だったねぇ~。」
「そりゃ、CICの中にいれば冷静になるわ~。実際に魚雷を見た訳じゃないんだから。」
「俺なんか、艦橋に居て魚雷を生で見たから。実際に足が震えたぜ…。」魚雷のことで盛り上がる中、
「そういや、米倉はどうなった…?」
「ああ、あのあと菊池砲雷長にこっぴどく叱られてよ、しばらくの間1週間CICに立ち入れないっう謹慎処分だってよ。」米倉の処分内容を聞いてしばらくの沈黙が流れた。「…ただ、今回と同じような事がまた起こるかも知れないですよね。」
「ああ、勝手にアスロックを発射した米倉は悪いが…。あいつと同じ立場なら…。俺も撃つだろうな。今度は、スタンダードで…。」
その頃格納庫では、角松 尾栗 菊池 桃井 の四人が草加少佐の今後について話し合っていた。
「皆、昨夜の戦闘で浮き足立っている…。アスロックの誤射で助かったとはいえ、ここで新たな戦闘が起これば何が起こるか分からない。」
「要するに、米倉の行為は怪我の功名ってか?」菊池の言葉に尾栗が冗談ぶって話す。「軍隊に怪我の功名など、あってはならんことだ!」尾栗の言葉に菊池がキレかけていると、「このまま横須賀に帰港するとしても、この状況じゃ難しいだろう…。それより、草加をどうするか?このまえま軟禁しておくにも、狭い船の中だ。桃井一尉だけには任せっぱなしにはイカンな。」草加の事を角松はずっと気にしていた。
「いいじゃねぇか!この際、うちら海自と彼方さんの情報を交換しようじゃねえか!どのみち、支援を受けるとしたら日本しかないだろう!」
という、尾栗の意見に菊池は警告を出した。
「尾栗。それをやると、この艦が危機的状況になるぞ!」「なんでだよ!」反論する尾栗に、
「この船の事を海軍に伝えれば、軍はみらいを拿捕しに来るだろう…。それでなくとも作戦に協力せよ等と、条件をつけてくるはずだ。ましてや、奴の鞄と階級を調べたところ…。あれは、明らかに大卒の通信士官。おまけにあの年齢で少佐と言うことは、相当なエリートであることは間違いない。奴が陸に上がったら、本艦の一番の脅威になりかねない。第一、俺はまだ元の世界に戻ることは諦めてなどいない!お前の言う通り、この世界にこれ以上干渉などしたら永久に帰れなくなる可能性もあるんだぞ!」二人の会話を目を閉じて聞いていた角松がふと、口を開いた。
「確かにそうだな…。ところで医務長、草加少佐の容態は?」角松は桃井に草加少佐の容態について訪ねた。
「ええ、体調は順調に回復しています。まだ動くことには制限がありますが、杖を使えば短距離の移動も出来るようになっています。」
「そうか…。」桃井の話を聞いた角松は少しの間沈黙したあと…。
「医務長、すまないが医務室の鍵を貸してくれないか?」「ええ、いいけど…。」桃井は角松に鍵を渡した。すると、無言のまま角松はその場を立ち去った。格納庫から出ていく角松の後ろ姿を見て、「まさか、あいつ…ヤる気か?」と尾栗が呟いた。
パチン!
「ここは?」
「ああ、みらいの資料室だ…。ここには、この戦争の行く末とこの世界の未来がある。見るか見ないかは貴様の自由だが…。」
角松と草加の姿は、みらい艦内の資料室にあった。
「つまり、この船から生きては帰さんということだな。」草加少佐は立ち上がり、一冊の資料を手に取った。「未来を知ることが怖くないのか?」
角松は、草加少佐に訪ねた…。
「生きてることは知ることなのだ…。」
草加少佐が資料室に閉じ籠ってから丸一日…。今だに、草加少佐は資料室から出てこない。
「副長。草加少佐の様子はどうだ?」
「ハッ!資料室に閉じ籠ってから丸一日…。食事を摂らずに水だけで過ごしています。」
梅津艦長は草加少佐の事を気にしていた。
「資料室には、我々が居た世界の歴史が詰まっている。この世界が艦これの世界だと言うことは、航海科柳一曹の話と船務科の隊員が偶然持ち込んでいた艦これの攻略本とアニメの解説本によって、証明された…。だが、草加少佐にとってはこの世界が現実だ。」
「草加少佐に対して私は、未来を知ることが怖くないのか?と尋ねました。しかし、(生きてることは知ることなのだ)と、言いました…。」
すると梅津艦長が…。
「お前がしたことは…。嫉妬…からなのか?」
「…えっ?」
「私自身、艦これの本を見てみてこの世界の仕組みを少しは知ったつもりだが…。明らかに、この戦闘の行く末について記載されている…。彼にとってあの資料室は、パンドラの箱だろう…。あらゆる災いが彼を襲い、彼がすべてを知ったとき、生きていく自信が残っているだろうか…。」
しばらくの沈黙のあと、角松は
「…この世界が、我々にとってはゲームの世界であることを草加は確実に知ります。しかし、私が資室に案内したのは…。我々と同じ認識を持って欲しかったのです!」
「う~ん…。」角松の言葉に梅津艦長は、溜め息混
じりの声を出した。
草加少佐は資料室で、片っ端から資料を読んでいた。
(2016年7月23日 深海棲艦ガダルカナル島へ侵攻、
日本海軍は米軍と共に防衛部隊を派遣し戦闘…。
2017年8月の終息まで、日米合計2万4千人戦死!
11月2日 トラック諸島近海にて、日本の艦娘部隊と激突。赤城 蒼龍 睦月 夕立 暁 霧島 陸奥が大破及び沈…。日本海軍、トラック諸島より撤退し、深海棲艦が南太平洋の制空権を獲得。
11月19日 トラックより飛来した敵部隊により小笠原諸島が全滅!
11月 空襲日本全土に拡大…死傷者5万3千人
12月5日 横須賀鎮守府にて艦娘による特攻部隊設立。一路、トラック諸島へ 。
12月8日 国連にて国連軍の南太平洋派遣が決定。
12月31日 国連の要請により出動した連合軍がトラック諸島の敵部隊を撃破。ミッドウェー諸島周辺へ追い詰める。
2017年9月7日 ミッドウェー諸島での連合軍の戦闘状況が悪化。2万3千人が戦死!
2018年1月20日 使用を禁止されていた核兵器による攻撃を国連が一度だけ承認。
1月28日 米軍機による核攻撃が開始。囮として日本の艦娘部隊が敵部隊の足止めへ。
1月29日13:21 米軍、原子爆弾を投下…。敵部隊は撃破したが、日本の艦娘部隊が被曝するなど重軽傷を負う。
2018年8月15日 サイパン周辺に残っていた深海棲艦の撃破が完了し終戦。荒廃した日本はアメリカと統合し、ジャパン州と名付けられる。 日本国内の政治はアメリカ主導の下、日本は新たな未来を歩み始めた…。)
草加少佐はこの日本の未来を知り、大きなショックを受けた…。だが、戦後の日本の再出発により世界中で日本の技術が認められた。また国連にて日本が主導になり、世界中のあらゆる大量破壊兵器の永久に放棄が承認。各国、日本とアメリカから先に大量破壊兵器を放棄するところをテレビで国際中継を行った。また、国際の士官が各国を訪問。そして、原子力の永久的平和利用宣言を国連の総監が発表した…。
「これが、この国の未来へと繋がる道すじ…。」
日本の未来を知り、涙を流しながら草加少佐は本を閉じた。
(私の32年の人生は、これを知るためにあった!!!)草加少佐は、資料を閉じて天井を見つめていた…。