さて、前回の嵐を突破したみらいは…。まさかのまるゆさんを救助するという展開になりましたが(笑)なんとか横須賀近海へたどり着きました。今回は横須賀鎮守府との話です。
6月17日
みらいは東京湾の入口、三浦半島三崎沖合30キロ地点に来ていた。一般市民からの目を避けるため、東京湾進入及び横須賀の猿島沖合への進入は深夜まで待つこととなっていた。
23:30
「艦長。横須賀鎮守府より入電。貴艦の東京湾進入を許可する。猿島沖5キロ地点にて一旦停船せよ。」横須賀鎮守府から入電した指示を通信員が読み上げる。
「分かった。」と、梅津艦長は頷き…。
CICにて、「横須賀鎮守府から東京湾進入許可が降りた。これより本艦は東京湾へ進入。横須賀鎮守府を目指す。総員、警戒を厳にせよ。」
「機関始動!両舷前進原速!面舵20°」
艦橋では、角松が横須賀へ向けての舵を指示する。
「闇に紛れてやって来いってことだなぁ。この先は船舶の往来が激しくなる。左右デッキに見張りを配置!警戒を厳にせよ!」
尾栗はデッキにいる見張り員に注意を促した。
そして、みらいは静かに東京湾に進入していった。
00:20
「停船目標に到達!」艦橋デッキで、尾栗が叫ぶ。
「右舷前方より、短艇接近!」
望遠鏡で短艇を確認した梅津艦長は、
「うむ。短艇に乗っている軍人は二人だな。吹雪さん。どなたがあなた方の提督かな?」吹雪は梅津艦長から望遠鏡を受け取り確認した。
「左手前に立っているのが私たちの提督です。ただ…。提督の左後ろの方は誰か存じませんが…。」
吹雪の隣で尾栗から借りた望遠鏡で確認していた みらい は、「階級からして身分は参謀だと思います。」と、声をあげる。そして草加少佐が確認する。
(あれは、津田か…!)
「草加少佐?誰だか分かるか?」
「ああ、あれは津田大尉。私の3期下の通信少佐だ。」と、角松に伝える。
「何が起こるか分からん。念のため、エンジンは付けたままにしておくように。」
「はっ!」
角松が梅津艦長から指示を受けたとき、短艇からモールス信号が送られてきた。
「こちら横須賀鎮守府 提督 柏木 淳。貴艦に乗艦し艦長と会談をしたい。許可を求む。」
横須賀鎮守府からの要請にたいし、
「よかろう。左舷に乗降ステップを用意。ただし、乗艦するときは武装を解除せよと通告!」梅津艦長は角松と共に艦橋からデッキへ移動し、
ドドドドド…。
左舷に短艇が到着した。軍服を着た二人がステップを上がってくる。
「横須賀鎮守府提督の柏木です。貴艦の艦長と会談を行いたくやって参りました。なお、私の他にもう1名乗艦させていただきます。」
「国防省 国防海軍通信士官の津田一馬です。よろしくお願いします。」
「海上自衛隊 みらい艦長 梅津三郎です。」
「同じく、みらい副長 角松洋介です。」
(艦娘の子達の話によると、私より3つ上と聞いていたが…。柏木提督、若いな…。もう一人の海軍士官も…。)と、角松の自己紹介の間このようなことを考えていた。
「君はお若いが…何年生まれかな?」
「はっ!平成4年生まれです。」
と、津田は敬礼し微笑みながら話した。
(私の息子より、2つ下か…。)
「ようこそ 我がみらいへ。柏木提督 津田通信士官! 」
ガチャ!
梅津艦長と角松は、みらい艦内の士官室に二人を連れてきた。中に入ると草加少佐の他、吹雪 みらい まるゆ の三名が待っていた。
「柏木提督に敬礼!」
みらい が敬礼の合図をすると、艦娘達は敬礼したが…。草加少佐だけは敬礼をしなかった。
「ここにいる、全員を救助してくださりありがとうございました。」と、柏木提督は梅津艦長に向かって礼の言葉を送った。すると…。
「…いや、我々は漂流してしたり、負傷していた救助者を救っただけですから…。まっ、立って話をするのもなんですから…。どうぞお掛けください。」と、ソファーに案内する梅津艦長。「失礼いたします。」一礼をしてから、二人はソファーに腰かけた。
「梅津艦長。早速ですが、大本営の人間としてあなた方にお聞きしなければならないことが3つあります。」
と、柏木提督が話始めた。
「まず最初に、あなた方の所属と武装について二つ目に、あなた方がこの横須賀に来た理由。三つ目に、この先我々国防海軍に協力することを前提に、この横須賀に留まるのか?」
角松と梅津は黙って聞いていたが、津田の…。
「それぞれ、よい返答を期待しております。」
という、言葉に驚きの表情になっていた。二人の間に数分間沈黙が流れた…。
「我々は、海上自衛隊 横須賀基地所属 ゆきなみ型イージス護衛艦 DDH-182 みらい です。我々の装備については、この会談のあとで艦内を見学するとしましょう。それでも構わないですか?」
その言葉に一旦黙る柏木提督達。すると草加少佐が…。
「艦内見学はこの会談の後でも遅くはない。それよりも現物を見た方が理解しやすいだろう…。」その言葉に津田は納得し、質問を続けた。
コツ コツ コツ …。
廊下では尾栗と柳が歩いていた。尾栗は幹部用作業服姿でいたが、柳は正装を着ており、手には人数分のコーヒーを持っていた。
「おい?お前、給養員じゃないだろ…?何でそんな格好してんのか?」
「他の世界とはいえ、艦これの世界の軍人と会えるのは興味深いことです。敵とは断言できませんが、相手の懐に飛び込んで相手の情報を知ることも大切です。」
「そりゃ、そうだけどなぁ~ 副長に許可は取った
のか?」尾栗は明らかに冷や汗をかいている柳に尋ねてみた。
「大丈夫です。先程、許可は取りましたから。」
「おっと、士官室に着いたぜ。んじゃ、頑張ってこいよ!」
「はっ!柳一曹行ってまいります!」
コンコン!
「給養科、柳です!コーヒーをおぉ持ち致しました」すると、中から角松が扉を開ける。
ガチャ
「コーヒーになります。こちらの砂糖とミルクも合わせてお使いください。」
柏木提督 津田大尉の前にコーヒーを出していく柳。
「吹雪さん達もどうぞ。」
「あっ、ありがとうございます。」
「忙しいなか艦娘の分まで、どうもありがとうございます。」と、柏木提督は柳にお礼の言葉を告げた。
「では、失礼します。」
と、柳は士官室から退出していった。
「…あなた方が、この世界の人間でないことは理解しがたい事ですが…。我々の艦娘達を救助してくださり、こうしてこの場で会うことができた。私はあなた方の情報を信じたいと思います。それを踏まえた上で、あなた方は我々国防海軍と一緒に深海棲艦撲滅に向けた作戦に協力していただきたい。」梅津艦長の話を聞いた柏木提督は、国防海軍に協力してほしいと頼んできた。
「…我々は、あくまで海上自衛隊として行動していきたいと思います。専守防衛…。我々、海上自衛隊はこの言葉を胸に、戦後70年の歳月…。一人の戦死者、一人の外国兵を殺傷せずやってこれました。それは明確な指示系統があったからこそ出来たわけです。ただ、我々は不幸にもその指示系統を失ってしまった…。」と、梅津艦長は海上自衛隊及びイージス艦護衛艦みらい艦長として、思っていることを話始めた。
「我々は、この世界にとって危険な兵器を搭載しています。それは、この世界の結末さえ変えてしまうものであるかもしれません。時空を飛んでしまった我々にとってこの船は…。私たちの故郷であると共に、決して開けてはならぬパンドラの箱でもあるということです。」
「艦長…。」隣で話を聞いていた角松は感心するように声を呟いた。
「みらい艦長…。いや、一人の自衛官として…。日本を守りたい気持ちはあなた方とは変わりませんが、決して他国を侵略せず、人命救助を最優先で行動したいと思います。」
「すると?つまり、あなた方は人命救助を最優先に行動し我々国防海軍に協力する意思はない。と言うことですか?」と、梅津艦長の言葉に対し柏木提督は疑問の声をあげた。
「いえ、我々は人命救助に関してのみあなた方…。国防海軍には協力したい意向です。仮に我々が国防海軍と共同の作戦に参加した際、基本的に我々が持っている近代兵器の使用は自艦防御用でのみ使用し、敵勢力への過剰な攻撃は控えさせていただきたい。要するに我々を攻撃する意思がない限り、こちらから敵勢力へ手は出さないと言うことです。」
会談が終わり、柏木提督らはみらいのデッキに出てきた。東の空を見ると僅かに明るくなり始めていた。
「美味しいコーヒーをありがとう。」
と、お礼を言う柏木提督の横で津田大尉は…。
「今回の会談の内容は大本営に報告させていただきます。状況次第ですが、今後我々の司令部のメンバーと会談していただくことになると理解しておいてください。」
「津田大尉。すまないが、先に鎮守府に戻っていてくれないか?少し、梅津艦長達と話したいことがある…。」
「ええ、構いませんが…。提督も、私と一緒に本日1000より大本営にて定例会議があります。」と、手帳を見ながら津田が話す。
「提督。お先に失礼します。」
と、津田は敬礼をしてから短艇に乗り込み横須賀鎮守府へ戻っていった。
「柏木提督。一緒に戻らなくてよかったのですか?」
角松が訪ねてきた。
「…あなた方が属していたのは海上自衛隊という組織だったそうだな…。」
「ええ…。」
「…この世界の国防軍は元々、自衛隊だったんだ。私はその中の海上自衛隊で勤務していた。」角松は驚いた。なんと、この世界の国防軍は元々自衛隊だったのだ…。
「深海棲艦が出現した2012年の夏…。尖閣諸島を巡る中国との紛争が終わった直後だった…。」
~回想 2013年夏~
2013年7月18日 尖閣諸島魚釣島の南 80キロ
私は第5護衛艦隊 護衛艦[あきづき]の副長だった。尖閣諸島周辺を警戒中だった佐世保の第12護衛艦隊が壊滅状態にあると連絡を受け尖閣諸島へ向かった…。
「本艦前方28000にて交戦中!」
「目標補足!発射管制は自動モード!」
イージス護衛艦[こんごう]汎用護衛艦[あけぼの][ありあけ] 共に戦闘海域へ突入する[あきづき]
「短SAM発射始めぇ!」
[あきづき] の砲雷長が叫ぶ!
敵の航空機や艦隊への攻撃は順調に進み…。あと少しで敵艦隊を撃破するところまで行っていた…。しかし、突如CICから一報が入った。
「左舷後方より魚雷!接触まで10秒!」
「なに!?」
「機関最大戦速!総員、衝撃に備え!」
退避行動を指示した直後…。非情な事に、敵の魚雷が機関部に命中した。
「…うっ。ぅぅ………。」
「副長!」
柏木が気づいたときには既に脱出ボートに乗っており、目の前には炎に包まれながら沈没していく[あきづき]の姿があった…。
「全員…。脱出出来たのか…?」
柏木が同じボートに乗っていた隊員に尋ねると…。
「魚雷が機関部の燃料タンクに命中し…爆発…。機関部は全滅し…。火災は消火不能。我々が最後に あきづき から離れましたが、全員が脱出出来ませんでした。弾薬庫に引火したと思われる爆発で数隻の脱出ボートが転覆…。近くは漏れでた燃料で火の海になっています…。」
「そうか…。」
この戦いで我々第5護衛艦隊は全4隻のうち
[こんごう]中破 死者11名 負傷者52名
[あきづき]撃沈 死者96名 負傷者118名
[あけぼの]大破航行不能 死者37名 負傷者73名
[ありあけ]小破 負傷者3名
我が、護衛艦[あきづき]は乗員245名のうち、死者96名負傷者118名を出してしまった。その他の残った護衛艦も甚大な被害を受け、この戦闘では自衛隊敗北となってしまった。
「その戦いから奇跡的に生還した私は内地に移り、しばらくの間防衛省で勤務していた。その間に政府は自衛隊の再編成を行い、今の国防軍になった。そして、彼女たち艦娘が生まれた…。」
「そうでしたか…。」
角松は柏木提督の話を聞き、この世界の日本並びに世界情勢が分かった。ふと、海向かいの房総半島から朝日が照らしてきた。
「角松さん。今の日本は、各地に設立された鎮守府にいる艦娘達が中心になって日本を防衛している状態だ。艦娘を使って敵勢力への先制攻撃を行うことがあるが、俺はその行為には反対だ。何せ、俺は元自衛官…。専守防衛を目的として設立された部隊の軍人だ。ホントは、先制攻撃なんぞしたくはないんだがなぁ…。」
と、柏木提督は朝日に照らさせる海を見ながら呟いた。