ジパング×艦これ ~次元を超えし護衛艦~   作:秩父快急

27 / 94

 さて前回、草加少佐が今後の行動を判断し山本司令長官に具申している頃。南鳥島沖合いでは調査船[かいれい]が異変を察知していた。今回の話は、深海棲艦とは何なのか?この世界に深海棲艦が出現した頃のお話です。



航跡22:人類と深海棲艦 前編

 

東京都沖ノ鳥島近海

 

日本海洋研究開発機構の調査船[かいれい]が無人探査機[かいこう]を使い日本海溝の調査に当たっていた。無人探査船から送られてくる映像は、船内の調査室で解析されていた。部屋の壁は、二人の写真が飾られていた。深海棲艦が登場する2年前、有人深海調査船[しんかい6800]が日本海溝の深さ4950メートル付近で地震研究のデータ採取をしていた際、突如海流が乱れケーブルを切断。そのまま行方不明となる大事故が発生していたのだ。写真は、その事故で亡くなった浦田 勝人技官と米蔵 平次技官の遺影だった。事故の詳細な原因は不明だが、事故発生5分前の映像に亀の甲羅のような楕円形のものが見え、青白く光る炎が映ったのを最後に連絡が途絶えた。有人深海調査船で事故が発生した影響で当面の間、無人深海探査船での調査が進められていた。事故があった海域では、一時調査が中止されたが近年再開され今に至っている。

 

「…ん?なんだこれ。」モニターを見ていた調査員が疑問の声をあげる。班長らしき眼鏡を掛けた人物が「カメラを少し下げてみろ。近くじゃよくわからん。」と、指示をする。徐々に、周りの風景が明らかになってくる。深海には多数の甲羅ような…。人の帽子のような…。楕円形の物が多数転がっていた

。「なんだこれは…?」班長が疑問の声をあげる。

 

「まさか…。深海棲艦の墓場…?」

 

一人の調査員が話した通り、見つかったのは深海に眠る遺跡などではなく…。深海棲艦の墓場と思われる。楕円形の物が散乱した場所だった。

 

 

日本海洋開発研究機構からの情報により、海上保安庁横浜海上保安部の巡視艇PL-01[のじま]とPL-66[しきね]が調査へ向かった。

 

「岸田一等保安監…。[かいれい]からの情報は本当でしょうか…?」

「分からんな…。現物を確認しないことには断定できん。」と、巡視艇[しきね]船内で岸田一等保安監と伊達三等保安監が話し合っていた。[かいれい]からの報告を受け、父島近海でパトロールをしていた[のじま]と[しきね]に本部から調査命令が出ていたのだ。

「しかし、なぜ我々海保が…。この案件、普通だったら国防海軍が調査するはずじゃ…。」と、伊達が不思議な顔をしながら岸田に尋ねる。すると、

「海軍の知り合いによると、今はマリアナを防衛ラインとして深海棲艦との戦闘をしているそうだ…。正確な情報じゃないんだ…。余計な事に首を突っ込みたくないんだろう。」と、岸田は海を見ながら話す。その頃、もう一方の巡視艇[のじま]では米森一等海上保安監が届いた通報を元に現状をパソコンで整理していた。

「米森さん、コーヒーです。」と、部下の保安監がコーヒーを持ってきた。「おっ、サンキュー。」と、米森はお礼を言いコーヒーを飲む。パソコンには、本部から寄せられた通報内容が表示されていた。米森は沖ノ鳥島近海での過去の通報及び調査データを調べていた。

[2011年沖ノ鳥島近海 海底における地殻変動についての考察]

パソコンにはそう記載されていた。

「米森一等保安監、何ですかこれ?」と、部下が尋ねるが米森は…。「あぁ、前にも似た事があってな…。その時は海底の地殻変動だったんだ。」

米森一等海上保安監が見ていたのは、深海棲艦が現れる一年前に沖ノ鳥島近海で観測された群発地震についての気象庁発表の資料だった。2011年8月、沖ノ鳥島近海を震源とする群発地震が発生し、最大震度3程度の地震が1ヶ月半程続いたのだ。その群発地震から3ヶ月程が経ったある日、沖ノ鳥島近海で、パナマ船籍の石油タンカーが何者かに襲撃される事件が発生していたのだ。その後、数々のタンカーや商船が何者かに襲撃され一部は沈没する等…。不審な出来事が多発し、遂には伊豆半島周辺海域まで事案が北上した。そして、2012年10月ハワイ沖合に深海棲艦が出現する数日前に静岡県東伊豆町にある稲取温泉が何者かに海上から砲撃されたのだ。この事件の直後に深海棲艦が出現し世界は大混乱となったのだった。米森は静岡県警から提供された、稲取温泉砲撃事件の資料を開いた。資料の写真には砲撃によって破壊された伊豆急稲取駅の他、観光客が携帯カメラで撮影したと思われるピンボケの写真があった。

「米森一等保安監…。これって。」

「あぁ、ピンボケで少し見にくいが…。深海棲艦と断定していいだろう…。」

二人が見た写真には、明らかに深海棲艦の駆逐艦が写っていた。深海棲艦出現に伴う混乱で、静岡県警による捜査は進んでいなかったが…。あの事件は、深海棲艦によるものだと米森は確信していたのだ。

「最初は、某国のテロリストが襲撃したのかと思ったが…。静岡県警の神山警部の言った通りだったなぁ…。」と、話し米森はコーヒーを口にした。

 

 

同日1415 沖ノ鳥島近海 調査船[かいれい]

 

「海上保安庁の岸田です。通報を受け、参りました。」巡視艇[のじま]と[しきね]は通報を送った日本研究海洋開発機構の調査船[かいれい]に到着した。

 

「こちらです。」かいれいの乗組員に案内され、無人探査船の操縦室にやって来た。バッテリーの関係から無人探査船は現在引き揚げ中との事だったが、問題の場所はビデオカメラで音声と共に録画されていた。乗組員がビデオを再生すると、最初は深海に棲息する魚や海老が表示され深度2520メートルと表示されていた。「すみません、編集途中なもので…。問題のところまで早送りします。」と、乗組員がリモコンの早送りボタンを押した。早送りの映像には深海の生き物の他、海底の様子が映っていた。

 

「ここです。」

 

と乗組員が再生ボタンを押し、映像は通常のスピードになった。録画開始から1時間半…。モニターに奇妙な楕円形の物が映し出された。

「どう見ても…。自然界の物じゃないですね。」

と、伊達が呟く。

「まさか…。深海棲艦の墓場…?」

「よく観察してみろ!」

等と、映像と共に録音された音声は事態の緊迫さを証明していた。

「岸田一等保安監。これは国防海軍に伝え、状況を確かめる必要があると思います。」米森は緊迫した様子で岸田に具申した。

「いや、この調査地点のより詳細なデータが欲しい。調査データを見せてくれ。海軍に伝えるかは、調査データを見てからだ。」岸田はそう話し、[かいれい]クルーに現場の海域の調査データを持ってこさせた。

 

資料室からは、5年前に調査した際のデータが残っていた。データにはこのような多数の楕円形の物体があるとは記載されていなかった。岸田は本部に問い合わせ調査を続行するか尋ねた。すると、本部からの要請は意外なものだった…。

「…海洋調査船[かいれい]に告げる。貴船は、当海域での調査を中止し父島二見港へ入港せよ。父島にて国防海軍 父島分遣隊による詳細な調査を行う。」岸田は本部からの連絡を受け、[かいれい]の船長に伝えた。

「父島までの防衛は我々、海保が行います。先頭から[のじま][かいれい][しきね]の順に船間距離1000で縦に並んで航行してください。」

と、岸田は指示をした。続いて、米森と伊達にも指示をする。「米森、[のじま]が先陣を切って航行する。露払いは頼んだぞ。私は[かいれい]にて指示を行う。伊達は[しきね]に戻り、後方の安全確認を厳とせよ。」

それぞれ米森と伊達は巡視艇に戻り、海洋調査船[かいれい]を間に挟んだ形で父島へと舵を向けた…。時刻は1745。既に日は、水平線に沈む寸前で西の空から綺麗な夕焼けが3隻を照らしていた。

 

 

同時刻 国防海軍 護衛艦DD-505[たま]艦内食堂

 

海上保安庁から連絡を受け、[かいれい]を迎えに二見港から国防海軍の護衛艦DD-505[たま]が出港していた。その艦内には横須賀鎮守府から出向していた艦娘の[せとぎり]と[ゆうぎり]の姿があった。

 

「あ~あ…。せっかく、父島にバカンスしに来たのにここに来て任務とはナァー。」と、ゆうぎり が艦内の食堂で嘆いていた。

「ゆうぎり姉さん、父島に来たのは哨戒演習のために来たんじゃないですか。バカンスしに来た訳じゃありません(怒)」と、せとぎり が姉の ゆうぎりを叱る。だが、ゆうぎり は反省する様子もなく不満を言いまくる。

「だって、父島良いところじゃ~ん。海はきれいだし、ご飯は美味しいし。おまけに、雷 電ちゃん達は海で遊んでたし~ぃ 」と、同じく父島に来ていた雷電コンビが海で遊んでいたのを机に突っ伏して嘆く。せとぎり は半ばあきれた様子でいた。

「あ~仕事じゃなくて、王子様とか来ないものかなぁ~(笑)」二人が雑談していると…。

 

「お二人さん?どうしたのですか…?」

 

ゆうぎり が声が掛かった方向を見ると…。そこには白馬にのった王子様…。いや、王子様ではなく…。深海棲艦の研究をしており、父島で調査をしていた技術開発センターの矢澄技官が立っていた。

「えっ…。」と、顔を赤くする ゆうぎり。

「あっ、初めまして。初めてお会いする方ですよね?…私は、護衛艦娘の[せとぎり]と言います!あ、あれ…?ゆうぎり姉さん?」せとぎり が ゆうぎり を見たところ…。ゆうぎり は矢澄技官に見とれて固まってしまっていた。

 

パタパタ

 

ゆうぎり の目の前で手を降っても反応しない為、せとぎり が ゆうぎり を紹介した。「す、すみません。なんか、姉が固まって挨拶もしないで…。」と、矢澄に せとぎり は謝ったが「大丈夫だよ。」と、言われ…。間が抜けてる姉の事を恥ずかしく思ってしまった。

 

矢澄技官が立ち去ってから数分後…。

 

「…あーっ!さっきの人は??」と、ゆうぎり が突如大声をあげた。「とっくに自室に戻ったわよ。」と、お茶を飲みながら呆れる せとぎり。

「さっきの人の名前は?どこの所属? もしかして、この船の乗組員?」と、せとぎり に質問しまくる。

「あの人は、護衛艦[たま]の乗組員じゃなくて…。技術開発センターの調査員よ。深海棲艦の事調べてるんだって。」と、話を聞いた ゆうぎり は…。

「こんなことしてる暇じゃないわ。」と言い、走って食堂から出ていってしまった。走り去る ゆうぎり に対して せとぎり は…。

「姉さんのバカ…。」と、少し頬を膨らませながら小さな声で呟いた。

 

それから一時間後…。父島近海に到達した[かいれい]は父島やって来た[たま]と合流し海保の巡視艇と一緒に父島二見港へ向かった。父島二見港は、大型船舶が入れるスペースが本土との連絡フェリー1隻分しかなく分遣隊用の埠頭も中型船舶3隻しか入れない小さな海軍の拠点だった。幸い、フェリーが当日夕方に出港しており、戻ってくるのは5日後とのことで[かいれい]はフェリー用の埠頭に入ることができた。勿論、二見港のフェリーターミナルの一部は海軍の管制下になったが…。そして、[かいれい]内部にあるコンピュータシステムを使い発見された海域の詳細なデータ作成が始まった。

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。