7月18日 0900 国防海軍 マリアナ基地
出港を明日に控えた海上自衛隊のイージス護衛艦[みらい]は、マリアナ基地の埠頭にて食料と燃料の補給を受けていた。弾薬はほとんど消費していなかった為、弾薬の追加はなかった。
「…ええ、この分ですと、弾薬類の補給は127ミリ砲の予備砲弾だけで良いと考えます。」
埠頭で菊池が搭載物品のリストを見ながら梅津艦長と話していた。
「砲雷長、無駄な戦闘は避けたいものだよ。」
「…は?」
「いやぁ…。先日、国防軍総監の沢井氏にお会いしてな。我々は専守防衛を念頭に海上自衛隊として行動して欲しいと言われてしまったよ…。」
と、頭を掻きながら梅津は話した。
「…専守防衛ですか。」梅津の言葉を聞き、菊池は何やら小さな声で呟いた。
「報告!必要物資の補給作業。あと一時間で終了予定です!」と、航海科の尾栗が報告してきた。
「そういえば尾栗、桃井一尉は?」
「桃井一尉は、基地内の病院に行ったぜ。うちらの船で輸送する艦娘達の診察だろう…?洋介…。いや、副長は津田大尉と一緒にどっか行ったぜ?」
「副長と津田大尉が…?」
尾栗の言葉に驚きを隠せない菊池は更に、副長の行動について尋ねた。
「いやぁ、なんか草加少佐の様子がおかしいとかなんとかで…。津田大尉と副長が草加少佐を探しに行ったみたいだぜ。」
同時刻 国防軍 マリアナ空軍基地
コッコッコッ…。
草加少佐の姿はマリアナ基地内の空軍基地にあった。
「おや、海軍さんではないですか?どうしたんです?空軍の整備場に来て…?」と、機体の整備をしていた、第75航空隊 隊長 日々木 剛 が話しかけてきた。「隊長自ら機体整備とは…。機体の調子はどうかね?」と、草加が訪ねる。
「あぁ、ちょっとなぁ。左のなラダーペダルの調子が悪くてなぁ 早く実戦に復帰させたいのは山々なんだが…。」日々木が整備していたのは、航空自衛隊時代からの相棒F-2戦闘機だ。
「こいつとはな、もぅ…。10年来の付き合いなのよ。前線に出るときは必ずこいつだよ。もう、手と足の感覚だけで思った通りに操縦できてしまう。最初は、癖が多くて大変だったが、今じゃ愛機だよ。」と、話してコックピットから降りてきた。整備中とはいえ、F-2戦闘機の洋上迷彩は健在で青色の美しい機体だった。
「ところで、ここに来たのは何か用があるからだろ
?ただ単に、機体を観に来たとは思えんからな。」と、日々木が尋ねてきた。
「あぁ、この基地から東京へ向かう機は…。近く飛ぶかな?」草加はマリアナ基地から東京へ向かう飛行機を探していたのだ。
「無いことはないが、それを聞いてどうすんだ?」
「いや、海軍の参謀が近く東京へ向かうとの事で聞いたんだ。無理だったら輸送機に便乗する形でも構わないが。」草加が尋ねたところ、マリアナ基地~入間航空司令部の間で週に2往復。マリアナ基地~横田航空基地間で週3往復、飛行しているとの事だった。
「整備中に邪魔をして済まなかったな。日々木隊長。」と、草加は微笑みながら答えた。
「いやぁ、特に邪魔とは思わんよ。むしろ、話し相手が出来て良かった。あんたも、今度のガダルカナル島防衛作戦に参加するのか?」日々木は上層部からのガダルカナル防衛作戦の事について尋ねた。
「…。ぇ、ええ。」
不意に作戦の事を聞かれ、草加は少し驚いたが…。
「まぁ、お互い頑張ろうや。」
という日々木の言葉に何やらホッとした様子だった。その頃、角松と津田はマリアナ基地の建物内を歩いていた。
「津田大尉、我々がここを出る前に2つ確認しておきたいことがある。」
「は?なんでしょうか…?」
「敵は生身の生物なのか?それともロボットか?仮に生物だとしたら思考や知能はどうなんだ?」
と、歩きながら角松が津田に尋ねた。
「えぇ、深海棲艦ですが…。我が国防海軍内では一応、生物と仮定していますが…。思考や判断力などは特になく。見つけた船舶や航空機を片っ端から攻撃する。知能レベルは低いと結論を出しています。」
「それは、敵を捕獲して調査したのか?」
「いえ、現時点では敵兵の捕獲には至っていません。本部のスパコンで解析した結果です。」
「では、敵の装備だが…。奴等の物資は何処から手に入れてるんだ?」角松の素朴な疑問に口を止める津田大尉。数秒の沈黙のあと津田は重い口を開けた
。
「…陸海空、全部隊が調査していますが。現時点で、敵の補給地点は不明です。」
「…つまり、奴等のエネルギーは何処から来ているのか分からんと言うことか。」角松は少し残念そうな顔をして話した。
同日 1230 国防海軍 父島分遣隊 庁舎
先日夜に父島に入港した[かいれい]からの情報を元に、父島分遣隊の庁舎で情報整理が行われていた。そこには、[かいれい]のクルーの他に海上保安庁の岸田達。国防海軍横須賀鎮守府から出向していた護衛艦娘 ゆうぎり せとぎり の姿もあった。
「…先日、沖ノ鳥島の南西40キロの海底で発見された多数の楕円形の形状をした正体不明物体について…。これより日本海洋研究開発機構の研究員の方に説明を御願い致します。」と、海軍の隊員が司会進行をする。
「ご指名を受けました。私、独立行政法人日本海洋研究開発機構 巨大地震災害対策研究室 室長 兼 海洋資源採掘・・・。」
~中略~
「えー。今回発見されたのは、多数の楕円形の物体と言うことですが…。発見した物体は、自然由来の物ではなく…。人工的に作られたものだと思われます。こちらをご覧ください。」と、[かいれい]の研究員がプロジェクターで映像を映す。「これは、当該物体周辺の海底をソナーで音波測定し3D映像化したものです。」映し出された映像には幾つもの楕円形の物体が海底で転がっているのが確認できた。
「このデータは、昨日作成したものですが…。こちらも合わせてご覧ください。」と、研究員は次の画像へ変えた。すると、基本的な地形は変わらないのに…。海底の楕円形の物体が消えたのだ。
「おぉ…。」と、どよめく海軍や海保の隊員達。
「今回、未確認物体が確認された海域は…。2年前に地震研究の為海底調査をしていました。」日本海洋研究開発機構の調査によると、たった二年弱の間でここまで地形が変化するのは…。大規模な地殻変動がないとあり得ないということ。そして、このような多数の楕円形の物体が並ぶような事象はこれまで世界各地でも確認されていないという結論だった。
「次に、2年前に発生した我々の深海探査船[しんかい6800]の事故の際に、直前に撮影された映像に不可思議な所があるので見ていただきたい。」
と、プロジェクターでビデオを流し始めた。
2010年 09月15日 AM10:52 深度4950㍍深海探査船[しんかい6800]船内
ゴゴゴゴゴゴ…。
探査船が水圧で軋むなか、[しんかい6800]は、海底で地震研究のためのサンプル採取を行っていた
。
「━[しんかい6800]より[かいれい]へ[しんかい6800]より[かいれい]へ。」クルーの浦田技官が[かいれい]に連絡を取っていた。
「━こちら[かいれい]。[しんかい6800]どうした?」と、母船から通信が入る。浦田技官は…。
「━こちら[しんかい6800]サンプル採取完了。繰り返す、サンプル採取完了。これより浮上体…。」
グオオオオオオオオオオオンンンンンンンン
突如、大きな地響きのあと探査船が大きく上下左右に揺さぶられた。
「うおっ!?」
「な、なんだ?地震か…??」
乗組員の浦田と米蔵が驚く。
ガゴオオオオンン
と、大きな揺れの後何らかの装置が故障したのか船内が非常灯の赤いランプで照らされた。
一方、海上の[かいれい]では特に影響を受けていなかった。
「━こちら[かいれい]、[しんかい6800]どうした?応答せよ!」と、有線電話が鳴り響く。
「━こちら[しんかい6800]。近くの海底で土砂崩れの模様。主電源が切断。補助電源にて航行中。現在、被害の確認中…。」と、米蔵技官がマイクで叫ぶ。ふと、船内を青白い光が照らす…。
「な、なんだこれは…。」
グオオオオオオオオオオオンンンンンンンン
再び、船体が大きく揺さぶられる。
ギギギギィィィィ…。 バツン!!!!
…そこで映像は途切れていた。
映っていた青白い光は、深海生物の弱い明かりではなく…。まるで船の探照灯と同じような強い光だった。
「まさか、この光は…。深海棲艦の…?」と、せとぎり が声を出した。
「ええ情報提供を受けた我々、海保も同じ意見です…。 」と、海保の米森が話す。だが、海軍側は余り信用していない様子だった。
「…しかしなぁ。この青白い光だけじゃ…。判断しにくいな 」単なる潜水艇の単独事故の可能性もゼロではないし…。海軍が判断をためらっていた時、技術開発センターの矢澄技官が声をあげた。
「確かに、この映像だけでは判断しにくい…。しかし、たった2年間の間で大規模な地殻変動もなく…。ここまで、地形が変化するのはあり得ないです。」技術開発センターから来た調査団からは、詳細な分析を具申する意見が相次いだ。「この映像と調査データ…。うちの研究所で解析したいのですが、データを頂くことはできないでしょうか?」という、矢澄技官の一声で国防海軍内部に調査チームが設置された。
翌7月19日 0630 国防海軍マリアナ基地
「出港用意!」
艦内に角松の声が響く。
海上自衛隊のイージス護衛艦[みらい]は新たな海域[ガダルカナル諸島周辺海域]に向け出港した。
先日、負傷した艦娘を横須賀へ送り届けると決まっていたが…。梅津艦長の強い意思と沢井総監からの要請により、激戦が予想されるガダルカナル諸島周辺海域にて救命活動を行うこととなった。この作戦の後、横須賀向かう途中で艦娘達を乗船させることになったのだ。朝日に照らされながら新たな海域へ進む海上自衛隊最新鋭イージス護衛艦[みらい]。しかし、艦内に草加少佐の姿はなかった…。
みらい達、海上自衛隊が動き始める数日前…。国防軍警務隊の吉岡 勉 参謀の姿が、広島県呉市にある呉鎮守府内部の造船ドックにあった。
「これが…。日本初の原子力戦艦。」
目の前には、偽造姿でドックに鎮座する巨大な戦艦の姿があった。その姿はかつて太平洋戦争時に旧大日本帝国海軍が軍の象徴として使用していたある戦艦に似ていた。艦中央の巨大な艦橋の前後に46センチ三連砲に、2門ずつ備え…。側面には小型化された127ミリ連装砲。そして、煙突横に多数設置された対地・対艦・対空ミサイル発射用のVLSにステルス対応のために船体側面に埋め込まれた魚雷発射管。
「参謀、既に必要物資は搭載完了。何時でも出撃可能です。」と、吉岡の部下が話す。
「フッ…。遂にこの日が来たか。全世界を震撼させ、世界最大級かつ世界最強と歌われた戦艦。だが、今の世界では進水式の祝礼や演奏隊の華麗な演奏もなく人目につかず進水する。世界最大かつ世界一不幸な船だ…。」吉岡参謀はその船の艦橋を見上げてこう呟いた。
「戦艦やまと…。貴様よ、この現代世界で暴れてこい。」と…。
だんだん書いてて、話が暗くなってきましたf(^^;
たまには明るい話を入れていこうと思っています!