航跡24:自衛隊の戦い ガダルカナル攻防戦~上陸~
7月21日0900 ガダルカナル島北西250キロ
マリアナ基地から出港した海上自衛隊の最新鋭イージス護衛艦[みらい]はガダルカナル島周辺海域へ向かっていた。艦内では、国防海軍からの情報を元にガダルカナル島での日米両軍部隊の撤退作戦の作戦会議が開かれていた。会議には、みらい幹部のメンバーの他、同乗している艦娘達。そして、国防海軍の津田大尉だった。作戦の総指揮は、みらい砲雷長 菊池雅行 三佐が取り持つことになった。
「…今回の作戦は、ガダルカナル島に駐留する日米両軍の安全確保及び、ガダルカナル島からの撤退を視野に入れた防衛作戦となる。」菊池はガダルカナル島の地図をボードに貼り付け、作戦の概要を説明し始めた。
「現在、ガダルカナル島では国防陸軍第82普通科連隊と国防海軍の偵察部隊及び、アメリカ海兵隊と陸軍の各部隊…。総勢3千200名が駐留しているとの情報が入っている。拠点は、島北部沿岸の町アビアに国防陸軍のレーダーサイトがあり哨戒ヘリの整備場が存在する。」菊池は自身が考えた作戦プランをもとに地図上で作戦について説明する。
「我々の資料では、7月23日の0345に深海棲艦の艦積機によるレーダーサイトと整備場の破壊。続いて0400より北部沿岸に敵艦による艦砲射撃を行われる。いずれも早朝の日の出前からの襲撃となる。指揮系統混乱のため反撃ができず0615にアビアの東10キロ地点に上陸敵部隊による掃討作戦が始まる。」
菊池の話に愕然とする自衛官達…。菊池は淡々と作戦概要を話す。
「我々の目的は深海棲艦を海上へ追い払うことが目的である。現地部隊には我々のことは教えられていない為、行動を誤れば人間同士の戦闘となる可能性もゼロではない。我々の作戦は、ガダルカナル上陸した深海棲艦を撤退させることを第一とする。敵部隊はアビアの陸軍基地を奪いそこを拠点とする。そこへ我々は警告として無弾頭のハープーンミサイルを撃ち込む。」
「ハープーンミサイルを撃ち込むのか…。」話を聞いていた尾栗が菊池の立案に驚く。
「…只し、この作戦には重大な問題がある。」
「その問題とはなんだ…?」と、角松が尋ねる。
「地球測位システム…。つまりGPSだが…我々のイージスシステムとのシステムリンクに不具合が起こっている。レーダーを元に射撃をするのは可能だが…。敵の補給物資にピンポイントで着弾させたい。そうすれば、敵は恐怖心を抱き戦闘どころではなくなるだろう…。」
「上陸前に我々で先制攻撃をするのはどうでしょうか?」と、幹部の一部が意見を出した。だが…。
「敵機動部隊の数は把握されていない。我が[みらい]1隻と同乗している艦娘達の戦力でもかなわない可能性が高い。」と、角松が話す。
「我々の作戦目的は、あくまで救命活動である。そして、我が自衛隊の専守防衛の精神を忘れるな。」
角松に、一喝されその隊員は席に座った。
「今回の作戦で鍵となる敵補給物資へのハープーンミサイル攻撃。GPS誘導が完全に出来ないと仮定した上で、SH-60Jにて上陸し敵基地へ接近。物資に射撃管制用のレーザーを照射しハープーンを着弾させる。リスクは伴いますが、これが最善の策であると具申します。」と、説明を終えた菊池は梅津艦長を見つめた。少しの沈黙のあと梅津艦長は…。
「…リスクは伴うが、作戦遂行には仕方のないことだろう。本艦はガダルカナル東部のマラバ島の北東にて待機し、上陸部隊からの情報を元に射撃を行う。只し、射撃予定時刻は決めておきたい。敵物資への攻撃時刻は現地時間7月24日0300だ。」
梅津艦長の決断で、この作戦が開始された。ガダルカナル上陸部隊は班長を角松とする、尾栗、柳、榎本 の計4名に護衛艦娘のしらね が陸戦装備を身に付けた上で戦闘に参加することになった。
7月22日 2130 護衛艦[みらい]後部甲板
キィィィィィイイイイイインンンンンン
みらい の後部甲板ではSH-60Jが離陸へ向けて着々と準備を続けていた。
「角松君、我々海上自衛隊は陸戦経験が殆どない。おまけに未知の熱帯雨林での作戦行動となるだろう…。敵部隊や日米両軍との接触は極力避けるんだ。難しい任務だと思うが、よろしく頼む。」
と、角松の左肩にポンと手を乗せ梅津艦長は答えた。「それから護衛艦娘のしらねさん…。」
「は、はい!」と、名前を呼ばれ しらね は敬礼する。
「君は皆と違って、艦娘だ。だが私は、君のことを我々みらいのクルー一員だと思っている。必ず帰ってきなさい。」
梅津の言葉にしらねは少しだけ涙を流した。
「では、梅津艦長!行って参ります!総員敬礼!」
角松の声で全員が敬礼する。海軍式に慣れていたしらね は、みらいの正式なクルーであると梅津艦長から言われ…。敬礼は海上自衛隊方式に戻したのだった。
「拘束器具解除。SH離艦します。」
バラバラバラバラバラバラバラ…。
角松達を乗せたSH-60Jは、ガダルカナル島ヘ向けて離艦した。
「姉さん…。どうかご無事で…。」
SH-60Jが飛び去った方角を見ながら みらい は呟いていた。艦娘のみらいは、艤装にイージスシステムを搭載しており、敵艦隊を熟知していること。同乗している艦娘達から慕われていることがあげられた。その為、[みらい]に残ることとなり菊池三佐の補佐を行うこととなった。CICに向かい歩いている途中、艦娘の深雪とすれ違った。
「あれ?みらいじゃん。てっきり、上陸部隊に入っていたのかと思ったよ。」
「私は、この艦でイージスシステムの調整をすることになったの。」
「い、いーじす?」イージスシステムと言われ、いまいちピント来ていない様子の深雪だったが、CICから急ぎで呼ばれているためこの話はまたあととなった。
ガチャ
「みらいです。すみません遅くなりました。」走ってきたのか息を切らしながら話すみらいに、梅津は「まぁ、作戦開始までまだ時間はある。落ち着いて行動しなさい。」と声をかけた。
「SHより報告!行程の3分の1を消費。順調に飛行中。まもなく国防軍のレーダーサイト識別圏内に侵入します。」と、CICの隊員が答える。
ガダルカナル島沿岸部 SH-60J機内
「━こちらみらいCIC。まもなく、国防海軍のレーダーサイト識別圏内に侵入する。高度を低くしレーダーに発見されないよう注意せよ。」
「━こちらSH了解した。」
SH-60Jは徐々に機体を下げ、レーダーに発見されないよう注意して飛行する。
「副長…。ガダルカナルには航海演習で一度だけ来たことがありますが…。灯火管制をしているとはいえ、ここまで真っ暗だとは…。」と、機長の林原が呟く。その言葉に角松が操縦席に顔を出し、前方のガダルカナル島の様子を見た。機内から見える範囲内では島に明かりは一つもなかった。ただ、雲一つない綺麗な夜空の中に月明かりに照らされたガダルカナル島が薄っすらと見えていただけだった。
7月22日 2230
ガダルカナル島 国防陸軍駐留拠点より南に15キロ
ガラッ…。
熱帯雨林の中にポカンと開けた広大な草原にSH-60J
は降下した。角松が周囲の安全確認をすると「総員降下!」という掛け声で陸戦チーム全員が降下した。
「副長、明日の夜迎えに上がります。どうかご無事で!」SH-60Jの側面ドアから柿崎が大声で声を掛ける。「そっちも、見つかるなよ!」と、角松が話した後、SH-60Jは[みらい]へ引き返していった。
角松が鉄帽のライトを点灯させ、チーム全員を集合させた。
「尾栗三佐!」「おう!」「柳一曹!」「はい。」
「榎本二曹!」「はい!」「それに、しらね!」「は、はい!」
「よし、全員居るな。」チーム全員の確認をした角松は持っていた地図を広げ、作戦の概要を話始めた。
「現在、我々は国防陸軍の飛行場の南15キロ地点にいる。これから陸路で拠点の手前、5キロ地点まで向かう。明朝、0345より深海棲艦の艦砲射撃及び空襲が始まる。その前に、できる限り敵の上陸地点まで近づき安全を確保した上で潜伏しておきたい。」
「角松副長…。」
角松が説明していると、しらね が質問をしてきた。
「なんだ?しらね。」
「敵部隊が艦砲射撃をした際に、多数の死傷者が出ると思われます。駐留部隊の安全確保はどうされますか?」
「…ですよね。最初の空襲で沢山、死傷者が出るのは予想できる。」と、榎本が同様のことを口にする。「だが、駐留部隊全員を襲撃前に退避させるなんて出来っこないだろう…。」尾栗は部隊の避難は不可能だと具申する。
「副長…。これ使えませんかね?」
と、柳が鞄から出したのは爆竹だった。
「…柳。お前、何でこんなもの持ってきたんだ…。」と、呆れる尾栗。しかし、その爆竹を見て榎本があることを思い付いた。
7月23日 0320 国防陸軍ガダルカナル飛行場
敷地に面した側道を警備の陸軍兵が歩いていた。
パパパパパパパーーーン
突如、破裂音が静寂を突き破った。
「敵襲か!?」
ゥウウウ~ゥウウウ~ゥウウウ~
基地内部に敵襲を知らせるサイレンが鳴り響く…。
「━こちら榎本。爆竹による誘導作戦成功です。」
「━了解した。まもなく、敵部隊の艦砲射撃が始まる。直ちにそこから退避し塹壕にて待機せよ。」
「━了解。」
爆竹を仕掛けたのは榎本と しらね の2名だった。予測した通り、軍は爆竹がなった方向へ気が向き…。建物内で仮眠を取っていた兵達も次々と建物から出てきた。そこには、国防陸軍第82普通科連隊隊長 棟方の姿もあった。
0330 みらいCIC
「ガダルカナル北部に多数の艦影を視認!数は40以上!敵空母から艦積機が次々と上がっています!」
CICにてモニターを見ていた青梅が叫ぶ。
「ついに、始まったか…。」
梅津は額の汗を拭きながら呟いた。青梅の報告を元にCICが慌ただしくなる。
現地時間 0345
ヒュュュューーン ドカーン!!
国防陸軍のレーダーサイトが深海棲艦の攻撃で破壊されたのだ。
「敵襲だーっ!!」
陸軍の動きが慌ただしくなり、飛行場では米軍の戦闘機が緊急発進の準備をしていた。
キィィィィィイイイイイインンンンンン
「エンジン始動!」酸素マスクを付け、出撃体制にはいる米軍の新鋭戦闘機F35Aだが…。
ヒューーーーーン
(…マイガッ!!!)
パイロットが上を見ると敵機が投下した爆弾が目の前にあった…。
ドッカーーーン!!!
一瞬の閃光と共に大爆発を起こすF35A戦闘機。他に離陸体制に入っていた機体も次々と攻撃され爆発、炎上する。この混乱の中、無事に離陸できた機は…。陸軍の対戦車ヘリ[アパッチ]3機と米軍のF35A戦闘機5機だけだった。だが、いずれの機体も大群でやって来た深海棲艦に撃墜される運命だった
…。
その頃…。
ドッカーーーン ドッカーーーン ドッカーーーン
艦砲射撃を受け次々と熱帯雨林が破壊されていく中、角松達は塹壕に退避していた。ふと、鉄板が刺さったヤシの実が目の前を爆風で転がっていく。
「頭をもっと低くしろ!鉄帽ごと首を持っていかれるぞ!!!」と、爆風の中で角松が叫ぶ。
ドッカーーーン!!!
「きゃあ!」と、しらね が悲鳴を上げる。
パラパラと上から土が降ってくる中、榎本が話始める。
「や、柳一曹…。も、もしこの塹壕に落ちてきたらどうなるんです…?」
「ああ、落ちてきたら骨すら無くなるだろう…。」
と、気味の悪い話に しらね が「んな、嫌な事言わないでくださいよ!」と怒る。
「なぁ、洋介…。いざとなったら俺たちが深海棲艦をこの島から追っ払う。それでいいんだよなぁ!」
と、話す尾栗に角松は「うるさいぞ!少しは黙っていろ!!!」と一喝する。
「何か、喋ってないとおかしくなりそうなんだよ」
と、角松にキレる。すると、またもや至近距離に砲弾が着弾し爆発する。
同時刻 みらいCIC
「副長達…。大丈夫ですかね?」
と、モニターを見ながら心配する菊池。
「大丈夫だよ。あいつはどこへ行っても大丈夫な男だよ。砲雷長…。」と、梅津が呟く。
「にしても、凄い数で襲撃してますぜ。」
青梅が出したデータには敵艦隊の数や種類が記録されていた。「通信室よりCICへ、国防軍マリアナ基地より戦闘機が離陸しました。救援部隊だと思われます。」通信室からの情報を聞き、梅津艦長は…。
「…思ったよりも。状況は悪そうだな。」と呟いた。
その頃、艦橋デッキでは みらい と白雪が望遠鏡で基地の方向を見ていた。
「西の空が空が赤くなってますね…。」と、白雪が呟く。基地が燃え盛る明かりは50キロ近く離れた[みらい]でも確認できた。
「この戦闘で、多数の死傷者が出ている…。でも、今はなす策がない…。」みらい は基地の方角を見ながら、後悔していた。自分が何か出来なかったのかと…。
一方、作戦を開始したのにも関わらず…。艦娘用の部屋で深雪がゴソゴソと探し物をしていた。
「あっれ?どこ行ったかなぁー?」
深雪が自分のバックをひっくり返していると、暁が物を取りに入ってきた。
「あれれ?深雪さん何してるのぉ?」
「いやぁ、持ち込んだ私物が無いんだよ…。」
「ちょうどいいや、探すの手伝って~」と、暁に頼んだのだが…。何を探しているのか暁が尋ねると深雪は…。
「えっ?爆竹だけど。」
「・・・えええええ!?なんで、爆…。」
と、大声で話始めようとしたため慌てて暁の口を塞ぐ。
「んんっ~!」暁が軽く酸欠になってきた為、塞いでいた手を外す。
「ゲホゲホ…。なんで爆竹なんて持ってきてんのよ…。」と、ヒソヒソと深雪に尋ねると。
「ハハハ…。休みの日に、吹雪を驚かそうかなぁって…。」
「え…。」という、深雪の発言に呆れる暁。すると、部屋に響が入ってきた。
「あっ…。」と、深雪と暁が一瞬固まる。
「深雪に暁…。こんなところでなにしてんだい?」と、尋ねる響に暁は…。
「な、ななにしているってぇ…。探し物をとと取りに来ただけよ…。」と、カクカクの日本語いや、変な日本語で話す。様子がおかしい暁を見て、響は深雪を睨む。
「…な、なんだい?そんなに睨まないでくれよ。」
ジーーーー。
と、深雪を無言で一分近く睨み続け響が話始めた。
「…さっき言ってた爆竹。あれ、可燃物だったから菊池二佐に言って、弾薬庫に入れてもらったよ。で、上陸部隊の柳一曹か何かに使えるかもって持っていったけど…。」
「…あ、あそうなの。それならよかった~(汗)」と、安心したフリをする深雪に響は付け足した。
「この作戦終わったら、副長の所に行くようにって菊池二佐が言ってた。じゃ、私は任務があるから…。」と話し、響は部屋から出ていった。
「…ど、どうしよう。」と、顔真っ青で暁を見る深雪。に対して暁は…。
「んなの自業…。あ、あれ何て言うんだっけ?」と、二人で話していると しらせ がやって来て…。
「二人とも!なにしてんの!今は、戦闘中よ(怒)」と、一喝されそれぞれの配置場所へと向かっていったのだった…。