キィィィィイイインンンン
みらいから放たれたトマホークは敵空母に向かって一直線に飛行していた。
「ーこちらシーフォール。帰艦する艦載機を今、追い越しました。」観測していた海鳥から連絡が入る。
「了解。まもなく相手の制空圏内だ。シーフォール帰艦せよ。」菊池が指示をすると「ー了解。」と返ってきた。海鳥は上空で大きく旋回しみらいへの帰路へつく。
「佐竹一尉…。俺たちは何を守っているんでしょうか?」と、射撃席に座っていた林原が呟く。
「…それをいっちゃ、いままで死んでった仲間はどうなる?」佐竹の言葉に林原は胸が締め付けられそうだった。二人の会話が途切れたときレーダーパネルに敵空母から発艦する敵機の姿が写った。
「…バカヤロォ!!」
と、佐竹の悲痛な叫びが南の海に響き渡った。
みらいCIC
「ーこちらシーフォール。敵空母より多数の飛行物体。艦載機だと思われます。」海鳥からの報告に梅津は、「やはり…。通信は無駄だったようだな。」とため息をついた。
同時刻 深海棲艦空母機動部隊
「ヤハリ、ガダルカナル島ノサジタリウスダナ…。苦シ紛レニ、コンナ電文ヲ送ッテキタ。」と、笑いながらヲ級が電文内容を見せる。
[本艦はあなた方へ敵意はない。あくまで自己防衛として攻撃をしている。これ以上、攻撃を続ける場合は貴艦を撃沈する。なお、これは脅しではない。]
「フッ、何ヲ今サラ。」と、タ級が話す。みらいへの第二次攻撃を準備しているなか、トマホークは静かに着々と迫っていた。
~回想 防衛大学校3年の秋~
「おい、菊池は進路決まったのか?」
昼休みに教室で尾栗に尋ねられる。
「そういう尾栗は?」
「俺は入ったときは陸自志望だったけど、横須賀の護衛艦観てから海自を目指すことにしたよ。元々、海が好きだったしな。将来はイージス艦で勤務したいってところだな。」と、笑いながら話す。「俺はまだ悩んでいるんだ。第一希望は海自だが、教官から技研に行ってみないかと言われたんだ。」
「ほぅ…。そりゃすごいじゃないか技研だなんて。」と、唖然とする尾栗。
「けど、断ったよ。」
「えっ?」
「…人を殺す武器を作ることなんて、俺にはできない。俺は前線で答えを探すつもりだ。」と、窓の外を見ながら話す。窓から見える木は、オレンジ色に色づいて冬の気配を感じさせていた。
「まぁ、俺はこの防大期間中に答えを見つけるつもりだ。…俺と違ってあいつはとっくに決めてるみたいだがな。」菊池の視線の先には同級生に勉強を教える角松の姿があった。海上自衛官だった父に憧れて防衛大に入学した彼は、父親が追い続けているあの戦争の答えを探し求めていた。
その夜、市内の三笠公園に三人の姿があった。角松は自分が思い詰まるとここへ来て物思いに更けることがある。
「…日本海でバルチック艦隊を撃ち破った戦艦三笠とはこの船のことよぉ!」と、尾栗が角松の肩を叩く。
「おっ、康平に雅行どうしたんだ?」振り替えると後ろには私服姿の尾栗と菊池がいた。
「また、考え事か?洋介。」
「…あぁ、ちょっとな。」
「また、親父さんのことか。」と、角松の隣に尾栗が腰かける。角松の父である角松洋一郎一等海佐は角松が防衛大に入学した年に自衛隊を定年退職していた。最後に乗艦していたのは護衛艦[ひえい]だった。ひえいの交代クルーと交代し退官していたのだ。「親父は自衛隊で探し求めていたものは見つからなかったと言っていた。それを俺は見つけなきゃいけないんだよ。専守防衛とは何かと…。」
「専守防衛か…。」菊池は静かに呟いた。その日から菊池は改めて専守防衛の意義を考えた。
目の前に表示されているレーダーパネル。小さな矢印が敵空母に向かって一直線に飛行していた。到達まであと5分。燃料や弾薬に引火すれば正規空母なれど轟沈は間違いない。本当にこれで良かったのか?菊池は改めて感じていた。だが、既に手負いの状況。敵空母を撃沈し速やかに当海域を離脱することが先決であると感じていた。