空母ヲ級との戦いから3日後の8月9日昼。海上自衛隊イージス護衛艦[みらい]は横須賀港に無事に入港した。
「一部、船体が破損しているが…。どうしたのか?」と、横須賀鎮守府の柏木提督が尋ねる。
「はっ、沖ノ鳥島沖で深海棲艦の空襲を…。幸いにも、死者は出ませんでしたが…。」梅津は静かに説明した。みらいの船体は、艦橋の左舷デッキが破損しており左舷前側のSPYレーダーが敵機の破片で壊れていた。
「これだけの被害で…。よく、帰ってきてくれた。」柏木は梅津を褒めた。だが、梅津は「戦闘突入を判断したのは私です。全責任は私が…。」 二人が話していると角松がやって来た。
「報告。艦娘達の鎮守府施設への移動完了しました。」
「すまんな副長。任せっぱなしで。」
角松の報告を受けた梅津に柏木は…。「私の指示で、このような形となり大変申し訳ない。貴艦は直ちに入梁できるよう手配する。」
「貴官の、手厚い対応に心から感謝いたします。」梅津は角松と共に敬礼した。
1930 横須賀鎮守府埠頭
夜の明かりに照らされた埠頭にみらいは停泊していた。艤装の修理が始まり慌ただしい様子になっていたが…。破損したSPYレーダーの修理に手間取っていた。
「砲雷長、SPYレーダーの破損。調べたところ…。やっぱり内部までイカれてますぜ。」
「そうか、やはりあの爆発がまずかったか…。」菊池と青梅は破損した左舷前側のSPYレーダーの事について話していた。「現状では、左舷前側がホワイトアウト状態になっているため…。残り3面の出力アップと観測員による対空、対水上監視の強化がネックですな。」青梅は破損状況をまとめた資料を見ながら話す。
2000 提督室
コンコン!
「どうぞ。」
資料をまとめていた柏木のところへ飛龍がやって来た。
「どうしたのか?飛龍。」柏木が尋ねると飛龍は…。
「護衛艦みらいについてお話が…。」「話とはなんだね?」
「…護衛艦みらいの修理に、妖精さん達の力を貸してあげられないでしょうか?あのダメージ…。修復まで相当な時間がかかると思うのです。」と、飛龍は妖精さん達の力を使えないかと具申してきた。すると柏木は。
「それは気づかなかった。それもひとつの手かもしれん…。明日は梅津艦長と相談してみるよ。」と、柏木は飛龍の意見を聞き、よい判断だと褒めた。
翌朝 0800 横須賀鎮守府ドック
柏木からの要請で、鎮守府内部のドックに入ったみらいは船体全体を整備することとなった。ドックから徐々に水が抜かれ、船底が見えてくる。
ゴオオオンン
大きな音と共に、みらいは船体を支える台の上にゆっくりと乗った。ドック内部の水はほとんど無くなり。船全体がきれいに見えていた。隣のドックには横須賀鎮守府に所属するイージス護衛艦[りょうかみ]が整備を受けていた。
「ほぉ、隣の護衛艦…。あたご型を発展させたような感じだなぁ~。」と、艦橋デッキで尾栗と角松が感心していた。柏木提督によると[りょうかみ]は定期整備で入港していた。現在、横須賀鎮守府には護衛艦[りょうかみ]の他に[すみだ]と[ちくま][あらなみ][せとうち]が停泊していた。柏木によると普段、常駐している[だいせん]等の大型護衛艦は福島沖合いでの対地射撃上陸訓練参加のため出港していた。
翌朝、梅津艦長ら幹部達の元に柏木提督と明石 、夕張がやって来た。
「は…妖精さん?」
「ええ、艦娘達が作戦を共にしている方です。」と、夕張が妖精さん達を梅津達に見せる。小人のような存在に
「しかし、これが…?」と、困惑する梅津艦長達。明石は「普段は、私たちが作戦を行うときに使う艤装の中で活躍していますが…。この世界では、護衛艦の修理の時に人が入れないような狭いところで修復作業をしてくれているんです。」と説明する。
「し、しかし…。それで我々イージス護衛艦 みらい の修理には出来るんでしょうか?」
「それは、こちらでも損傷具合を調べてみないとわかりませんが…。データありますか?」と、明石が尋ねると菊池は「艦長どうします?見せますか?」と小声で梅津に尋ねた。少し梅津は考えたあと、「まぁ、よかろう。この世界で行動していく以上、イージスシステムは必要不可欠だ。データを見せよう。」と話した。破損状況をまとめた資料を見せたところ…。妖精さんの力なら5日ほどで回復可能と診断結果が出た。当初、梅津達は修復不可能と思っていたため驚きを隠せなかった。こうして、イージス護衛艦[みらい]の修復作業が始まったのである。
カンカンカンカン コンコンコンコンコン バチッバチッバチッ
破損した左舷前側のSPYレーダーを中心に足場が組み立てられ修理が行われている。人が入れないSPYレーダーの中は妖精さんが修復作業していた。ふとみらいに乗っていた艦娘達が集まってきた。
「あ、あの尾栗さん!私たちにも出来ることはないでしょうか?」岸壁で作業していた尾栗が振り替えるとそこには、吹雪達が作業服にヘルメット姿で立っていた。
「私たちもお世話になったんです!その恩返しと言うか…。お礼をしたいです!」と吹雪が半分叫びながら話す。「まさか来てくれるとは…。ありがとな。」と吹雪を誉める。「おーい洋介。じゃねぇーや、副長~。」
「なんだ尾栗!?」と、艦橋から声が帰ってくる。
「吹雪達が手伝いたいんだってよー。どうするかぁー?」大声で艦橋の角松に尋ねると角松から…。「艦長の許可をもらってこーい!」と返事が返ってきた。
その後、梅津艦長から許可を得た吹雪達は…。汚れが目立っていた後部飛行甲板の清掃とSH-60Jの洗浄作業を行うこととなった。
「暁、そのバケツこっちに持ってきて。」
「分かったわ。」と、後部甲板で清掃していた響と暁。モップを持っている響の元へ水の入ったバケツを持っていこうとした暁だったのだが…。
「暁!走ると危な…。」という響の声もむなしく…。
「キャッ!」
「あっ!」
バッシャーン!!
吹雪が持っていたホースにつまづいて転んでしまった。
「うっうっ…。」
「大丈夫!?暁ちゃん!」と、慌てて吹雪が駆け寄るが…。護衛艦特有のサメ肌塗装のお掛けで右足に擦り傷を負ってしまっていた。
「うわぁーん(涙)」と、泣き出す暁。しょうがないので響が格納庫にあった救急箱を取りに行く。「おいおい、大丈夫か?」と、SH-60Jの整備をしていた航空科の佐竹が声をかけてきた。グスングスンと、泣く暁に佐竹は
「ほら、救護室まで連れてくから乗りな。」
「えっ…?」
「ほら、乗った乗った!」
暁を背負った佐竹は艦内へ入っていく。「おい、柿崎。ちょっと救護室行ってくるからな。」
「了解!機内の掃除終わらせておきます!」
「おぅ!頼んだぜ♪」
佐竹は暁を背負いながら響と共に救護室の桃井のところへと向かった。
「はい、これでOK!」
「桃井一尉ありがとう。ほら、暁も。」
「あ、ありがとうございます…。」右足に擦り傷を負った暁の手当てを終えた桃井は救護室の掃除を再開した。「大丈夫か?暁ちゃん。これからは甲板は走らないように気を付けような。」と、佐竹に言われた暁は「こ、子供扱いしないでよっ!…で、でもありがとう。」と、答えた。
「ごめん佐竹一尉。」と響が謝るが、「いいんだよ。」と、頭を軽く撫でられた。その手は日焼けした大きな手だけど暖かみのある手だった。