8月13日夕方
「はぁ、乗組員の上陸許可ですか…。」梅津は柏木からの言葉に驚いていた。国防海軍の監視下であるため上陸の許可が降りることなど予想していなかったのだ。
「現在、あなた方は横須賀鎮守府に軟禁と言う形になっている。よって、外出は横須賀市街地のみとなるがよろしいかな?」
「それに関してはこちらからお話しすることはありません。そちらの指示に従います。」という梅津に柏木は
「残念ながら、個人単位での行動は監視の問題から出来なかった。そのため、数名程度のグループで行動してもらいたい。もちろん、各グループにつき2名の警備係がつくことになってしまった。その点は、お詫びいたします。」
翌朝
「ちぇっ、俺だけ国民服かよ。」
「まぁ、似合っているじゃないか尾栗。」艦橋デッキに私服姿の三人がいた。交代で横須賀市街地を散策することになったのだが、自衛隊の服装で歩くことはできないと通知があったため、海軍側が用意した私服を着ての散策となった。
「では、艦長行ってきます。」と、角松の一声で三人が敬礼する。
「時代を見てこい。そして報告してくれ。」梅津は三人にこの世界の横須賀の様子を見てきてもらおうとしていた。
「尾行が二人か…。なんとか撒きたいな。」
「洋介、本当に自宅へ行くのか?」
菊池の言葉に角松は「あぁ…。」と答えた。ふと、商店街に食堂を見つけた。「ほぉ、米の代わりにおからでカレーかぁ~♪」
「やはり、食糧難の状態になっているようだな。」
「ま、昼には早いが試してみるか。」
と、駅近の飲食店へ入る。尾行の警備係は外で待つことになった。
「おい、裏から出られるぜ。」小声で尾栗が話し掛けてきた。
「すまん、あとは頼んだ。」
「分かったよ。たらふくカレー食って待ってるよ。」
「憲兵には気を付けろよ。」
尾栗と菊池の見送られ裏口から角松は去っていった。
「さーて、食うかぁ。おばちゃーん三笠カレー2つ大盛りで~♪」
角松は鎮守府に近い横須賀駅から離れた京急横須賀中央駅から電車で東京方面へ向かった。角松が知っている赤い京急電車は目立たないように茶色に塗り替えられていた。そのあと、横浜でJR線に乗り換え自宅最寄り駅へと向かう。そして、夕方自宅のあるマンションへとたどり着いた。だが…。
「角松洋介さん?知らないねぇ。501号室は空き部屋だよ。」案内された部屋は現実世界で住んでいた同じマンションの同じ部屋。だが、そこに家族の姿はなかった。角松は家族の事を訪ねたが、管理人の女性は知らないとの一点張りだった。そのあと角松は公衆電話から思い付く家族の電話番号を当たってみたが…みんな繋がらなかった。
夕方 JR横浜駅西口
ゲリラ豪雨の中で角松は一人たたずんでいた。「やはり、この世界は俺たちの世界とは違う。」そう確信した角松は横須賀に停泊しているみらいへ駆け足で戻っていった。
2000 みらい艦長室
「…なるほど。やはり、違う世界であることが証明されてしまったか。」梅津は角松からの報告を残念そうに聞いていた。
「勝手な行動をしすみませんでした。」謝る角松だったが、梅津は許した。
「こうなると、他の隊員達の帰り場所もないと言うわけだ。完全に、元の世界から離れてしまったな。」
「ええ、この事は極秘にしてもらいたいと考えています。」
「どうしてかね?」角松の言葉に梅津が尋ねると…。
「この状況下で、この件を隊員達に伝えた場合…。おそらくパニックになるでしょう。そうなれば士気の低下に繋がる恐れがあります。今は公表を差し控えるべきです。」
「そうだな…。この件は副長、君に一任する。」
「ハッ。」