「そうか、逃げられたか…。」
「少佐、申し訳ありません。」
草加は携帯で角松達を連れ去ろうとした人物と話していた。話を終えて携帯を切ると草加はため息をしながら外を眺めた。草加は市内にあるホテルの一室にいた。外には活気ある町が見えていた。ふと、なにかに気づきカーテンを閉める。
「ーこちら偵察班。気づかれました。」
「了解。直ちに現在地より離脱せよ。」
「ー了解。離脱する。」
向かいの雑居ビルの屋上の物陰から数名の黒服の人物が離れていく。それをカーテンの隙間から確認した草加は椅子に座りパソコンを開く。
「なるほど。奴の手下だなぁ…。」と呟いた。
その夜、角松とみらいはホテルの一室で草加が取る可能性の高い行動を予想していた。
「我々の持っているデータだと、終戦後に日本海の竹島沖合いで広大な石油の地下資源が見つかることになっている。所有権が与えられるのは中国だ。」
「まさか、その地下資源を草加少佐は!」角松の言葉に驚くみらい。
「あぁ、奴はそれを狙っているのかもしれない。地下資源を確保できれば、日本は石油輸入に頼らなくても良くなる。」
三日後。新京市内 新京中央駅前
「…皆さん!この荒廃した我が中国を再生し日本から取り戻す。それが我々、満州共産党に課せられた使命なのです!」駅前で満州共産党の旗を振りかざし演説している男性がいた。共産主義に取って替わり、民主主義制度が導入された新満州国では日本の監視下であるが公職選挙法により新満州在住の中国人の出馬が認められていた。その中でもこの男性は支持率が高い。その男性の名前は張宗元(チャン ゾンユエン)旧中国政府の事務次官で、反日体制派の人物である。みらい にある資料によると、この戦争のあと新しい中国政府の国家首席となる人物である。今日は統治下であるが、新京市の市議会議員選挙の演説だった。
「奴は、何か仕掛けてくるはずだ…。もしもの時は みらい 。援護を頼むぞ…。」
「…はい。」
演説会場が見えるビルの角から角松とみらいは様子をうかがっていた。すると…。
「…まずい!」
角松がいきなり飛び出して張議員の元へ向かう。
「どうしたんですか!?」みらいが尋ねると「狙撃手だ!」と走りながら叫ぶ。
パァン!
間一髪角松は張議員の手を引っ張り弾を避けさせた。弾は近くの子供が持っていた風船に当たったのだ。狙撃されたとわかり、周りの人々はパニックになる。その中をかき分けて張議員の手を引っ張り走る。
「巻き添え喰らいたくなかったら道を開けろぉ!」
十分後
「ハァハァ…。」
「買い物に行ったと思ったら…。張宗元を連れてくるとはな…。」と、呆れる如月…。
「奴の手下が狙っているんだ。仕方ないだろ。」と、息を切らしながら角松は答えた。すると…。
「…あなた方は、一体何者ですか?」と、張が尋ねてきた。
「私は、角松洋介。貴方をお守りするものです。」と、角松は答えた。
その頃…。
「小佐、暗殺失敗しました。」
と、草加の元に電話が入る。
「御苦労だった。金は既に口座へ入金した。」
と、やり取りを行い電話を切る。
(角松さん…。あなたですか。)と、草加は心のなかで思っていた。
ガッチャーン!
水が入ったグラスが床に叩きつけられる。「こんなもの安心して食えるかっ!」と、饅頭を張は投げようとするが角松が止める。そしてその饅頭を自分でちぎって食べて見せた。
「大丈夫。毒は入ってない。」
その言葉に力が抜けたのか張は椅子に座り込んでしまった。
「副長。これからどうするんです?」と、みらいが尋ねる。今、角松達がいるのは新京市中心部から離れた古びたホテルの一室に居た。
「とにかく、まずは張氏の身の安全を確保しなければならない。奴は、必ず仕掛けてくるはずだ。」と、草加の行動を読む。だが、角松達は草加からも地元警察からも追われている。地元警察に預けたとしてもすぐに解放されて草加の手によって暗殺される可能性が高い。よって、角松達が一時的に保護していたのだ。
「今は、下手に動くのはまずい。しばらくここで様子を見よう。」如月が窓の外を見ながら話す。外では地元警察がパトロールしていた。すると…。
「な、なぜ私は命を狙わなければならないのですか?」と、張が話始めた。
「詳細はお伝えできませんが、テロ組織よりあなたの命が狙われていると通報を受けました。」と、如月が理由を説明する。
「私は反日派ですよ。どうして、守るのですか?」
数秒の沈黙が流れたあと…。角松が、
「あなたにはこの新満州を背負って行ってもらいたい。反日派だろうが関係ない。同じ人間だ。命を狙われているならば護るのが俺達だ。」と、答えた。その言葉聞いた張は涙を流していた。