8月23日 0845 呉鎮守府 埠頭
護衛艦みらいは横須賀へ帰投する為、給油を受けていた。
ドッドッドッ
給油ホースの中を燃料が勢いよく音を立てて流れている。
「給油作業。あと5分で終わります。」
補給科から作業終了までの時間が伝えられる。護衛艦みらいの事は、既に柏木提督から呉鎮守府に伝わっており、補給作業は順序よく進んでいた。
「…でけぇなぁ( ゚д゚)ポカーン」
艦橋で撮影をしていた片桐が呟く。視線の先には改いぶき型ヘリ搭載艦娘輸送護衛艦 だいせん が停泊してしいた。いずも型からいぶき型へ改良し、更に艦娘達の運用能力を備えた 改いぶき型は日本一大きな艦船だ。上部甲板にはSH-60kやオスプレイが駐機しており、船体の最後部には 現実世界の おおすみ型と同じような開閉式のウェルドックが付いていた。
「あの船は改いぶき型ヘリ搭載艦娘輸送護衛艦 だいせん 。ヘリ空母としても艦娘空母としても活躍できる…。まさに海上鎮守府ですよ。」と、柳が話しかけてきた。
「ジャーナリストとしては是非とも見学させてもらいたいものです。」と、写真を撮りながら片桐は話した。
8月25日 1530 静岡県焼津沖30キロ
翌朝の横須賀入港に備えて入港準備をしているときに事件は起こった。
「レーダーに感!こ、これは!!」
旗艦である 護衛艦ぶこう CICに緊張が走った。なんと、進路上の伊豆大島沖合に深海棲艦の空母機動部隊が接近していることが判明したのだ。その一報は みらいCICにも即座に入った。
「旗艦である ぶこう がどう判断するか…。我々としては、戦闘は極力避けたいのだが…。」
梅津はCICで菊池と共に海図を見ながら呟く。深海棲艦の空母機動部隊を発見したのは、哨戒活動に当たっていた国防空軍のE-787早期警戒機だった。
「空軍からの情報によると、敵の勢力は正規空母2 戦艦1 重巡1 艦級不明2の計6隻だそうです。」菊池が資料を読み上げる。
「我々の目的は戦闘ではない。物資輸送が目標だ。強行突破は避けたいが…。」梅津は旗艦である ぶこう 艦長の判断を心配していた。ぶこうの艦長は艦長になってから日が浅く…。その上、艦隊司令に戦時特進している。先日の対潜戦闘でも力ずくで突破しようとしたのを梅津は感じていたからだ。
「砲雷長、シースパローの残りはいくつだ?」
「予備も含めて現段階では残り50発です。」
「トマホークの残りはどうだ?」
梅津はトマホークの残弾数を尋ねた。
(まさか、先手を打つ気じゃ…。)
菊池は一瞬黙った。二人の間に数秒の沈黙が流れる。
「トマホークは残り10発…です。」
「…分かった。」
昼行灯と表させる梅津の顔はいつになく厳しい顔だった。その顔は、場合によってはトマホークでの敵艦撃沈を行う事を意味していた。
伊豆大島沖合にて深海棲艦と接触する可能性が高いのは明日明朝0430頃。梅津はCICで海図を見ながらぶこう艦長の指示を静かに待っていた。
2100 みらいCIC
やはり梅津の予想は的中した。ぶこう艦長から敵艦隊の撃沈を行うと指示が来たのだ。
「やはりな…。」
「艦長、トマホーク…。使うことになるのでしょうか?」菊池が梅津に尋ねる。
「いや、トマホークは最後の手段だ。一旦、主砲とシースパロー、ハープーンで対応する。」
梅津は菊池と共に作戦を練っていた。長年の勘からぶこう艦長が取りそうな行動を予測しているのだ。
「私の勘からして ぶこう が最初にハープーンで長距離射撃を開始するだろう…。我々は、ハープーンにチャフを搭載し発射させる。そして、敵艦隊上空でチャフ搭載ハープーンを自爆。ECMと共に敵のレーダー網を奪う。」
「明日の日の出は0445です。敵機が飛び立つ前に空母の運用能力を削らなくてはなりません。」菊池が意見具申する。
「我々の援護射撃でぶこうは優位に立てるはずだ。ハープーンで中破状態にすれば艦積機は飛び立てないはずだろう…。」梅津はこの作戦に懸けていた。これが、一番被害を少なくかつ弾薬の消費も最小限に押さえられると考えたからだ。ただ、この作戦は自衛隊にとっては専守防衛に反すること。きっと角松は全力で迂回するよう進めただろう…。だが、東京湾の入り口付近に敵艦隊が居てはいつまでたっても横須賀入港は不可能。今回は仕方ないと梅津は考えていた。あとは敵の勢力に潜水艦が居なければだが…。