11月3日 伊豆半島沖 30キロ
吹雪達第三護衛艦隊は、伊豆半島沖に出現した深海棲艦迎撃に向かっていた。敵を一番に見つけたのは加賀の偵察機 彩雲 。敵空母ヲ級もそれに反応し、敵機を発艦し始めた。それを迎え撃つのは加賀と瑞鶴の二人だ。第一次攻撃隊を加賀が発艦させた直後、
「あっ、敵機!」
と、瑞鶴が敵機の群れを見つけた。乱れなく飛ぶ加賀の艦積機。それに少し遅れを取って飛行する瑞鶴の艦積機。加賀の隊長機のパイロット妖精が指で「下に敵機確認。これより攻撃に入る。」と、指示を出す。仲間の機体がバンクを振ると、一斉に急降下し始めた。視界正面に敵機の群れが映る。そして、機銃の引き金を引く。
ダダダダダダダダ…。
航空戦が始まった。急降下急上昇を繰返し、敵機を迎撃する加賀機。それに僅かに遅れをとった瑞鶴機が入る。撃墜する…される。双方の艦積機が大きな空中戦を繰り広げるなか、僅かな隙を抜けて敵機がこちらに向かってくる。
「敵機接近!第一次目標群 数は10。」
と、せとぎり が声を上げる。榛名が三式弾を主砲に装填する。
「仰角最大…。三式弾装填。主砲発射!」
ドォーン!
榛名の三式弾が放たれ、敵機の群れに向かっていく。
バァーン!
上空で派手に炸裂する三式弾。向かってきた第一次攻撃隊は全滅と、せとぎりが声を上げるが、既に加賀機達をくぐり抜けた敵機の第二次攻撃が向かっている。榛名の三式弾装填にはまだ時間が掛かる。このペースだと装填前に敵の攻撃ポイントに入る。せとぎり のシースパローという手もあるが、大規模作戦前のため極力ミサイルの使用は避けたいところ…。
「敵機!射撃距離に入ります!」
レーダー監視をしていた せとぎり が叫び、吹雪と響 せとぎり の対空射撃が一斉に始まる。敵機は空母加賀と瑞鶴に向かってくる。敵機からの爆撃を回避しつつ第二次攻撃隊を発艦させようとする瑞鶴。だが…。
「アウトレンジで決めてやるんだから!」と、油断した瞬間。
「瑞鶴さん!魚雷!」と、吹雪が大声を上げる。
「えっ。」
ドォーン!!!
大きな水柱が上がる。命中したのは加賀だった。無防備だった瑞鶴をかばい、代わりに被弾したのだった。
「加賀さぁーん!」
「だ、大丈夫よ。このくらい。」
と、いう加賀だが…。弓が折れて中破だ。吹雪は瞬時の判断で響に加賀の護衛を任せ、せとぎり にミサイル発射要請を出す。
「了解。シースパロー発射始めます。」
せとぎり のVLSからシースパローが放たれ、凄まじい速度で敵機を追いかけ撃墜する。空中戦に参加した加賀・瑞鶴隊は加賀機のお陰で、敵機群を撃破し制空権確保。だが、加賀が中破しているため…。この状況下で敵空母ヲ級を叩けるのは瑞鶴隊のみだ。敵は既に目視距離に到達。敵軽巡がこちらに向かって撃ってきている。周りで水柱が上がる中、瑞鶴は攻撃隊を発艦させるタイミングを逃してしまった。
(…これじゃ、発艦出来ない!どうする?)
瑞鶴が左右に回避行動を取りながら考えていると…。突如、軽巡の一隻が爆発を起こした。
(…今だ!)
瑞鶴は攻撃隊を発艦させた。すると、せとぎり に入電が入った。
「―こちら、空母 いぶき 艦積機 スパロウ隊。これより援護射撃に入る。」
軽巡を攻撃したのは、護衛艦娘の いぶき だった。呉鎮守府での演習の帰り、偶然現場海域を通りがかりアラートをかけたのだ。プロペラ機並みの性能しかない深海棲艦の艦積機に対して、F35JBという最新のステルス機。対空・対艦ミサイルを発射し敵を圧倒していく。それに負けじと瑞鶴も艦積機を上げる。そして…。戦闘は終わった。敵艦隊は全て撃沈。A判定だった。
「加賀さん。大丈夫ですか?」
戦闘が終わり、吹雪が加賀に駆け寄る。
「大丈夫よ。このくらいかすり傷だわ。」と、話す加賀だが…。飛行甲板には穴が開き、発着艦は不可能だった。残存した加賀機は いぶき と瑞鶴が回収。横須賀鎮守府に帰還した。
「いぶきさん。航空支援ありがとうございます。」
「いやたまたま通りがかっただけよ。心配しないで。」
お礼を言う吹雪に いぶき は少々照れ顔。一方の加賀には、「oh-。これはまた酷くやられちゃったのネー。」と、金剛が声をかける。
「おいおい、加賀大丈夫か?」柏木も加賀が被弾したと報告を受けやって来た。「私が的確な指示を出せなかったから…。」と、しょんぼりする吹雪に加賀は…。「これは、事故のようなもの。大したことはないわ。」と、答えるが。
「…あたしのせいじゃないの。」
と、瑞鶴が呟いた。
「あたしが、慢心したからこうなったのでしょ!なんで責めないのよ。」
「あなたがあの状況下で被弾していたら確実に大破…。いえ、もしくは轟沈していたわ。私はあえて被弾箇所を選んで被弾した。絶対、轟沈しないという自信があったから。」
「な、なによ!そんなボロボロのくせに!」
と、口喧嘩をする二人に金剛が止めに入る。
「まぁまぁ。喧嘩は良くないデース。高速修復剤を使えばこのくらいの損傷もお湯を沸かす前に…。」
「あいにくだが、それは無理だな。」と、柏木が声を上げる。
「どうしてデース?」
「大規模作戦前だからな、高速修復剤の使用を見合せているんだ。お陰で先日被弾した赤城と蒼龍が今だ、入梁中だからな…。」
「貴重な提督の戦力を失い申し訳ありません。」と、加賀は深々と謝罪し艦娘用ドックへと向かっていった。
瑞加賀コンビでの航空戦。錬度不足の瑞鶴を馬鹿にしているようで実は優しく見守る加賀。自らを犠牲にし魚雷から守ったものの、瑞鶴は艦積機を発艦させるタイミングを失ってしまいました。そこへやって来た最新鋭のF35JB戦闘機…。新艦娘護衛空母 いぶき の登場の話です。