12月3日 1030 護衛艦だいせん
バラバラバラバラ…。
みらいのSH-60Jが だいせん の甲板に着艦する。
「ご苦労様です。だいせん艦長 西村です。」
SH-60Jから降りた角松を だいせん 艦長の西村が出迎えた。今日はMI攻略作戦の最終会議だ。
「護衛艦みらい艦長。角松です。」
ミーティングルームに入ると第一護衛艦隊の艦長や各艦娘艦隊の旗艦の艦娘が勢揃いしていた。
「さて、皆集まったな。では会議を始めよう。」と、艦隊総司令を務める柏木提督が会議開始の挨拶をした。
1230 だいせん 会議室
MI攻略の作戦について、会議は煮詰まっていた。先日、米軍の早期警戒衛星が撮影した画像によると…。ミッドウェー島周辺海域に予想よりも多数の空母機動部隊が確認され、軍事基地化がかなり進んでいることが確認されたのだ。
「…どうします?こんなに沢山の敵空母機動部隊、とても私たちには。」
と、囮役の瑞鳳が心配する。流石に全ての空母機動部隊が瑞鳳達囮部隊に向かうとは思えないが、やはり人命が最優先。艦隊の編成を少し変える必要性が出てきたのだ。だが、空母艦娘の編成はなるべく変えたくはない。会議の場の全員が悩んだ結果、第一護衛艦隊から速力が早く、艦娘の収容が容易である護衛艦 すみだ が囮部隊に同行することとなった。それ以外の艦隊編成に大きな変更はないが、作戦開始時に護衛艦娘のいぶきから3機のF35JBを発艦させ、囮空母機動部隊に敵空母機動部隊を誘引させることになった。作戦開始は12月8日0430 日の出一時間半前だ。護衛艦だいせんで会議が進む頃…。だいせんの艦娘居住区で待機していた吹雪達駆逐艦は上層部が悩んでいるのも露知らず、かなりリラックスしていた。
クンクン…。
食堂から漂う昼食のラーメンいい香り…。今日のだいせんの昼食は海軍式あんかけラーメンだ。
「お腹すいたっぽい~。」
と、お気に入りの熊のぬいぐるみを抱きながら夕立がベットでゴロゴロしている。ステルス性を必要とする現代の護衛艦には窓が少ない。そのため艦娘や乗組員の居住区には窓がない。大戦時よりかは居住性が上がり基本4人1組とはいえ窓がないので圧迫感がある。
「そうだね~。そろそろお昼だね。」と、吹雪が時計を見ると既に1230。だが、艦内食堂が一番混雑する時間帯だ。
「睦月ちゃん。夕立ちゃんがのびてるし…。食堂行こうか?」
「うん。」
三人が食堂へ行くと、二航戦の蒼龍と飛龍が食事を取っていた。
「あ、吹雪ちゃん。」
「蒼龍さん。飛龍さん。会議はどうしたんですか?」
吹雪が尋ねると蒼龍が
「私たちは会議でなくていいのよ。旗艦の赤城先輩や加賀先輩が出ているから。」と、話した。飛龍はラーメンをすすっている。すると…。
「聖地MIかぁー。なんだか、あの時を思い出すなぁ…。」と、飛龍が呟き始めた。吹雪は参加していなかったが、かつてのミッドウェー海戦を飛龍は思い出していたのだ。現代兵器が使われるとはいえ、あの悲劇を思い出すと夜寝れないそうだ。
~回想~
「赤城先輩!加賀先輩!蒼龍!」
被弾し炎上する三隻の空母。その中で唯一生き残った正規空母 飛龍 。
「皆の仇…。絶対取るんだから!」
自身も敵機に襲われる中で弓を引く。周りは予想外の襲撃に混乱していた。そして沢山の水しぶきが上がり、雨のように降ってくる。赤城と加賀は大破。蒼龍も火災発生のために発着艦不可能。やれるのは私しかいない!三人の仇を取るために必死に一人で戦う飛龍。MI作戦と聞いてから飛龍は孤独に戦う夢をよく見ていた。その中でも昨夜見た夢は気味が悪かった。艦の時に経験した敵機の爆弾が自分に向かって落ちてくる瞬間。それを夢で見たのだ。
「うわっ!」
ゴッチーン!!!
鈍い音が居住室に響く。時刻は12月3日午前4時半 二段ベット上段の蒼龍が起きてくる。
「もぅ、何よ飛龍。」
目の前に星が見える中で飛龍は、
「ハハハ…。何でもない。」と、頭を押さえながら返事する。寝ぼけ顔の蒼龍はまた寝付く。同室の赤城や加賀はぐっすり寝ている。頭を思いっきりぶつけたおかげで目が覚めた飛龍は起床時間前だが、着替えて艦内を歩く。
ガチャ
甲板へ繋がる扉を開けると潮風か流れ込んでくる。いずも・いぶき型の甲板は空母型の大きな甲板だ。水平線の彼方が僅かに赤くなっている。日の出まであと30分。航空管制灯が一列に並ぶ甲板を歩く。この時間は緊急時を除けば艦積機の発着艦は無い。空は雲ひとつない星空。甲板の端にあるCIWSの傍らに座り寝転ぶ。夜明け直前の時間帯。段々、空が明るくなっていく。夜戦から帰還するときに時々見る景色だが、こんな星空をゆっくり見たのは久しぶりのことだった。
(私って、なんのために戦っているのかな…。)
と、星空を見上げてこう思う。
「隣、良いかしら?」
ボーッと空を見上げていたら突然声をかけられて起き上がる。声をかけてきたのは赤城だった。赤城は飛龍が起床時間よりもかなり前に居住室から出ていくのに気づき、追いかけてきたのだ。
「…なるほど。」
先輩の赤城に最近よく見る夢のことを話した。
「あの時はごめんね。被弾しちゃって…。」と、赤城が謝る。飛龍は慌てて大丈夫だと言う。すると、赤城がこんなことを話始めた。
「飛龍さん。こう思ったことはない?」
「え?」
「私たちは艦の記憶を持つ艦娘。たとえ過去にあった悲劇を変えることはできない。でも、これから先起こることは変えることができるし…。自分で作っていく。艦娘として生を受けて深海棲艦と戦うのが私たちに課せられた使命だけど。一人の人間でもあるのよ。…自分の未来は自分で作る。それを見失っちゃダメだと思うの。」
赤城の言葉は的確だった。普段は熱心に訓練に取り組むも、大食いキャラが定着している赤城だが…。赤城自身も時おり、ミッドウェー海戦の夢を見るそうだ。その夢を見るたびに、自分が艦娘としてこの世に生を受けた理由を問いただしている。
「赤城さん…。」
「だからね。自分のやりたいこと、夢と希望が大切なんだと思うのよ。」
と、赤城が話していると朝日が照らしてきた。日の出の時間、辺りが明るくなってきた。
「ごめんねf(^^; こんな、話に付き合わせちゃって…。」
と、赤城が話すが…。飛龍はお礼を伝えた。赤城の言葉に自分の艦娘がして存在する意味を探し出せたような気がしたからだ。