大晦日の深海棲艦の謎の行動。それを知ってか知らずか、新年を迎えた横須賀鎮守府。思い思いに正月を過ごす艦娘達の裏では、緊急の対策会議が開かれていた。
パンパン!
朝早く、尾栗が艦内の神棚にお参りしていた。
(この一年が、我々にとって素晴らしい一年でありますように。また、この戦いが早く終わりますように。)
お参りを済ませ、艦橋に出ると東の空が明るくなっていた。艦これ世界の西暦2013年 新年の幕開けである。
昨夜の事件は柏木提督を初めとする一部関係者だけの極秘事項となっていた。そうとも知らず、艦娘達は朝から大騒ぎである。お年玉を頼む者。寝正月の者。餅を食べまくる者。遊ぶ者。等々様々だ。護衛艦みらいでも、給養科がつきたての餅を配るなど正月らしさが感じられていた。
1000 横須賀鎮守府 会議室
正月早々、昨夜の深海棲艦の事について会議が行われていた。
スクリーンに迎撃したF35の暗視カメラ画像が映される。音声は収録されてないが、確かに小松からの報告の通りチャフらしきものを撒き、ミサイルを回避しているのが映っていた。映像が終わり柏木が話始めた。
「ご覧の通りだ。まだ、定かではないが…。仮に深海棲艦の爆撃機だとすると、戦闘が厳しくなるだろう。」
その言葉は、深海棲艦が近代兵器を入手した可能性があることを示していた。
「提督、仮に近代兵器を入手した可能性があるとして我々が対処すべき方法は?」
と、護衛艦 あまぎり の岸 涼子艦長が尋ねる。彼女は国防海軍護衛艦で3人いる女性艦長の一人だ。防衛大学を女性幹部候補生トップで卒業。尖閣紛争時は後方支援に当たっていたが、前任の海老名艦長から抜擢されて現在に至っている。
「近代兵器を持つ護衛艦娘達の出番。かもしれないな。だが、我々護衛艦隊の運用も必要不可欠だ。その事は皆も承知してもらいたい。」
正月早々の緊急会議が終わり、会議室から各艦の艦長らが退出していく。角松も出ようとしたとき、岸艦長から声をかけられた。
1230 護衛艦 あまぎり 艦長室
岸に誘われ、角松は あまぎり で話をしながら昼食を取ることとなった。
「質素な食事ですが、どうぞ。」
と、昼食が出される。焼き魚に吸い物 漬け物 に赤飯 そしてお煮しめ。
岸と角松は昼食を取りながら、話を始めた。
「提督の発言は、力がありましたね。」
「ええ。」
「角松艦長、あなた方が別の世界から来たと言うことは提督から聞きました。艦これというゲームが存在する世界からと…。」
その言葉に角松は息を飲んだ。
「…ええ、その通りです。我々はあなた方と違う世界からやって来た。」
「その艦これというゲームは深海棲艦が出てきますよね?そのなかに昨夜の機体はありましたか?」
「いえ、現時点では調査中です。」
「そうですか。でも、よかった。」
「えっ?」
「あなた方が我々の力になってくださっていること。これ迄の戦闘データから見てきました。見ての通りこの艦は旧型です。イージスシステムなんて最新の防空システムなんてない。でも、我が横須賀の対潜能力では一番です。」
「もし、よろしければ次の作戦時に同伴したいです。」と、岸は深々と頭を下げた。角松はこれ迄の戦闘を振り返り尋ねた。
「覚悟は出来ているのか?」
角松が心配したことはひとつ。梅津艦長時代の時に、同伴していた護衛艦 あらなみ が撃沈されたからだ。
「皆、覚悟は出来ています。」
岸は呟いた。別れ際、タラップを降りる際に角松は 護衛艦 あまぎり の様子を見た。我々護衛艦 みらい より3世代も前の艦だ。だが、熱意は熱く感じられた。艦全体の士気最高潮。女性艦長といっても、同じ人間。これ迄、あまぎり は旧型扱いばかり受けていたためほぼ練習艦同様の扱いを受けていた。それを克服し、再度、日本の盾になりたいと名乗り出たのだった。