ジパング×艦これ ~次元を超えし護衛艦~   作:秩父快急

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佐世保の惨状を伝えに横須賀へ帰投した護衛艦みらい。依然、勢力を衰えない深海棲艦に対抗策があるのか?あの本と変わりつつある世界に対してみらいクルー達はどうするか…。



航跡75:帰投

 

「そうか…。佐世保が。」

 

 柏木は佐世保から帰投した角松達から報告を受けていた。佐世保鎮守府の空襲による損害は甚大で、仮設の設備で運営を行っているとはいえ…。名原提督が戦死した影響で、艦隊運営に問題が発生していた。

 

 「しかしながら、よく無事に帰ってきてくれた。だが、敵である深海棲艦にも知恵があると言うことだな。」

 「ええ、その罠に見事にはまってしまった。申し訳ございません!」

 と、角松が頭を下げる。

 「いや、君たちのせいではない。我々海軍に慢心があったということだ。」柏木はそう答えた。

 

 「名原…。まさかお前が先に逝くとはな。」

 

 角松達の報告が終わり執務室に一人きりになった柏木は、机の引き出しから一枚の写真を出した。そこにはさくらの木を背景に防衛大時代の若き柏木と名原の写真が写っていた。名原とは防衛大時代の同期生だった。共に防衛大で専守防衛…。自衛隊のことを学び、共に海上自衛隊へ入隊。最初に配置された護衛艦くらま では共に遠洋航海を過ごした仲だった。写真を見ていると涙が溢れてきた。深海棲艦と共に戦う仲間同士だったが、先立たれるとは思いもしなかった。

 

 1月12日 護衛艦みらい 会議室

 

 「…残念だが、この本の進行とはかなり異なってきた。」

 会議室では、角松 尾栗 菊池 の三人を始めとする各科の幹部が集まっていた。

 「この本には佐世保鎮守府に大規模な襲撃があるとは書いていなかった。つまり、この本とは別のルートを辿っているということだ。」

 と、菊池が印刷した資料を元に導き出した結論を話す。

 「大晦日の夜襲もあったな。と、なると…。早いとこ敵の本拠地を叩かないとまずいんじゃないか?」

 と、尾栗。しかし、敵の本拠地が見つかっていない現状では攻撃しようが無い。佐世保が襲撃されたということは、国内の海軍の鎮守府も襲撃される可能性が高くなった。

 「…梅津艦長が危惧したことが現実化してしまったな。」

 と、角松が呟く。年明けに面会した際に、「我々が想像している事を遥かに越えた事が起きるかもしれない。」と言われていたからだ。難航する会議。だが、今出来るのは…。我が みらい の練度向上しかない。という結論に至った。次の出撃海域は柏木から言い渡される。それまでの間は横須賀で待機となった。

 

 その夜 横須賀鎮守府 護衛艦寮

 

 「佐世保が…。」

みらい は せとぎり と ゆうぎり からの話を聞いて驚いていた。佐世保鎮守府…。前身は海上自衛隊 佐世保地方総監部だ。渡された写真を見て みらい は驚いていた。深海棲艦が我々に発見されずに襲撃した。しかも、空母に戦艦の大軍勢。確かに深海棲艦とは海中からいきなり飛び出してくる事があるが、水深の比較的浅い佐世保湾でこれだけの大軍勢が集まるとは理解できなかった。なぜ、敵の部隊が狭い佐世保湾内に侵入できたのか。疑問が残る みらい だった。

 テレビで報道される、佐世保市空襲のニュース。正月早々、毎日このニュースだ。このニュースは各寮のテレビでも観ることが出来、名原提督が死亡したことも報道されていた。そのニュースを見ていたとある艦娘。固い表情で、手を握りしめながら無言でテレビを見つめる。

 

 「ねぇ…。ねぇ!」

 と、その艦娘に白露が声をかける。

 「あっ、なんだい?」

 「時雨、顔が怖いっぽい…。」

 「時雨?大丈夫…?」

 白露型の4人姉妹だ。中でも時雨は艦の時に佐世保で生まれていた為、思い入れの強い…。ふるさとのような場所だった。勿論、佐世保生まれの艦娘は他にも沢山居る。だが、時雨はちょっと違った。[呉の雪風 佐世保の時雨]と歌われるほど、佐世保を代表する駆逐艦だったからだ。そして、名原提督にも以前大きなお世話になったことがある。時雨は、心のふるさとをメチャクチャにして名原提督を殺した深海棲艦に対して怒りで震えていた。

 

 「名原提督…。僕も助けに行きたかった…。」

 

 と、夜の横須賀鎮守府の運動場の片隅のベンチで時雨は考え込んでいた…。

 

 

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