横須賀鎮守府に着任した米国艦娘の中に居た、正規空母 ワスプ 。かつての敵で自衛隊初の戦争を経験した みらい が感じた心境とは…。
米国艦娘達の着任式が終わったあと、みらい は妙に暗い表情をしていた。
「どうしたの みらい ?」
「あ、ゆきなみ姉さん…。」
みらい は米国艦娘の空母ワスプの事について話した。
「なるほどねぇ…。」
「専守防衛とはいえ、2000人以上が乗っていた空母を私の一発で沈めたの。自分の身を守るとはいえ、あの時初めて戦争の怖さを知ったの…。」
と、涙ながらに話す みらい 。ゆきなみ は みらい を支えながら夜遅くまで話に付き合った。
1月22日 0900 横須賀鎮守府
ブロン! ブロロロロロロ…。
艦積機試験飛行場で朝早くからエンジン音が響き渡る。柏木提督と一航戦の観測下のもと、米国空母組の機体の性能チェックが行われようとしていた。
ブロロロロロロ…!
滑走路から米国の星印が付いたドーントレスが編隊で飛び立つ。それと一緒に加賀の偵察機 彩雲 が飛び立つ。ドーントレスの搭載している爆弾は演習弾。港内の的に当てるという、ここ横須賀鎮守府に着任した空母艦娘伝統のテストが行われていた。
編隊で横須賀上空を一周したあと、各機急降下して的へ向かう。爆撃機と戦闘機をあわせ持つドーントレス。射撃からの爆撃で、約7割の命中率を出した。
「ほぉ、なかなかやるなぁ~。」
柏木は呟いたが、加賀は納得していない。
「提督。まだ、戦闘能力向上の余地があります。私たち一航戦が空中戦闘の指導しましょう。」
と、加賀は改良の余地ありと話した。二人が話していると…。
「あっ、提督。加賀さん。おはようございます。」
と、ゆきなみ や みらい を始めとする護衛艦娘がやって来た。今日は対潜戦闘の哨戒訓練の日だ。
「あっ…!」
遂に みらい と ワスプ の目があった。無言で向き合う二人。
「ワスプ?どうかしたの?」
と、サラトガが声をかける。
「いや。サラトガ~何でもないわ。」
と、ワスプ は返事するが…。
「あの事忘れないから…。」
と、みらい の耳元でワスプが呟いた。
冷や汗が顎に垂れてくる。ふと見ると手が震えていた。
「みらい?…みらい!」
ゆきなみ に声をかけられてハッ!となる。やはり、みらい と ワスプ。二人の間には歪みがあるようだ。
キイイイイインン…。
みらい達のSH-60J/kが滑走路から飛び立つ。今日の訓練はアクティブソナーによる哨戒と訓練用対艦ミサイルによる目標撃破だ。柏木は様子を見ていたが、何か みらい の様子がおかしいことに気づく。いつもは百発百中の みらい が珍しく的を外したのだ。コンピューター制御されているのにも関わらずだ。
その夜、柏木は みらい を提督室に呼び出した。
「どうした みらい? いつもは百発百中のお前が。」
「…。」
無言の みらい。やはり、米国艦娘の着任が関係あるようだ。
「まぁ、とりあえず飲みなさい。」
と、金剛が持ってきた紅茶を出す。
「…ありがとうございます。」
と、紅茶を飲む みらい 。一息入れた後、柏木が話始めた。
「みらい…。君を呼んだのは、いつまでも過去の出来事を抱えてほしくないからだ。」
うつむいたままの みらい に柏木は話しかける。
「確かに日本と米国…。昔は敵同士だったのは確かだ。君も見ただろ?先日の潮の事。」
柏木は潮の発砲事件について話始めた。
「君は、太平洋戦争の真っ只中に迷いこんで戦争を経験した。その経験は辛く厳しい物だったと思う。だけどな みらい? 昔は昔。今は今。人間同士の争いから未知の生物との戦いになっているんだ。君が経験した数々の記憶。辛いものがあると思うが、ここはひとつ我々に協力してくれないか?」
と、深々と柏木は頭を下げた。すると、みらい が重い口を開いた。
「…確かに、私の経験は貴重だと思います。でもっ!」
みらい は震えながら話した。
「2000人以上が乗っていたワスプを沈めたとき。私はボタンひとつを押しただけでした。あとは自動的にコンピューター制御されたトマホークが仕留める。まるで、戦争をしている実感が無いんです。あのドーントレスの特攻も今となっては現実とは思えない。でも、5人の隊員を見殺しにしてしまった。」
みらい の言葉は、近代化された兵器を使う軍人の気持ちそのものだった。実際、米軍で採用されている無人攻撃機のパイロット達は現実と戦場の差が分からなくなるという。ボタンひとつを押しただけで、敵を抹殺することができる近代兵器。みらい は改めてその恐ろしさを感じていたのだった。