米軍の正規空母ワスプと出会ったみらい。果たしてワスプはあの事を憎んでいるのか?それとも許してくれるのか?いずれにせよいつかはバレるであろう自身の正体をワスプに伝える。そう決めたみらいはある決断をする。
その夜、みらい は自身の艤装を見ながら昔のことを考えていた。
(あの戦争…。私が入り込んだせいで時代が大きく変わってしまった…。)
米軍陣地へのハープーン攻撃に空母ワスプのトマホークによる撃沈。キスカ島沖合での米艦艇の駆逐に戦艦大和への原爆搭載阻止の失敗。そして、戦場に散っていった仲間達。艦の時のことを思い出すと今でも震えが出てくる。
「トマホークミサイル…。」
みらい はトマホークの扱い方について迷いが起きていた。先日、着任した米艦娘のワスプ。専守防衛…。いや、自らの命を守るために放ったあの一発。それで彼女は沈んだ。あの時のことを、恐らくワスプは憎んでいるだろう。でも、今は艦娘だ。ひょっとしたら許してくれるかもしれない…。みらい はそのように考えるしか方法が無かった。
1月23日 0900 横須賀鎮守府 艦積機試験飛行場
みらい は 朝から空母ワスプのことを探していた。艦積機試験飛行場では軽空母達が練習に勤しんでいる。
「あっ?みらいちゃん?」
声をかけてきたのは瑞鳳だった。飛行場の片隅のベンチに座り眼鏡をかけて愛機の九九艦爆の整備をしていた。
ブロロロロロロロ…。
艦積機試験飛行場の上空を九七艦攻が編隊を組んで飛んでいる。
「んー。ワスプさんは見かけなかったわねぇ…。第一、今日ここは私たち軽空母や潜水空母組が使う日だからねぇ。」
と、眼鏡を外して答える瑞鳳。どうやらワスプはここには来ていないようだ。
「瑞鳳ちゃんありがとう!他のところ探してみるわね。」
瑞鳳にお礼を言って飛行場を出る。次に訪れたのは食堂だ。
「あら…みらいさん?まだ、食堂が開くまで時間あるわよ?」
食堂では鳳翔が昼食の仕込みをしていた。海外艦も増えてきたのでメニュー作成には苦戦しているようだ。
「ワスプさんは来ませんでしたか?」
と、みらい が訪ねる。すると、鳳翔は…。
「ああ。この前着任した米軍の子ね。今日は見てないけど、多分お昼になったら来るんじゃないかしら?昨日の夜、ここで金剛さん達と呑んでいたし。」
ということで、みらい は鳳翔の仕込みの手伝いをしながら待つことにした。そして、1130を過ぎた辺りから交代交代で艦娘達が昼食を取りに来た。勿論、お手伝いをしている駆逐艦達も集まってきた。今日の昼食のメニューはスパゲティーだ。ミートーソースと海鮮ホワイトソースの二種類にサラダと野菜スープに果物。基本的にはバイキング形式のこの食堂。お昼時になり続々と艦娘達がやって来る。そして…。
「今日のランチはスパゲティー♪」と、英語混じりの声が聞こえてくる。
「うん。私は海鮮ホワイトすぱげてぃ…?とやらにしようか。」
この声はサラトガと長門だ。二人は腐れ縁であるが、どうやら日米同士仲良くなったようだ。
「あれ?みらい じゃないか。今日の当番はお前か。」
と長門。みらい は長門とサラトガに対して、空母ワスプ に会いたいと申し出た。
そして…。
(来た…!)
アイオワ達と一緒にワスプがやって来た。
「大丈夫よ。落ち着いて話してきなさい。」
と、鳳翔が震える みらい の手を軽く握る。無言で頷いた みらい は食事をしているワスプの元へ向かった。
「あ、あのっ!初めまして、海上自衛隊の護衛艦 みらい です。」
突然声をかけられてアイオワは、ポカンとスパゲティーを口に入れる寸前で止まっている。
「あなたが みらいさん?」
最初に口を開けたのはミズーリだった。
「貴女、もしかしてあの戦場の謎の艦?」
「は、はい。」
「まぁ、ちょっと座って話を聞かせてくれないかな?」
と、ミズーリが椅子を出す。一方のワスプはこちらを睨んでいる。
「ここの鎮守府の皆さんは知っていることなのですけど…。実は、私は太平洋戦争を経験した艦なのです。」
~中略~
バン!
食堂にテーブルを叩く大きな音が響き渡る。その音で一瞬、賑わう食堂が沈黙に包まれた。
「んじゃ、アタシが沈没したのはあなたがヤったことなの!?」
ワスプはやはり怒っていた。あのときワスプは格納庫での爆発事故が原因ではないかと思っていたからだ。
「本当にごめんなさい!!!」
みらい が深々と頭を下げる。そして、タブレット端末でトマホークミサイルの写真を見せた。
「あっ、これミサイルね?私も末期の頃にハープーンミサイル積んでたから分かるわ。」
と、ミズーリ。空母なら確実に一発で仕留められるトマホーク。戦時中の艦にとって、まさに神の矢だった。
「サジタリウス…。聞いたことがあるわ。」
と、アイオワが話始めた。
「戦場伝説の中に異次元からやって来た艦があり、その艦はどの国にも属さず己を守るために戦った。そして、その艦の放つ矢は決して外れることのない神の矢であると。」
「ま、まさか!」
と、アイオワの言葉にサラトガが驚く。そして、みらい は話した。自身がその神の矢を放つ艦であることを。