スピリットが遊戯王モンスターになってた件   作:ドロイデン

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第二十羽 獄へ誘う天使

「……さて、どうしたものかな」

 

 初日が終わり、一度部室に戻ってきた俺たちに、劔菜先輩はため息を吐くようにそう呟く。

 

「……やっぱり、先輩もそう思いますか?」

 

「……そういうと、蓮が偵察した時もそう感じたか?」

 

「当然ですね……というか、対処法が決まったらまず見つからないですし」

 

 そう、それほどまでに凄いものだった。

 

 

 

 数時間前 獄将学園第一試合先鋒戦

 

「これより極将学園対吠総高校の先鋒戦シングルマッチを開始します」

 

「「デュエル!!」」

 

極将先鋒 LIFE8000

吠総先鋒 LIFE8000

 

 始まりはまるで嵐の前の静けさと言うような立ち上がりだった。

 

「俺はフィールド魔法『ユニオン格納庫』を発動し、その効果処理にてデッキから『A―アサルト・コア』を手札に加え、召喚!!」

 

『A―アサルト・コア』 ☆4 A1900

 

「フィールド魔法『ユニオン格納庫』の効果で、『アサルト・コア』に『B―バスター・ドレイク』を装備!!俺はカードを一枚伏せてターンエンド!!」

 

吠総先鋒 手札3枚 LIFE8000

フィールド

『A―アサルト・コア』 A1900

『B―バスター・ドレイク』 ユニオン状態

伏せカード一枚

 

 まずまずな出々し、それが吠総の先鋒に対して思った感想だ。【ABC】デッキの本命たるフィールド魔法を出して、恐らく次のターンには『ABC―ドラゴン・バスター』が出てきてもおかしくない。

 

「私のターン……ドロー」

 

 しかし、そんな状況でも相手の男は……なんの表情も動いてなかった。

 

「……私は手札から魔法カード『マジカルドロー』を発動します。自分は種族を一つ宣言し、デッキトップからカードを五枚確認し、その中に選択した種族があれば手札に加えることができる」

 

 そのカードの出た瞬間、少しだけ嫌な展開を思ってしまった。

 

「(最低一枚、最高だと五枚も手札に加えることができるカードだからな……本来なら『強化』オンリーなはずが、遊戯王らしく修正されたわけか)」

 

「……私は天使族を選択し、カードをチェックします。一枚目、天使族効果モンスター『オリンピアの天使 オク』、二枚目天使族効果モンスター『天使クレイオ』、三枚目速攻魔法『メロディアス・ハープ』、四枚目天士族モンスター『オリンピアの天使 ファレグ』、五枚目天使族効果モンスター『戦神乙女ヴィエルジェ』、よって四枚のカードを手札に加える」

 

「な!?」

 

 俺は驚くほかなかった。間違いない、あのデッキは……

 

「【天使ロック】……」

 

 その言葉が聞こえたのかは分からないが、獄将のプレイヤーはなぜかこちらを見て睨んできた。

 

「……私は手札のスケール8『宝の番人ズラトロック』とスケール1の『大天使イスフィール』でペンデュラムスケールをセッティング!!」

 

「ペンデュラムモンスターまで手札に居やがるだと!?」

 

 吠総の先鋒がそう叫ぶが、内心俺も同じ意見だった。まさかこんなところで出てくるとは全くの予想外だった。

 

「天より駆ける翼、気高きラッパを鳴らし進軍せよ、ペンデュラム召喚!!現れろ!!我が手札のモンスター達!!」

 

『オリンピアの天使 オク』 ☆3 A1000

『天使クレイオ』 ☆2 A800

『オリンピアの天使 ファレグ』 ☆5 A2200

『戦神乙女ヴィエルジェ』 ☆6 A2000

 

「『ヴィエルジェ』の召喚、特殊召喚時の効果で、ライフを1000回復、さらに手札から永続魔法『天の階』と『星空の冠』を発動し、バトルフェイズ、『オリンピアの天使 オク』で攻撃します」

 

「攻撃力1000のモンスターで攻撃だと!?跳ね返せ『アサルト・コア』!!」

 

「いえ、『オリンピアの天使 ファレグ』が召喚、特殊召喚されたターン、天使族モンスターはダイレクトアタックが出来ます、よってモンスター同士のバトルは発生しません」

 

「なんだと!?」

 

吠総先鋒 LIFE8000→7000

 

 そう、これが『オリンピア』シリーズのエースモンスター、『ファレグ』の能力だ。召喚されたターンの天使族限定とはいえ、ダイレクトアタック効果を付与するという点から、今もなおデッキにピン刺しされていてもおかしくない強力なモンスターなのだ。

 

(加えて、奴のフィールドには『ヴィエルジェ』、『ズラトロック』、『オク』と、強力なロックモンスターも多数あるからな)

 

「続けて『天使クレイオ』でダイレクトアタックします」

 

「くそ!!罠カード『聖なるバリア―ミラーフォース』を発動!!これでお前の全てのモンスターは破壊だ!!」

 

 確かにその通りだ。あのデッキに恐らく耐性効果を持つモンスターは存在しない、が、それと同時に一番の悪手だ。

 

「『ヴィエルジェ』の効果、天使族モンスターが破壊されるとき、墓地ではなく手札に戻す。この対象には『ヴィエルジェ』自体も含まれてるため、四体全てを手札に戻す」

 

「な!!そんなのチートじゃねぇか!!」

 

 だがそれこそがあのデッキが、環境的に古くなった今でもバトスピ界で活躍できる由縁だ。破壊しても手札に戻り、コアさえあれば再展開、さらにライフを回復と防御無視の攻撃、まさに鬼のようなデッキなのだ。加えて、

 

「破壊された『天使クレイオ』の効果で一枚ドロー。私はモンスターをセット、カードを一枚伏せてターンエンド」

 

極将先鋒 手札4枚 LIFE9000

フィールド

セットモンスター

『天の階』 永続魔法

『星空の冠』 永続魔法

伏せカード一枚

『宝の番人ズラトロック』 赤P8

『大天使イスフィール』 青P1

 

「俺のターン!!俺はユニオンしている『B―バスター・ドレイク』を特殊召喚し、『ユニオン格納庫』の効果で、『C―クラッシュ・ワイバーン』を『バスター・ドレイク』にユニオンし、三枚を除外!!機械合神!!『ABC―ドラゴン・バスター』!!」

 

『ABC―ドラゴン・バスター』 ☆10 A3000

 

「さらに『ゴールド・ガジェット』を通常召喚!!」

 

『ゴールド・ガジェット』 A1700

 

「『ゴールド・ガジェット』の効果で、手札の『アサルト・コア』を特殊召喚し、バトルだ!!『アサルト・コア』で守備モンスターを攻撃!!」

 

「守備モンスターは『天使クレイオ』、破壊されたので一枚ドロー」

 

「続けて『ドラゴン・バスター』でダイレクトアタック」

 

極将先鋒 LIFE900→6000

 

 ダイレクトアタックの衝撃を、奴はまるで何ともないように立ち続ける。

 

「『星空の冠』の効果発動、自分が1000以上の戦闘ダメージを受けたとき、デッキから一枚ドローする。そしてそのカードがレベル2以下なら特殊召喚できるが……生憎と違う」

 

「そのすまし顔が何時まで続くかよ!!『ゴールド・ガジェット』でダイレクトアタック!!」

 

 男はそういうが、ゴールドガジェットはピクリとも動かず、まさしく直立不動になっていた。

 

「な、なんで攻撃しねぇ!!」

 

「『宝の番人ズラトロック』のペンデュラム効果、相手のレベル及びランク3/4のモンスターのダイレクトアタックを封じる。ちなみにモンスター効果はレベル及びランク7/8のモンスターの攻撃を封じる」

 

 その説明に、会場が一層ざわめき出す。効果自体は聞いたことがあった俺も、まさか本物を見ることになるとは思ってもいなかった。

 

「くそ!!なら俺はメイン2に入り、レベル4の『アサルト・コア』と『ゴールド・ガジェット』でオーバーレイ!!エクシーズ召喚!!現れろ!!『武神帝―ツクヨミ』!!」

 

『武神帝―ツクヨミ』 ★4 D2300

 

「カードを一枚伏せ、『ツクヨミ』の効果発動!!ORUの『アサルト・コア』を墓地へ送り、残りの手札を墓地へ送り、二枚ドロー!!……俺はさらにカードを一枚伏せ、ターンエンド!!(伏せたカードは『激流葬』と二枚目の『ミラーフォース』、これでペンデュラムしようが、攻撃しようがぶっ潰してやる!!)」

 

吠総先鋒 手札1枚 LIFE7000

フィールド

『ABC―ドラゴン・バスター』 A3000

『武神帝―ツクヨミ』 D2300

伏せカード二枚(『激流葬』、『ミラーフォース』)

 

 何となく伏せカードが地雷な気がしてなら無いが、やはり俺は獄将のプレイヤーが勝つという感覚があった。

 

「私のターン……私は手札から『強欲で貪欲な壺』を発動」

 

「……確か、デッキから10枚除外して二枚ドローする奴か」

 

 そう、本来ならその通りだが、あのフィールドには『イスフィール』が存在する

 

「『大天使イスフィール』がPゾーンに存在する限り、私が発動する魔法カードにコストは発生しません」

 

「な!!それじゃあただの『強欲な壺』じゃねぇか!?」

 

 その通りなのだが、それ以上に厄介なのはもう一つの効果のほうだ。

 

「さらに手札から速攻魔法『サイクロン』を発動、貴方の伏せカードを破壊します」

 

「く、『激流葬』が破壊されたか(だがもう一枚の伏せカードは『ミラーフォース』だ、これでダイレクトアタックだろうが関係ねぇ!!)」

 

「『イスフィール』の第二のペンデュラム効果、1ターンに1度、発動した魔法カードの効果をもう一度続けて発動します。よってもう一枚の伏せカードも破壊します」

 

「な、なんだそりゃ!?」

 

「出たぁ……『イスフィールマジックコンボ』」

 

 出た当時はホントに酷かった。イスフィサンダンニレンダァとかイスフィストアタニレンダァなんて使われて、相手まともにブロックすらさせて貰えなかったし。しかも通常魔法にさえ範囲広がってるし……普通に制限カード待ったなしだからこれ。まぁバトスピカードに制限なんて無いも同然なんだけど。

 

「そして配置済みのペンデュラムスケールを使い、ペンデュラム召喚!!手札から『オリンピアの天使オク』、『戦神乙女ヴィエルジェ』、『オリンピアの天使 ハギト』、『オリンピアの天使ファレグ』、そして我がエース!!」

 

 『エース』、その言葉の発言に俺は刮目した。

 

「天駆ける白き翼、業火の光放ちて我を守護せよ!!『大天使アヴリエル』!!」

 

『オリンピアの天使 ファレグ』 A2200

『オリンピアの天使 オク』 A1000

『オリンピアの天使 ハギト』 ☆5 A2300

『戦神乙女ヴィエルジェ』 A2000

『大天使アヴリエル』 ☆6 A2500

 

「『ヴィエルジェ』の効果で、ライフを1000回復、バトル!!『ファレグ』でダイレクトアタック!!」

 

「ぐぅ!!」

 

吠総先鋒 LIFE7000→4800

 

「続けて『ハギト』!!」

 

「ぬぁぁ!?」

 

吠総先鋒 LIFE4800→2500

 

「最後に『大天使アヴリエル』で攻撃、この時、手札から速攻魔法『ブレイブフラッシュ』を発動!!手札またはフィールドのユニオンモンスターを、正しい対象のモンスターに装備する!!この効果で私は手札のこのカードを『アヴリエル』に装備する!!」

 

(来るか、『アヴリエル』の聖装が)

 

「巨大なる殲滅の翼、破壊の限りを照らし出せ!!『殲滅天使ネフィリム』よ、『アヴリエル』にユニオンブレイブ!!ユニオン効果で『アヴリエル』に装備したとき、攻撃力1500アップ!!」

 

『大天使アヴリエル』 A2500→4000

 

 それを装備した『アヴリエル』は、純白の一対二翼から、五対十翼の大翼に、上半身を金色に輝く鎧と紅いスカートが特徴的なモンスターだった。

 

「こ、攻撃力4000だと!!」

 

「神の怒りの裁きを食らえ……テンタロス・ブライトォ!!」

 

「ウァァァァァァ!!」

 

吠総先鋒 LIFE2500→0

 

 その攻撃はまさしく雷鳴を超えた轟雷という白い光がプレイヤーを襲い、衝撃でプレイヤーが壁に激突した。それを獄将の先鋒は気にすることなく振り返り、自分の控えへと去っていった。

 

 

 

 現在

 

「それに、あきらかにあれは普通のデュエルの範疇を越えてました」

 

 今思い返してみれば、デュエルのダイレクトアタックとはいえ、衝撃で壁に激突するなど、普通ならまず絶対にあり得ない。

 

「ちなみにですけど、先輩の感想は?」

 

「…………うむ」

 

「はっきりいって良いわよ劔菜、あれは普通じゃない、デッキもそうだけど召喚エネルギーなんて特にね」

 

 いい淀む先輩に、椿姫先輩が代わるようにそう言った。

 

「あの、俺はどっちの試合も見てないっすけど、そんなに凄かったんすか?」

 

「……プロである私が言うのも癪だけど、あれは間違いなくプロ級の実力者、デッキも、引きも、戦術も、どれをとっても一級品、そこに物理的な要因が加わるなら危険度高い。特に私達が見た先鋒戦のデュエリストとは相性最悪かもしれない」

 

 そう言う蘭の目は燃えてるものの、どこか冷めた感じが否めない。確かに『スカーライト』なら特殊召喚主体のあのデッキとは、単純に見れば相性が良いように見えるが、実際はダイレクトアタック中心のリサイクルデッキだ、しかも手札が万々増えるから、消費の激しい蘭のデッキでは対応が難しいのだ。

 

「マジかよ……そんなデッキと戦って勝てるんすか!!兄貴!!」

 

「……正直な話、ストレートは難しい。勿論勝つのがベストだが、明日の試合はオールシングルで、まだデュエルしてない祐司先輩が先鋒でデュエルしなきゃいけないし……」

 

「ハハハ、残念な話、僕のシングルデッキはそこまで強いものじゃないからね……ソリティアできなきゃ負けみたいなもんだし」

 

 楽観的に言ってるが、その実、言葉には悔しさがかなり滲み出てる。

 

「そして先輩以外は対策を取られてて不思議じゃない。俺のデッキも両方ともバレてるし、何より『セイメイ』デッキじゃ瞬殺されて終いだ……」

 

「となると、結局のところバレてないのは私の『不死ループ』だけか……ならば私が中堅に入ろう」

 

 そう言って劔菜先輩が中堅に入ることが決まった。

 

「……最後は……やっぱ椿姫先輩「何言ってるのよ、バカチン」椿姫先輩?」

 

「あんたが大将に決まってるじゃない。うちの最大戦力を使わないでどうするのよ」

 

 椿姫先輩のその言葉に、俺以外の全員が頷く。

 

「その通りっすよ、兄貴が居なかったら多分俺ら大会に出てなかったんすよ?中心である兄貴が出ないでどうするんすか」

 

「……タイトルキングに勝ったんだから、サクッと倒しちゃえば終わり、ただそれだけだよ、蓮」

 

「そうだな。何より、アイツらのデッキと戦うなら、アイツらのデッキの回し方を熟知してる蓮、君が出るべきだ」

 

「そうそう、それに僕らで二連勝しちゃえばいい話だし、蓮は姉さんでも弄ってリラックスしてれば「何言ってるのよアンタは!!」ゴホォ!?」

 

 まるで決まってるとでも言うような全員の口ぶりに、俺は唖然とした。

 

「け、けど俺が負けたら……」

 

「大丈夫っすよ、俺らは既に二勝してるんすよ?てことは上位二チーム入りは確実なんすから、地区大会本選に出るのは確定してるんす、練習試合だと思えば楽になるっす」

 

 亮の言う通りだが、それでも不安感は拭えないものがあった。

 

「それに、君はあの社長に頼まれてるのだろ?」

 

「あ……」

 

 そうだ、俺は確かに頼まれた。『バトスピカードの回収、または使い手を引き込む』……ならば。

 

「……はい」

 

「上々だ、私達に反対する意見は持ち合わせていない。頼んだぞ、蓮」

 

 そう言って置かれる先輩や、友人たちの手は、どことなく大きく感じた。

 

(勝ってみせる……それが俺の役割だとしたら)

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