Fate/Grand Order 正義の味方の物語   作:なんでさ

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気がつけばお気に入り数が21になっていました。マジですか・・・・・
最初に見た時は驚きの余り間抜けな声が出ました。
初投稿な上に碌に物語をかいたこともなかったので、一人でもお気に入りに設定して頂いたことが正直信じられませんでした。
皆さん、ありがとうございます。これからも拙作で楽しんで頂ければ幸いです。
それでは二話目始まります。


記憶

 カルデアの医療部門トップのロマ二・アーキマン・・・・・通称Dr.ロマンは困っていた。

 その原因はマシュ・キリエライトが連れてきた一人の少年だ。

 所長に待機を命じられ、特に仕事も無く暇だったため、隠し持っていたお菓子を持って空き部屋でサボろうと医務室を出ようとした時、二人がやって来た。

 なんでも、通路で倒れていて気が付いたら記憶喪失だったしく、それを発見したマシュが連れてきたのだとか。

 しかし、そのこと自体は問題ではない。

 サボろうとしていたとはいえ、病人がいるのならすぐに対処する。どこか抜けている彼だが、自身の職務を放棄する様な人物ではない。

 ならば何が問題かといえば、それは検査結果だ。

 彼女から事情を聴き、すぐさま検査を行ったが、しかし、件の少年から異常は見受けられなかった。

 ここカルデアには、その役割からあらゆる分野の最高の人材と設備が存在する。

 それは医療部門にも言えることで、患者に異常があったならすぐに発見することができる。

 だというのに、少年からは何の異常も発見できなかった。

 念の為に、記憶喪失のフリをしている可能性も考慮して幾つかのテストを行ったが、その様子も見られない。

 症状は出ているのに、その原因が現代医学では発見できない。

 となれば、少年が記憶を失った原因は別の所にあるということになる。

 彼にはその原因に心当たりがある。

 記憶喪失の原因が想像するものと同じだった場合、かなり面倒なことになる。

 しかし、自分は医師として患者を助けるだけだと、彼は喝を入れる。

 そうして彼は件の少年と再び向き合うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「色々と聞いたけど、念の為に今までの経緯をもう一度聞いていいかな?」

「はい、わかりました」

 

 マシュという少女に連れられて暫く、俺はロマニ・アーキマンと名乗った医療スタッフの検査を受けていた。

 脳の写真を撮ったり、瞳孔の動きを確認されたり、はたまたここに至る事情を聴かれたり。

 そうやって何通りかの処置を経て、今度はまた事情を説明することを求められる。

 この検査が始まってから二度目となるが、もう一度同じ説明を繰り返す。

 とはいっても、答えられることは殆どない。

 言えるのはいつの間にかここの通路で眠っていて、それを発見したマシュと話している間に自分が記憶喪失だと気付き。

 そこに現れたレフ教授という人物の助言でこの医務室にやってきた、ということだけだ。

 それを聞いた彼は数秒程難しい顔をして、幾つか質問していいか、と尋ねた。

 

「はい、大丈夫です」

「ありがとう。それじゃ・・・・・記憶がないって言ったけど、それは君の身の回りのことだけ?それとも、社会や生活に関することも?」

「自分の身の回りのことだけです。その他の社会や生活に関することは覚えています」

「じゃあ、その社会のことで中心となっているのはどの国かな?」

「そうですね・・・・・日本のものが多いです」

「ふむ、日本か・・・・・。確かに君の容姿はアジア圏特有のものだ。身体検査の結果を見ても、日本人のそれに近い」

 

 そう、俺の中にある社会の知識は日本が中心なのだ。

 自分に関する記憶の大部分は靄がかっているが、自分がどういった人種で、そこに属するものの在り方がどんなものかは鮮明に思い返せた。

 

「ちなみに聞くけど、日本のどこが一番印象深いというのはあるかい?」

「いえ、特にそういうのは・・・・・・・」

「そうか・・・・・・・」

 

 そう言って彼はまた難しい顔をして考え込んだ。

 暫くして、考えがまとまったのか、ようやく口を開いた。

 

「今の所、全生活史健忘の可能性が高いね。これは今の君みたいに、自分のことはわからないけど社会などに関する知識は残ってる状態だ。よく、映画やドラマなんかで使われるのはこれでね。主な原因は心因性で、稀に、頭部強打などの外的要因で発症することがある。この症状は徐々に記憶が戻ってくる場合が多い」

 

 その説明を聞けば、自身の症状はそう重いものでもないように聞こえる。

 しかし、彼の表情は決して明るいものではなく、凝り固まった表情筋は未だに変わらない。

 

「君には身体面にも精神面にも異常は無かった。勿論、記憶を失ったが故の影響も、君が嘘を吐いている可能性も考えた」

 

 それは、医学に関しては素人の自分にも分かる考えだった。

 心的な要因で記憶を失ったなら、何かしら心に引っかかるものがあるはずだ。

 体にも心にも問題が無ければ、記憶喪失というそもそもの前提を疑うのも当然だろう。

 

「けど、どっちも違った。君の心に痕跡が残っていることも、嘘を吐いている様子もなかったーー正直に言って、現代の医学でこれ以上できることはない」

「そう・・・・・ですか・・・・・」

 

 その答えに、落胆の色を隠しきれない。

 彼の言葉が正しければ自分はなぜ記憶を失っているかもわからず、最悪の場合、記憶が戻らないかもしれないのだ。

 自分がどこの誰かもわからないが、かつての記憶を取り戻せないことは、ひどく心を掻き乱すような感覚を覚えた。

 しかし彼は、そんな俺の内心には気付かず、言葉を付け加えた

 

「安心してくれ、何も、他に手がないわけじゃない」

「・・・・・え?」

 

 先ほどとは矛盾する言葉に、しばし思考がこんがらがる。

 手がないわけじゃない?

 でも、これ以上出来ることはないって・・・・・

 

「確かに、現代医学では出来ることはない。でも、それ以外の方法があるんだ」

 

 それ以外の方法。

 果たして、この相当に設備の整った医療施設で解決できない肉体の問題を、どうやって解決するというのか。

 

「唐突なんだけど、君は’’魔術’’って知ってるかい?」

「・・・・・え?」

 

 いったいどんな提案がされるのか。

 固唾を呑んで答えを待っていた耳に、ひどく場違いな単語が入り込んだ。

 いま、彼はなんといったのか。

 

・・・・・魔術?いや、それ自体は知っているけど・・・・・

 

「空を飛んだり、火を出したりする、あの魔術ですか?」

「うん、それで合っているよ。まぁ実際の所、漫画やアニメみたいに夢のあるものではないんだけどーーとにかく、さっき言った別の方法というのが、その魔術なんだ」

「・・・・・はあ?」

 

 今度こそ耳を疑った。

 現代医学で解明できない身体の問題を、魔術なんて曖昧かつ眉唾なお伽噺で解決しようというのか。

 

・・・・・あたま大丈夫か、この人。

 

 余りにも不可解な解決策だったため、ついそんなことを考えてしまった。

 彼はそんな俺の気持ちを察したのか、再び苦笑して、

 

「信じられないのも無理はないけどね。でも確かに存在するんだよ。実際、このカルデアにいる者の多くは魔術師かそれに関係する人物だ。そして、そんなカルデアで倒れていた君も僕らと同じというわけだ」

 

 その言葉を聞いて、本日何度目になるかもわからない驚愕を抱く。

 魔術師なんてものの実在。その事実すら信じ難いというのに、自分もその魔術師なのだと彼は言う。

 

「・・・・・それ、本気で言ってます?」

「勿論、本気さ。こんな時に冗談なんて言わないよ。実際、君が着ていた外套もかなりのマジックアイテムだしね」

 

 余計にタチが悪い、という言葉を寸前で呑み込む。

 いきなり、君は魔術師だ、なんて言われても信じられる人はいないだろう。

 しかし、いつまでも混乱していては話が進まないので、なんとか気持ちを落ち着かせる。

 

「・・・・・仮に魔術なんてものがあるとして、それがさっきの話とどう繋がるんですか?」

「うん、そこなんだけどね。さっき僕は君が記憶を失った原因がわからないと言った。それはあくまで医学の観点で見た場合で、魔術の観点から見れば話は変わってくるんだーー率直に言おう。君が記憶を失ったのは事故ではなく人為的に引き起こされたものだ」

「なっ--!?」

 

 今日一番の驚愕が俺を襲う。

 

・・・・・・俺が記憶を失った原因は人為的なもの?

 

 誰が、何のために?

 いや、そんなことよりもーー

 

「俺の記憶は戻るんですか・・・・・?」

 

 震える声で、疑問を投げかけた。

 そう。重要なのはそこだ。

 誰がこんなことをしたのか知らないが、今は些細なことだ。

 問題は、記憶を取り戻せるか否かということだ。

 

「戻るか戻らないかといえば、戻ると思う」

「そうですか・・・・・」

 

 その言葉に、強張った体がほぐされる。

 俺としては、二度と記憶が戻らないことも考えていたから、安心した。

 でも、もう一つ気になることがある。

 

「記憶はどれくらいで戻りますか・・・・・?」

「それを話す前に、君が何をされたのか説明しておくよ。まず、君は記憶を奪われたんじゃなく封印されたんだ。時限性のものだったらしくて、一定の時間が経てば封印が解けるものだったようだ。でも、何故かは分からないけど、施された術式が滅茶苦茶になってる。この分だとすぐに戻るかもしれない」

 

 その言葉に安堵する。

 記憶は戻るとしても、それが数年、数十年後なんていう可能性も考えていた。

 けど彼が言うには記憶が戻るのは、そう遠いものでもない様だ。

 

「あの、色々とありがとうございます・・・・・えっと、ロマニさん」

「そう畏らなくていいよ。僕のことは気軽にDr.ロマンと呼んでくれ。ここのみんなもそう呼ぶからね。まぁなんでそう呼ばれてるのかは知らないんだけど」

 

 それは・・・・・まぁ彼を見ていればわかる。

 所謂ゆるふわ系というやつで、そこにいるだけで場が和む様な雰囲気を持っている。

 その浮ついた気配が夢見がちにも見えて、そこを彼の名前と結びつけたんだろう。

 

「それじゃ、改めまして。ありがとうございますDr.ロマン。お陰で助かりました」

「気にしなくていいよ。これも仕事だからねーーさて、取り敢えず診察は終わりだけど、何か聞きたいことはあるかい?」

「えっと・・・・・そうですね」

 

 色々と聞きたいことはある。

 ここの事や、魔術の事

 でも、そんな事よりも、まず聞くべきことがある。

 俺を見つけてくれた、あのマシュという少女のことだ。

 彼女は俺をここに連れてきた後、暫く付き添ってくれていたのだが、途中で用事があると言って、どこかへ行ってしまったのだ。

 世話になった感謝の一言も告げられていないのだから、その内にお礼をしなければ。

 

「そういえば、さっきの娘はどこに行ったんですか?」

「マシュのことかい?彼女なら今日行われるファーストミッションに参加するため、中央管制室に行ったよ」

「ファーストミッション? それって一体・・・・・」

「そうだね・・・・・一応、ここのことを含めて事情を話しておかないとね」

 

 耳慣れない単語に、僅かに身構えてしまう。

 その言葉の響きは、とても穏やかなものに聞こえなかったからだ。

 だから、その意味を余さず記憶しようと彼の言葉に耳を澄ましーー今まさに彼が話し出そうとしたとき、照明が消えた。

 

「明かりが消えた?ここで停電が起きるなんて、何か--」

 

 次ぐ言葉は耳に届かず。

 

ーー巨大な爆発音が世界を震わせた。

 




記憶喪失云々のところはちょっと捏造が入ってます。
やっぱり最後の締めとつなぎが難しいです。皆さんどうやってるんでしょうか。

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