Fate/Grand Order 正義の味方の物語 作:なんでさ
少々忙しく、執筆が遅れてしまいました。次回はなんとか、早く上げれるように精進します。
話は変わりますが、現在の士郎はおなじみのユニクロではなく、赤原礼装を纏っています。
何故、アレを着ているかは追々説明されます。
それでは3話目、どうぞ。
光のない世界で、連鎖的に爆発音が鳴り響き、同時に地震の如く世界が揺れている。
サイレンのけたたましい音と点滅する赤い光が、異常な空気をより際立たせる。
「くそっ、一体なんだっていうんだ!」
突然の出来事に対応しきれず、椅子から投げ出された俺は起き上がりながら悪態を吐く。
「エミヤくん、怪我はないか」
「はい、なんとか。ドクターの方こそ大丈夫ですか」
「こっちも問題ない。でもいったい何が・・・・・」
そんな彼の気持ちに答えるが如く、アナウンスが流れ出した。
『緊急事態発生。緊急事態発生。中央発電所、及び中央管制室で火災が発生しました。中央区画の隔壁は90秒後に閉鎖されます。職員は速やかに第二ゲートから避難してください。繰り返します。中央発電所及びーーー』
「中央管制室で火災だって!? あそこには所長たちが・・・・・って、衛宮君!?」
アナウンスの内容を理解した瞬間、俺は走り出していた。
ドクター・ロマンが何か言っていたが、今は気にしている余裕はない。
中央管制室にはファーストミッションとやらの為に、多くの人が集まっている。
そんな場所で爆発が起きたらどうなるかなんて、考えるまでもない。
一刻も早く、助けに行かなければ。
・・・・・あそこには、マシュもいるんだ。
記憶を失い、倒れていた俺を見つけて手助けしてくれた少女。
助けてもらったのに、まだ碌にお礼もできていない。
・・・・・絶対に助ける。
意気込み、速度を上げる。
一人でも多くの人を救うために。
しかし、ここで一つの問題が発生する。単純な話、俺は中央管制室への道を知らないのだ。
当然といえば当然のこと。
普段であれば誰かに聞くなりいくらでも回避できることで--この緊急時では致命的な問題となる。
そもそも、自分の記憶さえ定かでない人物が、他人を助けようとすること自体間違いだ。
場合によっては、自分が行くことで怪我人を一人増やすだけかもしれない。
故に、ここは大人しく救助を待つか、アナウンスに従って速やかに退避するのが正しい判断だろう。
「ーーふざけろ」
一瞬、頭に浮かんだ思考を打ち払う。
正しい判断。
本来取るべき行動。
そんなことは誰に言われずとも理解している。自分が何をすべきか、そんなことは分かりきっていて--それを認められるほど、■■■■は利口ではない。
自分が躊躇し、その結果助けられる筈の命を取り零すなど、絶対に許せない。
--もう二度と、あんなことには。
今は彼女らを助けることだけを考えろ。それ以外のことは、全部後回しだ。
問題は中央管制室への道だが--
「フォウ!」
そんな時、走る俺の前に、一匹の白い動物が躍り出る。
眼前を走るその姿は、まるで俺を案内しているかのようで。
「ーー頼む、中央管制室へ連れていってくれ!」
「フォウ!」
返答は即座に、より速度を高める。
「ここか!」
たどり着いた先、紅蓮の炎があたり一面を覆っていた。
その中で、爆発の発生地であろう箇所がある。
しかし、それは決して自然に起きたような痕ではなく--
「まさか、人為的に引き起こされたっていうのか!?いや、それよりも今は--」
生存者を探さなくては。
燃え盛る炎に遮られながら、なんとか進んでいく。
「くっ--!」
なんて熱気だ。
肌が焼けつくように熱い。火に触れてもいないというのに、燃えてしまいそうな錯覚。
まるで蒸し焼きにでもされてるようだ。
この様子だと、直接爆発に巻き込まれた人たちはかなりの重症だろう。
急がなければ最悪の事態になりかねない。
一刻も早く救助しなくてはいけない。
「誰か、誰かいませんかっ!」
有らん限りの声で、呼びかける。
少しでも反応があれば。そんな、淡い願いを抱いてのことだ。
ーーわかっているのだ。本当は。
生存者など、一人もいないということを。
この管制室を覆い尽くす炎。これだけ火が回っているのなら、原因となる爆発の規模は相当なものだっただろう。
ならば、それに直接巻き込まれた人達がどれほどの衝撃を受けたか、想像に難くない。
生存は絶望的で、原型を留めているかも怪しくて--それでも、諦めるわけにはいかない。
現実は非情で、結果など分かりいっている。
それでもこの足を止めないのは、受け入れていないから。
もしかしたら奇跡的に生きている人がいるかもしれない。いま助け出せれば、救える人がいるかもしれない。
しかし、自分が諦めてしまっては助けられない。
掬えるモノも掬えない。
だから、諦めない。諦めなければ、きっと叶えられるモノがあると、奇跡が起こると信じて。
--■■■■が■■■■に救われたように。
「何をしているんだ、エミヤ君・・・・・!」
「っ・・・・・!?」
後ろからの声に驚き振り返る。
そこにいたのは、
「ドクター・ロマン・・・・・!?」
どうしてここに。その思考は一瞬で消え去った。
何てことはない。彼はこの施設の職員で、医師だ。そして、異常事態が起き、人がいる場所で火災が発生した。
ならば、彼が行動しない道理は無い。
なんにせよ助かる。今は少しでも人手が必要なのだ。
「ドクターも手伝ってくれ!俺はこっちを探すから、あんたはそっちを」
問答をしている余裕はない。
用件だけ言って、すぐさま救助に戻る。
「ーーいや、残念だけどここまでだよ」
しかし、彼はそれに待ったをかける。
静止する言葉にいかなる感情が宿っていたか、それを判別する事ができないほど、どこまでも平坦な声だった。
「それは・・・・どういうことですか」
「言葉通りの意味だよ。生存者はいない。無事なのはカルデアスだけだ。これ以上できることはない」
告げる言葉に澱みは無く、見え透いた事実をハッキリと口にする。
ーー生存者はいない。
その事実に、今更ながら胸をえぐられる。
判っていた。理解していた。
確定された事象。覆せない現実。
それでも諦めきれず、結局見つけられなかった。
それを認められず、彼に助けを求めた。
しかし、帰ってきたのは止めの言葉だった。
「・・・・・それでも、俺は」
まだ諦めきれない俺の耳に、アナウンスの声が入ってきた。
『動力部の停止を確認。発電量が不足しています。予備電力への切り替えに異常 が あります。 職員は 手動で 切り替えてください。隔壁閉鎖まで あと 50秒 中央区画に残っている職員は速やかに第二ゲートからーーー』
「・・・・・僕は地下の発電所に行く。カルデアの灯を消すわけにはいかないからね。君は急いで来た道を戻るんだ。まだギリギリで間に合う」
言うが早いか、ロマニ・アーキマンは走り出していた。
無論、彼とて救助を行いたいが、それ以上に優先すべきことがある。
現在、彼の頭を占めているのは三つの事柄だ。
一つは、地下発電所の様子。
一つは、如何にして、この事態を乗り切るか。
最後に、誰がこの事態を引き起こしたのか。
まず第一として、地下発電所を調べる必要がある。
地下発電所は、カルデアにおけるほとんどの電力を賄っている。もしあそこがやられていては、カルデアは終わりだ。
同時に、事態の沈静化を図る必要がある。カルデアにある各部門のトップ達は、自分を除いて、今日のミッションに駆り出されており、その殆どが中央管制室に集まっていた。
現在、各部門は指揮者不在の状態なのだ。無論、緊急時における臨時の人事は制定ああれている。しかし、飽くまで臨時は臨時。この事態にどこまで対応できるか。
場合によっては、自分が全体の指揮を執ることになるかもしれない。
そして最も重要なのは、事件の犯人だ。
厳重な警備とチェックのあるこのカルデアで爆弾を仕掛け、あまつさえ誰にも気付かせない。
恐らく、念入りに計画されたのだろう。問題は、外部の人間によるものか。それとも内部か。
犯行の鮮やかさと正確性から、後者と取る。外部犯であったなら、犯行に無駄がなさすぎる。これだけ正確かつ確実に爆発を引き起こすとなれば、自身が直接現場を見ておく必要がある。仮に外部の人間が実行していたとしても、カルデアの内部情報や日程などを伝える内通者が存在するはずだ。早急に、犯人を見つけ出す必要がある。
でなければ、誰が敵かもわからない状態で、事件を解決しなくてはならなくなる。
・・・・・いったい、誰が。いや、それ以前に・・・・・
何の為に。それが気になった。
特定の個人を狙ったものなら、爆弾など態々使う必要はない。
それこそ毒物などを飲ませるだけで事足りる。
仮に、あの場にいた全員を狙ったものだとしても、理由がない。
あの場には重要な立場にいるものも、そうでないものもいた。地位や名声などという言葉とは無縁の人間もいた。
その全てを同時に葬り去ることに、何の意味があるのか。何の因果も関係性もなく、分野もバラバラな人間を消し去るメリットが存在しない。
となれば、ここに対する反抗勢力によるものかと考えたが、それも違うだろう。
人理継続保障機関フィニス・カルデアと名付けられたこの研究所は本来、一個人や団体に運営できるものではない。それは、その研究内容や規模からもわかる。
何より、“何処にも所属しない”雪山の一部を改造して建設するなど、あり得ないことだ。
これだけのものを建設・運営するとなると、巨大なバックアップが必要となる。それも、国家レベルのものだ。
だというのに、カルデアは存在し運営されている。
それが何を意味するかなど、言うまでもない。
このカルデアを承認し援助する組織の名は国際連合。俗に言う国連だ。
世界中の主要国家の殆どが加盟する国連。それが承認し援助するほどの重要性を、カルデアが持っていることになる。
その根幹たる研究内容。それが、人理の継続--即ち、人類の存続だ。
このカルデアは、人類の決定的な絶滅を防ぐという理念の下、活動している。
本来なら、信じてもらうことすら不可能な話。それを認めさせるのに、膨大な時間と準備がかかった。
その過程で多くの反抗勢力を”説得”して、最終的には国連の承認を得るにまで至った。
その時点で、反対するものはいなくなったと言っていい。何せ世界によって、その存在を許されたのだ、反対出来るものなどいるわけがない。仮にいたとしても、事を起こすのが遅すぎる。
本気で潰す気なら、カルデアが設立された直後を狙うべきだろう。
これらの理由から、反抗勢力による犯行でもない。そもそも以前反対していた勢力の全てが、現在のカルデアを支援しているのだ。その可能性は考えるまでもない。
ここまで考えて、始めに戻った。
ーー何の為に。
先に述べた通り、カルデアは人類の存続を担っている。そのカルデアを潰すということは人類を滅ぼすも同義だ。
まともな人間でなくとも、こんなことはしない。
どんな悪人も、人類が滅んでしまっては元も子もない。
・・・・・袋小路だな。
答えの出ない疑問に頭を振る。解決のしようがない問題を、今は脇に置いておく。
現在における最優先事項は地下発電所だ。
他のことは、後から考えればいい。
思考の海から抜け出した彼は、自身の役目を果たすために、より速度を高めた。
ーーしかし。だからこそ、気付かない。
自分が一つのミスを犯したことを。
ロマニ・アーキマンが走り出した後も、救助を続ける少年がいたことを。
彼は最後まで気付かなかった。
「ふざけるな・・・・・ッ!」
今の自分に出来ることなどないと。そんなことは分かっている。
所詮、自分は無力で、己すらもままならない存在だ。
誰かを助けることなどできないと、理解している。
・・・・・それが、どうした。
自分に出来ることはない。誰かを助けることは出来ない。
たとえそうだとしても。
「見捨てられるわけがないだろ・・・・・ッ!!」
己を鼓舞するように叫び、救助を再開する。
そう。その事実を認められるのは、我慢できる人間だけだ。
■■■■はそれを我慢できるほど、できた人間ではない。
故に、自分は全力で誰かを救うだけだ。
意気込み、視界を巡らせ。
--何かが動いた。
それを理解した瞬間、走り出していた。
この炎の中。絶対的な絶望の中。確かに、生きている人がいる。
ならば助けない道理はない。
「・・・・・・・・・・、あ。せん、ぱい・・・・・・・・・・?」
向かった先。
そこで蹲る人物を、見間違えるはずがない。
下半身を瓦礫に潰され、虚ろな目を向けてきたのは、俺を手助けしてくれた少女ーーマシュだった。
「待ってろ、今助ける・・・・・ッ!」
言うと同時に、瓦礫を動かそうとする。
しかし、人を押しつぶすほどの重量だ。そう簡単に動きはしない。
「くそッ・・・・・!」
「・・・・・・・いい、です・・・・・助かりません、から。それより、はやく--」
--逃げてください。
死にかけながらも、こちらを気遣う彼女の言葉。
怒りが込み上げてくる。
自分を助けようともせず、碌に知りもしない男の生存を願う少女の願いに、胸が掻き毟られる。
「馬鹿なことを言うな!そんな怪我で何考えてんだ、俺のことより今は自分のことだけ考えてろっ!!」
口にしながらも、手は決して休めない。
少しづつだが、瓦礫が動き始めた。
これなら、なんとかなるかもしれない。
そう考えて、必死に身体を動かす中で視界に入った何か。
--星が、紅く燃えていた。
「--ぁ」
『観測スタッフに警告。カルデアスの状態が変化しました。シバによる近未来観測データの書き換えをします。近未来百年までの地球において人類の痕跡は 発見 できません。人類の生存は 確認 できません。人類の未来は 保証 できません』
その言葉が何を意味するのかは解らない。
しかし、それにどうしようもないほどの怖気を覚えた。
「カルデアスが・・・・・真っ赤に、なっちゃいました・・・・・いえ、そんな、ことより----」
『中央区画隔壁 封鎖します。館内洗浄開始まで あと 180秒です』
「・・・・・隔壁、しまっちゃい、ました ・・・・・もう、外に、は--」
言葉は最後まで続かない。
続けるまでもないと思ったのか。
或いは、続けるほどの体力も残っていないのか。
どちらにせよ、同じこと。隔壁は閉鎖され、彼らは二度と外に出られない。
「クソ・・・・・すまない、マシュ。間に合わなかった・・・・・」
あの、カルデアスとかいうのに気を取られ過ぎた。
あれに意識を向けなければ、間に合ったかもしれない。
--なんて間抜け。
唯一残っていた奇跡を、他でもない、自分が摘んでしまった。
その事実に、頭が沸騰しそうになるが、それをなんとか鎮める。
・・・・・冷静になれ。
ここで憤っていても仕方ない。
いま考えるべきは、どうやって脱出するかだ。
しかし隔壁は閉鎖されてしまった。もはや逃げ道はない。
・・・・・だから、なんだ。
確かに希望なんてないのかもしれない。
助かる道などないのかもしれない。
しかし。例えそうだとしても。
諦めてしまっては、本当に終わってしまう。
そうだ。諦めない限りは、まだ終わらない。
道を探せ。無ければ自分で創れ。
「心配するな。なんとかする」
「・・・・・せ、ん、ぱい・・・・・」
俺を呼ぶ声に力はない。寧ろ、さっきより弱くなっている。
時間は無い。急がなくては、脱出以前にマシュが保たない。
視線を巡らせる。
これだけの施設なら、緊急時用の脱出口があるかもしれない。
・・・・・ダクトのようなものもあるが、通れるか。
いや。仮に通れたとして、下半身が動かず上半身も弱ったマシュでは移動できない。
また、火災によって生じた煙が、絶え間なく流れている。入ったが最後、息ができない、なんてこともあり得る。
これは、最終手段だ。
一先ずは、他の出口を探すことに専念する。
マシュの上の瓦礫を退け、彼女を背負う。
「ちょっとだけ、我慢してくれ」
「・・・・・は、い・・・・・」
弱り切った声で返事を寄越してくる彼女に、律儀なヤツだな、と苦笑する。
壁伝いに移動しながら、少しの手がかりも見逃さないように、意識を集中する。
だからだろうか。
再びアナウンスが流れたことに、気付かなかったのは。
『システム レイシフト 最終段階に移行します。 座標 西暦2004年 1月 30日 日本 冬木』
『ラプラスによる転移保護 成立。特異点への因子追加枠 確保。アンサモンプログラム セット。マスターは最終調整に入ってください』
『・・・・・警告 コフィン内マスターのバイタル 基準値に達していません。レイシフト 定員に 達していません。該当マスター検索・・・・・発見しました。適正番号、及び該当データ検索・・・・・・・・・・該当なし。データを再設定。新規情報を更新。適正番号48番を新規マスターとして承認。アンサモンプログラム スタート。霊子変換を開始します』
「・・・・・・・・せん、ぱい・・・・・手を、握って、もらえ、ますか?」
「・・・・・ああ、お安い御用だ」
バランスなんかを考えると、するべきではないのだが、この程度で彼女の気が済むのなら、安いものだ。
『レイシフト開始まで あと3』
「--ッ!?」
そこにきて、アナウンスにやっと気付いた。
『2』
気づかなかった己の不甲斐なさを恨みながら、その声に意識を向ける。
『1』
しかし、その意味を理解するより早く--
『全行程 完了。ファーストオーダー 実証を 開始します』
--俺の意識は、闇に呑まれていた。
今のところ関係ありませんが、本編か番外で殺人貴とか姫君とか二十七祖とか出したいな〜と思うこの頃。
出したとして、原作に出てないキャラもいるからから少々オリジナルっぽくなってしまいそうなので悩みどころです。
皆さん、如何でしょうか?