Fate/Grand Order 正義の味方の物語 作:なんでさ
話は変わりますが、fgoにクレオパトラと黒騎士ブラドが出るとか。まさか、ここで入れてくるかと驚きました。ブラドさん狙いでいきたいが、7章に出てくるであろうエンキドゥのためにとっておきたい。悩みどころです。
廻りだす歯車
全身が浮遊しているかのような感覚。
意識が覚醒する兆し。
「・・・・・さっきから、こんなのばかりだな」
ぼやきながら、肺に溜まった空気を吐き出す。
背中に感じる感触は、最初に目覚めた通路のように平坦なものではない。
どちらかといえば、アスファルトのようなゴツゴツしたものだ。
「・・・・・いったい、何が起きたんだ?」
体を起こしながら呟く。
あの時、マシュを背負いながら脱出口を探していた俺は、突然不思議な感覚に包まれたと思ったら、次の瞬間には気を失っていた。
爆発が起きたわけでもなければ、火や煙に意識を持っていかれたのでもない。
夢か、或いは気付かぬ間に死んでしまったのかと思ったが、感覚はちゃんとあるし足だって付いている。
本当に、何があったのか。
疑問は尽きないーーただ、一つだけわかることがある。
・・・・・さっきので感覚が麻痺したか、それとも--
異様なほど冷静な自分に、呆れてしまう。
何せ、俺の目の前には、さっきよりも更に酷い絶望が鎮座しているのだから。
紅い世界。
あらゆる命が消え失せた大地。
ぱちぱち、と音を立てる炎が、全てを焼き尽くしていく。
生の営みが行われていたであろう建物は、悉く崩れ去り、無残な瓦礫となり成り果てている。
何もかもが死んだ世界。
正真正銘の地獄が広がっていた。
地獄の中を歩く。
何が起きたのか。ここは何処なのか。それらの疑問をひとまず無視する。
先ずやるべきこと。それは、マシュの捜索だ。
俺が目覚めた時、彼女は傍にいなかった。決して離さぬと誓った手も握られてはいなかった。
彼女もここにいるのか。それとも元の場所にいるのか。
どちらかは分からないが、一先ず前者と考えて行動する。
彼女は、素人目に見ても死に体だ。長時間放置すれば、命はない。
一刻も早く見つけ出す必要がある。もたついている暇は無い。だというのに--
「・・・・・・・・・・くそ」
不快感がこみ上げてくる。
頭が割れるように痛む。
一瞬でも気を抜けば、せり上がってくるものを抑えられそうにない。
なにより--
--ノイズが走る。
ザザザザ ザザザザ
燃える街並み。
ザザザザ ザザザザ
崩れ落ちる建物。
ザザザザ ザザザザ
死に絶える人々。
ザザザザ ザザザザ
見上げた先、黒い太陽が--
「・・・・・・・・・・っ!」
脳髄が白熱する錯覚。
走り続けるノイズ。
散り散りに映る映像。
それは紛れも無く、■■■■の原初の風景。
「一体、何だっていうんだ・・・・・・・・・・」
知っている/知らない筈の記憶に戸惑う。
俺はこんなものを体験したことはない・・・・・はずだ。
ならば、昔見た映画か何かの映像かーーそこまで考えて、今の自分に記憶がないことを思い出した。
まったくもって笑ってしまう。記憶が無いのに昔などと、よくも考えたものだ。
大方ここの空気に当てられたのだろうと、当たりを付ける。
本調子でない頭で考えていた、その時--
--何かが動いた。
視界の端。確かに、動くものを捉えた。
それに気づいた瞬間、すぐに足を向ける。
全身を襲う不快感は力づくで捩伏せる。
生存者か。或いは、彼女か。
どちらにせよ、急いで確認する必要がある。
・・・・・待っていろ。
限界の速度をさらに上げる。
手遅れにならぬように。
しかし、実際の所。
彼を待ち構えていたのは生存者でもなく、ましてやマシュ・キリエライトでもない。
向かった先で、彼は世界の裏側を見ることになる。
さっき動いたものの姿を探し求めて、走ること2分。
目的の場所にたどり着くも、彼が望んだ人の姿はない。だが--
「----!」
息を呑む。
驚愕の言葉が溢れなかったのは、ただの偶然だ。
今日一日、色々なことがあった。それでも、眼前の存在は異常に過ぎた。
向かった先、待ち受けていたのは、武器を持った無数の骸骨の化け物だった。
・・・・・なんだ、あれは。
目も鼻も無く、無数の牙が付いた、何かの動物の顎のような頭。
筋肉らしきものも無く、どのように動いているのか謎だ。
そもそも、生きているのかどうかもわからない。
大凡、通常の生物とはかけ離れた異形の姿だ。
余りにも日常離れした存在に思考が停止する。
それがまずかった。
--殺気。
ゾクリと、総身が粟立つ。
迫る骸。振るわれる刃。
--回避をっ・・・・・!
体を動かす。
しかし、一足遅い。
ガラ空きの胴体に向かって、剣が振り抜かれる。
ガン、という金属特有の音。
鉄と鉄がぶつかり合った、無骨な響き。
--何故、そのような音が鳴るのか。
本来、人体を切断した時に、金属音など生じる筈はない。
ならば、何故--
--視線の先に、答えを見る。
先程まで、何もなかった彼の手の中。
そこに握られた、二振りの無骨な短剣が必殺の一撃を斬り払っていた。
--イメージは撃鉄。
「こ、れは--」
彼は、その一部始終を見ていた。
あの一瞬。この身が切り裂かれそうになった瞬間。
無意識の内に体が動き、どこからともなく現れた剣で迎撃していた。
「------」
手の中の剣を握りしめる。
ずっしりと重い二振りの短剣は、一見、鉈のようにも見え、その構造から中華刀を彷彿とさせる
一方は、亀甲紋様がある漆黒の剣。もう一方は、穢れのない白亜の剣。両方共、鍔の中央に太極図が描かれている
何故、こんなものが存在するのかは解らない。
しかし。同時に、一つの納得を得る。
この剣があるのは、当たり前のことなのだ。
人間が生きるために呼吸をするのと同じこと。
これがあって、俺が成立し。これがあっての、俺なのだ。
何故なら、この体は--
「ーーーー」
剣を構える。
先程、剣を弾かれた化け物は、まるで驚きを得ていなかった。
驚くほどのことではなかったのか。それとも驚くという機能自体が存在しないのか。
どちらかは知らないが、気にかけている暇はない。
今は、降りかかる火の粉を払うことだけを考える。
再び、剣が振るわれる。
「ふっ--!」
迫る凶刃を、白の剣で弾き返す。
衝撃で、骸が体勢を崩す。
その隙は見逃せない。
がら空きの胴体を、黒の剣で薙ぐ。
異形の体は、あっさりと切り裂かれた。
--いける。
この骸骨、見た目こそ凶悪だが、戦闘力は大したことはない。
武器を扱う腕も並程度。力や速度も、俺の身体能力で、十分対応可能。
「っ・・・・・、はぁ--ッ!」
続く槍の一撃を、体を反らすことで回避。
槍が引き戻される前に、骸骨の頭上から剣を振り落とし斬り裂く。
直後、後ろから別の骸骨が大剣を横薙ぎに振り払ってきた。
迎撃は不可能と判断。
勢いを殺さず、前方に倒れる。
標的を失った大剣は、虚空を斬り裂くに終わる。
前に倒れた俺は、大地に手をつける。そのまま倒立の要領で足を蹴り上げ、敵の武器を蹴り飛ばす。
勢いの付いた蹴りを巨大な武器に受けたことにより、骸骨は耐えきれず、後ろに倒れ込む。
それを、敵が起き上がる前に体勢を戻し、その頭を踏み砕く。
--この調子なら。
予想以上の手応えに、余裕が出てくる。
--それが命取りだった。
「・・・・・ッ!?」
地中より、突如として槍が現れた。
軌道は直進。狙いは--
・・・・・頭か!
「くっ・・・・・!」
直前で気付いたおかげで間一髪、回避に成功する。しかし--
・・・・・拙いーーっ!
いきなりの行動だったため、体勢が崩れてしまった。
これ以上は続かない。
そして、そのような隙を、敵が見逃すはずはない。
「っ・・・・・!」
新たに現れた大剣持ちが、長大な刃を振り下ろしてくる。
「こん、のっ・・・・・!」
不完全な体勢のまま、さらに無理を通す。
迫る刃。それを、眼前で交差した双剣で防ぐ。
「づっ・・・・・!」
大質量の一撃を受けた体は、体勢が崩れていたこともあり、あっさりと吹き飛ばされる。
「がっ・・・・・!?」
勢いを殺せぬまま、後ろの瓦礫に背中から激突する。
・・・・・まずい!
現状が、自身の死に繋がることを理解する。
故に、一刻も早く体勢を立て直す必要がある。
しかし、背中を強打したことにより、一瞬、呼吸が止まり、体もすぐに動かない。
このままでは、次ぐ一撃を防ぐことは出来ない。
・・・・・動か、ないと。
それでも、なんとか移動しようと、痛む身体に鞭を入れる。
--だが、遅い。
前方。剣を持った骸骨の更に後ろ。別の骸骨が、矢を番えている。
限界まで引き絞られた弦から、必殺の一撃が放たれる。
ガン、という音。
再び防がれる死の一撃。
しかし、それを成したのは陰陽の双剣ではない。
死を受け入れるしかなかった少年の眼前。
黒い軽鎧を纏い、巨大な盾を持った少女。
「ご無事ですか、先輩っ!」
マシュ・キリエライト。
少年を見つけ、彼が探していた少女が、そこにいた。
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皆様方、これからも拙作をよろしくお願いします。