Fate/Grand Order 正義の味方の物語   作:なんでさ

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最近、というより最初の方からですが、全然サブタイトルが思いつかない。これにかなり時間を取られる。別に無くてもいいんですが、やったからにはちゃんと最後までつけたい。あと文才が欲しい。切実に・・・・・
それでは、6話目どうぞ。


邂逅

--地獄の中を赤い影が駆ける。

 

 化け物共と襲われる女性の姿を視界に収めた瞬間、傍らの少女の制止も聞かず走り出した。

 走り難い瓦礫の上を一切速度を落とすことなく走り続ける。

 

「-----っ」

 

 現状に歯噛みする。

 走り続ける足は既に最高速度。十数秒もあれば辿り着けるだろう。だが--

 

・・・・・間に合わないっ--!

 

 対象との距離がありすぎる。

 彼が十数秒で辿り着くなら、化け物は一秒と経たずに刃を振り下ろせる。

 どれだけ急いでも、敵の方が早い。

 一瞬の内、何の抵抗も無く彼女の体は切り裂かれるだろう。

 

--ならば、どうする。

 

 今からでは間に合わない。

 どうやっても届かない。

 

--ならば、間に合う物を。届く物を用意すればいい。

 

 走りながら、自己へ埋没する。

 灰色の画面に走るノイズ。散り散りに映る映像。

 その隙間、脳裏に浮かぶ赤い騎士。その手には。

 

--イメージは撃鉄。

 

 あの骸を穿つモノを生み出す。

 難しい筈はない。不可能なことでもない。

 もとよりこの身は、ただそれだけに特化した--

 

「投影<トレース>・・・・・開始<オン>ッーー!」

 

 紡がれる言霊。

 脈動する左腕。全身を見えないラインが通っていく錯覚。

 直後、光が集い、形を得ていく。

 

ーー顕現。

 

 右の矢を左の弓に番える。

 対象との距離は直線でおよそ300m。障害物は無し。

 

ー-中る。

 

 イメージは問題ない。

 これより放つ矢は、確実にあの骸を穿つ。

 限界まで引き絞られた弦から閃光が放たれる。

 同時、残心もせず再び走り出す。

 放たれた矢を確認する必要はない。

 中ると想像できた矢が中らぬ道理は無い。

 故に、今すべきは、一刻も早く彼女の下に辿り着くことだけだ。そして--

 

「ーー待ってろ。いま助ける」

 

 矢は寸分違わず骸を穿ち、俺は何とか間に合った。

 後ろの彼女は限界だったのか、俺が辿り着いた瞬間に気絶してしまった。

 骸共は、突然現れた俺を脅威と認識したのか、彼女に向けられていた殺意の矛先を俺に変える。

 

・・・・・これでいい。

 

 敵の注意を彼女から逸らすことができた。

 後は、こいつらを倒すだけだが--

 

「やぁあああああッ!」

 

 後方より現れた黒の影が、先頭にいた骸共を吹き飛ばす。

 良いタイミングだ、とひとりごちる。

 それが誰かなど確認するまでもないだろう。

 マシュ・キリエライト。

 俺と契約したデミ・サーヴァントたる少女が、身の丈を超える大楯を振るった。

 

「お怪我はありませんか、先輩・・・・・!?」

 

 俺がいきなり行動したためだろう。かなり焦って来たようだ。

 その証拠に、後ろの女性のことも気付いていない。

 

「ああ、俺は問題ない。それよりも、後ろの彼女が心配だ」

「後ろって・・・・・・・・なっ!?」

 

 そこで、漸く女性に気付いた彼女が驚愕の声を上げる。

 気持ちは分からなくはないが、今は敵に集中してもらわないと。

 

「彼女のことは一旦後回しだ。先ずはこいつらを蹴散らすぞ」

「っ!・・・・・了解です、マスター。指示をお願いします」

 

 かなり動揺していたが、すぐに気持ちを切り替えてくれた。

 少々あの反応が気になるが、それは後だ。

 気絶した女性は一見無傷だが、詳しく診てみないと分からない。

 早急に確認する必要がある。

 

「俺が斬り込む。マシュは彼女の護衛と俺が取りこぼしたやつを倒してくれ」

「はい。了解しまし・・・・・って、せ、先輩!?」

 

 言って、即座に走り出す

 マシュは俺の指示に困惑しているようだ。恐らく、逆のものを予想していたんだろう。

 しかし、それはできない。

 強力な力を持っているとはいえ、戦闘に不慣れな彼女が三十近い敵を相手にするのは危険だ。あの大盾も集団戦には向かない。

 それなら、盾持ちの本分である防衛戦に徹する方が効率的だ。

 俺なら集団戦も恐らく行えるし、双剣という性質上、対多戦闘も問題ない。

 それに、女の子を先頭に向かわせ自分は後ろで見ているなど絶対にできない。よって、敵陣へは俺が突っ込み、後ろは彼女に任せる。

 どういうことですかぁー!? という声が後ろから聞こえてくるが、気にしている暇はない。

 後で怒られるだろうなぁ、なんて考えながらも、刃を振るっていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

--何故こうなったかといえば、色々と理由はあるだろう。

 

 自身の性格。自らの適性の無さ。過去の事件。

 考えられる要因は幾つもある。

 ただ、それがいつからといえば。

 自身に誇りを持っていた彼女が、周囲への劣等感によって雁字搦めになってしまったのが、いつからだったかといえばーーそれは所長の座を受け継いだ頃からかもしれない。

 故に、契機はあの時。

 尊敬していた、胸を穿たれて父が死んでいる様を見たあの時なのだろう--

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・う、ん」

 

 意識が覚醒し、ゆっくりと瞼を開く。

 視界にはナイロンでできた天井。おそらくテントの中だろう。

 

「ここは・・・・・・・・・・」

 

 このような場所に自分がいることに困惑する。

 ついさっきまで、管制室でファーストミッションの指揮を執っていたはずだ。

 

「どうなってるのよ・・・・・」

 

 何がどうなっているのか。全く分からない。

 とにかく、外に出て状況を確認すべきだろう。

 テントの出入り口を開き、外に出る。

 外の光景は、一言で言えば地獄のような風景だった。

 燃え盛る炎。瓦礫だらけの街。

 そこは予定されていた特異点、冬木市だった。

 そこまで把握して、何が起きたのか思い出す。

 

「-----っ!」

 

 群がる化け物。振り下ろされる刃。迫り来る死。

 自分の死は確定されていて--

 

「・・・・・わたし、何で--」

 

 生きているのか。

 そう言う前に--

 

「良かった。目が覚めたみたいだな」

「え・・・・・・・?」

 

 背後からの声に驚き振り向く。

 そこにいたのは、赤い外套を纏った一人の少年。

 赤銅色の髪と力強い琥珀色の瞳。

 身長こそ高くないものの、引き締まった体から、かなり鍛えていることが窺える。

 赤い外套からは、高い魔力と神秘を感じられ、それが一級の魔術礼装だということが分かる。

 しかし、何より驚いたのは彼の声。

 あの時、死の一瞬に聞こえた、あの声だった。

 

「どうだ。何かおかしなところは無いか?」

 

 聞かれた内容が一瞬分からず--直ぐに何のことか思い至った。

 

「ええ。少々の気怠さがあるだけで、特に問題はありません」

「そうか、それなら良かった」

 

 安心したように笑った彼は、こちらに水筒を渡してくる。

 それを受け取り、一気に飲み干す。

 正直に言って、かなり喉が渇いていたから助かる。

 本当は、得体の知れぬ相手から渡されたものを飲むなど危険しかないのだが、彼のことを見ていると、大丈夫だろう、と根拠の無い確信を持ってしまう。

 

「・・・・・ふぅ。ありがとう。喉が乾いていたから、助かったわ」

「お礼はいいよ。俺が用意した物じゃないしな」

 

 そうなの? と疑問を溢しそうになったが、もっと大事なことがあるので押し留める。

 単純な話、彼が誰なのかを確認する必要がある。

 恐らく、カルデアの人間ではないだろう。

 これほど特徴的な人物なら、忘れるはずがない。

 彼の様子からして、敵ではないと思うが・・・・・

 

「・・・・・それで、貴方が何処の誰なのか教えて頂ける?」

 

 彼は一瞬だけ、きょとんとした後、何故か苦笑を浮かべた。

 

「ああ、そうだったな。すまない、すっかり忘れていた。でも、その前にもう一人のところへ行こう。色々あってさ。一緒に説明したほうが早いだろうし」

 

 こっちだ、と言って、私に手招きする。

 彼の言う、もう一人というのが気になるが、今はついて行くしかない。そして--

 

「どうだ、変わったことはないか」

「はい。今の所、敵襲もありません」

 

 そうか、と返す彼に、話を聞く余裕は無い。

 というより、頭が追いつかない。

 何故。どうして。

 疑問ばかりが止めどなく湧いてくる。

 だが、落ち着いて問わねばならない。

 視線の先にいる少女。

 その人物を、彼女が間違えるはずがない。

 

「これは一体どういうことなの--マシュ!」

 

 叫びを上げ問い掛ける。

 その先にいるのは、マシュ・キリエライト。

 カルデアの職員にして、彼女が最も恐れる人物だった。

 

 

 

 

 

 

 暗い洞窟の最奥。とある儀式の心臓部たる場所。そこにある二つの人影。

 

「・・・・・では我々も動くのかね、■■■■」

「いいえ、その必要はありません。私達はこのまま、これを守ります。もし彼らがここに来て、これからの戦いに耐え得ると判断できたなら、その時は彼らに託しましょう。それまでは--」

「ふむ・・・・・了解した。では今まで通り、私は門番に徹しよう」」

 

 そこで話は終わりなのか、片方は踵を返し、元いた場所へ戻っていく。

 もう一方はその場に佇み、物思いに沈む。

 脳裏に浮かぶのは、一人の男。

 彼女がずっと見守ってきた、嘗ての少年の面影を残す青年。

 

「・・・・・・・■■■」

 

 巨大な杯の前。少女は一人、その名を呟いた。




ハロイベが楽しすぎる。分かっていたことだが、トリスタンが一々笑わせてくる。本編でこれだったら、シリアスくんは仕事ができなかっただろう。無事ドスケベマシュも手に入ったので、後はイベントをこなすだけ。
小説の方もサクサク進めていきたいです・・・・・

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