Fate/Grand Order 正義の味方の物語   作:なんでさ

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約一ヶ月ぶりの更新・・・・・・。大変遅くなりました。
ええ、言い訳はしません。
EXTELLAにどハマりしてました。即効でメインストリーを終えてしまい、セイバーを出した後はひたすら無双してました。他にもギルとか呂布とかカルナとかランサーとか。1ステージで絶対に千越えしてました。
それが終わればクリスマスイベが始まり、サンタと共に靴下集めへ。イシュタ凛は出ませんでしたが・・・・・・。
待ってくださっている方々には申し訳ありませんでした。
お詫びにはなりませんが、今回は二話連続で投稿させていただきます。
またしばらく忙しくなるため、更新できない日が続くと思いますがどうかご了承下さい。
それでは8話目どうぞ。




深まる疑念

 

「これで最後か」

 

冬木市・冬木大橋前。

自身に向かってきた骸骨を斬り伏せて、エミヤは一息ついた。

・・・・・・やはり違和感があるな。

考えるのは自らの体。

乖離する動作とイメージ。

思考と肉体は密接に繋がっている。反射などを除いて、思考に伴って肉体は動き、肉体があるからこそ思考を実行できるのだ。

長年行われた行動ならば、その結びつきは何より強固なものとなる。

エミヤが持つ戦闘技能は長期間行われたものであることは疑いようが無い。 それこそ、体に染み付いているほどだ。

ならばこそ、二つの間に違いが生まれるはずが無い。

生まれるというのなら、それは二つの内どちらかが急激に変化した時だけだ。

しかし、思考と肉体が噛み合わなくなるほどの変化など、そうそう起こるものでは無い。

実事、エミヤの体も特に欠損がある訳ではなく、健康体そのものだ。

加えて、彼が感じる差異は肉体の損傷で生まれるようなものでは無い。

文字通り、体が縮みでもしなければこのようなことは起こらないだろう。

・・・・・・ある程度、修正できただけマシか。

 

これから先、骸骨以上の敵が現れる可能性もあるから、ある意味で骸骨の存在は有り難い。

尤も、能力は低いので完全に修正する前に倒しきってしまうのが悩みどころだが。

 

「そっちも終わったみたいね」

「ええ。なんとか無事に」

後ろからの声に振り向きながら答える。

声の主はオルガマリーさん。傍らにはマシュを連れている。

「マシュもお疲れ様」

「はい。先輩もお疲れ様です」

 

オルガマリーさんと同じようにマシュとも言葉を交わす。

見た所、負傷した様子も無いので、向こうも無事に終わったようだ。

 

「それで所長。これからどうするのですか?」

 それぞれの無事を確認し終えたところで、そう問いかけたのはマシュだ。

それに対し、ああ、とオルガマリーは頷き、

 

「この橋を渡った向こう側に、幾つか確認したい所があるからそこに行くわ」

 

確認したい所、という言葉に衛宮が疑問符を浮かべる。

この異常事態は彼らにとって突然の出来事だ。

当然、解決の手掛かりなどあろうはずがない。

にも拘らず、彼女は心当たりがある、と言ったのだ。

何故、と疑問に思うのは至極自然な事だろう。

 

「確かにここに来たことはないけど、情報が無い訳じゃない。そもそも、ここはレイシフト予定地よ。事前のリサーチである程度の情報を揃えているのは当然じゃない」

 

それだけ聞けば概ね理解できるが、まだ引っ掛かりを感じる。

仮に事前の情報があったとしても、現在の状況が通常よりかけ離れていることに変わりない。

それでも心当たりがあるというのなら、ナニかがあるはずだ。

通常時と異常時のどちらにも共通する要因<ファクター>が。

そんな俺の考えを肯定するかの如く、彼女は最後の欠片<ピース>を口にする。

 

「これから行くところは、かつて行われた聖杯戦争の関係地よ」

 

 

 

 

--それを、俺は。

 

 

 

 

--いつかどこかで、聞いたことがある気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『調査の方は如何ですか』

「どうもこうも、一切手掛かり無しよ」

 

はぁ、と溜息をつく声に力は無い。

橋を渡り、調査を開始して、かれこれ二時間程。

期待を裏切り、これといった成果は上げられなかった。

今は、先ほど調査を終えた教会跡地の近くにあった少し開けた場所で休息を取っている。

 

『それは、残念でしたね・・・・・・』

「残念でしたね、じゃないわよっ! あなた仮にも医療部門のトップでしょっ!? もっと気の利いた言葉ぐらい言えないのっ!? そんなんでカウンセリングなんてできるのっ!?」

「いや。そう言われましても・・・・・・」

 

ここぞとばかりに放たれる文句の数々。

機関銃の如き勢いは留まることを知らない。

恐らく、この異常事態が起きてからずっと溜め込んでいたのだろう。

いつも以上に、よく口が回る。

このままだと、休憩が終わるまで話し続けるだろう。

ロマニにとって職員のストレスを和らげることも仕事の一つであるが、流石にそれは御免被るので、早々に話題を切り替える。

 

「ちょっと、聞いてるのっ!?」

『もちろん聞いてますよ。でも、そんなことより、他に話があったんじゃないですか?」

「む・・・・・・」

 

溜め込んだ不平不満をぶつけていたオルガマリーの声が途切れる。

今回の通信を行なったのはDr.ロマンではなく、オルガマリーの方からだ。

Drロマンの言葉で我に帰ったのか、不承不承といった風に気分を切り替える。

 

「・・・・・そうね。確かに、今はこんなことしてる場合じゃなかったわ。二人にも休憩中に周囲の警戒に行ってもらってるんだから、さっさと終わらせましょう」

 

コホン、と一つ間を入れてから、オルガマリーは本題に入り出した。

 

「率直に聞くけどーーあなた、"アレ"をどう思う?」

『どうと言われましても・・・・・・』

 

彼女の言う、"アレ"、というのが誰に関する事なのか、何の事なのか言うまでもないだろう。

正体不明の記憶の無い少年。

その彼が使う異能。

 

『多分、所長と同じ考えだと思いますけど--十中八九、“投影魔術”でしょうね』

 

半ば予想できていた答えに、そうよね、と力なく呟く。

投影魔術、或いはグラデーションエアと呼ばれるそれは、魔術師が行使する神秘の一つだ。

 自己のイメージに沿ってオリジナルの鏡像を魔力で複製するというものだ。

一見、便利そうなものだが、実際はそうでもない。

まず第一に、魔力というのは時間が経てば霧散してしまう。数分もすれば完全に消え去るだろう。

第二に、複製された幻想で在るが故に、世界によって修正されてしまう。矛盾を嫌う世界は本来存在し得ないモノを消去するのだ。

第三に、人間のイメージは穴だらけで完全なイメージをすることは不可能ということだ。投影魔術がイメージに沿って生み出される以上、不完全なイメージでは不完全な複製になる。

当然、実用に耐えうるはずもなく、外見だけのハリボテを生み出すのが精々だ。

これらの理由から儀式などの際、道具などを用意できなかった時にその場だけの代用品を用意するために使われるのが本来の投影魔術だ。

--しかし、件の少年は、その常識を真っ向から否定した。

 

構成された魔力は霧散せず。

世界が修正すること能わず。

生み出された剣は虚飾に非ず。

彼が生み出した投影物は確かな存在として世界に在る。

通常ではあり得ない事象であり--二人が真に驚きを得たのはそこではない。

 

確かに、彼の投影魔術は異常だ。

この世のどこを探しても、彼と同じことができる人間はいないだろう。

だがそれだけ。

投影物を半永久的に残せるとしても、さしたる価値は無い。

少々珍しく便利なだけ。

好奇の視線を向けられたとしても、喉から手が出るほど欲っされるものではない。

 

--故にこそ、問題なのは、投影されたモノだ。

 

彼らは、エミヤが投影したモノを知らない。

だが、それがどういう存在かは見ただけで理解した。

 

「"宝具"を投影するなんて、一体どういう了見よ・・・・・・」

 

--宝具。

かつて神話や伝説に存在した英雄・偉人達が、死後に人々の信仰によって英霊という精霊の領域まで押し上げられた存在。

その彼らが持つ唯一無二の切り札にして半身。

生前の彼らの象徴が形を得た"物質化された奇跡"。

人々の幻想によって象られる故、貴い幻想<ノウブル・ファンタズム>とも呼ばれる。

英霊と同様に、その存在は高き処にあり、人を遥かに超える力を内包する。

その存在は、おおよそ人間に測れる所には無い。

直視すれば魂を惹き込まれ。

解析すれば脳髄は焼け。

投影すれば回路が焼け落ちる。

文字通り、存在する次元が違うのだ。

なればこそ、ソレをただの人間が生み出せるはずがなく--それすらも、少年は覆した。

 

『このことは彼には?』

「彼には秘密にしておくわ。記憶が戻ってるなら未だしも、今の状態でこれ以上混乱するようなことは知らせるべきじゃない。いえ、彼だけじゃない。この事は他の誰にも伝えてはいけない」

 

そう答える彼女の顔は、いつになく険しい。

 

『それが一番良いでしょうね。宝具の投影なんて知れたら無事では済まない。魔術師の実験台にされるか、最悪、"封印指定"を受けることになるでしょうね』

「その通りよ。だからこそ、このことは私たちだけの内に仕舞っておくのよ」

『もちろんです。この会話は他のスタッフも聞いていませんし、記録も止めています』

「それなら良いわ。でも、油断はしないでちょうだい。いつ誰が聞いてるかわからないし、そこには事件の黒幕もいるかもしれないんだから」

『承知しています。最新の注意を払っているので安心してください』

 

その言葉でひとまずの安心を得る。

かなり間抜けな彼だが、その能力はオルガマリーも認めている。

彼が問題ないと言うのならきっと大丈夫だろう。

 

『いや。それにしても--』

「・・・・・どうしたのよ?」

 

話が終わった後に彼が独り言のように呟いたので不思議に思い聞き返してみた。

Dr.ロマンはそれに対し、いえね、と感慨深げに前置き、

 

『やっぱり、所長が丸くなったなーと思いまして』

「蒸し返してんじゃないわよっ!」

 

魔力を込めた拳を叩き込む。

パリン、と割れる通信画面。

砕けた映像に映るバラバラになったDr.ロマンの顔は現実でないが、いつか実現しそうである。

「まったく・・・・・・あの間抜け医師はっ!」

「どうしたんですかオルガマリーさん・・・・・・?」

「っ・・・・・・!?」

 

突然の声に振り向くとエミヤとマシュが目を丸くして立っていた。

 

「ど、どうしたのよ二人とも?」

「どうしたって、周りを調べ終わったので報告に来たんですけど・・・・・・」

 

・・・・・そういえば、そろそろ帰ってくる頃合いだったわね。

 

頭に血が昇ってすっかり失念していた。

まずい。非常にマズイ。

何がマズイって言うと、アレを見られたとなると、私の所長としての威厳とかイメージとか色々なものが崩壊する。それが他人にバレた日なんか、もう表に顔を出せない自信がある。

それだけは絶対に避けなくては。

故に、私がすべき最善の行動は--

 

「あなたたちは何も見ていない。いいわね?」

--加速的速やかに事実を隠蔽することであった。

 

「え? いや、あの・・・・・・」

「いいわね?」

「・・・・・・はい」

「よろしい」

 

--よし。

これで口止めは為された。

厄介ごとを未然に防げた事に安堵する。

--しかし、彼女は一つ忘れていた。

 

--通信画面が無くなったとしても、記録は再開され観測は続けられていることを。

 

--先ほどの醜態だけでなく、今の恫喝の場面もしっかり記録されていることを。

--彼女は終ぞ気付かなかったのである。

 

 

 

 




ここ最近、文字数が安定しない日々が続いております。
基本的には三〜四千ほどですが前話では確か八千ほど。
次話に関しては一万三千越え。
分ければいい話なんですが、それだと区切りが悪いしちょうど一話として纏まらないんですよ。
ページ分けとかできたらいいんですけどね・・・・・・。

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