インフィニット・オンライン ~孤高の剣士~   作:黒ヶ谷・ユーリ・メリディエス

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 どうも、おはこんばんにちは、黒ヶ谷です。

 今話は珍しくオールキリト視点。主人公なのにオール回が珍しいという()

 文字数は約一万五千。

 今話の一人称で『俺』と『おれ』が混ざっていますが、変換忘れではないです。

 おれ=オリムライチカ

 俺=キリガヤカズト=キリト

 本作はこの一人称ルール(キリト限定)があるので。漢字の部分が平仮名なのは大抵心が弱っているのと、オリムライチカとしての意識が強い時です。

 今話はサブタイトル(想い、楔)も重要だったりする。キリトのキーワードでもあるので、これを意識して、どうぞ。




第百十三章 ~想いの楔~

 

 

 ガララララッ、と断続的に車輪が回る音が耳朶を打つ。馬車を支える二枚二対の外輪が回る速さが音の量であり、その量が馬車の速度を表している。

 速度計は無いけれど、あれば今の速度は時速一〇〇キロを優に超えているに違いない。

 この世界の騎乗動物の移動速度は厳密に定められていない。

 定められているのは、移動した距離に比例して減少する満腹値。満腹値の減少速度を全て一定にした場合の速度が種類ごとに定められているだけ。

 騎乗動物の最大速度は、プレイヤーの敏捷値に依存している。

 そうでなければ騎乗動物のレンタルや購入の意味性を失いかねないからだろう。敏捷値を上げれば、極論生身でも時速一〇〇キロ前後は出せる、現に極限まで集中した時の俺の速度はそれくらい出ている。突進系のソードスキルを使えば更に顕著だ。細剣や短剣など速度が肝と言える武器のソードスキルは敏捷値が重要になってくる。

 騎乗動物は、操舵するプレイヤーの敏捷値に種類ごとに定められた加速値を乗算し、移動速度が決定される。

 この辺は全て自分が検証して得たデータだ。あの羊皮紙にも一応明記はしていたし、アスナを筆頭に《圏内事件》の折に俺が黒馬を使った事を知っている人には、これが分かる説明もしている。気付くかどうかはその人次第にしたが。言葉で説明すると、絶対シノンの質問に対する答えの嘘がバレるから。

 満腹値が設定されているのは購入した騎乗動物のみ。

 レンタルした動物は満腹値の代わりに、レンタル時間に比例して所持金が一定額引かれていくようになっている。満腹値を回復させるのに必要な食糧の購入額が正にレンタルで引かれる額そのままだったりするのは余談だ。勿論この比例も、購入時とレンタル時とで差が出たらマズいからと、全て一つ一つ検証した結果分かった事。

 だから実のところ、掛かった費用は三〇〇万どころではない。これを誤魔化す為に敢えて分かり辛くした。

 リー姉辺りには気付かれてるかもしれないが……まぁ、もう過去の事なので、時効扱いで良いだろう。何か言われても何とかはぐらかすしかない。

 それが出来れば苦労しないのだが。出来る気がしないのは何故なのか。

 若干遠い眼になるのを自覚しつつ、手綱を操作して進行方向の調整を測る。

 実際考え事に現を抜かしているとすぐ障害物や壁に当たって事故になり、折角作った馬車も、ケイリから買い取って積んだ積み荷も台無しになりかねない。懐が痛む程ではないとは言え、勿体無いと思うだけでもかなりの大惨事と言えよう。

 まぁ、一番値が張った白馬と黒馬はまず無事だろうから、大損害は免れるに違いない。絶対後でどつかれるけども。

 危ないと分かっていながらもそんな考え事を巡らせつつ、視線は前方を見た時に丁度視界に入るようにしたマップを、思考の大部分は進行方向の道の取捨選択を、知覚の大部分は《索敵》スキルが齎す敵性情報の整理を全て同時に行っていた。《ⅩⅢ》により否が応でも鍛えられたマルチタスク能力の面目躍如である。

 これぞ『能力の無駄遣い』と言えよう。

 才能の無駄遣いではない点がミソである、とはアルゴの談だ。

 

 ――――意識がマップへと向けられる。

 

 七十七層主街区から全力疾走し、短いながら幾度かの休息を挟みつつ移動し続けたお陰で、出立から一時間と経たない内に迷宮区内部に突入を果たしていた。流石に霧の深い森の中を全速力で突き抜ける事は出来なかったが、かなりの時間短縮は出来た筈。

 迷宮区の階層を上るに当たっては階段を使うから馬車には不向きなのだが、そこは《ⅩⅢ》の風を全力活用し、僅かに車輪を浮かせる事で対処した。

 流石に初回は失敗してあわや大惨事となりかけたのだが、今となっては笑い話である。

 

 ――――そんな気楽な思考は、マップを見た瞬間放り捨てた。

 

「……反応が殆ど無いってどういう事だ」

 

 階層は既に《安全地帯》があるところまで来ている。フレンド登録をしていないプレイヤーが半数を占めるとは言え、もう半分ほどは俺とフレンドになっているプレイヤーである。

 フレンドになっていれば、マップに表示されるプレイヤーを示す青い光点の真上にプレイヤーネームが表示される。

 ――――だというのに、この先にある《安全地帯》の場所には青い点が両手の指で足りる程度しかない。

 しかも、フレンドとして表示されているのは一人――――《Yuuki》という名前だけだ。その光点の近くにある青い光点達には名前は無く、代わりにギルドマークがある。ギルド《ティターニア》のマークだ。

 ……嫌な予感がした。

 さっき刃を交えた俺と瓜二つの剣士が脳裏を掠める。

 完全同一の戦闘スタイルだったあのプレイヤーを最初はスレイブなのではと思ったが、HPゲージの横にギルドタグが無かったから違うのかとも考えた。

 だが、必ずしもギルドに属する必要は無いのだ。ギルドはあくまでプレイヤー間の仲間意識を表面化したものであって、目的さえ明確なら誅殺隊や今の《攻略組》のように概念としての組織体系化だって不可能では無い。ましてや指示を受けて暗躍したり奇襲を掛けたりするなら、一時的にでもギルドを脱退する事だって視野に入れるだろう。ギルドに属した事が無い身ではあるが、仮に何かしらに属していたならPKをする時に限り脱退し、事が終われば再加入を繰り返していただろう。

 だからあのプレイヤーがスレイブでは無いという保証は一切無い。と言うより、確実にスレイブであると確信している。確証も根拠も無いが、当たっているに違いないという確信を抱いている。

 仮にあのプレイヤーがスレイブだとして、短剣を刺す事でプレイヤーをどこかへ転移させるのが《ティターニア》のリーダーの指示であれば――――《攻略組》も何かされた可能性が高い。

 

 だとすれば、今どれだけ絶望的な状況なのだろう。

 

 マップに表示されているフレンドはユウキだけ。

 それ以外の青い光点には、全て《ティターニア》のギルドタグが付いている。数を数えれば全部で六つ。以前試験に来たという人数からスレイブを引いて丁度の数字にゾワリと仮想の産毛が総毛立つ。

 四十人はいたプレイヤーを相手に、たった六人で挑み、ユウキ以外を壊滅させたという予想に寒気がした。

 

 “殺し”にのみ集中した時の自分を完封して見せたあのリー姉すらいない。

 

 その事実だけでも、まるで足元の床が崩れるような錯覚を覚える。

 リー姉を殺せない訳ではない――――でもそれは、相討ちを覚悟した上で辛うじて手に入れられるかもしれない可能性。少なくとも正攻法ではどう足掻いても一生傷一つ付けられないであろう人なのだ。邪道を使って漸く、といったところ。だから殺せない訳ではない。

 逆に言うと、俺はきっと、一生リー姉を倒す事は出来ない。

 “殺す”事と“倒す”事は意味がまるで違う。後者が出来るのは強者だけ、それも相手との実力差が大きい人にのみ可能な事。

 リー姉と較べれば絶対的に弱者である自分は、“殺す”事が関の山なのだ。

 それだけ強い剣士が既に居ないなんて、考えたくもない事態だ。実際リー姉が殺されたのか、あるいは短剣で刺されてどこかへ転移されたのかは分からないが、どちらにせよ一撃加える事すら困難な技量を持っている人が居ないのは絶望的である。

 

 ――――フレンドリストを確認するが、《攻略組》のフレンドは全員生存状態を示していた。

 

 殺されていないという安堵と殺さずに捕らえた連中に対する恐怖が心を席巻する。

 勝てない、とは思わない。

 だが、勝利した上で生き残れる確証が持てなかった。それほどにリー姉の壁は大きく、高く、分厚いのだ。

 

「けど、やるしか、ない……ッ」

 

 怖いけど、逃げる訳にはいかない。ユウキが最後まで抵抗しているのに、それを分かっていて見捨てるなんて選択を、俺は取れない。

 それを選択したら、きっと俺は、“俺”でなくなってしまう。

 ユウキが注いでくれる想いを仇で返してしまうから。

 その想いに応えられなくなるから。

 誰にも誇れなくなるから。

 

 戦う理由を、自ら否定する事になるから。

 

 自分を大切にしてくれる、思ってくれている人達に生きて欲しいと、幸せになって欲しいと願って、今は剣を取り戦っている。

 自分の強さを追い求めるのは二の次なのだ、今の状況は。

 

 けれど、こわい。

 

 手が、足が、肩が、体が――――心が、震えている。

 こんな恐怖、フロアボスを短期で相手取る時すら無かった。アキトと遭遇した時に近いが、何か違う気もする。

 そも、どうして今、自分は恐怖しているのか、何に対して恐怖を感じているのか、それすらも分からない。

 リー姉を倒す程に強い相手と対面する事か。

 ユウキしか残っていないという状況に対する絶望か。

 皆が居なくなってしまった事に対する不安か。

 あるいは――――助けられなかった事に対し、皆がどう思っているのか、だろうか。

 

「――――まだ……間に合う、まだだいじょうぶ」

 

 震える声で、そう自分に言い聞かせる。まだ死んでいないから、殺されていないから大丈夫だと、必死に暗示を掛ける。

 

 ――――手足の震えは残っているけど、体幹の震えは収まった。

 呼吸は浅いけど、竦んで体が動かないなんて事は無い。

 だから、おれはまだ、戦える――――

 

 そう、己を奮起した。

 

 *

 

 ――――速度を緩める事なく、全力で《安全地帯》へと馬車を突っ込ませる。

 

 《圏内》コードがあるから引き倒しても問題無い、という理屈から全速力のままだった訳では無い。《安全地帯》に近付くにつれて、あちらも俺の接近に気付いたのか、ユウキを伴ってこちらとは別の《圏外》のルートに移動したのである。

 だから《安全地帯》はもぬけの殻だった。

 手綱を引いて急停止させ、馬車を停める。システム的に所有権が俺にあるので、俺が操作しない以上はこの馬車も動かす事は出来ない。これのお陰で盗まれる心配をしなくていいのは実にゲーム的である。何せ積み荷を盗まれる事もないのだ。これが現実だったらそうはいかない。

 馬車を停め、御者台から下りた俺は周囲を見渡す。

 

 《安全地帯》の地面には、カードや武具、寝袋、食器などが至る所に散乱していた。

 

 位置を記憶と照らし合わせてみれば、それらは《攻略組》のメンバーが使っていた代物と一致する。誰が持っていたかまでは分からないが、少なくとも寝袋や武具の位置に関しては記憶とほぼ合致している。

 つまり《攻略組》は、抵抗する事無く壊滅したと見るべきだ。

 

 ――――ひょっとして、実力で壊滅させた訳ではない……?

 

 浮上した新たな可能性に首を傾げる。

 これが《圏外》であれば麻痺毒を縫ったピックを弾幕のように投げたなどが現実的だが、《安全地帯》は《圏内》の領域なので、ダメージや状態異常を与える事は原則禁止されている。施設の類が無い《安全地帯》でも主街区などとそこは変わらない。

 つまり実力や経験ではどうにもできない何かがあるという事。

 

「……余計こわい……」

 

 自分が手も足も出ない状況になり得るのだ。怖くない訳が無い。

 

 ――――少し前までなら、そうでもなかったんだろうけどな……

 

 以前の俺は、死んではならないとやや後ろ向きに生きていた。来るべき時が訪れた時、あるいは自分ではどうしようもない敵と相対した時は、死を受け容れる事を良しとしていたくらいだ。

 この惨状が恐怖と絶望感を助長する。

 でもこれは、きっと良い事。恐怖し、絶望するという事は、逆に言えば生きたいと願い、希望を持っているという事を意味する。

 俺はまだ死にたくない。SAOの状況から死ぬ訳にはいかないのもあるし、自分を異性として想ってくれている人が三人もいて、自分の事を待ってくれているのだ。死に逃げるのは勿論、死んだら皆を裏切ってしまう。

 

 ――――生きたいと思った。

 

 ――――生きて欲しいと想われた。

 

 ――――幸せになってと願った。

 

 ――――幸せになってと願われた。

 

 求めるものが互いに合致しているなら迷う必要はどこにもない。

 生きる事を肯定しているなら足を止める理由は存在しない。

 僅かにでも、ほんの欠片程度にも生きられる可能性が存在するなら、諦める訳にはいかない。

 

 ――――否定したい程、今の現実は悪くないのだ。

 

 それを脅かす者は、誰であろうと――――

 

「ん……」

 

 脳裏に描く、数多の未来。

 選択しなければならない。人質を見殺しにするか、救うか。

 決心しなければならない。敵を生け捕りにするか、殺すか。

 覚悟しなければならない。敵の業と怨みを背負うか、否か。

 

 今更だ。

 

 《ビーター》を名乗ると決めた時から、選択している。

 人を殺すと決めた時点で決心は終えている。

 人を殺した時から、覚悟は既に出来ている。

 

「――――行こう」

 

 馬車を停め、繋いでいた二頭の馬を放してから、剣を片手に歩を進める。

 

 ――――体の震えは、何時しか止まっていた。

 

 *

 

 マップの反応を頼りに道を進むこと暫くしてやや広い広場に行き着く。《安全地帯》ほどではないが、それでも街の噴水広場と同程度の広さがあるそこには、プレイヤーの反応が幾つもある。姿も視認出来た。

 煌びやかな装備に身を包んだ男達と、彼らに並ぶ紫紺の剣士。

 紅の瞳は、始めて見る程に無機質な視線を向けて来た。

 

 ――――違和感。

 

 喉元まで上って来たそれ。何かが違う、何かがおかしいと、脳裏で警鐘が鳴り響く。

 異性として好いていると言ってくれた人とは長い付き合いだ。行動を共にした時間はとても短いが、その間でさえ、自分に向ける眼には何かしらの色があった。

 それは安否だった。不安だった。喜びだった――――そして、案じる心から来る怒りだった。

 けれど、それらが無い。

 人質に取られていたなら、悔しさと安堵を内包している筈だ。

 

 ――――嫌な予感が脳裏を過る。

 

 過去に幾度かあった。親しい人が、反転して虐げて来るようになった事は。

 友達は敵になった。

 肉親は元から敵だった。

 でも、戦友は今までなかった。

 ましてや彼女は自分を異性として想ってくれている人。

 実兄と相見え、それでも自我を保ち、変わらず居てくれた事で安心していた。しきっていた。何があっても、皆はきっと大丈夫なのだと油断していた。

 

 ――――……他にも、居たなんて……

 

 詰めが甘かった。

 油断していた。

 慢心していた。

 親しい人の思想を、精神を変える『コト』が出来るのは実兄だけだと――――この世界では、もう起き得ない事なのだと気を緩めていた。

 まだ、決まった訳では無いけれど。

 もうほぼ確信している。あの人はもう、自分の識る人ではないのだと。

 きっと、ここには居ない皆も、同じようになっているのだろう。リー姉も、シノンも、クラインやヒースクリフ達も、皆。

 

 ――――みんな、敵になったのだ。

 

 望みが潰える音が聞こえる。

 体の芯から力が抜けていく。

 選択し、決心し、覚悟した心が惑い、萎え、死んでいく。

 

 

 

 ――――とにかく、キリトを裏切るなんて絶対ないから!

 

 

 

 ――――天地神明、いや、ボクの魂と剣に誓っても無い!!!

 

 

 

 脳裏で蘇る、彼女の言葉。

 信じていた――――信じていたかった、あたたかかった言葉。

 

 

 

「――――うそつき」

 

 

 

 守れなかった自分を棚上げして、罵倒の言葉がついて出た。

 

 ――――【絶剣】の肩が、微かに震えた。

 

 *

 

「やあ、出来損ないクン、御機嫌よう」

「……」

 

 広場に足を踏み入れた途端、そう声を掛けて来る一際煌びやかな男。

 スレイブとの決闘時に『マスター』と呼ばれていたし、聞いていた特徴と合致する事から、この男が《ティターニア》のギルドマスターであるアルベリヒだとすぐに分かった。

 熟練度最大の《隠蔽》、装備による隠蔽率ボーナスを絡めたハイディングをしていた自分を、姿が見えているかのように視線を向けての言葉から、どうやら《索敵》は最大値らしいと分かった。看破率ボーナスの装備やModも取っているだろう。

 男達はニヤニヤと、勝ちを確信した笑みを浮かべている。

 【絶剣】は無表情。感情が脱落した姿は、人形に見えなくもなかった。

 

 ――――一瞬、幻視する。

 

 薄暗い石造りの地下。

 血錆びが浮くそこに詰め込まれた、幾人もの同胞。

 彼らが有する、ガラス玉。

 瞳の者は、居なくなっていた。

 

「……」

 

 無言無表情無感情の紅いガラス玉から目を背け、リーダーの男へと視線を戻す。

 

 ――――もう、遅いんだ。

 

「……何をした」

「おやおや、こちらは挨拶をしたのに返さないとは。礼を失するという言葉をキミは知っているのかな? 社会人なら仮令社交辞令だとしても挨拶をするのは基本中の――――」

 

 問いに対し、嘲りを隠さず説教紛いの事をし始めた男。

 ――――左手に隠し持っていた長さ10㎝ほどの麻痺毒ピックを投げる。

 一直線に進むピックは、しかし横合いから振るわれた黒剣により叩き落された。黒剣の振るったのは何時の間にかアルベリヒの斜め前に移動していた【絶剣】だ。

 ……確認の意味も込めて敵対行動を取ったが、確定のようだ。

 

「ふぅ……いやまったく、いきなり攻撃してくるなんてとんだ野蛮人だな。彼女が居なければ危なかったかもしれないよ」

 

 そう言って、アルベリヒが【絶剣】の頭を撫でる。

 剣を握る手に力が篭もった。

 

「もう一度、訊く……皆に、【絶剣】に、何をした」

 

 【絶剣】のHPバーのギルドマークは、見慣れたものではなく、アルベリヒ達と同じものが浮かんでいる。つまり今の【絶剣】は《ティターニア》所属という事。

 【絶剣】は双子の姉と《スリーピング・ナイツ》を結成し、後に槍使いを入れた三人の少数精鋭ギルドに属していた。というより、他の入団希望者を跳ね除けていたから、結果的に少数精鋭を維持し続けただけなのだが、そのギルドを脱退するとはとても思えない。

 第一、自分が知る皆は《ティターニア》を警戒していた。危険視もしていた。

 攻略の途中でスレイブが襲って来たのだから、警戒するのも当然だ。

 そんなギルドに属して、しかも抗う様子すら見せないなんて明らかにおかしい。頭を撫でられて無反応である事が余計そう思わせる。

 【絶剣】は――――ユウキは、人懐こい性格とは裏腹に、己のパーソナルスペースを絶対に死守する部分があった。それは姉にも見られていて、だから《スリーピング・ナイツ》を増員しないのだと理解していた。頭を撫でさせたり、自ら人に抱き着く行為をする相手は、極めて稀少だと。

 その点、想いを向けられた自分はその極少数に分類されていると、密かに喜びを抱いていたのだが。

 それをアッサリとして見せたアルベリヒに、猜疑と苛立ちを抱く。

 

「ふふ、気になるのかい? 気になるだろうねぇ、何せキミを大切に想っている子だ、出来損ないと一緒に居るとどうなるか理解していながら一緒に居た子なのだから気にならない筈が無い。涙を流しながら駆け寄って王道さながら喜びと共に抱擁するワンシーンが起きても不思議じゃない」

「……」

「それなのにどうして彼女がこちらに居るのか。良いだろう、冥途の土産だ、特別にキミにも分かるよう教えてあげよう。それを知ればキミも僕の偉大さのほんの片鱗くらいは分かってくれるだろう。キミ程度ではどう足掻いても届きようがない天才なのだとね」

 

 やや早口気味にそう言ったアルベリヒは、そうだなぁ、と言葉を区切った。

 

「人は愉しいと思ったり辛いと思ったり、色々な感情があるだろう? 例えば、戦争だ。戦争は怖いよねぇ? どれだけ訓練した兵士でも、死を前にすると恐怖で思考が鈍くなったり動けなくなってしまう、それが常識であり、普通だ。死を恐れない人間なんて居る筈もない。そんなのは精神異常者に限る話だ」

「……」

 

 サラリと精神異常者認定されてしまった。

 

「では、その恐怖に満たされた感情を喜びで満たしてやると、どうなると思う?」

「……戦場に率先して向かうようになる」

「その通り!」

 

 少し考えれば少し分かる事なので、情報を引き出すべく返答する。

 それが当たりだったようで、アルベリヒはやや機嫌良さげに指を鳴らした。

 

「銃弾飛び交う危険な戦場に身を置く事をこそ幸福だと感じるようになり、進んで危険な任務に身を置く兵士が出来上がる。軍にとって、これほど有用な兵士は居ないだろう」

「つまり、感情を操る……」

「そうさ。実際にそういった実用に向けて僕に接触してきている国が複数存在する。国防省や軍部にとってすれば仮令非人道的な事であっても『仕方ない』と言うしかない、それが国を守る事だからだ。事実、病院での投薬実験も、昔は捕らえた捕虜や食い扶持を稼げない老害に対してされていたんだ、それと同じだよ」

 

 《ナーヴギア》の原理を考えれば、不可能では無い。要は脳を破壊しない程度の電子パルスを照射し、感情を司る脳神経細胞を興奮させればいいのだ。

 人間の脳で感情を司るのは偏桃体と帯状回。

 前者は感情に由来する記憶に関わっている。あの食べ物は食べた事がある、辛かった、辛いのは『嫌だから』もう食べないと決めた、などだ。

 後者は感情の形成に関与している。この帯状回が無いと、偏桃体での感情由来の記憶形成がままならない。

 ――――つまり感情操作をするなら、帯状回を刺激してやればいい。

 刺激や興奮と言っても、快・不快、正負の感情によって脳波の形は異なる。その形となるよう脳波を計測し、データ化し、電子パルスを照射して、同じ波形にする事が、アルベリヒの言う操作なのだろう。

 

「とは言え、現実側でそんな実験を堂々と行える筈も無くてね、当然だが被験者だって集まらない。日本は非戦争を掲げている国だから外国ほど臨床実験が出来ないんだ」

「それで……この世界の、プレイヤーを」

「そういう事さ」

 

 SAOのプレイヤーはバイタルこそモニタリングされていると言えど、本質的には《ナーヴギア》による操作に対して完全無防備な状態にある。加えてこのデスゲームの世界は外界と隔絶されていて、何をされても外部の人間には把握しようがない。

 加えてSAO内部での事は全て黒幕とされている茅場晶彦に擦り付けられる。

 人体実験を望む輩にとっては最高の環境という訳だ。

 

「だが実のところ、この世界に来てしまったのは事故でね」

「……何?」

「とあるVRゲームのシステムと連結する作業をしていたらいきなり知らないところに転送させられてね、そこがデスゲームの中だと知った時は流石に焦ったよ」

 

 やれやれ、と頭を振って言うアルベリヒ。

 

 ――――おかしい、想定と違う。

 

 てっきりアルベリヒは自ら望んで来たものかと思っていた。

 話から分かる通り、アルベリヒは後から入って来た、謂わばリーファやシノンと同じ境遇の者。同じ条件なのにSAO内部で感情操作の実験などというシステム的にプレイヤーは行えない事をしているという事は、それなりの権限を有している事になる。それは《安全地帯》内部で無抵抗に壊滅した様相を考えれば辻褄が合う。

 つまりこの男は、恐らくGM権限、あるいはそれに準ずる権限を有している。

 しかもSAOサーバーと別ゲームを繋げていたという。

 俺が知る情報から推測出来る事は、この男はリーファがしていたというVRMMORPG《アルヴヘイム・オンライン》の運営《レクト・プログレス》の者。GM権限を有しているとなれば最高責任者辺りか。

 元《アーガス》社員かは分からない。だが最高責任者というなら、世界で唯一VR研究をしていた《アーガス》の社員だった可能性は非常に高い。

 そうであれば全て納得がいく。

 

 だが、そんな男が事故でこの世界に来た、というのはおかしい。

 

 リーファ達なら分かる。最低レベルの権限しかないプレイヤーは、システムやGMによって翻弄されるしかない存在だからだ。だから事故で来たと言われても、まぁ、ロジックはともあれ納得は出来る。

 だがGM権限を有するアルベリヒ達が事故で来た、というのは不自然だ。

 七十五層バグはアルベリヒ達による外部からの無理矢理の接触が原因だと考えていた。意図的に、かつ無理矢理接触したとすれば、そうなってもおかしくはない。元々リーファ、アキトというALOプレイヤーの乱入があるのだ、そのログを使えば不可能では無い。

 つまりリーファ達の乱入は、ALO運営者、つまりアルベリヒの策謀によるものではないかと考えていた。ヒースクリフと話した時も、ALOはSAOサーバーのコピーだとすればあり得る話だと共通見解を得ていたからだ。その乱入成功のデータ、ロジックを使って、SAO内部で良からぬ事――――俺は人体実験をしようと企んでいるのではと予想していた。

 しかしアルベリヒ達の乱入が意図したものでないとすれば、リーファ達の乱入の前提も崩れてしまう。

 予想をミスリードさせるための誘導、偽りの情報提供だとすれば分かるが、男の表情からそうとはとても思えない。

 となれば、あり得るのは……

 

 ――――この男以外の誰かがした事、なのか……?

 

 アルベリヒがデスゲーム化の黒幕かと、先の予想から考えていた訳だが、そうでなかったなら。デスゲーム化にアルベリヒが一切関わっていなかったなら。

 

 ――――いや、でもそれは、リスクがある。

 

 SAOをデスゲーム化させた者が何を目的としているかは知らない。赤ローブアバターが語った『鑑賞』が真実だとするなら、GM権限相当で反則行為を行えるアルベリヒ達の乱入は、むしろさせない筈だ。結果的にアルベリヒ達は攻略を妨げている訳だが、こうなると分かっていない限り協力体制を築く可能性も否定出来ない。

 所感だとアルベリヒは『虎の威を借る狐』といったところ。

 死を前にすれば本質が現れるというが、この男の場合は徹頭徹尾非道を行くに違いない。敵を蹴落とし、味方を利用し、己のみの利益を求める輩に典型的な人格。

 

 だからこそ、己一人でデスゲーム化はしない。

 

 そんな巨大過ぎるリスクを背負うくらいなら、影でコツコツと実績を積み重ね、ライバルを蹴落とした方が良い。

 つまり、一番あり得る可能性としては……

 

 ――――アルベリヒがデスゲーム化の黒幕だとすれば、それを後押しした『誰か』が居る。

 

 SAOへの『意図しない乱入』だからと言ってイコール『デスゲーム化の黒幕では無い』とはならない。むしろALOを完成させた責任者らしき立場に就く実力があるなら、《アーガス》に居たのは確実だろうし、そこでもかなりの仕事を任せられていたに違いない。その立場であればデスゲーム化のプログラムを入れられる。

 だがそれは、あくまで『出来る』というだけ。

 自己保身を前提として他人を蹴落とす男が、そんなリスク極まる事を率先してしようとはしないだろう。考えても実行に移さない。

 それをさせたヤツが他に居る。男の何かを刺激し、焚き付け、支援した者が。

 そしてアルベリヒを、SAOへ乱入させた者だとすれば――――

 

 ――――アルベリヒは、口封じの為に送られた可能性が高い。

 

 デスゲーム化の為に手を組んだ相手を消せば、真実は迷宮入りとなる。協力者の存在を知るアルベリヒが死ねば必然的にそうなる。

 

「事故でもなければ、誰がこんなデスゲームに好き好んで入るものか」

 

 逆説的に、アルベリヒがしている感情操作の実験を知らないか、あるいは得るだけの価値は無いと判断している事になる訳だが……

 

 実際、そうだろうとは思う。

 

 感情を操る事は、つまり人を操る事と同義と言って良い。

 だがそれは、人によっては効きづらい。特に強い感情、記憶、信念を持っている者には反感を抱かせ、破る可能性だってなくはない。

 それに目の前にいる【絶剣】のように機械的になってしまう。刻み込まれた命令以外の事に無頓着、あるいは無反応になるため、逐一指示を出さなければならないのは非効率的だ。

 スレイブのように、自ら思考し、動く者が出来る事はまずないと言える。

 

「だからこのゲームとのネットワークでの接続を行い、ゲームクリアと同時に僕が運営するゲームにプレイヤーが移されるようにしていた。その最中に起きた不運だが、幸いにもゲームマスターアカウントは引き継がれていたのは不幸中の幸いとしか言えなかったよ」

「……なるほど、《安全地帯》で《攻略組》が無抵抗に壊滅させられた形跡、《圏内》なのにアンチクリミナルコードに引っ掛からない行動、そして乱入時期と技量に見合わないステータスと装備。それら全てそのゲームマスターアカウントでしていたのか」

「ふふふふ……その通りだよ、キリト君」

 

 まぁ、GM権限辺りだろうと踏んでいたから、特段驚きはないのだが。

 むしろそれ以外での正攻法の方法があるなら何が何でも見つけ出し、徹底的に対抗策を考え出し、封じていたところだ。システムへの造形を深めていったからこその矛盾だったから打つ手なしと放置していた訳だが、それが正解だったようだ。

 

「ゲームマスターアカウントはね、その名の通りGMのみが使用出来る特別なアカウントなんだ。SAOで言うところの茅場と言えば分かるかな? つまり! この世界では、僕は神という事さ!」

 

 両手を広げ、天を仰ぐように言い放つ金髪の男。恍惚とした表情は自己陶酔に浸っているのだろう。

 ……周囲の男達の、また始まったよ、という呆れの顔が何とも言えない。あまり良く思われていないらしい。まぁ、甘い蜜が吸えるから集まっただけであって、その人物の人格を認めた訳ではないからだろう。

 

「……アンタがGMアカウントで普通のプレイヤーに出来ない事、システムコードに縛られないというのは分かった。だけど以前【絶剣】にセクハラをした男はGMアカウントじゃない筈だが」

「こいつらのはスーパーアカウントと言ってね。GMアカウントではステータスなどの数値を動かせるが、スーパーアカウントでは動かせない。それでも運営側がプレイヤーに接触する為のものだから元々コード無視の性能があるのさ」

 

 打てば響くような簡単な説明で理解する。

 アカウントの序列は、プレイヤーのコモン、ヒースクリフのハイ――《神聖剣》の付与や容姿など以外はコモンと同じ――の他に、スーパーとゲームマスターがあるようだ。その中でシステムに囚われないのは後者二つ。

 アルベリヒ達はその後者二つを有しているという事になる。

 

 ――――つまり《攻略組》は、GMアカウントによるか何かで壊滅したのか。

 

 敵やプレイヤーが扱う麻痺毒は圏内コードを貫通出来ないが、GMアカウントによるものであれば余裕で貫通するだろう。そもそも圏内コードが働かないという事は、《圏内》であっても他者のHPや状態に干渉出来るという事なのだから。だからスレイブが持っていた短剣で《圏内》のプレイヤーを強制転移させられた。

 この男が口にした『冥途の土産』という言葉は、GMアカウントという虎で得た自身によるものだった訳だ。

 ……悔しいが、恐らく俺も殺られる。

 強さの問題ではない。GMアカウントとコモンアカウントという序列による差が問題なのだ。

 

 幸いなのは、アルベリヒだけがGM権限を有しているという事。

 

 ある程度はスーパーアカウントも許されているだろうが、ステータスに干渉できないという点から、恐らく周囲の男達はステータスが高いだけ。武器の効果が危険過ぎるが、そこは自分の経験や技術でどうにかなる。

 一番の問題はGM権限。他者のステータスを弄れるそれを持っているのはアルベリヒだけ。

 

 ――――要するに、アルベリヒを殺せば問題無い訳だ。

 

 男達も、【絶剣】も脅威だ。だがこちらのステータスに干渉できないなら希望はある。

 アルベリヒが何かアクションを起こす前に、先手を打って殺せば、何とでもなる。

 【絶剣】の防御があるから、こちらからの直接的攻撃行動は全て阻まれ、その間にGM権限で麻痺させられるだろう。それ以前に手間取っていたら終わりだ。あちらの武器の性質上、一撃でも掠れば強制転移で終わってしまう。

 とは言え、即座に手を打っても【絶剣】が対処する。

 

 だから、取れる手は、一つだけ。

 

 足元を掬い、一撃で首を刈り取るだけだ。

 

「他者のステータスを操る、か……道理でスレイブのステータスが一日で高くなっていた訳だ。その分だと周囲のプレイヤーも弄ったとみえる」

「ふふ、意外に察しが良いね。そうさ。《攻略組》に入ろうとした時は敢えて抑えていたけどね、圧倒的ステータスさえあればゲーマーの力を借りる必要なんて無いと気付いてからは、一気にレベルを上げた。流石にどれだけ強い敵でも初期配信状態のSAOならレベルMaxもあれば余裕でゲームをクリア出来るだろう?」

「レベル、マックス……? 200くらい、か?」

 

 レベル差補正により、自分よりレベルが下の敵から得られる経験値は本来の一割を更に下回る。それをポッピングトラップを敢えて踏み、倒した数を稼ぐ事で強制的にレベリングをしていた俺は、この一年半で漸く175に至った。

 その俺を超えた敵は、闘技場や地下迷宮のボス達くらいなもの。それらは一律レベル200だった。

 だからSAOのレベル上限は200だと予想していた。

 

 

 

「200? 何をそんな低次元な話をしているんだい」

 

 

 

「な……」

 

 だから、バッサリと予想を切られ、不覚にも動揺してしまった。

 俺がこの一年半、ほぼずっと休みなしで昼夜を問わずレベリングに勤しみ、経験値補正も出来るだけ取り、危険なトラップに敢えて飛び込む事で到達したレベル175を、低次元と一蹴された。その事に並々ならぬ苛立ちと、200くらいなら何とかなると考えていた皮算用の浅はかさによるものだった。

 その同様に気を良くしたのか、ニタリとアルベリヒは嗤い、告げた。

 

 

 

 ――――999だよ。

 

 

 

「……きゅうひゃく、きゅうじゅう、きゅう……」

 

 ……段違いにも程があった。

 さっきアルベリヒは、初期配信状態のSAOと言っていたから、正式サービスから暫くして追加されるマップの敵を倒す事で更にレベルを上げていけたのだろう。現状で三桁越えのMobが居ないのに175にいけたのだから、元々レベルキャップはそのラインだったと考えられる。

 ざっと、頭の中でステータスの概算値を計算した。

 

 ――――速攻だ。

 

 結論は、変わらず。変わる筈も無かった。

 どれだけ相手のレベルが高かろうと、首を飛ばせば即死は免れない。

 

 どれだけレベルに差があろうと、武具に差があろうと、首を両断出来さえすれば初期レベルで高レベルプレイヤーを殺す事は十分可能なのだ。

 

 間違いなく、アルベリヒを殺した後に周囲の男達、そして【絶剣】によって殺されるだろうが、それでもいい。自分と共に《ホロウ・エリア》に男達を封印出来れば、あとはアルゴ達が……

 

 ――――皆を、頼む。

 

 蘇る、ホロウの言葉。

 どうあっても代われない宿命を呑み下し、複雑な想いを抑え込み、万感の想いを込めて告げたであろう短い言葉。もう一人の自分とさえ言えるホロウに託された想い。

 そうだ、と思い直す。

 皆はまだ死んでいない。まだ生きている。生きているのだ――――仮令敵となっていても、生きているのだ。

 

 ならおれは、守るべきだ。生きるべきだ――――生きなければならない。

 

 ホロウの想いは、おれの想いでもある。生きて欲しい、幸せになって欲しいという願いを抱いている。それは《ビーター》として己を犠牲にする決意をするに至った根幹だ。

 仮令敵になっていても構わない。そも、最初はそのつもりだったのだ。

 今まで親しくしてくれていて、受け容れてくれた事の方が、奇跡だった。奇跡は何度も起きないし、続くものでもないのだ。

 

 

 

 ――――夢をみていた。

 

 

 

 楽しくて、堪らなく幸せな夢だった。

 想いを向けてくれる人が出来る程の夢だった。

 辛いけど、それでも幸せと思える夢だった。

 

 

 

 ――――でも、夢とは何時か、醒めるもの。

 

 

 

 ほんの僅かな間見れた泡沫の夢だ。何れは夢から醒めて、現実と向き合わなければならない。

 仮想世界は、夢のような世界だ。

 夢のようで、けれど現実だ。

 

 

 

 ――――眼を背けていた事に、もうそろそろ、向き合わなければならない。

 

 

 

 《織斑の出来損ない》の味方は奪われた。

 

 

 

 《ビーター》は、憎まれ者だ。

 

 

 

 【黒の剣士】は、ソロの強さを表した。

 

 

 

 ――――夢に浸るのは、もう止めだ。

 

 

 

 あれほど想いを向けてくれた人ですら敵になってしまう現実だ。

 辛くて、哀しくて、痛い――――仮想世界もまた、痛みを感じる現実なのだ。

 

 

 

 ごめんなさい、と心で言う。

 

 

 

 ――――おれはいま一度、《オリムライチカ》として戦う。

 

 

 

 《キリガヤカズト》は、夢の俺。

 《オリムライチカ》は、現のおれ。

 

 

 

 独りになるべきは、おれなのだ――――

 

 

 







「――――うそつき」



 基本的に他人を警戒しているキリトがどれだけユウキ達を信じていたかという顕れである()

 なお、アルベリヒがステータスを弄れる範囲にもルールがあり、キリトは弄れないです。それが出来たらレベル1にされちゃう。

 ユウキは弄られてます、レベル999です。チーターってとかくカンストに拘りますよね(偏見)

 ユウキ(Lv.999)対キリト(Lv.175)……アカン(確信) Lv.90の時でさえ互角だったのに、実力者にチートの組み合わせは災厄級() むしろ叩き付けた時の衝撃に装備が耐え切れない可能性()

 まぁ、リー姉はLv.35の時にキリト(Lv.175)を完封したんですが(白目)

 ちなみに、原典ゲームではアルベリヒはスーパーアカウントで、配下は不明でしたが、本作ではアルベリヒがゲームマスターアカウント(所謂GM権限)で、配下がスーパーアカウントです。

・GMアカ
 他者のステータス閲覧
 他者のステータス改竄
 権限で装備召喚
 権限でコード無効干渉
 権限でマップ改変
 権限で無制限転移
 権限でアバター状態操作(麻痺など)

・SPアカ
 他者のステ閲覧
 権限装備一部召喚
 権限でコード無効干渉

 では、次話にてお会いしましょう。



 なんかリー姉の説教を無駄にしかねない方向に進んでますが止まります(サブタイトルを見るのだ)


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