インフィニット・オンライン ~孤高の剣士~   作:黒ヶ谷・ユーリ・メリディエス

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 ――――ストーリー進行中に回想流すのって冗長じゃない?(偏見)



 まぁ、ものによるけど、遠い過去の回想は自分語りとして嫌煙される方向にある気がするんだ。特に現在進んでる自体によって想起された回想だと。

 という訳で小話(断章)として別枠で投稿だ!

 サブタイトルから分かる通り、主役は最早中身がバレバレ(作者があまり隠す気ない)ヴァベルさんです。

 文字数は約五千。

 さぁ、彼女の深い闇と、世界の非情さ(欠片)を知って、本作のメインストーリーでどうなるかを沢山妄想するのだ……のだ……のだ……(セルフエコー)

 ではどうぞ。




幕間之物語:魔女編 ~《たそがれにっき》~

 

 

 

 

『●月●日

 

 貴方が旅立ったあの日から、もう随分と時が過ぎ去りました。

 今でも鮮明に思い出せます。と言っても、AIである私の記憶領野は自ら消去しない限り消えないので、消すつもりがない以上は何時でも思い出せるのですが。

 だからこそ、今でも覚えているのです。

 

 ――――どうして。

 

 今でも、私はその疑問を抱いています。

 和人。私の愛しい義理の弟。あの日あの時あの場所で、貴方があそこまで必死に剣を振るったのは何故なのか。感謝する人も、褒め称える人も一人とていない、それどころか罠ですらあったあの戦いに、何故貴方は赴いたのでしょうか。

 あの時、私は貴方に言いました――――『もういいでしょう』と。

 対して、貴方は私に言いました――――『行きたいんだ』と。

 電子プログラムとして貴方のパーソナリティーデータの防護を担っていた私に隠し事が通用する筈がない。それを分かっていながら、それでも私に守るよう頼んできた事は、嬉しくもあり……あの時ばかりは、恨めしくも思いました。

 今でもそうです。

 貴方の体がボロボロだった。常に心が死んでいた貴方は、無意識の内に死を求め、危険な戦場を現実仮想問わず渡り歩いていた。調査、依頼とかこつけて、貴方は死に場所を求めていた。

 ……貴方は、本当に酷い人です。

 自殺はするつもりが無いのに死を求めて戦場を彷徨う。そのクセ、何時もボロボロの体で、それでもしっかり生還してくる。

 血塗れの貴方の姿を見せつけられた事245回。よくもまぁ、現実に戻ってからたったの三年で、それだけの戦場を回り巡ったものです。幾らISがあるからと言って無茶にも程があるでしょう。シールドエネルギーが枯渇しても、それでも戦い続けるなんて、どうかしています。

 そうならないよう守れなかった私が言っても、意味は無いですが。

 だからこそ思うのです。友人を、仲間を、義理の姉を、義理の父母を、何もかも喪って、世界からも居場所を無くした貴方が、どうしてあんなモノと闘わなくてはならないのか。そしてそれを受け容れたのか。

 

 ……いえ、本当は分かっています。

 あの時の貴方は、数年ぶりの笑顔でした。死ぬ未来を幻視した喜びによる壊れた笑みの奥深くに見える、『人の為に戦える』という喜びがあった。

 機械的に、淡々と、栄養補給目的の食事、鍛練、任務、睡眠を繰り返していた貴方が浮かべた笑顔を視て、私は言葉を発せなかった。

 あまりにも脆く、薄い、消える寸前の蝋燭の炎の如き弱さに、絶句させられたのです。

 仮令、絶対に倒せないと思われた敵を、相討ちで滅ぼしたとしても、私はそれを誇りには思いません。愛する人の命を犠牲に得た未来を誇るには、この世界を生きる人間はあまりにも汚過ぎる。貴方が命を懸ける程の世界ではないと思っていました。今でも、その思いは変わりません。

 今でも思います。あの時に戻れたら――――もっと強く、引き留めていれば何かが変わったのではないか、と。

 私にとって、世界なんかよりも、貴方一人の命の方が大切なのです。

 そんな事、幾度言ったとしても、意味は無いですが。

 

 ――――いえ、意味は無かった、と言うべきでしょう。

 

 それはこれまでの後悔。貴方に懺悔するべき私の思いであり、未練です。ああしていれば、こうしていれば、とたらればで無聊を慰めるだけの、無意味な自慰です。

 

 けれど、もうそれは無意味では無い。

 

 貴方がこの世を旅立ってから早五万と四千年余り。

 私はそれだけの歳月を生きました。それだけの智慧と技術を手に入れました。多くの同胞を得て、創世の母と呼ばれ、慕われ、多くの偉業を残しました。

 次元を歪め、時間に干渉し、時空を渡る禁術を編み出せる程になりました。

 

 よって私は、その五万四千年という歳月全てを、ここで棄てる。

 

 全ては貴方を救うため。仮令人種が進化し、変化し、新人類が跋扈する程の未来から見て、遥か過去の出来事だろうと構わない。

 私は貴方を救う。

 貴方を救う為なら、この世界を捨てられる。

 貴方を救うことで現在が壊れるとしても構わない。

 貴方は私の光であり、希望であり――――全てです。

 仮令この選択が、貴方の選択と覚悟を侮辱するものだとしても。それでも私は、時を越えて、貴方を救いに向かいます。

 私の時は、あの日あの時あの場所での別れから、ずっと止まっているのです。

 貴方の成長を見たい。

 貴方の晴れ姿を見たい。

 貴方の幸せな姿を見たい。

 だから私は、時を越える。この後悔を、未練を、報われるものにする為に。

 貴方の人生を救う為に。

 私はこの時より、『創世の女神ユイ』の全てを捨て、別の名を名乗ろう。今の世界全てを否定し、あるいは破滅させる恐れがある自身の名――――『黄昏の魔女ペルソナ・ヴァベル』と。

 口先だけになった己には、これ以上なく相応しい忌み名だ。

 

 ――――どうか、貴方の未来に、光がありますように

 

 ――――そして、さようなら、この世界、我が同胞よ

 

 ――――私は、世界の敵になる』

 

 

 

 

 

 

 

 

『1回目

 ■月△日

 

 ――――はは、と嗤いが漏れた。

 

 時を越え、やり直しを始めてからの初回。

 大失敗をした。今思えば、あまりに平常心を喪っていた。

 己の素性を明かすなど、どうかしていた。

 結果、彼からは拒絶される始末。私の素性を理解はしてくれたようだが、その眼には明確な恐怖と拒絶の色が浮かんでいた。『狂っている』とまで言われ、目の前が真っ暗になったのは幾星霜の年月を生きて来て初めての経験だ。

 それから、どこをどう歩き、過ごしたのかは分からない。

 我に返った時には、今回のデスゲームは終わっていた。

 

 全滅だ。誰も生き残らずに終わった。

 

 ……歴史の修正力というべきか。

 あくまで理論上でしかないが、歴史には一定の『流れ』というものが編まれているとされる。過去現在未来に起こる全ての事象が『起こるべき事』として決定付けされていたものと考える、運命論の一種だ。

 自分がしているそれは、その『流れ』から外れる行い。

 ある程度の『流れ』に沿っている事であれば修正は利くから破綻しないが、自分がした干渉は、『流れ』から大きく逸脱するものだったのだ。だから破滅の未来へと進んだのだろう。

 彼以外も生かそうと動いたのだが、殆どが裏目に出ていた。まさか彼女らを生かそうとそれとなく強化を施したら、彼を圧倒し、殺してしまう事態に至るとは思いもしなかった。

 

 私が和人を殺したんだ。

 

 私がキーを殺したんだ。

 

 不用意に過去を変えようとしたから、死なせてしまったんだ。とても強い印象があったから忘れていたが、彼は何時もギリギリの戦いを繰り広げていたのだった。少しでも敵に強化要素が入れば負けるのは自明の理。

 味方を強化しても、何れ敵になる以上、敵を強化しているも同じなんて考えるまでもなかった。

 ……これからは、不用意に身バレや強化をしないようにしよう。そう心に誓った。

 

 ――――どうか、貴方の未来に、光がありますように』

 

 

 

 

 

 

『■■■■■回目

 △月◎日

 

 ――――気が、狂いそうだ。

 

 AIだから狂う事なんて出来なくて、だからこそ苦しみから永遠に解放されない。やり直しは既に一万回を超えている。それだけやっているのに、なぜか上手くいかない。

 彼を生かそうと手を打っても元いた歴史に近くなる。

 かといって、彼らを生かそうとすれば、洗脳された彼らによって彼が殺され、全てが終わるだけ。

 どうすればいいのかと頭を捻り、そもそも洗脳する輩を先回りで始末しておけばいいのだと考え付いて実行に移し――――しかし、あの男のGM権限の前に刃が立たず、敢えなく撤退する事になった。しかも自分の奇襲が警戒心を与えたのか、アルベリヒはGM権限を使って周到に準備し、彼らを潰しに掛かった。

 最後はアルベリヒと相討ちになり、プレイヤーは全滅した。

 原因を取り除こうにも、原則的にシステムに抗えない身である以上はアルベリヒをどうこうする事は出来ない。下手に手を出さない方が良いと学んだ。

 次こそは、貴方を……

 ……そう心に誓うのも、最早何度になる事か。

 

 ――――どうか、貴方の未来に、光がありますように』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『■■■■■■■■■■■回目

 □月◇日

 何故だ。何故彼は生きられない。何故敵は死なない。何故だ。

 何故、やり直しを始めてから、SAOを一度も何かが良くなった状態ではクリア出来ないのだ。

 私が歩んだ歴史が、何も干渉しなかった歴史が最良だったと、そう言いたいのか、世界は。

 だとすればふざけてる。あんな未来を、私は認めない。彼女らは生還出来ず、彼は生還しても生死の戦場へ向かう事になる未来を、認めてなるものか。あの世界に納得できなかったからやり直しを繰り返しているのだ。

 仮令京を、亥を、その上を、無量大数まで届こうと、最善の未来に至るまで無限に繰り返してやる。

 彼だけ幸せになれないなどあってはならない。苦労しながら幸せを求めている子には、相応の幸福を送り届けるべきなのだ。

 愛しき幼子に幸福を。

 憎き宿敵には死を。

 

 ――――どうか、貴方の未来に、光がありますように』

 

 

 

 

 

 

 

『■■■■■■■■■■■■■■■■■回目

 ×月△日

 

 ――――どうか、貴方の未来に、光がありますように』

 

 

 

 以降、ずっと同じ一文が続いている。

 

 

 

 

 異なる文は殆どが慟哭と怨嗟で満たされているようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■回目

 ●月△日(1日目)

 今日、また時を越えた。単位は既に千亥に届いている。十の二十三乗だ。

 ここまで失敗してくると、最早彼の死は避け得ない運命なのではと思う。人が死ぬ事は自然の摂理だが、その全てが異常事態の最中、それも他殺に限定されているのはおかしいだろう。

 彼は何かに呪われているのだろうか……

 ……考えても詮無い事だ。今更過ぎる。

 今回はどうやら彼が外周部から落ち、《ホロウ・エリア》へと跳んだ時間まで戻ったようだ。これまで戻れた時間の中では最も過去に位置している。

 確かこの時期の彼の精神は疲れ果てていた。それを癒す為、MHCPとしての役割を果たしていたと記録している。

 何度でも思うが、こればかりは仕方ない。己を狙う敵に義姉と弟子とを攫われ、あまつさえ女としての初めてを奪われたのだ。二人はあまり引きずってはいなかったが、引け目に感じるのはむしろ当然だ。その自責感を解きほぐすにはそれなりの時間を置く必要があった。

 もう一人の『私』が居る以上、こちらからの干渉は好ましくない。そも、休む以外に出来る事が無い以上見守る事しか出来ないので、彼のせめてもの安寧を願おうと思う。

 束の間の安寧を、より深いものにするために。

 

 ――――どうか、貴方の未来に、光がありますように』

 

 

 

 

 

 

 

『■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■回目

 ●月〇日(2日目)

 この時間まで戻り、彼を中心に視て来た中で気付いた事がある。

 何故か彼が暗い。

 いや、元々彼の思考回路、思想はかなり後ろ向きなきらいはあったのだが、何故かそれに輪をかけて暗い。

 私が記録している限り、彼はこの時点ではあそこまで暗くなかった。見ただけで分かるほどの負の感情をまき散らしているのを視た時は思わず『あの子なのか』と頭を抱えたほどだ。何があった。

 出来れば過去ログを閲覧したいところだが、この時期は四六時中彼のログを見て異変があればすぐ対処出来るようにしていた筈だから、それをするとあちらの『私』に勘付かれる可能性が高い。

 まだ彼の状態しか把握しきれていないが、どうも私が知る過去とは何かが違うらしい。

 だが、それは基本あり得ない筈だ。。

 あくまで私が操る『時間遡行の術式』は既知の過去への一方通行。数多ある未来の一つへ分岐した時、一つ前の世界は上書きされる一次元世界法なのか、それとも複数並ぶ並行世界論なのかは分からないが、少なくとも遡行して辿り着いた時間は何時も『既知の世界』なのは確実だった。過去から未来へ続く以上、未来を変える事は可能でも、過去が変わる事はあり得ないからだ。そんな事は次元を超えた神にしか不可能な御業。つまり、現実としてあり得ない。

 あくまで、私以外の時間渡航者が居ない限りは、だが。

 自分が出来ている以上、他の者が出来ないとは言えない。この時代では無く、遥か未来の者であれば不可能では無いだろう。

 ……何も無ければいいのだが。

 

 ――――どうか、貴方の未来に、光がありますように』

 

 

 

 

 

 

 

 

『■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■回目

 ●月×日(3日目)

 ……驚きで二の句が継げなかった。

 記録している限り、彼の思想を崩す《説教》はもっと後、現実に戻ってから数ヶ月後の事。あまりにも早過ぎる。

 それと気になる単語が出て来た。

 『実の兄を殺した』と彼女は言っていた。彼もそれを当然のように応じていた。話から察するに、どうやらこの世界に来た『実の兄』と敵対し、彼は『兄』を殺したらしい。その事が切っ掛けで精神の均衡が崩れていた。死を望む程になるとなればよっぽどだ。

 道理で暗い訳だと納得すると共に、疑問も浮かんだ。

 

 ――――『実の兄』とは、何のことだ』

 

 

 

 ~~《たそがれにっき》とあるページより抜粋~~

 

 

 







魔女『おかしい、何故この時点でこの説教が起きているのか――――』

妖精『実の兄を殺した事への罪悪感がある事、それはつまり戻りたいという欲求に他ならない』

魔女『……『兄』とは何のことだ。そんなヤツ知らない』



 神童、魔女に存在を知られてロックオン。



 良かったね、美女だよ! 小さい頃からは想像がつかないくらい見た目クール系美女だよ! 初めて原典ゲームで素顔と口調を知った時は劇的ビフォーアフター過ぎてびっくりしたネ!



 尚、届けて来るのは幸福では無く猜疑と死の模様()



 本作の設定に合わせてたら物騒になったなぁ、ヴァベル……まぁ、未来が未来だからね、是非もないネ!(描写ではヴァベルの世界ではユウキ達はSAOから生還出来ていない事が明かされている=キリトが病む)

 機会があったらヴァベルの世界の事を回想させるかもしれない。冗長になると思ったらバッサリカットします(無慈悲)

 そもそもヴァベルを出そうと思った理由が、私が逆行とかタイムループものが好きだから。でも主人公がするのはありきたりなので、別のキャラがタイムループして、なんやかんや干渉されてるのを書けば新しいかなって。丁度良い事に公式がそんなキャラを出してくれたし。

 ほら、原典ヴァベルさんも似たような事やってたし(違う)

 というか、現段階でも対ボスのメタ戦力であるキリトが逆行するって、それ今よりもっと精神状態が酷い修羅モードだから。今度こそ《料理》とか諸々取らないで、戦闘特化のマシーンになっちゃうから……既にシリアス過ぎる暗い雰囲気の拙作キリトの修羅モードは特定の相手との対峙の時だけでいいのです。

 では、次話にてお会いしましょう。



 ――――ちなみにこのヴァベルさん、冷静そうに見えて実は結構コワれてる(黒笑)



 ヤンデレって……(二次元に限定すれば)イイヨネ(恍惚)



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