インフィニット・オンライン ~孤高の剣士~   作:黒ヶ谷・ユーリ・メリディエス

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 どうも、おはこんばんにちは、黒ヶ谷です。

 今話は幕間の続き。前回は楯無視点でしたが、今話はアンケートで本音と接戦を繰り広げた山田麻耶先生独占回です。

 (うつほ)さんに一票も入っていない事には笑った。

 サブタイトルから分かるように戦闘回。山田先生視点なので、対キリトになってます。

 何気に本作で視点が回って来るの二回目な彼女。IS学園で教師をしていた彼女は、第二回《モンド・グロッソ》に出場するレベルの元代表候補操縦者であり、射撃部門ヴァルキリーを与えられる程の実力者。

 ――でも、実力者の前に。



 山田先生って、イレギュラーに弱いんですよね(無常)



 文字数は約一万四千。

 ではどうぞ。




幕間之物語:教師編 ~対【打鉄】キリト~

 

 

 ――これから大変だなぁ、私。

 

 着慣れた特殊繊維で作られているISスーツに着替えた私は、指定された時間が来るまで、最新型LEDライトの白い光に照らされる天井をぼうっと眺めながら思考に耽っていた。

 

 召致の報を受けたのは、大型連休に入るおよそ一週間前の事だった。

 

 私は一年一組の副担任としての業務をこなしていた。何時もと変わらない日常。変わらない時間。されど、顔ぶれは変わるクラスのためと、明日の授業の準備をせっせと行い、予習も忘れないよう自室で教科書を開いていた。

 召致の報はその時に来た。封筒として、渡された。

 IS学園はISの技術を流用し、東京湾上に人工的に作られた孤島であり、ここへ来るには港かモノレールのどちらかを使うしかない。港は専門業者の船しか入港を許されておらず、人間の出入りは基本的にモノレールで行わる。モノレールに乗る駅付近には関所のようなものがあり、そこでアポイントメントを取っているか確認し、入場の許可を得る仕組みとなっている。

 そして、封筒はその関所から事務室に、事務室から寮へと届けられた。

 

 その封筒は、黒かった。

 

 ドキリとした。自分に封筒を持ってきた事務職員も、何かやったのか、と戦々恐々の眼で見て来た。

 日常的に用いられる封筒は基本的に白か茶色、亜種で水色といったところが多いだろうが、黒い封筒も一応存在する。少なくともIS業界に於いては。

 IS業界で黒封筒が使われる場合、それは日本政府、あるいはIS操縦者が所属する自衛隊からの任務である。拒否は不可能。幾らIS学園が治外法権地帯と言えど、学園に務める職員は全員が代表候補以上の位に就いており、必ずどこかしらの国家の軍部に属している。『あらゆる国家、企業、団体の影響を受けない』のは生徒だけ。無論、それも限度があるから、あんな校則は無いに等しい。

 一体どんな指令なのか。内容によっては、生徒を手に掛けなければならない可能性もある。

 そういう専門の組織は別にあるから、教師である自分が手を汚す機会なんて来ないと思っていたし、事実今まで無かったが、万が一もあり得る。

 念のため、裏面を確認。差出人は無いが、宛先の名前はあり、確かに《山田麻耶》と白い筆文字で認められている。間違いでなかった事に溜息を吐いた私は、丁寧に封を切り、中にある紙面を取り出した。

 四つ折りに畳まれた数枚の用紙を開き、内容に目を通す。

 大まかに現状の日本、財政状況の他、《モンド・グロッソ》の事について書かれており、それを前提として今度会議を開くから来るようにという召致の指令だった。

 

「……どういう事なんでしょう?」

 

 内容は、まあ分かる。国内企業や名の知れた政治家を集め、密かに談義を行うのは珍しい事では無い。話し合う内容も国会で毎年のように論争が起きてはなあなあで流されるもの。流石に本腰を入れ始めたようだ、とどこか他人事のように感じる自分が居た。

 引っ掛かるのは、書面に記された情報のどこにも《IS学園の教師》風情が関わる必要性を見出せない事。

 これは不可解だ。おかしい。そう思い、決死の覚悟で指令の出元――陸自元帥閣下に、電文で問い合わせた。すると内容に間違いはないと()()()()()()()()知らされる。

 どうなっているんだ、と頭を抱えた私を責められる人は居ないだろう。

 これが織斑千冬(先輩)であればまだ分かる。彼女は《モンド・グロッソ》の二連覇を果たした人物であり、三連覇の候補筆頭だ。彼女に発破を掛けるべく日本の現状を知らせようとする意図なら理解出来る。

 ――だが。

 私では、あり得ない。

 IS学園の教師になり、現役から引いた身ではある私は、第二回《モンド・グロッソ》の射撃部門で他の追随を許さない成績を残し、射撃のヴァルキリーの名を頂いている。一度の大会でヴァルキリーの称号は三人しか与えられないと考えればかなりのものだろう。

 ちなみに種目は近接部門、射撃部門、高速機動部門の三つである。自分はその中で射撃に高い適正を持っていた。

 まぁ、全部門総なめにした()()がいるので、射撃最強と言えないのは悔しいところだが。

 ともあれ、自分を《モンド・グロッソ》へ復帰させるのは、流石に道理に合わないと言えた。しかも封筒は自分の一通のみ。つまり世界最強には知らされていない指令なのだ。電話でも知られないようキツく念を押されている。

 いったい何があるのだろうと、戦々恐々としながら日々を過ごし、大型連休に入って胃を痛めながらも仕事をこなし、当日を迎え――

 

 ――なんで()()君が此処にいるんですか――――?!

 

 日本IS競技場の地下にある大集会場に現れた人物を見て、心底から仰天する羽目になった。まさかこんな立場ある人間が多い話し合いの場に彼がいるとは思うまい。醜態を晒さなかった自分を褒めたい気持ちになった。

 そんな驚愕は、彼から開示された情報で全て上塗りされ、押し潰された。

 なんだ、コアを人体に埋め込み、生体兵器にしようとしたって。

 なんだ、あのデスゲームには、彼に人体改造を施した組織が関わっているって。

 しかも話を聞く限り、デスゲームに於いて彼が使っていた武装は、彼が埋め込まれたコアの武装であり、その用途理論は第三世代のもので間違いなかった。世界が漸く着手し、形になってきたものが、数年前の時点でデスゲームに入れられていた事実に恐怖を覚える。

 

 インフィニット・ストラトス。

 

 『無限の成層圏』と名付けられた世紀の大発明は、この世に現れ出でてからおよそ九年の歳月が流れようとしており、現在467個のみ世界に存在している。世界で唯一作成出来る天災が行方知らずとなっていたからだ。また、本人は宇宙進出の為に開発したのであって、現在の軍事やスポーツ目的ではないため、世間の認識が変わらない限り新たなコアを作成する事も無いと宣言している。桐ヶ谷和人の肉体に埋め込まれたコアは()()()のため、厳密に言えば468個ある事になる。

 未だ『女性にしか扱えない』という重大な欠点を残したISは、科学者達は現代兵器の価値を暴落させる科学の結集を研究し、解析し、己なりの展望を以て、最初期から進歩を続けている。

 その進歩を、人は『世代』と名付けて区別している。

 ――第一世代。

 兵器としてのISの完成を目指した機体であり、有名どころは【白騎士】及び【暮桜】が挙げられるだろう。その実、正式名称(俗称)【IS運用協定】(アラスカ条約)という21の国と地域が参加して成立した条約により、軍事転用が可能なISの取引規制があるのだが、当時は出来たばかりのため初回の《モンド・グロッソ》では軍事運用を目的とした機体ばかり出場している。その中でも特に際立っていたのが【暮桜】。

 【暮桜】は全専用機の中で一次形態(ファーストシフト)の段階で単一仕様能力(ワンオフアビリティー)を発現していた機体。

 その能力の名は《零落白夜》。対象のエネルギー全てを消滅させるエネルギー刃を展開する攻撃能力であり、代償に自機のエネルギーを大きく喰らう反面、その効果の通り大ダメージを与えられる。シールドバリアを無効化する能力と言っても過言でないそれは、例えるなら『竹刀を使う剣道試合の最中に真剣を使う』に等しいものであり、攻撃を受ける側の機体は絶対防御を無理矢理発動させられ、エネルギーを大きく減らされる事となる。その猛威はブリュンヒルデ本人の技量と合わさり、一瞬のみの展開に限定される事で、ほぼデメリット無く放てる鬼札と化していた。第一世代で【暮桜】が有名なのはそんな一撃致死の能力を持っていたから。

 故に第一世代ISは、軍事用ISと言われる事もままある。

 ――第二世代。

 後付装備(イコライザ)の追加により戦闘での用途の多様化に主眼が置かれた世代。

 第一世代では前衛は刀剣武装、後衛は銃火器武装を持ち、換装を許されなかったが、第二世代からは一人で距離を選ばない戦いを選べるようになった。設計データを基に量子変換した元素を呼び出し、武装として再構築するという拡張領域(パススロット)機能がマトモに使われ始めたのもここからである。

 現在最も多く実戦配備された世代であり、汎用性が増した代とも言える。

 各国で配備されているIS、独自開発された機体も、その殆どは第二世代としてチューンアップされており、第一世代の影は無くなった。

 

 ――そして、第三世代。

 

 この世代は現在漸く開発の目途が立ち、世界中の研究者が躍起になって開発をしている最中。これは操縦者の思考を反映する《イメージ・インターフェイス》を用いた特殊兵器の搭載を目的とした世代で、言ってしまえば、【解放の英雄】の戦闘スタイルそのもの。理論も同じで、ハイパーセンサーなどを備えたバイザーが操縦者の思考を読み取り、その通りに兵器を遠隔操作するだけだ。ただし搭載した兵器を制御するにはかなりの集中力を要する上に戦闘中は眼前の敵を意識しなければならず、マトモな運用を可能とした者は極少数に限られている。

 そのため技術的に進んでも、乗り手の育成が追い付いていないという状況に陥っていた。

 現状第三世代の専用機を所有しているのは各国の首席代表候補だけで、片手で足りる人数しか居ない。そこに『マトモな運用』という条件が加われば、一人居るか居ないかという程のレベルになる。

 第三世代機は技術だけ進んでも決して完成しない、謂わば人機一体と言うべき代物なのだ。

 ――その技術が、SAOで《ⅩⅢ》と呼ばれる武器に積まれていた。

 元々《ナーヴギア》を初めとするフルダイブハードの技術体系は、ISのハイパーセンサーなどのバイザーを参考にしたとされており、理論が似るのはある意味仕方ない側面がある。《ナーヴギア》とISバイザーは、その役割が使用者の脳波測定と情報送受信にあるため、必然的に酷似すしてしまう。だからISの技術を流用出来るのはおかしい話では無い。

 問題は、第二世代の開発真っ盛りだった頃の時点で、机上の空論に近かった第三世代の技術を入れられていた事。

 つまりデスゲームに変えた須郷伸之のバックに居る者は、今もISの研究、開発に携わる研究者達の追随を許さない頭脳と技術を持っている訳で、彼のコアの製作者が束で無い以上、最悪コアも作れる事になる。そんな存在の所在は知れず、目的も不明と来れば、恐怖を覚えるのも当然だ。

 そうして、彼のコアについて知る者のみが分かる事実を提供したのと引き換えに、自衛隊上層部や国内企業の首脳陣との交渉を行い、見事成立させた様は、怒涛の勢いであり、自分の処理限界を超えた事態に等しかった。

 発言する内容も理由も無いが、自分が此処にいる理由が分からなくなってくる程である。私来る意味あったのかな、などと鷹崎元帥への失礼な疑問を抱いたりもした。

 ――先輩に知らせないよう厳命された理由は、彼の過去を知ってしまった以上、理解せざるを得なかった。

 ボス戦放映が始まるほんの少し前に、SAO内部で戦う一夏()を見た、と酒に酔いながら話された事がある。私は恨まれていた、殺したい程に憎まれていた、女手一つで頑張ったがどこで間違ったのかが分からない、と珍しく泣き言を口にしていた。

 彼の過去の情報は第二回《モンド・グロッソ》で誘拐されたところから始まったため、それより以前の事は触れられなかったが、それは既に暗黙の了解として語る必要性も無かったため。彼としても憎しみの根源である記憶を掘り起こす話はしたくなかっただろう。それでも、仮に先輩が此処に来ていたとすれば、誘拐されて以降の事実を受け留め切れず、癒やしようのない深い傷を負って再起不能となるに違いなかった。そうなっては第三回《モンド・グロッソ》の優勝で日本存続など水泡に帰し、この話し合いの根底は崩れ去る。鷹崎元帥は、『少年の本心を知った』という事実から千冬の心情を推し量り、まだ知るべきでは無いと敢えて私を選び、召致したのだと悟る。

 あるいは、この場に来る為の条件の一つとして、彼がそう提示したのか……

 チラ、と少年の顔を窺う。自分はIS学園の教員として来ているため、更識姉妹達と異なり席に着いているが、いかんせん場所が入り口から遠めだ。表情の機微を読むには些か距離があり過ぎた。

 結局、彼がこちらに視線を向けて来る事は無く、話し合いは最後まで進んだ。

 最後に、桐ヶ谷君のISとISの()()技術はどれほどのものか、と元帥は問うた。

 それに興味を向けるのは当然の事だった。なにせ、日本の今後を左右する鍵そのものなのだ。機体名。世代。装備。基本スペック。最大スペック。シールドエネルギーの最大値。消費効率。飛行速度。その他、様々な情報が無ければ、元帥をはじめ各企業主達も安心して彼に任せられない。

 そのためISを用いた摸擬戦が行われる事になった。

 丁度明日から代表候補組の強化合宿があるため搬入されていた機体を使い、召致された操縦者である自分が対戦する事になる。

 このために私を呼んだのか、と察すると同時に、最初から元帥は彼の要求を呑むつもりだったんだろうなぁと予想する。話し合いの流れから察するに互いが求めるもの、少なくとも少年側の要求は把握していたようだった。先輩が見たという放映されていない部分の記録映像を含めて考慮し、協力してもいいと判断したのだ。そのために異を唱えない面子で固めていたのかもしれない。

 

「顔が固いですよ、山田先生」

 

 ――ふと、誰も居なかった筈のロッカー室で、声を掛けられた。

 いつの間に入ってきたのか、外側に毛先を跳ねさせた蒼髪の少女が室内に立っていた。その手でぱんっと開かれた扇子には『リラックス』と綺麗な筆文字で書かれている。

 その様々な文字を瞬時に見せる扇子――に取り付けられた、二対の菱形のストラップが、日本代表候補筆頭の彼女が持つ専用機。幾度も改修を施された機体名は【霧纏の淑女(ミステリアス・レイディ)】。日本が誇る第三世代相当の試験機体。

 それを持つ彼女もまた、装いはスーツのそれだ。若さ溢れる瑞々しい肢体をぴっちりとしたスーツに包んだ彼女は、ふふ、とお淑やかに微笑んで見せた。

 

「なんだか新鮮ですね。授業だとあわあわして生徒に弄られたり、慌て過ぎて躓いたり、緊張で失敗するところは見てきましたけど、そんなに顔が固いのは初めて見ました」

「さらりと先生を弄らないで下さい……それに、私、結構上がり屋なんです」

「知ってます」

「でしょうね……」

 

 さらっと己の恥部を知られていた事に苦笑を漏らす。

 苦笑しか、漏らせない。

 自分が受け持つクラスの中でとびきり優秀な彼女は、比例してとびきりの問題児である。入学後いきなり生徒会長に勝負を挑むや否や生身でもISでも完封勝ちする彼女に敵う気がしない。跳ね除けていい勝負を生徒会長に受けさせたのも、彼女の強かな交渉術で上手く相手を煽り、乗せたから。IS戦闘ならまだ抜かれるつもりは無いが、普段の煙に巻くやり取りが苦手だった。

 

「あはっ、山田先生って私のことが苦手ですよね」

 

 その苦手意識も、見抜かれていた。

 だから苦手なのだ、と胸中で零す。人の思考を読むのはいいが、それを指摘するクセはどうにかしてくれないだろうかと思い悩み、入学式から一週間で諦めた記憶が脳裏を過ぎる。

 

「これまで何年か教員として勤めてきましたけど更識さんほど破天荒な子は初めてですよ」

「お褒めに預かり恐悦至極♪」

「誰も褒めてません」

 

 優秀なのは確かだが、せめてその優秀さをもっと穏便に動く方に振って欲しい。()()も苦手としているのって相当な事なのだ。

 

「でも先生、その破天荒な私を色んな意味で上回る子が来年入学する訳ですが」

「……そうなんですよねぇ」

 

 ふと、視線と思考が再び遠くへ飛び立とうとする。

 ひっきりなしに鳴る電話。女子校の中に放り込まれる少年。それが及ぼす波紋と世界の動き。彼の過去について。各国の抗議について。それらを対応するのはIS学園なのだ、政府では無い。今回の交渉で政府は裏向きの援助に徹する事になっており、バイタルや専門機関の利用はISを扱える事が明るみになった後という対症療法的な動きになる。

 そんな世界的に爆弾な子供――それも来年中学一年生の少年――を自分がクラスで受け持つ事は、此処に来て裏事情を聞かされた時点で確定している。問題が起きない筈はない。

 遺伝的にISを扱えるなら、ひょっとしなくても彼の実兄も入学する可能性はある。

 私の胃は彼らが卒業するまで破綻せずに保つのだろうか。日本の破綻と胃の破綻のデッドレースが始まろうとしている。

 せめて彼が()()()()()()()()()()()である事を祈るばかりだ。

 ――そうこうしていると時間になったので、更識楯無に送り出される形で更衣室を後にする。

 IS発着場であるピットに出た自分は、用意されている機体へと近付いた。カタパルト上に設置された緑色の甲冑と言うべきそれは第二世代型IS(ラファール・リヴァイヴ)。フランスの《デュノア社》が製作した世界最後発のそれは汎用機、訓練機とも言われており、イメージ・インターフェイスこそ無いもののスペックそのものは第三世代型に後れを取っていない。更に後付装備の容量は歴代ISに較べてかなり大きく、また日本の汎用機【打鉄】に較べて敏捷性も高いため、飛翔する武器庫という異名を早くも勝ち取った。中衛、後衛として活躍するだろう万能型として人気もあるため、世界第三位のシェアと七か国でライセンス生産され、既に十二か国で正式採用、配備されるほどの評価を受けている。

 日本もまた、その性能を高く評価して【打鉄】と共に配備しており、明日からの候補生合宿でも利用される予定だ。

 授業で幾度となく口にした情報を脳裏に浮かべながら、私は【ラファール・リヴァイヴ】へと乗り込んだ。手足を重厚な機体の中に突っ込む。途端、肌の表面に内装が密着。

 ――ふと、ISスーツで覆われていない手足に、何か意味はあるのだろうかと疑問が浮かんだ。

 競泳水着にも似たISスーツの役割は、効率的な運用にあり、体を動かす際に筋肉から発せられる電気信号を増幅してISに伝達しやすいようにする為にある。しやすい、とあるようにISの運用に際して必ずしも必要という訳では無く、別に普段着でも構わないが、今は良い。問題は四肢それぞれをスーツは覆っておらず、現状簡素な鎧としてしか機能していない点だ。拳銃の弾くらいなら衝撃こそ受けるが傷を負わない頑丈さを誇るこれも、IS戦闘に於いては防御力など無いに等しく、つまり四肢を覆っていないスーツは現在リアルタイムのバイタルデータ把握でしか役立っていないのでは……

 

『――時間です。山田中尉、発進して下さい』

 

 ――機体の調整を済ませ、沈思していた意識が男性のアナウンスにより浮上する。

 意識を正面に開けた空へ向ける。飛ぶ思考をした途端、ISはこれを正確に把握したようで、機体が真実息を吹き返す。ぶわっ、とピット内に旋風を巻き起こした。背中に四つあるスラスターとバーニアから火が噴き出す。

 

「山田麻耶、発進します!」

『御武運を』

 

 そして、飛び立つ。体に掛かる風。しかし、圧力であるGはあまり感じず、まるで風そのものになった感覚で空に飛び立つ。

 ISに送り込まれ、視界に表示されるビーコンを頼りに、位置に着く。

 ――対峙するは、灰。

 白髪をたなびかせる少年は、日本が開発した灰色の第二世代機【打鉄】に搭乗し、百メートルほど離れて私を待ち構えていた。右手型装甲には近接型ブレード《(あおい)》、左手にはアサルトライフル《焔備(ほむらび)》が握られている。多分私の過去の記録映像か戦闘スタイルを知ったから敢えて慣れないだろう銃火器を取り出したのだ。

 これがあのブリュンヒルデであれば、銃弾を掻い潜り、あるいは正面から弾き、肉薄してくる。

 だが、あれは正直例外だ。誰にでも出来るものではない。ハイパーセンサーのお蔭で集中すれば弾速を見切る事も不可能では無いが、戦闘中に弾丸だけを注視するのは危険だ。出来るとしてもやろうとする者はまず居ない。失敗した時のリスクも大き過ぎる。

 だから彼が遠距離攻撃手段を最初から選択しているのは正しい判断と言えた。

 

『桐ヶ谷君、ですね。よろしくお願いします』

 

 まだ試合開始のブザーは鳴っていないため挨拶を先に済ませる。ISコアネットワークにより可能な個人間秘匿通信(プライベートチャンネル)を用い、管制室にも聞き取れない内緒のお話だ。

 いきなりの挨拶ではあったが、彼も知識として個人間秘匿通信の存在は知っていたらしく、表情に変化はない。片眉が僅かにヒクついたくらいか。あれが素だとすれば空恐ろしい精神力。デスゲームを終焉へと導いた覇者の貫禄は伊達では無い。

 

『こちらこそ、よろしくお願いします』

 

 ――驚いた事に、即座に同じ通信で返事を返して来た。

 流石にいきなりで無理かもと思っていただけにちょっと驚く。篠ノ之博士と懇意にしていたというし、ひょっとすると隠れてISに搭乗していた最中、彼自身のISで使った事はあったのかもしれない。相手が居ないと成立しない通信の訓練と言えばそれしかない。

 

『そういえば、桐ヶ谷君自身のISの訓練時間については聞きましたが、訓練機の使用経験はどれくらいなんです?』

『無いですね。そもそもISの訓練は全部自分のに費やしてましたから』

『そうですか……』

 

 ――何故彼が訓練機を使っているのか。

 

 それは、彼の世間一般と比較しての操作技術を、ISの開発に携わっている面々が知りたがったからだ。博士により詳細は一旦伏せられているが、どうも従来のISと彼のISは異なる運用らしく、単純な比較は出来ないらしい。見てからの方が多分速い、と言うほど掛け離れた代物らしい。

 そこで出た案が、両方使ってみる事。

 つまり今回の摸擬戦、彼は二回行う。普遍的操作技術の比較の為に訓練機を用いて元代表候補が駆る訓練機と戦い、次に専用機持ちの代表候補生と彼自身のISで戦う事で、彼の特性をハッキリ理解しようというのだ。これはISに携わっていない面子への分かりやすい指標とする意味も込められている。

 更に言えば、第一世代の拡張版と言える第二世代型と、イメージ・インターフェイスという完全新技術を搭載した第三世代、そのどちらに彼のISは近いのかという分析をする為でもある。

 イメージ・インターフェイスとは、噛み砕いて言えば『武装の遠隔操作』であり、そのために操縦者の脳活性状態から想像を読み取り、ISが反映するという技術。相当な集中力を要するこれを、彼はSAOで使いこなしていた。つまり彼自身は第三世代機の操縦者に相応しい事になる。仮に彼自身のISが《モンド・グロッソ》向きでないなら、束博士と政府は専用機開発に動くし、その逆なら相応のサポートに動く。その為の指標として必要な事だと元帥は語った。

 機体一つの開発には莫大な物資と金を注ぎ込まなければならない。それも、操縦者の適合、訓練での消耗、武装の消耗などで、開発以後も定期的な出費は続く。日本経済が赤字になっているのは収益源が縮小される中、ISの発展にと補助金を大量に費やす開発、研究費の増加が原因でもある。補助金は国庫から捻出される。つまり収入は少ないのに、支出は増えていく状況な訳だ。

 そんな中、場合によっては彼に専用機を作成する事も想定されている。

 金が無いから破綻しそうな国がトドメを刺しかねない選択を取っているのだ。元帥達がどれほど本気で彼を伸し上げさせ、日本の未来を救おうとしているかが窺い知れる。

 

『――開始五秒前』

 

 訓練機同士で勝負になった経緯を思い出していると、気付けば試合開始が迫っていた。アナウンスの声で意識を戻し、気を引き締める。

 百メートル先の少年も、冷たくも感じる表情に緊張が走った。今後も掛かっているから緊張しないわけがない。

 五、四、三――とカウントが進み、ゼロとなる。

 

 瞬間。二度、空気が破裂。

 

 瞬時加速(イグニッション・ブースト)を半分のスラスターで行った。一般的に二重加速(ダブル・イグニッション)と呼ばれる加速法。溜めダッシュを刹那の内に二連続で行うためえげつない加速を得られるこれにより、瞬間秒速1キロ。マッハ3の突進はISの搭乗者保護システムが間に合わないレベルの加速故、強烈なGが体を襲うも、元代表候補になってからも訓練は欠かさず行っていたため、血を吐いたり骨折する醜態にはなっていない。視界端のエネルギーメーターがぐぐっと減るも、必要経費と割り切った。

 本当は四基全てで行う四重加速《クアッド・イグニッション》を行いたかったが、そんな事をすれば間違いなくフィールド端に激突するので、その半分に自重している。

 二重加速でもマッハ3。競技場の端から端まで半秒で到達するため、どちらにしろ激突しかねないのだが、相手は殆どのIS操縦者が未経験の命を賭した戦いをも生き抜いた覇者だ。実力は未知数であるのに反しそんな経歴があれば警戒レベルは最高ランク。ブリュンヒルデと相対するのに等しい。いや、あるいはそれ以上か。

 故にこの場でギリギリ出し得る最大の加速を行い、距離を詰めた。

 百メートルをコンマ一秒で詰め、腕部装甲をぶつけるように突進する――――が、躱された。

 内心で舌を巻く。光速のレーザーすら何とかスローで見えるハイパーセンサーをしているのだ、攻撃は見えただろう。だが、それに反応して動けるかは、話は別。流石最速の反応速度として《二刀流》を与えられた少年だ。

 そう賛辞を送りながら、反転。スラスターとバーニアで慣性に制動を掛けつつ相手から離れ、両手に握るアサルトカノン《ガルム》の砲口を向け――

 

 ――彼方から飛来した長刀が、砲口を弾き、反らした。

 

「――ッ?!」

 

 初手でいきなり彼の十八番であろう武器を投げた事、そして間髪入れず銃弾が襲って来てエネルギーを削られた事に驚愕する。慌ててスラスターを吹かせ移動を開始。

 それを追うように銃弾は射出されたが、数秒経って止まった。弾の無駄と判断したらしい。

 初手でブレードを投げて来たのは予想外だったが、だからこそ有効打になった。初期値600のエネルギーもこちらの二重加速と先の被弾で既に400を切っている。200の内約の七割は加速、残り()()が被弾だ。

 たった60。

 されど60。最大値の一割を初手で削ってきた事実は私に危機感を抱かせる。数発の被弾でこれだけ削って来たのは、装甲に覆われていない胴体部分を狙って来たからであり、一秒程度のやり取りでここまで削れる精密射撃は脅威そのもの。二重加速が通用しなかった事も警戒心を煽っている。

 ――これまでの戦闘では、開始直後に二パターンのやり取りを行っていた。

 相手が距離を詰めて来ないよう射撃で牽制し続けるパターンと、今のように瞬時加速、あるいは二重加速で距離を詰め、殴り飛ばして隙だらけにしたあと銃弾の嵐を叩き込むパターンだ。どちらかはやってみるまで分からないため各国から警戒されていたと聞いた事がある。

 だが、やられてから分かる代物では無い。

 瞬時加速で使われるエネルギーは、シールドエネルギーである。というよりISは武装や装甲含め全てシールドエネルギーで賄われている。これはスラスターから通常時に噴き出るものも例外では無い。瞬時加速はこの特徴を利用し、スラスターから噴き出たエネルギーを再度取り込みつつ充填し、充填分と取り込んだ分の二回分を纏めて一度に使い、一気に加速するという技術である。

 ちなみに、武器の使用は試合前だと認められておらず、移動関係の装備も同様だが、装甲扱いを受けるスラスター等に関してはその範囲ではなく、《モンド・グロッソ》のルールブックにも瞬時加速の準備は認可されているので、違反では無い。

 つまりISのハイパーセンサーであればスラスターに通常時と異なる熱源が発生していると分かる。それをしないのは、視覚的に相手の出方を見ようとするクセが、どうしても操縦者から抜けない為だ。自分だって目で見る方が速い。

 ――だが。

 彼は、それを初見で見切った。ハイパーセンサーを頼り過ぎる傾向の初心者としての考えが功を奏したか、あるいは素で見切ったのか。

 どちらにせよ、奇襲的な加速が通用しないとなれば、私が取れる戦法は唯一つ。

 相手が近づけないよう精確に弾幕を展開するだけだ――!

 

「せ、ぁ!」

 

 弾切れを起こした左の機関銃を仕舞い、代わりに秒間射出速度を増した重機関銃《デザート・フォックス》を取り出す。右も弾切れを起こした後、両手持ちで重機関銃を突き出し、引き金を引く。

 ガガガガガガガガガガガガガガガガッ、と暴力的な撃音が木霊する。

 弾は当たらない。壁、地面に着弾し、表面を抉り取る威力を、しかし少年はするりするりと躱していく。時たま後ろ手に焔備で撃ち返してくる様のなんと強かな事か。

 ISの操作自体は初でないにせよ、【打鉄】を扱うのは初だという。装備やスペックに慣れていない現状でここまで乗りこなしている操縦者を私は見た事が無い――

 

「はぁッ!!!」

 

 その思考を食い破るように、彼が裂帛の声を上げた。途端、ぼっ、と【打鉄】の四基のスラスターの内、一基が炎を大きく噴き出し、加速する。

 瞬時加速だ。

 初心者が、そんないきなり――?! と驚くのも束の間、更なる驚愕が襲って来る。

 再度ぼっと炎を噴き出したのだ、別のスラスターから。

 同時では無く、しかし加速中にもう一度行われた瞬時加速は《個別連装瞬時加速(リボルバー・イグニッション)》。超上級技術の一つである。

 国家代表レベルでもそう出来ない超技術の発露に絶句する。

 理屈としては、そう難しくはないのだ。むしろやろうと思えば誰にだって出来る。【打鉄】の場合、四基全てのスラスターにエネルギーを溜めておき、最初の瞬時加速中に一つ、また一つと解放していく。それだけである。

 ――だが、それは動いていない場合の話。

 戦闘中は当然動く。動くという事は、スラスターを使っている。溜め込む事は勿論、一度噴き出したエネルギーの再吸収の余地など無い。しかし個別連装瞬時加速は、エネルギーの再吸収と解放を瞬時に行い、且つ瞬時加速中の姿勢制御を自力で制御しながら、残るスラスターに再吸収を行わせ、瞬時加速を順次行っていくという荒業を一息に行わなければならない。最初から制御分もタメに回すのは、加速を重ねる中でタメに許される時間が短くなっていくためだ。どんどん加速していくので延々とこれを繰り返す事はフィールドを限定される試合では無理だし、加速する度にエネルギーを削るので無限使用は土台不可能。

 そもそも瞬時加速が上級技術に分類されるのは機動中の姿勢制御を自力で行える僅かな時間でエネルギーの再吸収とタメを完了させるのが難しいからだ。タメが十分でなければただエネルギーを使った強ダッシュでしかない。それを複数のスラスターで個別に行うなんて、気が遠くなるし、ともすれば狂いそうだ。

 だから個別連装瞬時加速なんて誰も習得しようと思わない。仮令実戦に狩り出されたとしても、相手の意表を突いて倒せるメリットに反し、瞬時加速四回分というエネルギー消費量が見合っていない。体に懸かる負担も大きすぎる。

 それを――それを、この少年は、試合開始から十秒と経たずに使って来た!

 たった十秒で成長する筈が無い。という事は、彼の技量は既にこの域にあった事になる。生還してからはISの訓練を行っていなかったというから、二年半前の技量に錆びが浮いたものの筈。しかしそんな無茶苦茶な技術を使えるほど既に高レベル。かつて大会に出場した身として断言する、反応と技術は既に《モンド・グロッソ》本出場レベルにある。これで錆び付いているなら、鍛え直せばどれほどになるのか。

 ――そう驚嘆を露わにする中で、彼は合計()()もの瞬時加速を行った。

 一回目と二回目の瞬時加速で使ったスラスターに、また瞬時にエネルギーを再吸収させ、吹かしたのだ。彼の脳の演算速度なら使用済みのスラスターにタメを行わせる事も可能らしい。

 重機関銃の弾幕から逃れるべく円を描くように飛んでいた彼は、その軌道のまま連続加速で速度を上げたため、彼を基点に考えれば斜め前に加速した事になる。迂回して来て、横殴りの如く襲い掛かって来た。

 重機関銃を格納し、代わりに標準装備の近接ブレード《ブレッド・スライサー》を右手に持ち、左手に六連装ショットガン《レイン・オブ・サタディ》を持つ。何時の間にか回収していたらしい《葵》で斬り掛かって来た彼を、ブレードで受け止める。

 あまりの加速を受け留めたため、腕部装甲がぎしりと軋み、嫌な音を上げた。慣性を止めるショックも強く、後ろへ流される。痛みは無いが、体勢を崩されて背筋を冷たいものが走った。喩えるなら階段でふらついた瞬間の感覚か。

 そして、顔前に突き付けられる焔備の銃口。

 

「ッ……!」

 

 咄嗟にスラスターを上に吹かせ、下方に落ちる。直後、がぅっ、と銃口が火を噴いた音を聞く。一瞬でも判断が遅れていれば大ダメージは必至だった。

 内心で汗を掻きながら、くるりと縦に回り、地面に背を向ける形で上を見る。

 ――胸に衝撃。

 焔備の銃弾が放たれていた。彼は勢いを殺せておらず、未だ前進を続けていたが、下を向くや否や逆さまの態勢で焔備を撃っていた。

 あまりの切り返しの速さに絶句。もう少し混乱し、仕切り直しになるかと思っていた予想が外れた事を悟り、スラスターを吹かせて円を描くように飛ぶが、それまでに十数発も受けてしまった。エネルギー残量は100を切っている。

 対して、彼のエネルギーは300強。(70)()()()を六連続で行ったのに、計算が合わない数値に困惑する。

 ――常識が通じない。

 私が得た知識、培った経験が、まったく通用しない。厳格な数字すらも通用しない現状に酷く混乱する。

 その混乱を振り解けず、ペースを崩された私は、ジリジリとエネルギーを削られ、敗北した。

 

 試合時間、2分21秒。

 

 その内、実に1分半は粘りに粘って稼いだ時間なので、実質1分で倒されたに等しい事実に私はヘコんだ。

 

 






 はい、如何だったでしょうか。

 今話の山田先生が【ラファール・リヴァイヴ】で使った武装は、原作シャルロットの【ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡ】の武装ですが、どれだけ調べてもオリジナルラファールの武装データが無かったので、『シャルの専用機はスペックと拡張領域だけバージョンアップしていて、武装はそのままだったんだろう』と判断し、同じものを先生は使っています。

 つまり原作のシャルも重機関銃を持ってるんですよねぇ……

 ちなみにシャルで有名な69口径パイルバンカー(腹パン武装)灰色の鱗殻(グレー・スケール)】も『専用』とか『パッケージ』とか記載ないし第二世代型再高威力とか言われてるので山田先生も使えます(絵面的にアウト)

 原作山田先生は、英国と中国代表候補生を纏めて相手取った時、トドメに手榴弾を使っているので、それも積んでいます。

 ホントに飛翔する武器庫そのものだな(白目)

 今話の山田先生のスペックについて。

 原作の一夏の試験時にも上がって自爆突進する程ですし。どれだけ気を引き締めてもイレギュラーが起きると流れを崩されてしまうのが山田先生。立て直す前の隙を逃す筈も無く、和人は倒し切りました。

 地味に原作の自爆は瞬時加速使ったからだと思ってます。緊張してミスして壁に激突する方向になっちゃって、でも慌ててるから操作ミスって、壁に突っ込んでしまったのかと。じゃないと衝撃による気絶は起こり得ないのではと。

 ――そんな勝手な妄想が反映されて、ウチの山田先生もイレギュラーには弱い。

 ただし瞬時加速は普通に使うし、何なら二重加速も狭いフィールドの中でやってのけます。瞬時加速単体なら代表候補組も使えるようなのでおかしくは無い筈。

 個別連装瞬時加速(リボルバー・イグニッション)に関しては、原作でそこまで原理が明記されていないので、オリジナル解釈が入ってます。でも多分そんなに外れてはいないと思う(過信)

 個別連装に対し、二重や四重は『タメに集中して同時に放出』をするため、『加速中に姿勢制御を自力で行いながらタメをし、解放を繰り返す』より簡単かなと思い、彼女は使用可能です。フィールドを制限しなければ四重もバンバン使えます。尚、エネルギー消費量()

 そんな山田先生を倒せたのは、ぶっちゃければビギナーズラック。和人の手の内が分かっておらず、判明しても常識の外にあったからペースを乱されただけ、初心者だと思ってたら自分も含めて世界的に使い手が少ない超上級技術を使って来たから困惑したのは仕方ない。それを一気に食い破れる和人だっただけ、相手が悪かったんや()

 しかし山田先生も和人の(数値含み)常識に囚われない状態を知ったので、今度は油断はしないでしょう。

 というより、今話和人が勝ったけど、IS操縦者の格は山田先生が勝ってます。

 秒速一キロ。つまりコンマ一秒に百メートル。

 一秒間に九つの斬撃を放てるのはあくまで仮想世界のアバターであり、現実だと肉体が間に合わないので、無理矢理脳を酷使して体にまで反映させ、回避一択。

 しかし山田先生はそれからも五体満足で動き続けている。本人の思考から四重だとヤバいけど、二重くらいなら体の異常を来さない。

 対してキリトは現在楯無と同レベルのスタミナ、全力戦闘十五分限定という脳の限界を抱えています。

 つまり同じ速度で動くなら、彼女の方に軍配が上がる訳です。ISの試合は三十分以上が確実のようですからね(原作クラス代表決定戦で一夏は三十分粘っている)

 現状のIS搭乗和人は初見殺し特化型。SAOと違い、山田先生のような正攻法の戦い方は苦手としている。

 ――つまり原作基準だととある剣道()娘とか英国代表()候補とは性格的に相性が悪いって事ですネェ!

 きたない。流石成り上がり系オリ主()、きたない。

 尚、機体性能は互角で技術も世間一般のものなので、卑怯ではない(戒め)

 では、次話にてお会いしましょう。


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