インフィニット・オンライン ~孤高の剣士~   作:黒ヶ谷・ユーリ・メリディエス

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 どうも、おはこんばんにちは、黒ヶ谷です。

 今話もオールリーファ視点。ロスト・ソング編にキリトが絡まなくなると原作ALO編に近くなりますからネ!

 むしろヴェルグンデ攻略中は原作ALO組の関係が強く出て来ます。リーファの周囲って何だかんだ濃いキャラが多いですよね……

 しかし前話のアンケートで『待遇良く、強さアゲアゲ』がゼロ票は笑った。『待遇悪く強さそのまま』が最多って、皆さんはレコンをどうしたいの……?

 ちなみに私はリーファとの絡みでレコンを原作のように抜けた感じにさせたいです。

 そんな今話は約一万五千。

 ではどうぞ。




第二十二章 ~シルフの()()

 

 

 あたしをALOに誘った元クラスメイトのレコンは、彼自身が言ったように、暗殺スタイルを得意としたプレイヤーだった。

 厳密に言えば、あたしはそれを把握していなかった。というのもあたしが彼と居たのはサービス開始から二、三週間までの事。領主として他薦されて以降は一切パーティーを組まない程で、顔を合わせて話す程度の間柄でしかなかった。

 なので彼の戦力評価もほぼ人伝に聞いた話でしかない。

 自分が知っている事と言えば、最初期から取っていたスキルと戦闘スタイルだけ。

 

 ALOのシステムは、SAOのそれに近しいながら、若干異なる部分が存在している。

 

 レベル&スキル制だったSAOに対し、こちらはスキルを最重要視する設計なため、武器防具の多くが特定スキルの熟練度を求めて来る。

 有名なのはユージーン将軍が持つ伝説級(レジェンダリィ)武器(ウェポン)の【魔剣グラム】。サーバーに唯一存在する両手剣は、両手剣スキルを950以上持っていなければ装備出来ない代物だという。噂によれば所有すら許されない程だとか。スヴァルトルールによって戦闘系スキルの多くが初期値に戻されている中でも使えているのはある種の救済措置。でなければ、古参組の多くが初心者装備を購入し、強化していく羽目になる。

 このようにプレイヤーとしての『強さ』を高める装備の為に、各々は自分に見合ったスキルを鍛えていく。

 しかしあれもこれも取っていける訳では無い。SAOがそうだったように、ALOでもスキルスロットの限度はあった。SAOでは初期で二個、レベル十で六個になり、以降は十刻みで一個ずつ増えていく流れだったスロットは、ALOでは最初から最後まで十個こっきり。

 更に、『金属重鎧』や『革軽鎧』など防具関係でのスキルも存在し、防御力に影響を与えているので、SAOの時よりも厳選しなければならない。アタッカーなら金属軽鎧や革軽鎧が人気で、タンクだと金属重鎧が鉄板だ。

 勿論完全習得しないまま外せば育てた熟練度はゼロへと戻る。逆に言えば、完全習得さえすればいいのだが――二十四時間完全にログイン状態で過ごしていたSAOと違い、ALOは捻出した時間をやりくりして遊ぶ娯楽なので、短期間で完全習得する事はまず不可能。

 《風魔法》や《闇魔法》など、属性が付いた魔法であれば抜け道もある。

 

 ――問題のレコンは、実に三つものスキルを完全習得している稀有なプレイヤーだった。

 

 プレイ歴を考慮すれば妥当かもしれないが、その内容が実に異彩だ。抜け道が存在する《闇魔法》はともかく、他は属性の無い《隠蔽魔法》と《隠蔽》スキルである。後者二つは純粋な発動時間――ヘイトを稼ぐと消失するため戦闘を省いた時間――に左右されるもの。あのSAOですら《隠蔽》を極めたプレイヤーはキリトとPoH率いるレッド幹部くらいだったのだ。娯楽のALOで《隠蔽魔法》と《隠蔽》の両方をマスターしているのは彼だけに違いないとあたしは確信している。

 ホント、暇な人だなぁ、と呆れにも似た感心を抱く。

 そして、その三つのスキルは最初から彼が取ったスキルであり、つまり初期の段階から今の暗殺スタイルとやらを想定していた事実を意味している。

 元々レコンのアルファベット表記である《Recon》は、正しくは『リーコン』と発音する単語であり、アメリカの軍隊用語で偵察隊を指す意味だという。狩りでの先行偵察を目的としたキャラビルドのためハイディングや尾行、奇襲もお手の物。

 その能力を()()()、こっそり誕生日プレゼントを置くべく、自分が取っていたスイルベーンの宿部屋に侵入してきた事がある。人の視線や気配には鋭い自負があったあたしですら気付かない隠密技能()()()素直に感心出来る。

 ただし人の下着姿をガッツリ見た事は決して許さない。服の着替えで一瞬下着姿になった瞬間噴き出していなければ危なかったのだ。

 ――そんな、話だけではしょうもないレコンだが、その隠密技能は本物だ。

 システムに裏打ちされた数値的な実力は虚構でもなんでもない。彼が積み重ねた努力の結実が完全習得に至った三つのスキル。その内の二つは本当に根気強く頑張らなければならない。彼が只管鍛えたという言もあながち虚言では無かった。

 だが――――

 

 

 

「そもそも炎天下の砂漠でどうやって活かすかってハナシなんだけどね」

 

 

 

 隠れるところも無い場所では幾ら完全習得と言えども形無しである。

 

 

 

「わあああああぁぁぁ――――ッ?!」

 

 意気揚々とMobへ挑んだものの、この環境によって被る自身の大幅なデメリットに気付かなかったレコンは、炎天下の砂漠で砂塵を上げながら逃げ回っている。

 哀しい事に、狙ったMobが今の自分達よりややレベルの高い《ゴーレム》だった事が災いしている。アレは片手棍などの打撃属性が有効だが、それ以外の属性だとダメージを元の一割に軽減されてしまう上に、武器の耐久値損耗速度が異常に速くなる厄介な手合いだ。元々耐久値が少なめの急所狙いの短剣では、アレを倒す前に刃が折れる。キリトですらゴーレム系が相手だと武器を片手剣から棍の類に持ち替えていた程。

 狙い目は球状の関節だが、デカい上に威圧感もあるアレを前にレコンが冷静に狙える筈がない。

 そもそも、彼の武器は初手で弾かれた上に、ダメージもドット単位でしか入っていない。

 つくづく思う。レコンのスタイルは対人でこそ真価を発揮するもので、対Mobだと滅法弱い尖ったものなんだと。

 しかし今は直視できない醜態を晒しているとは言え、彼のスタイルは決して馬鹿にしていいものでもない。ALOは種族間抗争で成り上がる事をテーマに据えているため、彼のような対人特化プレイヤーは引く手数多。今回は相手も環境も最悪だから逃げ回っているだけ。条件さえ揃えば、割と一方的に滅多打ちに出来るだろう。

 ……どこかでヘマをしそうな気しかしないのは、流石に酷いだろうか。

 

「あ、あのー、リーファちゃん? 助けなくていいの?」

 

 ぎゃーぎゃーと叫びながら逃げる知人を眺めていると、傍らに立つ()()()が苦笑しながら問うてくる。

 連戦ならともかく、流石に初戦のMob一体も碌に相手出来ないのでは助けても意味などほぼ無いと思うが、女の敵に等しい行いをしていると言えど知人だ。多少の手助けくらいはやむを得ないか、と判断する。

 とは言え最初から直接手を貸すのはシャクなので、まずは助言から。

 

「レコン、そいつ物理より魔法の方が効くわよ!」

「い、いやいや、これじゃ詠唱も満足に出来ないよ!」

 

 どがんどがん、と走って迫るゴーレムは、その巨体から受ける鈍重な印象とは裏腹に、的確さ故のスピードを持っている。魔法生物系の類はとかく判断が的確なので隙を作りにくい。

 それを抜きにしても、あの巨体なら走る動作そのものが()()()()に等しい。

 

「スヴァルトの前線攻略に参加するなら並行詠唱くらいやってのけなさい! 喋る余裕があるならイケるわよ!」

「無茶苦茶だぁっ?!」

「無茶苦茶も何もボス級に挑むなら必須事項でしょ!」

 

 苦言に対し、怒鳴り返す。

 後ろに居るパーティーメンバー――アスナ、シノン、フィリア、リズベット、シリカ――がやや引く様子を見せたが、そもそも彼は自分と同じ最古参のALOプレイヤーで、しかも魔法スキルを完全習得している。回避行動をしながら詠唱するくらいはALO上位陣、古参組の間では出来て当然。完全習得者レベルなら尚の事。幾度となく唱えた詠唱が自然とスラスラ出てもおかしくないのが完全習得者である。

 事実、レコンはゴーレムの猛追を回避しながらも、こちらの声に耳を傾け、内容を理解し、剰え意味の通じる反応を返せている。並行詠唱の下地は整っているのだ。しかしじっとして詠唱する《隠蔽魔法》を使う機会が多く、更に《闇魔法》も不意打ちで使っていたから、激闘の最中に使った経験が足りていないのだと思う。

 スイッチさえ入れば出来るのに、条件が整っていないと途端にダメダメになる。

 まったく、と毒づく。

 

「ホント、ぜんっぜん変わってないじゃないの……」

 

 レコンは、誰かの助けを前提としている。

 魔術師など完全後衛のようなビルドならともかく、彼は遊撃に動くスカウト(偵察役)。ただ先行偵察する事だけが仕事では無い。目まぐるしく変動する戦場に於いて遊撃の重要さはSAOと義弟のお蔭でイヤと言うほど思い知っている。時に回復アイテム、時にデバフを叩き込み、あるいはタゲを取って攪乱に動く。当然止まって

いる暇など無い。

 彼がスカウトとして及第点にあるなら文句も飲み下したが……これは、ヒドい。

 あたしの判断基準がデスゲームの最前線で戦っていたメンバーで、ALOでも大会上位に食い込むレベルばかりだから、求めてる基準が高い自覚はあったのだが、並行詠唱もマトモに出来ないとは予想外だった。しかも飛行酔いするから飛んで逃げるにも隙が大きい。一年経っても未だ健在なら、流石にどうやっても治らないだろう。

 

「くっそ、こうなったらやれるだけやってリーファちゃんにいいとこ見せてやる!」

 

 ――と、そこで変化が訪れた。自棄になったのか、それとも踏み止まる覚悟を持ったのか、逃げ回るだけだったレコンが足を止めて振り返ったのだ。

 お、と思わず声を漏らす。不覚にも何をするのか僅かに興味が湧いた。

 視線の先で、短剣を喪い無手となった彼が両手を突き出した。

 

「セアー・スリータ――」

 

 そして、詠唱が始まる。

 そこに肉薄したゴーレムは、足で踏み潰そうと大きく持ち上げ、ストンプ。

 レコンは紙一重で後ろに跳んだ。一瞬砂に足を取られていたが、彼のアバターはユウキより若干小さい軽量型だから跳べていた。

 

「フィム・グローン――」

 

 詠唱式で何を唱えようとしているかすぐに分かった。五つの風の刃を飛ばす風の初級魔法《ウィンドカッター》。速度と追尾性の高いそれは決して高威力では無いものの、魔法防御力と風属性耐性の低い最弱のゴーレムになら効果は抜群だ。

 唱え切る前に、押し潰すように彼の頭上から岩の拳が落とされるも、もう一度ステップを踏んでそれを躱した。しかし余波はレコンを襲い、がりっと三割ほどHPが削れる。

 装備の性能はともかく、物理防御面はかなり低いらしい。ひょっとするとレベルもあまり戻っていないのか。

 

「――ウィンドッ!!!」

 

 ――分析している間に詠唱は完成した。

 突き付けられた両手の先に渦巻く緑が発生し、瞬時に五つの刃となって乱れ飛ぶ。隙だらけのゴーレムに刃は全弾命中。倒すには至らないが、体力を四割は削っていた。対するMPの消費は一割にも満たない。

 その後、同じ事を二度繰り返し、レコンはゴーレムを倒し切った。

 

「やった、倒せたよリーファちゃん! これで僕も一緒に行っていいよね?!」

 

 戦闘後、きらきらと喜色満面の笑みで駆け寄って来るレコンに、思わず苦笑を浮かべる。同い年の筈だがどうしてか不出来な弟を持った気分になってしまう。

 弟は、キリトとキリカ、そして今は亡きホロウだけしか認めていないので、その錯覚はすぐに忘却させた。

 ――それはともかく。

 レコンを今後の攻略メンバーに加えるかどうかは、未だ決めかねていた。

 極めて個人的な感情を挟んでいる事は否定出来ないが、どうせ目指すならトップ攻略と言う人もいるため、仲間のモチベーションはかなり高い。キリトが無理をしている原因がこのスヴァルトに存在しているからでもある。無能な味方こそ敵という。却って邪魔になる者を味方に引き入れるのは、誰も好まないだろう。

 もしかして、という予想が脳裏を掠めた以上、それを確認しないまま判断を下すのは和人の師としての主義に反する。レコンの事は生理的に苦手な部分があるが、だからと言って現時点で切り捨てる事は少し違うとも今は思っていた。ただ物理攻撃一辺倒であの醜態ならにべもなく切り捨てたが、レコンは醜態こそ晒しても最終的に魔法で応じてみせた。

 

「まだよ。確認したい事が出来たから、別のMobを引っ掛けるわ」

「ええ?! まだやるの?!」

 

 もう十分じゃない? と眉を垂れさせるレコンの顔は非常に情けない。

 さっきのやる気を見せた顔は中々良かったというのに……

 

「あのねぇ、これくらいで情けない顔しないでよ。それに今度はあたしも戦うから」

「え? リーファちゃんが? それは嬉しいけど……なんで?」

「秘密よ。教えちゃったら元の木阿弥じゃない」

 

 そもそもたった一戦で全てが見える訳では無い。さっきまでは自分の記憶にあるままだったから落胆していたが、一味違った顔を見てからは、色々と試したい事が出来た。

 アスナ達には悪いが、元を正せば彼女らが受け容れようと言って来た事が原因だ。道連れにするつもりである。

 

 ――そうしてダンジョンアタックのついでにレコンの技能テストを続け、分かった事がある。

 

 まずレコンは、単体では弱いが、パーティーになると輝き出すプレイヤーだった。

 ゴーレムなどの魔法生物型、スケルトンなどの死霊型のMobに隠蔽の類は利かず、一定範囲に踏み込んだ途端ターゲットされてしまい完全習得したスキルの内二つが役に立たなくなるが、それはあくまで『タゲ回避』の一点を見た場合に限る。反応されると言ってもヘイトの減少補正は反映されているようで、戦闘中にハイディングした彼が狙われる頻度はあからさまに少なくなっていた。そこに風や闇の魔法を放つだけでMobからすれば立派な奇襲になる。矢鱈スキル値が高く、隠蔽に特化したビルドなためか、透明化の魔法を使われるとプレイヤーの目を以てしても見えない程。

 欠点は砂漠フィールドのように足跡が残る環境、そして空中ではマトモに動けない事だが、ダンジョン内限定と考えても極めて強力と言える。極端にヘイトを減らせるなら、そのプレイヤーが回復魔法を掛け続けてもヘイトは前衛に残ったままになる。レコンも回復魔法スキルは取っていたようなので、それを重点的に育てれば他に例が無い対Mob特化の魔術師に転向出来る。

 自分と違い一人では弱いが、集団の中に入り込めば洒落にならない脅威を持っている。

 それが総評になった後、あたしが一番にした事は――

 

「レコン。あんたの力、見誤ってた。ごめん」

 

 ――謝罪だった。

 彼の実力を認めつつ、過去の判断を過ちと認め、謝罪する。些か仰々しく思われるだろうが軽んじたのは事実だ。

 慌てる彼を宥めながら、総評と、パーティー内のポジションを伝える。

 嬉しい事に同じスカウト役でもフィリアは前衛で短剣を振るうライトアタッカーを兼任しているのに対し、レコンは風と闇魔法を中心とした中衛魔術師型。自分とアスナしか魔法攻撃をマトモに使えず、しかもどちらも前衛で戦う方が向いている中で、後衛に向いた魔術師型の登場は望外の事態だ。

 

「――テストは合格よ」

 

 そう締め括ると、ぐっとレコンの顔に喜びが浮かび上がり――

 

「あ、ありがとうリーファちゃん!」

 

 ()()を足に仕込んでいるような動きで飛び込んできた。反射的に手を伸ばし、顔面を掴み上げ、本日二度目のアイアンクローで吊るし上げる。

 

「だからってセクハラ行為を許した訳じゃないから」

「ひゃ、ひゃい……」

 

 冷たく睨みながら言ってやれば、若干震えた答えが返って来た。しかしアイアンクローに加えて威圧を掛けられても笑みが滲んでいる事から相当嬉しかった事が窺える。

 ……人を好きになると、こうまでも夢中になるものなのだろうか。

 ふと、そんな思考が浮かんで、消えた。

 

 *

 

 フィールドにあるダンジョンの一つを踏破し、最奥で立ちはだかった巨大な槍持ちスケルトンを下した私達は、キーアイテム扱いの品を宝箱から手に入れた。

 その品を手に取り、立派なトレジャーハンターのフィリアが矯めつ眇めつ眺める。

 

「……これ、どこからどう見ても……土鍋だよねぇ……?」

 

 それは、土鍋だった。黄土色の金属で作られ、年季が入っているのかところどころ煤けた黒を張り付けている土鍋が、今回の報酬。しかも重要物扱いのクセして詳細にはロクな説明文が無い。用途も不明となるとどう使えばいいのか分からなくなる。

 

「リズさんの《鍛冶》スキルでピカピカにする必要があるんですかね?」

「ん~……いや、ダメっぽいわ。《鍛冶》で選択できる品に入ってないもの、それ」

 

 錆び付いた鍵を鍛冶で使えるようにする事はクエストでもままある事だが、今回はそういう訳でも無いらしい。

 意見を言い合うも『それだ』と言える案は出て来ず、結局は保留として街に帰る事になり、ボス部屋の入り口へ向き直った時、視界の端を掠める形で何かが動いた。なんだろうと首を巡らせれば――――紫色のトカゲが一匹、壁に張り付き、こちらを見ていた。

 それにフォーカスが合った為か、トカゲの上に赤色のカーソルとモンスター名――《Lizard Searcher(観測者のトカゲ)》が表示された。

 モンスター名を見た瞬間、一息に踏み込み、横一閃に斬り払う。元々監視用にしか用いられないトカゲは一撃で炎を噴き出し、消えた。

 このALOに於いてSearcherと記載されるMobはただ一つ、《闇魔法》の《盗み見(ピーピング)》という魔法で作られる監視・盗視用の使い魔だけ。他のプレイヤーにつくっつけて視界を盗む呪文だ。

 くっつけられた瞬間と対象は不明だが、確かなのは自分達の行動や戦闘を盗み見られていた事実。

 

「り、リーファ? あんた、なにをして……」

「誰かに《盗み見》の呪文を掛けられてたみたいです」

「え、ホントに? 全然気付かなかった」

 

 リズベットが唖然とするも、それは仕方のない事だ。

 《盗み見》の呪文を掛けられればシステムに則りデバフアイコンが表示されるのだが、何せ『こっそり盗み見る』事が目的とされたものだ、ずっと表示される訳では無い。スペルを掛けられてから一秒間しかデバフのステータスアイコンが表示されないのだ。

 これに気付ける人は相当注意深いか、《索敵》スキルの熟練度が非常に高いかのどちらか。

 この場合はフィリアかレコンが責められるが、スヴァルトルールで一時的に初期化されている状態では、流石にどうしようもない話である。

 

「気付けなかったのはみんな一緒です。問題は、アレがトカゲ型という点ですよ」

 

 《盗み見》の呪文で形作られる使い魔は飛行可能な蝙蝠型と潜伏が得意なトカゲ型の二種類。これは呪文を唱える際にスペルワードを変える必要があるため、完成した後は変えられない。

 レコンの試験と称して道中寄り道を食ったが、移動はほぼ飛行頼り。然して速度を出せない使い魔なら蝙蝠型が妥当と判断される。

 しかしさっき斬り捨てた使い魔はトカゲ型。

 これの意味するところは――

 

「このダンジョンに入る手前で掛けられたんですね」

 

 ダンジョン内では飛んでいると目立つため、トカゲ型を使う事が多い。トカゲ型はハイディングボーナスがあるため道中のMobもスルー出来る事がある。それを利用してマッピングする事もある。

 しかしマッピングしていた集団は見ていない。使い魔と術者の距離は熟練度の成長に比例して長くなるが、スヴァルトルールで初期化している今、そこまでの距離は稼げない。

 今回は対人として監視する為に使われていたと見るべきだ。ただマッピングするため、と考えるにはこのダンジョンの難易度は低過ぎる。《闇魔法》の初期で覚えるものとは言え、新エリアの序盤から挑めるここで慎重になり過ぎて時間を使うくらいなら、死に戻り覚悟で挑んだ方が効率は良い。加えてダンジョン突入前はアスナがバフの掛け直しをしていた。ずらずらと並ぶアイコンの中で一瞬紛れ込んだだけでは気付くのは難し過ぎる。

 つまり――尾行されている。

 

「ちょっとちょっと……ウソでしょ」

 

 その事実に至ると同時、入り口の外からガシャガシャと金属音が聞こえて来て、リズベットの顔が引き攣った。近付いて来る集団が見えたのだろう。

 ボス部屋に入られ囲まれては堪らない、と然して大きくない入り口に一人陣取る。仲間にはアイコンタクトを一つ。抗戦の意図を汲んだようで、彼女らも武器を手に表情を改めた。レコンの姿は見えないが……恐らく、透明化の術を使っている。逃げる為とは思えない。反撃の一手の為に役に徹したと思いたかった。

 それほどに人数差がある。

 廊下を走って来るプレイヤーのカーソルは、ざっと数えて三十を超えている。新エリア序盤のダンジョンに投入するには流石に過剰戦力。レイドボス級でもないのでLAを取った人のパーティーにしか経験値などが入らない原則を考えれば、目的がダンジョン攻略では無く、こちらをPKする事だと察せる。

 種族はバラバラだ。黒色のトカゲだったからスプリガンの術者が居るとは分かっていたが、他にもサラマンダーやノーム、レプラコーン、インプ、ウンディーネなど、種族に統一性は無い。

 ギルドに所属している証は無い。

 だが、シルフの顔には見覚えがあった。

 

「……そういう事ね」

 

 正眼に長刀を構えるあたしはこの集団の出現に得心がいった。

 集団に属しているシルフは、シルフ軍に属しているプレイヤーの一人。つまりシグルドの部下。タイミング的に怪しいとは踏んでいたが、どうもあたしを後悔させるべく物量差でのPKを企て、投入したらしい。

 ――よくよく思い出せば、他も見た顔ばかりじゃない。

 自種族に帰依しているプレイヤーとの交戦はSAO乱入以来初めてだったから気付くのに時間を要したが、サラマンダーやノームなど他のプレイヤーも各軍に属している面子だった。今の役職は知らないが、装備のグレードはかなり高い。ずっと居続けたならそれなりの地位にはあるだろう。

 それだけ彼らも《リーファ》の力を手に入れたいのか、と考え、違和感。

 シグルドは同種族だから声を掛けて来た。つまり勧誘に成功すれば、シルフはキリトに対する切り札を得た事になるのだが、それは逆説的にシルフ以外が切り札を得られないという展開になる。それを分からない彼らではないだろう。

 考えられるのは三つ。

 一つ目。あたしが切り札になり得る事をシルフ以外には伝えず、物量差で押し潰し、秘密裏に配下に加える。

 二つ目。その為の戦力を揃えるにあたり、最奥ボスの討伐より実入りが良い事をチラつかせる。なにせMobより獲得経験値やユルドが多く、時には装備のドロップもするのがPKの魅力だ。種族を軸としたPKでは領主以外だとメリットは無いが、個人での観点になれば話は別。役職に関係無く大きな利益を得られる。これに乗らないプレイヤーはまず居ないだろう。

 三つ目。あたし達をPKする事で、《圏内》に持ち帰っていないキーアイテムの土鍋を強奪できる。つまりわざわざボスと戦う非効率的な事をしなくて済む。土鍋を手に入れた後は、使うところではまたレイドを組んでしまえば全員が一斉にクリアフラグを立てられる。他種族との進行度は同じになるが、あたしを引き入れればまた突き放せると、シグルドは計算しているのだろう。

 

 ――いい度胸してるじゃない。

 

 当たらずとも遠からずだろう推測。何が何でもあたしを引き抜き、隷属させたがっている意思を読み取って、思わず笑みが零れてしまう。

 やる事は、決まった。

 

「――アスナさん。防御魔法(スペルバリア)はリズさんとシリカさんに掛けて下さい」

「え、ええっ? でも、それだと前衛のリーファちゃんが……」

「あたしは自分で掛けます」

 

 狼狽える彼女にきっぱりと返す。逡巡した気配を感じたが、すぐにスペルの詠唱が耳朶を打つ。自分もスペルを掛ける。分担したのは被弾時に消費するMPを分散するためだ。

 走って来る集団から、幾つもの詠唱が聞こえ出す。

 

「はぁッ!」

 

 気合一つ。力の限り地を蹴り、矢の如く疾駆する。

 先頭を走っていたタンクのノームとサラマンダーが大楯を翳す――が、山なりに襲い掛かる矢が、その体勢を崩した。うぎゃっ、と漏れる悲鳴を聞きながら横を抜ける。ずばんっと激しいエフェクトと共に男の胴は上下が泣き別れ、エンドフレイムを上げて消滅する。

 

「「「「「――ドロートッ!」」」」」

 

 そこで一つ目の魔法が完成。種族に関係無く、全員が単焦点追尾型(シングルホーミング)の炎属性中級魔法《ブレイジングショット》を唱えていたらしく、激しく燃え盛る火球が迫りくる。

 ――何故、自種族が得意とする属性では無く、全員が炎属性の魔法を使ったか。

 それは、属性によってはある種族間で上下関係を生じているからだ。

 火は風に強く。

 風は土に強く。

 土は水に強く。

 水は火に強い。

 円を描く相関図が生まれるサラマンダー、ウンディーネ、シルフ、ノームは、属性によって種族間での力関係が生まれるため、他より突出した能力が付与されている。順に攻撃(STR)特化、魔法(INT)特化、速度(SPD)特化、耐久(VIT)特化だ。他の種族が総じてバランス型に落ち着いているのは、先の四種族と違い、属性による有利不利関係が無いため。

 だからサラマンダーは優位に立てるシルフを積極的に狩ろうとする経緯があった。

 しかし、それも属性の有利不利が働いてこそ。

 防御魔法に属性は無い。攻撃魔法の属性に合わせる必要が無いそれは、如何なる属性魔法のスキルを育てても同じものを会得する。つまり、属性によってダメージが上下しない。無属性の防御魔法の前では如何なる属性でもダメージを増やす事は出来ず、上げるには純粋に知力(INT)精神(MEN)、スキル熟練度を上げるしかない。

 そしてここはスヴァルトエリア。一時的に初期化されているステータスと熟練度では、属性相性を駆使しなければ、防御魔法の上から相応のダメージを叩き出す事は難しい。連続で受けると防御側のMPが先に切れるが、その前に接近してしまえばフレンドリィファイアを恐れて棒立ちになる木偶と化す。

 

 つまり、防御魔法が切れる前に術師部隊に肉薄すれば、勝ち目はある。

 

 ――フレンドリィファイアを避けるべく山なりに飛来する火球を前にして、走りながら構えを取る。

 途端、翡翠色の光と共に疾駆。《ソニックリープ》での急加速を想定していなかったのか、防御の薄い剣と盾の中衛を斜め左上に斬り裂く。即死はしなかったが、後続を巻き込んで吹っ飛んでいくため、戦列は崩れた。

 流石に幾つか火球の余波を受けたが、それを防御魔法が防いでも、自分のMPはまだ一割しか削れていない。

 既に集団の中心に食い込み始めた今、もう術師部隊は機能し得ない。防御魔法を掛けられたリズベットとシリカを倒す前にあたしが殲滅する方が速い。

 

「な、ん……?!」

「なにやってる、さっさと攻撃しろ!」

 

 指揮官らしきシルフの一人が声を上げる。

 だが遅い。今の指示の内に、あたしは二度刃を振るい、傍で目を白黒させているサラマンダーにエンドフレイムを上げさせていた。

 ソードスキルの技後硬直は、敏捷値の値によって軽減出来る。ソニックリープは初期から習得可能なので元々技後硬直も短いのに、更に速度特化のシルフが使ったとなれば、硬直などほぼ無いに等しい。不意を打つなら単発技は非常に有用。

 次、と周囲に居るプレイヤーの一人に斬り掛かる。

 

「この、鬼がッ!」

 

 狙われた、と悟ったのだろう。スプリガンの曲刀使いが罵りながら迎え撃ってきた。互いの刃が衝突――直後に滑らせ、弾く。生まれた隙を突いて首を飛ばし、即死させる。

 薄黒いエンドフレイムの向こうから、レプラコーンが持っていた槍が突き出された。

 塞がれた視界の中、それでもギリギリで首を逸らし、振り上げていた刃を返して袈裟掛けに斬る。ぎゃりぃっと鎧を斬り付けた時特有の音が耳を(つんざ)いたが、顔を顰めるに留め、肉薄していた背後の敵に回転斬りで応じる。

 回転斬りに対し、相手の得物は両手剣で、パワータイプのサラマンダーだった。軽量と鋭さを突き詰めた愛刀では拮抗も出来ず、軽く吹っ飛ばされる。HPが三割持って行かれたが、まだ七割残っているのだ。余裕を判断してくるりと反転。先ほど斬り伏せたレプラコーンに勢いそのまま斬り掛かり、絶命させる。

 ――背後で、爆発。

 規模と音、生じる圧から、シノンが放ったソードスキルが初級《ボムアロー》と判断。回転斬りで振り返れば、真後ろには大剣使いのサラマンダーが居た。爆発を諸に受けたのか、頭部からは爆炎がもうもうと上がっている。

 射手に心で拍手しながら、隙だらけの大剣使いの右脇に刃を突き入れ、捻る。ぐしゃりと音を立てて剣を握る右腕が落ちた。断面はポリゴンを散らす赤。

 

「テメェッ!」

 

 ごうっ、と上背とガタイの良さを強みとしてか、覆い被さるように左拳が振るわれる。後退も防御も回避も悪手。覆い被されれば最後、滅多打ちにされるだろう。

 即座に愛刀を上に放る。拳をしゃがんで躱し、首元の鎧と剣帯をそれぞれ強く握り、慣性を味方につけて背負い投げ。その時にくるりとその場で半回転し、距離を詰めていた集団側に放り投げる事も忘れない。

 くるくると、上から落ちて来た愛刀をキャッチ。

 一歩下がりながら長刀を縦に翳し、両側から迫る刃を押さえ込む。

 

「なんつーヤツだよ、あんた」

「相変わらずとんでもないな」

 

 左からシルフ、右からサラマンダーが言う。片やかつての部下、片やかつて刃を交えた敵。見知った顔を見て笑みが浮かぶ。

 知人に対するものではないが。

 

「――ハッ!」

 

 震脚と共に刃を弾く。ずざっ、と僅かに後退し、固まった二人を捨て置き、様子見に徹していた術師や指揮官へと直走る。

 

「う、うわ、嘘だろ?!」

 

 見るからに動揺する暫定指揮官のシルフ。容赦なく斬り掛かり、一撃が入る。ぐぐっとゲージは減るが、削れたのは二割程度。スヴァルトルールで(なら)されたとは言え、やはり元の性能差は大きいようだ。

 面倒な、と心で毒づき、引いた刃を瞬時に突き出す。

 ドスッ、と喉元に入った刃を回し、横に一閃。首は千切れ飛び、暫定指揮官は即死した。

 どよ、と集団の意思が揺らぐのを感じた。何人かは逃げようとしている。後衛の術師部隊だ。ここまで距離を詰められたはもう敵わないと見切りを付けたのだろう。

 撤退の判断が速いのは良い事だ。

 

「待ちなさい」

 

 だが逃がさない。思い切り攪乱させた前衛部隊は、人数差があると言えどアスナ達に任せれば大丈夫だろうと判断し、逃げる術師達を一人一人斬り伏せていく。

 撤退する敵を追撃するのは難しいが、そこは敏捷特化のシルフの面目躍如といったところだろう。装備で勝っていても、人体急所を露骨に再現されたSAOのシステムを組んでいるALOでは、即死する事も珍しくない。首を狙えば一発だと経験則で知っていた。

 むしろ、今回は撤退を選んでくれて好都合だった。

 HPが全損し、エンドフレイムを上げたプレイヤーは、リメインライトとしてその場に残る。蘇生有時間というやつだ。十分ある間は、体こそ無いが意識は残っている状態である。

 しかし十分もその場に残るのは蘇生のチャンスを見込んでいる場合のみ。実際即死させた術師達はリメインライトも残さずすぐセーブ地点でのリスポーンを選択したらしかった。

 だから一人だけ生き残らせて、尋問する事も容易くなる。仲間だった者達の目が無いだけで精神的防波堤は容易く崩せるからだ。こちらとしても尋問する内容をすぐに知られる事は無くなる。なによりシグルドが関係しているなら他種族が居るところで口を割りにくいだろう。

 その意図があって敢えて生き残らせた――とは言え両脚は切断状態で杖も取り上げている――シルフの術師の前にしゃがみ込む。勿論、右手には長刀を握ったままだ。

 

「さぁ、ここで経験値になりたくなければ、キリキリ吐きなさい? なんであたし達を襲って来たのかしら?」

「ち、違う、オレ達はただ攻略の為に――」

 

 即座に、切っ先を口に突き込む。痛みこそ無いが不快な衝撃は発生する。特に頭部となれば、それは絶大なものとなるだろう。

 苦しげに歪められた顔から刀を抜き、再度突きの構えを取る。

 

「状況的にPK以外考えられないのよ。ウソは、許さないわ」

 

 言外に、ある程度察しは付いているんだぞ、と脅す。なら何故尋問なんかするかと言えば、確定的にしておかないと動くに動けないからだ。

 だからどんな手を使ってでも聞き出すつもりでいた。

 

「ッ……クソが。女だからって良い気になりやがって……」

 

 怒りに顔を歪め、そう罵倒してくるシルフ。どうやらこのシルフはあたしが女尊男卑の人間だと思っているらしい。

 

「人に責任転嫁してんじゃないわよ。だいたい、仮にあたしが女尊男卑なら、キリトの存在はどうなるのよ」

「デスゲームで始末しようとしたんだろ」

 

 義弟への接し方について疑問は無いのかと問えば、そう返され、なるほどと思う。そういう見方も出来るのかという新たな視点を得た事への感嘆だった。

 あまりにも荒唐無稽且つ論理的でない思考には感嘆せざるを得ない。

 ――第百層での経緯を見ていないのか。

 あの子を庇い、蘇生アイテムを使った一幕を見ていれば、虐げているとは思わない筈だ。ましてや庇う筈が無い。あまりにもフィルターを掛け過ぎて事実認識を歪めている事に溜息が漏れる。

 領主時代に言われた『女尊男卑の女』というイメージは、あたしが思っているよりも根深いのかもしれない。

 

「まあ、あたしの事はいいわ……それで、誰の指示?」

「言うと思うか?」

「強気ね。こっちはその気になればアンタの身包み剥ぐ事も出来るのだけど」

 

 そう言って、ストレージから黄色の液体が塗られた投剣を取り出す。

 麻痺毒の液体が塗布されたものと分かったシルフが露骨に顔を引き攣らせた。

 ALOの麻痺毒も、効果はSAOと変わらない。レベルに応じた一定時間の無力化だ。当然だがその状態で手を操り、メニューを操作する事が出来るので、『合法的に』アイテムの譲渡や破棄を行う事も出来る。かつてそんな犯罪があったのだとSAOで教えられたテクニックだった。

 まさかこうして使う側に回るとは思わなかったが、今はお互い仲間が居ない。

 使える手段は使うだけだ。

 

「……お前、犯罪者予備軍かよ」

「あなたが素直に情報提供してくれれば避けられる事態よ。選ぶのはあなた自身」

 

 両脚が復活するまで残り三分。ポーションを飲ませて全回復させているので、再び欠損させても死ぬ事は無い。ただあまり時間を掛けていると尋問が捗らなくなる。こちらが人数を揃えたら意固地になって話さなくなるかもしれないからだ。

 ALOでは死んでもすぐ復活するし、喪うのは再び得られる数字だけ。

 ただプレイ時間が重なるにつれて溜めたユルドや装備の価値は高いものになっていく。装備の性能がそのままキャラクターのパラメータになるALOにとって、装備の損失は重大だ。己の過失によって失うならまだしも、このように強奪で喪うとなればショックは大きいだろう。

 あまり恨みを買いたくないから、出来れば素直に話してくれると有難いのだが……

 

「……チッ。分かった、話す。けどオレが知ってる事も少ないからな」

 

 心血注いで育てたキャラクターと装備を喪いたくないと思ったのか、情報提供を選んでくれた。麻痺毒の短剣を引っ込ませる。

 ――話を総括すれば、やはりシグルドの根回しだったらしい。

 しかも裏の取引も凡そ予想通り。シルフ以外は攻略のためとキーアイテムの強奪、ついでにPKで経験値とユルド、アイテムのドロップ狙い。シルフだけはそこにあたしのスカ()ウト()があったようだ。

 更に、シグルドはやはり領主の座を狙っていた。本土ではこれまで拮抗していた勢力関係の中、ケットシーのアルシャ・ルーと同盟を組んだ事にシグルドは不満たらたららしく、最後まで抗議していたという。だからシルフ単体でスヴァルト攻略を成し遂げるのを政権交代の第一歩にするべく、シグルドは自ら軍を率い、攻略に血道を上げている。

 土鍋を入手する理由の根幹としてそれも『まさか』と思いながら浮かべていたが、ドンピシャだった。

 

「なるほどねぇ……」

 

 予想通り過ぎて何も言えない。

 もうちょっと捻る事は出来ないのかあの男は、と溜息を吐きたくなる。せめて実働部隊にその辺の事情を知るプレイヤーを入れたらダメだろう。

 簡単に尻尾を掴めるようでは政権トップなど狙えない。

 

「お、おい、もう行っていいだろ。もう話せる事は何も無いんだ」

「ん……ええ、いいわよ。でもシグルドに手紙を渡してもらえるかしら」

 

 回復した両脚で立ち上がったメイジに、数万ユルドが入った袋を出しながら言う。少し瞠目したシルフは、分かったと警戒しつつも頷いてくれた。

 革袋を渡した後、手早く手紙を認め、それも渡す。

 

「なんて書いたんだ?」

「ん~……次がまた来たら後悔させるっていう感じの内容よ。あなたも今度来たら首を飛ばすからそのつもりでね」

「……おっかない人だな、あんたは。SAOから戻って余計おっかなくなった」

 

 引き攣った笑みを浮かべながら後退りしたメイジは、そのまま出口へと向かい歩き出した。

 術師一人でダンジョンを突破できるとは思えないが、Mobにやられるのはあたしの責任にはならないので、知った事では無い。MPKを狙ったのではなく、逃げ帰る術師が勝手に死ぬだけだ。

 ひょっとすると手紙を紛失されるかもしれないが、仮にそうなっても構わない。どうせ手紙を読んだところであの男の事だから然して変わらないだろう。

 

「さて……アスナさんたちのところへ戻ろっと」

 

 ボス部屋から聞こえる戦闘音は途絶えている。しかし視界端に映るパーティーのHPは全て残っていた。つまり、あたし達の勝利である。

 個人的にレコンのHPが僅かなりとも減っている事が意外だった。

 

 






 はい、如何だったでしょうか。

 レコンは『接近&空中戦は弱い、でもハイディングが通用するなら強い術師型』となりました。原作《キャリバー》編でも脳筋の多いメンバーで数少ない術も使えるタイプとして数えられてましたから、そこまで改変はしてない。

 というより多分原作でも運用するとなれば術を使う中衛、ハイディングでの不意打ちだと思うんですよね……

 環境によって左右されるけど、ダンジョン内だと対Mob、対人で割と脅威になる。ただしボス戦だと飛行酔いも相俟っててんで役に立たない。

 それがレコンの総評です。

 地味に術が使えるメンバーという事で点数が高くなったレコン。原作もそうでしたが、SAO組の脳筋問題の深刻さが窺えますね……

 尚、本作だと脳筋キャラが増えてるので、より深刻になってます()

 次に集団戦。

 原作ALO編でキリト&リーファが遭遇し、変化で暴れたキリトにより壊滅に陥ったシーンのオマージュです。ただしリーファが真っ向から攪乱しているので、ある意味原作キリトよりヤバい。

 しかしドット単位の攻撃判定しかない魔法を相殺する《魔法破壊(スペルブラスト)》が出来る程では無いので、防御魔法を自分で掛けて、術師部隊を地味に無力化してます。

 立ち回り的には原作ユウキに近いです。

 ただ尋問するシーン的にリーファもかなりスレてるので……思考とやろうとしてる事がまるっきりオレンジなんだよなぁ……()

 ――まあ死なないゲームだからやれる事だし是非も無いよネ!

 では、次話にてお会いしましょう。


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