インフィニット・オンライン ~孤高の剣士~   作:黒ヶ谷・ユーリ・メリディエス

216 / 446


 どうも、おはこんばんにちは、黒ヶ谷です。

視点:セブン、簪(こっちは誰でもry)

字数:約一万四千。

 ――まだ終わらないんじゃ()

 ではどうぞ。




第四十三章 ~天城再臨~

 

 

 世界が闇に覆われた。

 丸い太陽も、自然を照らす満月も、全て消えた。

 

 ()()()()()()()()()()()

 

 いつの間にか。気付かぬ内に、自分の体は巨大なものとなっていた。

 足元にあるのは星だろうか。青く、緑の多い球体が、爪先に触れて散る瞬間、それがかつて自身がいた妖精郷アルヴヘイム――否、第二仮想世界《アルヴヘイム・オンライン》だと悟った。

 そのとき、胸中に去来したのは、一抹の寂しさ――ではない。

 総身(そうみ)を満たす万能感だった。あれだけ《三刃騎士団》や最強の近衛的立場のスメラギを単独で苦しませた少年すら、最早塵以下の存在でしかない。厳密には体格差による彼我の差なのだがそこは関係無かった。誰が何と言い、どう足掻こうが、この大きさの前には無力に過ぎる。

 自身の能力値(ステータス)がどれほど高まっているのか。

 ――そう思考した瞬間、直接脳裏に叩き込まれる数多の(イメ)(ージ)の数々。

 闇が広がる視界に浮かんだ薄白い字の羅列。細かいそれは、細かくしなければ収まり切らない数値であるからだった。種族熟練度の数字は据え置きで、それ以外の数値――HP、MP、STR、VIT、MEN、INT、DEX、LUKの全ての値が、万を超える桁に到達している。桁を数える事すら億劫になる。学んだ日本語の桁“億”を越えた段階で、私は数える事を放棄した。

 桁の数は、そこまで届けば最早些事。

 誰が何と言おうと、この世界で自身に敵うものなど存在しない事が分かれば、最早ステータスなど何の意味も為さない。

 

『ふ、あ、ハ――――あハハハハハハ!』

 

 哄笑を上げる。

 響きは無い。反響は無い。反響とは、波打つ音の波が物質に衝突、後に跳ね返って来た音波の事を指す。未だ誰も見た事が無いだろう存在だけしていた星の(ソラ)に壁など無い。星ですら小指に届かない程に巨大化したこの身が発する全てを止めるものなど何も無いのだから。

 

 他者に比べ、決して育っていない幼い(からだ)に満ちる全能感。

 冷静に分析すれば、それは感情の昂りでのみ構成されたものではない事が分かった。ただのプレイヤーだった時には感じられなかった感覚が、全てを些事と言わんばかりに総身を満たして尚、充溢している。

 自身の感情ではなく、自身の外から知覚する『異物』。

 『異物』でありながら、自身の感情と共鳴し、融け込むように励起している“ソレ”。

 

『アア――私は、やり遂げた――――ッ!』

 

 確信を得る。

 理論に矛盾は無かった。仮想世界を統括するシステムは、プレイヤーの脳が発した感情の脳波を即時グラフ化し、対応する表情をアバターに出力させる機構を備えている。

 しかしそれだけでは無い。

 人は、他者の感情を感じ取る事が出来る。敵意や殺気といった具体性の無いものですら感じ取れる。それらは負の感情だけではなく、共感や熱意などの正の感情にも通ずるものだ。アバターを介していようとその人が心から笑っているのか――それが分からなければ、仮想世界上に於いて現実世界と同レベルのコミュニケーションを人は築けない。目は口ほどに物を言う。怒っているような口調でも、目が笑っていると分かれば、友好な関係は崩れない。逆も然り。友好的な態度でも険悪な態度が滲み出ていれば互いに警戒し合う。

 仮令フルダイブしていなくとも、人はテレビ電話ですら《感情》を介したコミュニケーションを行っている。

 デモ活動。選挙活動。メディア技術や体制が整ってからの広報活動の殆どはメディアを介して行われている。人は何を介してでも感情を伝える術を持つ。新聞や紙面上の体裁だけに留まらない意思を介する事が出来る。

 

 それを、最初に体現した少年を見た時から、逆説的な確信を得ていた。

 

 それをいま、私は達成したのだ。

 

『アア、感じるわ……《クラウド・ブレイン》が、私の中にある事を――!』

 

 私に溶け込んだ『異物』である“ソレ”――《クラウド・ブレイン》。温かく、しかし同時に冷たいモノも孕んでいる。

 『デスゲームからの生還』というどんな生物にも共通する生存本能を刺激する至上命題が無かったせいで、想定したように純度が下がっていた。

 あのレインとかいう姉を名乗る人物が髪飾りでの中継を介して大勢に広めたせいもある。

 彼女がそれを知っていたかは定かではないが、どちらにせよ《MMOストリーム》が中継していたから、知らなくても同じ展開になっていた。彼が伝える事も予想出来た事だから予め言い含めていなかった自分の落ち度。

 しかし――どうやら、問題になり得なかったようだ。

 (アイ)(ドル)に対する純粋な好意を基点とし、【スヴァルト・アールヴヘイム】の完全攻略を【歌姫】のものにする熱意を一つにして、《クラウド・ブレイン》を構築するつもりだった。しかし事の要は『一つになる感情』だ。元々純度が下がるから数を補おうとしていたため、研究の事がバレて熱意が減耗しても、反転して纏まった数の怒りや怨み、哀しみが発生し、自身一人に向けられていたから《クラウド・ブレイン》は構築されたらしい。

 いや、考えようによっては、研究者への不信感を抱き続け、クラスタにならなかったプレイヤー達の負の感情も含まれているのだから、当初の想定より集まっているとも言える。

 レインは私の事が気に食わなくて、研究を止めようとしていたようだが、その行動に共感した人達の怒りが私に向いた事で余計《クラウド・ブレイン》の構築を助けてしまったのだ。

 

 そこで、ああ、だからか、とひとつの真実に辿り着く。

 

 レインの手助けをしていたキリトは、しかし真っ向から《クラウド・ブレイン》を否定する事も、止める言動も取っていなかった。レインの発言に同意する事も、また。

 思わせぶりな発言こそあったが、それも『不信』止まり。中途半端に感情を揺らせる程度では信じ切る“熱意”も反対する“怒り”にも達さない。本来の過程といまの思わぬ過程にも進まない半端さは、ある意味で最適だった。どちら付かずの言葉。

 それで最も揺れるのは誰か。

 考えるまでも無い。リーファ達である。

 思えば、あの対談を終える時も、彼女達には選択を与えていた。反対するよう呼びかける事もせず、己に協力させるような事も言わず、選択の機会を与えた。

 選択の余地を作れば、人は惑い、迷う。

 ――《クラウド・ブレイン》に関わらせたくなければ、どちら付かずが正解だったのだろう。

 勿論、ALOにログインしていない事が最良ではあったが、彼女らは攻略を前提に考えていた。その攻略を止めるとなれば、当然私に反感を抱かせなければならず、却って目論見は外れる。まあそれも《クラウド・ブレイン》構築に十分な人数が絶対レベルの“敵意”を持たなければならないが、万が一を考えれば敢えてどちら付かずというのも手の一つ。

 やはり、と思う。

 彼は、一味も二味も違う。ただの一般人ではない。部外者であり、専門的な知識も有していない筈で、それどころかマトモに学校に通えていない以上『学』という点では同年代の誰よりも劣る筈。

 しかし――それでも彼は、私の研究の構想を、過程を、そして対策を完璧に揃えていた。

 

『アア――――欲しい』

 

 欲しい、と。

 素直に。

 無自覚に。

 ――無自覚だからこそ。

 心の底から言葉が漏れた。

 偶像に翻弄されず己を保ち続けた彼の全てが欲しい。出来損ないと言われる彼は、しかし確かな能力と才能を秘めている。

 白磁の肌。

 濡羽色の髪。

 儚き痩躯。

 ――まるで、スノードロップのよう。

 “希望”の意味を持つ()を擁すれば、その者の未来は明るいに違いない。今はまだ雪の下。春が訪れ、雪の屋根が()け始めれば、彼の才()は世界に対して花開く。

 ()()で燻らせているのは惜し過ぎる。今回の件が一通り片付けば、早急に彼を勧誘する為に動かなければ。

 

 そう思考を固めた――その、瞬間。

 

 星々をも吸い尽くした躰が光に包まれた。

 闇に現れる唐突な輝き。総身を覆い尽くしてあまりある青の輝きは目に突き刺さり、あまりの眩しさに目を瞑る。しかし瞼を透かして刺さる光。腕で顔全体を庇った。

 

 

 

「――来たか、七色・アルシャービン」

 

 

 

 ――ヒトの声が、耳朶を打つ。

 気付けば青の光は消えていた。腕を下して瞼を開ければ、無窮の赤が視界を焼いた。雲海の遥か下に広がる(なみ)()が跳ね返す茜の球体が世界を支配していた。

 その(夕陽)を眺めるひとつの人影。

 

「……キリト君」

 

 声から察しは付いていた。姿を見て、確信する。

 茜に染まる白磁の肌。風になびく黒の髪。特徴的な外套は無く、二の腕の半ばまでの黒いシャツが華奢な上体を覆っていた。腰から下は変わらずの黒ズボンと鋲のブーツ。

 私に背を向け、彼は腕を組み、立っていた。

 

「……ここは、どこなの? ALOのサーバーじゃないわよね?」

 

 さっきまで居たALO――厳密には、サーバー内に作られた宇宙空間に居た筈なのに、いきなり移されたから状況を呑み込めていなかった。際限なく巨大化した躰も、小さいままの筈の少年と同程度に戻っている。

 だが、矮小になった総身を満たす充溢感はそのままだ。

 その気になれば、別の仮想世界のサーバーだろうここのリソースも、全て吸収し、再び巨大化出来る確信があった。

 

 しかし――何故か、吸収は始まらない。

 

 何が起きても、最早彼では止められないのだ。話を聞く事もせず再び奪い尽くせばいい。別サーバーに移っても全て些事なのだから。

 しかしそれが出来ないとなれば、状況把握に努める事が、論理的と言える。

 だからこその問い。

 ――それだけの行動だった。

 それを知ってか知らずか。彼は背を向けたまま、指を下へ向けた。茜色に染まる無窮の(みな)()――雲海を下に下に見て行けば、小さな影の群れが見えた。

 目を凝らせば、夕陽より尚紅い尖塔が見える。その周囲には大小無数の茶色の瓦礫群。それも尋常な数と規模では無い。瓦礫の群れに較べれば、尖塔などほんの一欠けら程度だ。

 

「アレは……?」

「――比喩的表現、とでも言えばいいか」

 

 私の問いに、彼は静かに声を発した。

 

「今からおよそ半年前。2024年11月7日午後5時30分を以て、《アインクラッド》は終わりを告げた。《ソードアート・オンライン》は第百層に在った【紅玉宮】の陥落を以て崩壊するシナリオを組まれていた。そして、跡形もなくなるよう、サーバーの完全初期化が自動で行われた。あの残骸はその完全初期化を《アインクラッド》の崩壊で演出した比喩的表現だ。【カーディナル・システム】は、システム的処理ひとつ取ってもリアリティを求める主義だったらしい」

 

 アレを見たプレイヤーは俺だけだがな、と静かに言う少年。

 

「じゃあ……ここは、SAOサーバー?」

「そうだ。須郷の実験を知っているならSAOとALOのサーバーの間にラインが築かれていた事は知っているだろう? だからSAO生還者のユウキ達はSAOの装備をある程度引き継げているし、その逆……巻き込まれたリーファは、ALOの装備とスキルを、SAOの仕様になりながらも継続的に使えていた。俺のこのアバターも、ALOアバターである七色も、こうして此処に居るのはそういう事だ。アバターのプログラムパターンそのものに大きな差は無かったからな……“フライト・エンジン”は須郷が作り上げたものだから翅はあっても使えないし、魔法もSAO版【カーディナル・システム】に無かったから使えないが」

 

 そう付け足された事に、そうだろうなぁ、と崩壊した城の跡を眺めながら同意する。

 ALOの魅力は飛行できる事――すなわち、“フライト・エンジン”という独自のシステムにある。サーバーやアイテム、スキルの多くを流用していた須郷だが、あのシステムを一から作り上げる程度には、天才の域にある技術者だったのだ。かなり対応の幅が広いらしい【カーディナル・システム】とやらもまったく新しいシステムへの適応は難しいようだ。

 

「だが……七色、お前なら魔法は使える筈だ」

「え?」

 

 いきなりの言葉に戸惑う。

 彼がこのサーバーに居る理由は、おそらく私を止める為の最後の手段として運営が投入したと考えていた。そうでなければタイミング良く二人揃ってここに来るとは思えない。そも、ALOにある全ての権限は、《クラウド・ブレイン》で私が掌握しているのだ。そんな存在を強制転移させられるのは外側の運営の人間くらいしか居ない。

 だが――そんな彼が、なぜ私に魔法が使える事を告げるのか。

 

「なんでそう思うの?」

 

 なにが目的だと訝しみながらも、話に乗っかる。聞いておいて損は無い。負ける気はまったくしないが、こちらの動きや思考を予想した上で対策を取るのが彼だ。気付かない内に逆転されている事も普通に考えられる。

 情報は一つでも多い方が有利なのだ。

 

「お前は《クラウド・ブレイン》を暴走させ、ALOのコピー・カーディナル・システムをバグらせていた。バグは、システムにとっては致命的だ。別の言い方をすれば《掌握》と言っても良い」

「……そうね。普通バグはシステムの演算を止めるものだから良くないものだけど」

「そうだ。だが……《クラウド・ブレイン》は、人間が持つ情緒による可能性の選択を含んだ、高次元の演算システムなんだろう? 【カーディナル・システム】のエラー修正を追い抜くエラーを吐き出し、一時的に機能不全に陥らせながらも、世界のシステムは動き続ける。かつてのSAOのようにな」

 

 そして――と、彼はまだ背を向けたまま語り続ける。

 こちらへの敵意が感じられない。彼から放たれる感情は“無”。敵意も殺気も、怒りも――関心も、私の《クラウド・ブレイン》に入って来ない。

 この世界に来てからまったく変動が無い事に内心困惑が募る。

 まるで、見えない糸に絡めとられているような……そんな錯覚に陥っていた。

 

「ALOサーバーから移って来たお前は、完全にサーバーを統括していたコピー・カーディナルを掌握している。SAOサーバーに移ったところで演算の核が七色・アルシャービンであり、《クラウド・ブレイン》が未だ健在である限り、取り込んだリソースとプログラムはお前の力のままだ。ALOを構成していたシステム全てがお前の力と言っていい。なら魔法が使えると考えるのも道理だろう」

「……ふぅん」

 

 一応、筋が通った考察を聞いた私は、指を振った。慣れた手つきに左手を振れば――思った通り、ちりりん、と軽やかな鈴の音と共にメニューが開かれる。

 SAOサーバーでありながらALOと同じ手順でシステムが起動する。つまり、ALOの【カーディナル・システム】が、私に付いているという事だ。

 表示される数値はバカげた値ばかり。唯一マトモなのは種族熟練度だけ。

 スキル欄もバグっている。多くの文字が重なっていて解読不可能。だが、スキル値は全て最大の《1000》。取り込んだプレイヤー達のスキル欄が全て重なっていて、スキル値だけ加算されているのだろう。当然その中には魔法のスキルも多い。

 OSSのスキル欄も、みんなから集められたものだけでなく、視た事ないものまで含まれている。サーバーを支配する関係でログインしていないプレイヤーの分まで取り込んだ可能性もある。

 つまり――

 

「……ねぇ、キリト君。あなた、SAOサーバーにALOアカウントをコンバートしたでしょ」

「――なぜそう思う?」

「だって、君が使ってたと(おぼ)しきOSSが無いんだもの」

 

 アカウントを削除したところで、即座にそれが抹消される訳ではない。おそらく週一回のメンテナンス期間にトラッシュデータとして集められたものを纏めて削除している筈だ。つまり、先の事態で予見して消したとしても、トラッシュデータとして残っているなら、ALOのサーバーと【カーディナル・システム】を取り込んだ私は彼のアカウントデータも取り込み、彼のOSSやスキルは私のものになっていなければならない。

 なのに存在しないのであれば、ユウキ達がALOにSAOアカウントと共に装備やスキルを引き継いだのと逆――ALOで使っていたものをSAOに引き継いだと見るのが自然だ。

 

「私、きみのOSSが一番欲しかったんだけど、それらしいものが無いからね」

 

 それは事実だ。クラスタや《三刃騎士団》を一瞬で壊滅させる結果を出す前から、《魔術》という言葉を最初に言い出した彼のOSSは欲しいと思っていた。戦績を上げ始めてからは尚更だ。

 私を一撃で斬り裂き、闇と光で消し飛ばしたものも、OSSだろう。遠近両用にして高威力、それでいて低コスト、しかも複数を使い回せば半永久的に使えるシナジーをも有するとなれば、ゲーマーでなかろうと欲するのが人の(サガ)。有用かつ優れたものは輝かしいものである。

 

「天才にそう言われるとは光栄だな……――――だが」

 

 肩を竦めながら、笑って彼は言う。

 ――そこで、顔だけこちらを振り向いた。

 全てを見通すかのような黒の瞳が私を射抜く。絶対的な力を持つ私は――何故か、身が竦む思いになった。

 

「だが……なに?」

「俺はお前に継承させる気は無かったし、万が一継承させていたとしても、それをお前が満足に使えたとは思えんな」

 

 その竦む思いを消す勢いで苛立ちが湧き上がった。思わず、少年を睨み返す。

 

「……前半はともかく、後半は何故かしら。確かに基本フィールドに出なかった私にスメラギ君やきみほど戦う技術は無いけど、あなたのOSSは複数を使い回す事で半永久的に使えるルーチン的な仕様が有効でしょう? それに満足に使えるもなにも無いと思うのだけど」

「――()()()()()()()()()()()()()()

「それは……」

 

 彼が口にした言葉は、一瞬でこちらのOSSを破ってみせたレインが放った言葉だった。

 

「ただ譲られて、熟練度の数値も引き継いで、十全に力を発揮出来ると思っているのか」

 

 続く言葉も、彼女のものだった。

 ――視線が切られ、夕陽へ戻された。

 

「《技術》とは万人が扱えるものを言う。だが、万人に扱えるそれも、実際使われれば差が生まれる。出来る人、出来ない人、上手い人、下手な人、様々だ」

 

 (とつ)(とつ)と、詠うように言葉が紡がれる。

 空気に溶けるように澄んだ言葉。感情の籠っていない――だが、どこか強く感じる声。心を()かすような語りが、私の中へするりと入り込んできた。

 目を、離せない。

 耳が、声を捉えて止まない。

 ――心を鷲掴みにされる錯覚を覚えた。

 目を奪われる中、ゆるりと彼の手が持ち上がった。掌を上に、肩の高さで横に振るわれる。誰かに差し伸べるかのような手は空を切った。

 

「その差を作る原因は多くある。経験年数、体格、バランス感覚、理論派か感覚派か、そもそもその技術に体力が付いていけているのか……俺の場合、およそ全てに於いて他者に劣っていたよ。経験も、体格も、なにもかも。生きた年数が一桁だったからな」

 

 ゆらゆらと、手が振られ、下ろされる。

 まるで失墜するかのような手の振り方。力なく下ろされたそれは、失意のそれに思え――

 

「――だが、そんな俺でもSAOを生き抜けた」

 

 ――直後、印象は反転する。

 声に、覇気が伴った。

 

「すっかり忘れていた事だ。恐れる余り、自覚を忘れていた事だ。無自覚に落ちた意識は俺を弱くしていた。思考に上っていた事なのに、一番大事な事から意識は外れていた……――――俺は、何の為に剣を取り、戦ったのだったか

 

 深く、深く、怨嗟の如きしゃがれた声。

 ――彼が、こちらを向いた。

 夕陽を背に負う彼の顔は、影になっていてよく見えない。

 だがその黒い双眸は見えていた。(けい)(けい)(シン)()に燃える光が私を射抜いている。強い感情が彼の中に渦巻いていると、目を見て理解する事は(かた)くなかった。

 

「七色・アルシャービン。お前が何を根底に抱き企てを立てたのか、俺はもう問わん。事ここに至ればそれも些末事。俺の大切なものを危ぶめお前は《敵》、その事実だけで十分だ」

 

 黒の瞳が、強く光った。

 

 

 

「――(はじ)(まり)を語る」

 

 

 

 重く、(言葉)が紡がれた。

 

 

 

「電子は混ざり、固まり、万象織り為し、()()を産む」

 

 

 

 (言葉)が続くにつれ、夕陽が沈み始めた。空の茜色は(すみれ)に、紺に、そして闇色へと急速に変わっていく。

 きらきらと、星が瞬く。

 煌々と、丸い月が出現した。

 

 

 

「天地は別れ、無は開闢を言祝ぐ――――(ソラ)(あらわ)るはヒトの()()!」

 

 

 

 ――世界に、変革が起きた。

 輝く銀の真円、その右腕の縁が――わずかに、欠けた。月を侵食する黒い影は、その面積を次第に増やしていく。しかし月食の円形ではない。三角形の楔が食い込んでいくかのような……

 

「な……ま、さか――――」

 

 思わず、目を見開く。

 蒼白い月をカンバスに、黒い三角形の楔が食い込んだそのシルエットには、覚えがあった。何年も前に目にして以来ほぼ日の目を浴びなくなった一つの画像の記憶が脳裏に浮かぶ。

 驚愕をよそに、影はついに月全体を覆い隠してしまった。しかし彼方から届く月光が三角形の影の輪郭を朧に浮き上がらせている。どんどん、どんどん、大きくなる。近付いて来る。

 ――そして、一定のところまで近付いた時、浮遊物自体が発光した。

 夜闇の中、黄金が煌めく。

 それは円錐形の物体だった。幾つもの薄い層を積み重ねて作られており、光はその層の間から漏れている。底面からは三本の巨大な柱が垂れ下がり、その先端も眩く発光している。一番下の層と層の間には何階分もの窓が並んだきょだいな建築物が幾つも密集しているのが見える。そのサイズから換算すれば、空飛ぶ円錐の全体の大きさは、何キロメートルにも及ぶだろう。

 黄金の輝きを纏い、空に顕現した浮遊物――――それは、鋼鉄の巨城だった。

 何年も前にSAOが発表された時の資料でその外観を目にした事はある。だがこうして実物を外部から眺めるのは初だ。伝説の浮遊城を目の当たりにし、畏怖にも似た感情に打たれ、息を詰める。

 

 

 

「アインクラッド――ッ!」

 

 

 

 想定をはるかに超えたモノの登場に思考が乱れた。少年と敵対する事は想定していたが、SAOサーバーに跳んだ事から想定の外だったのに、まさかあんなものが現れるなんて、誰が思うか。

 しかも――彼の詠に呼応し、現れたように思える。

 だとすれば、彼も【カーディナル・システム】――――SAOを統括していたシステムを掌握しているのかもしれない。《クラウド・ブレイン》は元々強い意志によって構築されるものだ。純度が低い感情を数の暴力で押し切った私に対し、彼であれば一人で構築する事も不可能ではないだろう。とんだ常識外れだが――彼ならば、と思えてしまう。

 その思考を裏付けるように、彼の装いも変化していた。

 大きくは変わらない。ただ、黒い外套と、左右の手に黒と翠の剣が握られただけだ。

 

 そして、私達が立つ場所も、変化していた。

 

 上空に浮かぶ小さな水晶の浮島に居た筈なのに気付けば月明かりに照らされた草原の只中。浮遊城の位置は変わっていないから、水晶の床が草原の大地に変わっただけなのか。

 見回せば、離れた位置に幾つもの突起物が地面に突き立っているのが見える。

 それらは、武器だった。

 片手直剣。細剣。曲刀。刀。両手剣。斧。鎌。槍。短剣。長棍。片手棍。盾――――種々様々な武器が、草原の至るところに突き立っている。

 まるで墓標。

 それらを取り巻きにするように、【黒の剣士】が私を見据えていた。

 彼の背後には、ひとつの大きな石碑が見える。一面、一定間隔で黄色の二重線を引かれる面の中で、一ヵ所だけ引かれていない文字があった。Kiritoとある。

 

「――かつて、須郷は人のイメージ……ユメで見る光景を仮想世界に再現する研究をしていた」

 

 自身の名前のみ赤文字で記された石碑を背に、二刀を携えた少年が口を開く。

 その内容はニュースで軽く触れられつつ、しかし失敗した、の一言で済ませられ、業界でも禁忌に近い――というより安全性の無い――としてタブー扱いされたものだった。

 自然、興味を惹かれる。

 

「ユメは、人の経験で形作られるものと、完全な想像……破綻したもので作られる。機械が読み取れるものは現状前者のみだ」

「……つまりこの草原も、あの城も、キミのイメージという事ね?」

「ああ。俺が《SAO》に対して強く抱いてるイメージそのもの……そして、ユメとは無意識だから、俺の心象世界と言える。深層心理とでも言えばいいかな。俺が恐れている何も護れなかった光景さ

 

 ――笑う。

 ――哂う。

 ――――嗤う。

 笑みで象られた唇が、(いびつ)に歪んだ。泣きそうな顔なのに笑っていない。光を宿す目は淀んでいた。

 

「【解放の英雄】と、命を救ったと、人は言う。そうだな。確かに、俺はラスボスを斬った……結果論だがな

 

 くしゃりと、美麗な顔が苦悶に歪んだ。

 

なにか一つ違っていれば、みんなは死んで、俺だけ生還していた。結果的に護れただけ。なにかが違っていれば、みんな死んでいた……俺はな、それを恐れている。()()()()()()()()()()とずっと恐れている」

 

 知ってるかと問うてくる。

 軽く、軽快に。

 ――淀んだ声音で。

 

「ヒトってな、簡単に死ぬんだ。護ろうとしても手から零れる。零れて、砕けて、終わる……だから、仮令死なないと分かってるゲームでも、もう二度とみんなには死んで欲しくなかった。それを見るのもイヤだった。あの時、第百層でみんなが死んでいく光景が蘇るんだよ。何度も何度も何度も何度も際限なく脳裏を過ぎる。『お前が弱いから護れなかった』と俺じゃない俺の声が聞こえてくる。毎日、いつでも、ずっとだ」

 

 そこで、弱々しい笑みが浮かんだ。

 

「それが、いまの俺の心象世界――――俺以外居なくなった《SAO》だ」

「キリト君以外が居ない、SAO……?」

 

 引っ掛かる言い回し。確かにラスボス戦で彼の親しい人は多くがやられていたが、非戦闘員であるレインやリズベット達は生きていた。それを忘れる彼では無い筈なのに、なぜそんな言い回しをしたのだろうか。

 

「――最後に、戦う前に聞いておく。諦める気は無いんだな?」

 

 気になる事はあったが――いまは、それはいいと思考を放る。

 

「何を聞くかと思えば、トーゼンよ。《クラウド・ブレイン》はこうして完成した。でも色々と試さないといけない事があるの。諦める訳がないじゃない」

「……そうか」

 

 ――残念だ。

 淡々と言い捨てて、彼は二刀を構えた。その眼に諦めは無い。私に勝てると、そう思っているような目。

 ふぅ、と息を吐く。

 

「あのね、あまり私を舐めないでよね。《アインクラッド》を呼んだり心象世界を出したりとキリト君もとんでもない事をしてるけど――――《神》になった私に、敵う訳ないじゃない」

 

 私には、何十万という人の総体意志の《クラウド・ブレイン》が付いている。

 サーバーの主導権を握るオリジナル・カーディナル・システムはキリト側にあるからか吸収は出来ていないが、負ける気はしなかった。仮令彼がそれに匹敵するものを構築していようと、SAOサーバーのリソースを吸収し切る前に――()が、先に奪うだけだ。

 ゆっくりと、《クラウド・ブレイン》を動かす。

 

 

 

「さぁ、キリト君――――あなたも、()の一つになりなさい」

 

 

 

 ――ズラリと、虚空に武器を浮かべる。

 私は指示しただけ。その意図するところを読みとり、意志に近しい情緒を有する《クラウド・ブレイン》が最適な選択を取った。それが《ⅩⅢ》の特性を利用し武器プログラムを呼び出す武器召喚だっただけだ。幾百、幾千という数の武器の切っ先が、幼い少年へと向けられる。

 それは最後通牒。

 痛い思いをしたくないなら諦めろ、受け容れろという、()からの最後の慈悲。

 

 

 

「――そんなの、お断りだ」

 

 

 

 それを、彼は拒絶し。

 

 ――草原に突き立つ武器達が、虚空に浮かぶ私の武器達を弾き飛ばした。

 

 ギョッと、私は僅かに背後を振り返る。ズラリと並んでいた筈の武器達は全て地面に落とされていた。歯噛みして、再度呼び出す――が、焼き直しの如くまた弾かれる。

 

「――返してもらうぞ、(全て)を」

 

 黒と白の粒子を纏った無数の武器が、殺到した。

 

 ***

 

 二〇二五年五月九日木曜日午前零時半。

 翌日も学校があるというのに鬱憤を晴らすように日を跨ぐまでアニメを視聴していた私は、寝る前のネットサーフィンをしたところ、速報で見つけたスレッドで情報を得て、おそらくいまネット中が注目しているだろう戦いに見入っていた。

 動画を挙げているのは《MMOストリーム》。日本が誇るネットゲームの総合情報サイトのネットニュース部門に該当し、よく動画を挙げているところ。

 それが生中継で流している動画を見ていた。視聴者数は、日を跨ぐ深夜帯だというのに五百万を突破している。ともすれば外国人も見ているかもしれない。

 

『こ、の――っ!』

 

 二分割されている動画の右側に映る銀髪の少女が、悔しげに声を発した。呼応するように背後の空間に一瞬で数百の武器が出現する――が、一瞬後には黒と白の粒子を纏う武器に迎撃、叩き落とされる。

 その間を縫って、画面左側に映る黒髪の少女――にしか見えない二刀の少年が距離を詰めた。

 

『はぁッ!』

『く――ッ!』

 

 裂帛の気合。振り下ろされる剣に対し、銀髪の少女セブンが虚空から槍を取り出し防御する。すぐさまもう一方の剣が振るわれるも、それも虚空から飛び出た斧が妨げ、不発に終わった。

 一瞬の膠着。

 直後、セブンの頭上から数本の武器が飛来。寸での所で黒尽くめの二刀剣士キリトが飛び退いた。青々とした草が生い茂る草原に武器が突き立つも、それを少女が一瞥すると、光に散り、その場からなくなる。そして再度虚空に出現し、その切っ先を少年へと向ける。

 彼女の()()は、不快げに歪んでいた。

 

『無駄だとまだ分からないの? どれだけ足掻こうと、今の()のステータスを前に傷付けたところで無意味よ』

『無意味かどうかはまだ分からんだろう。結果が出てから、無意味かどうかは分かるものだ』

『そう……慈悲をあげてるんだけど、言っても分からないなら力尽くで理解させてあげる。精々足掻きなさいッ!』

 

 少女が吠える。武器が飛び、それを迎撃する為に黒と白の粒子を纏う武器達が飛び――しかし、()()洩らしが出た。それは二刀で直接弾く。

 ――そこで、少女が地を蹴った。

 ドヴァッ、と粉塵の爆発。一瞬で数十メートルの距離を詰め切った彼女の右手には、重厚な大斧が握られていた。

 

『引導を、渡してあげる!』

 

 縦の大振り。

 隙だらけだが、サポートするように武器が虚空から飛び出し、彼の動きを妨げた。二刀を交叉して翳され――――斧は、それを両断する。

 ほぼ縦に切り裂かれる小さな体。

 そこに、時計回りに回った少女による全力の右薙ぎが放たれた。直前に後退した彼の腹部が抉られる。

 彼の顔が苦悶に歪んだ。

 

『逃がさないわッ!』

 

 槍に持ち替え、セブンが突貫。

 ――彼の手に、深紅の長槍が飛来する。

 直後、二本の槍が交錯し、深紅の穂先が弾かれる。しかし弾かれた勢いすらも利用し、くるりと回された槍の石突が少女の腹を薙いだ。当たる。

 

『なに、それ』

 

 ――微動だにしない。

 冷淡に、少女が言う。槍の石突きに叩かれた少女は痛痒にも感じていなかった。ステータスの差が大き過ぎたのだ。サーバーが違えばステータスの意味、数値上の強弱も変化する筈だが、未だ世界に二つのVRMMORPGで、しかも流用されたシステムともなれば、ほぼそのまま通用するのだろう。

 片や妖精郷の全てを取り込んだ少女。

 片や一から真っ当に築き上げた少年。

 ――どちらが上かなど、素人でも分かる話だった。

 お返しとばかりに、槍の代わりに剣を握った少女が刃を振るう。

 瞬時に、斬閃が叩き込まれた。

 

『ぐ――ッ』

 

 怒涛の連撃。深紅の槍を巧みに動かすが、あまりの力に押され、防ぎ切れない攻撃が体を斬り裂く。それがまた巧妙だ。とても非戦闘員だったとは思えない剣の冴えに息を呑む。

 少しして、地面に掛けた槍にてこの原理で剣が抑え込まれた。

 直後、瞬時に剣を弾き、少年は距離を取る。

 少女は、剣を払って構え直した。片手で握る剣を正眼に構え、右半身を前に、左手を軽く持ち上げている。中段に剣を構えたその姿勢は自然な半身。緊張の色はどこにもない。

 それを見て、キリトが瞠目した。

 

『――その構えは、ユウキの……』

 

 ライブカメラがその声を拾ったのは奇跡だろう。おそるおそるという口調の言葉を聞いたか、セブンが微笑んだ。

 

『そうよ。《クラウド・ブレイン》が私に教えてくれるの。私はALOそのものと言っても良いから……感情だけじゃなくて、アバターデータも、それが取って来たログも取り込んでる。勿論、キリカ君やリーファちゃんのデータもあるわよ』

――そうか

 

 僅かに声のトーンを落とした少年が、目を鋭くした。

 それも一瞬のこと。瞬きを挟んだ後は、目の鋭さは通常のものに戻っていた。

 

『そっちがそうするなら、俺もそうするとしよう』

 

 そう言った途端、草原の彼方からなにかが飛来する。

 槍を地面に突き立てた直後、彼の手にすっぽり収まったのは、細身の長剣だった。細めの片手用両刃直剣。黒曜石のよな深い半透明の色合いを帯びており、輝きやディティールからして武器のランクはかつてそれが存在したゲームでも上位に食い込んでいただろう。

 私には、その剣に覚えがあった。

 いや、きっと私だけでは無い。ボス戦放映を見た事がある者なら目にした事がある武器の一つだ。

 常に前線で戦っていた彼の傍を離れる事無く、同じように前線に立っていた剣士の(つるぎ)。紫紺の装いをなびかせていた少女の愛剣。

 セブンがトレースした動きの少女が使っていた、愛用の剣だった。

 

『――知っているか。SAOに於ける感情データの観測は、時にアイテムや地形と紐付けされて保存される事があったらしい』

 

 黒曜の剣を中段に構えた少年が言う。

 黒の髪が、紫紺に近くなったように見えた。

 

『この片手直剣は【絶剣】と呼ばれた一人の剣士が第五十層から第八十層まで使い続けた剣。期間はおよそ半年。それだけの長さがあれば、()(ねん)、強い感情と紐付けされる。ボスとの戦いに三十回使われたんだ。同じ回数だけ、生への強い想念が起きたと言える』

 

 ――彼がそう言った時、不思議な事が起きた。

 黒尽くめの少年の背後に人影が生まれたのだ。おぼろげに透き通り、彼と同じ姿勢で剣を構えている事が分かるその人影は――紫紺の少女だった。いまそこに居ない筈の少女の姿が浮かんでいる。

 動画のコメント欄に、お化けだ、幽霊だ、という内容のものが一気に流れる。

 

『それを、俺はずっと近くで見てきた。直に刃を交えもした……』

 

 少女の影が、少年の体と重なった。

 

『ただ模倣しただけの技で勝てると思うなよ』

 

 そう言って、駆け出し、刃を交え始める。

 ――二人の剣劇は、まったくの互角だった。

 

 






・《クラウド・ブレイン》
 人の感情の総体によって形作られる情緒的な演算システム。システムにとって不合理な《感情》を主体としたもののため、【カーディナル・システム】をバグらせる事に特化し、エラー対応に追われている間に支配権を奪い取ったもの。
 セブンの場合は数十万人分の己への憧憬、熱意のほか、怒りなどの感情も集まり、想定よりも強力なものになっている。レインの行動が裏目に出てしまった。
 ALOのコピー・カーディナルをバグらせ、支配している。ALOサーバーのリソースやシステム全てを《クラウド・ブレイン》が取り込んだので、SAOサーバー内でありながらALOでやれた事が出来ていた。その辺はコピー・カーディナルが頑張った。
 キリトも《クラウド・ブレイン》を発現させているが、こちらは自分一人で行っている。若干カーディナルが支援している部分があるのは否めない。
 本作今話に於ける《心意》的現象はこの《クラウド・ブレイン》によるものである。
 イメージとしては『とある科学の超電磁砲』に出て来る《レベルアッパー》で作られる集合脳。


・セブン
 とうとう自分の事を《神》と言い始めちゃったヤベー(迫真)やつ。
 数十万人の感情を統合した《クラウド・ブレイン》の核になり、彼らの演算能力を使い、《ⅩⅢ》の武器一斉召喚などを行っている。また巻き込まれたプレイヤーの脳波を固定し、彼らの技術や能力も使えているのあ、『とある科学の超電磁砲』のレベルアッパー使用者が脳波を固定される事と同じ原理。
 つまり今のセブンは『リーファの剣腕とユイ・キリカらの情報処理能力と技術、ユウキらSAO組の生還者特有の勘の良さや経験、その他ALOに実装されてるあらゆる《魔法》やスキル、装備を自在に使える』という状態。
 Fate/を引き合いに出すなら、英雄王に各英霊の技量をインストールしちゃった状態。
 でも慢心してる事、経験を記録として持って引き出せても自分のものに出来てないので振り回されており、上手く高ステータスを活かせていない。情緒的演算――つまり『予測』や『選択』が可能な演算システム《クラウド・ブレイン》が無ければ、キリトとは渡り合えていない。
 ちなみに吸収は出来ないだけで巨大化能力は健在。
 ヤバいくらいキリトにご執心。


・キリト
 カーディナルの言葉もあって、昔抱いていた想いを再認識したまともだけどやべーヤツ。
 何時ぞやの『具象化技術』をフル活用して心象風景を再度展開した。本人は『みんなを喪ったトラウマ』として語っており、名前のある石碑や墓標代わりの武器の数々など実際トラウマに相応しい要素は盛りだくさん。
 しかし――『草原』は第一層の《始まりの草原》であり、且つ神々しい輝きとして浮遊城を再召喚している。あまりに痛烈な恐怖だったから心象になっているだけで、本質は『喪失への恐怖』では無い。護ろうとする意志を後押しする風景なのである。
 最後の方は、仲間への想い、SAO時代でずっと見続けてきた記憶の励起で、《アンダーワールド》編みたく《心意》を引き起こし、ユウキの技術をトレースしている。投影魔術or降霊魔術カナ?
 ちなみにセブンを有利にする情報を与えたり、《敵》と認めてる割には話を振っているのは、時間を稼ぐためである。

心象風景
詠唱:「――(はじ)(まり)を語る。電子は混ざり、固まり、万象織り為し、()()を産む。天地は別れ、無は開闢を言祝ぐ――――(ソラ)(あらわ)るはヒトの()()!」

意味
1)仮想世界の最初の話。電子プログラムが世界を産んだ。《大切断》――天地創世の話により、《アインクラッド》が生まれた。天空に(茅場)の夢が具現化したのだ。
2)《キリト》の始まりを現そう(意訳)
元ネタ:英雄王各ゲームのセリフを合わせたもの。最後だけは賢王の宝具等速で聞けるボイス『大地を濡らすは我が決意』の語感になっている。


・カーディナル
 その気になれば仮想世界にキリトを監禁出来るヤベーやつ(ただし《クラウド・ブレイン》で破られる)
 キリトに力を貸しているSAOサーバーの統括者。
 SAOは完全初期化されたので、セブンと違いSAOの装備全てを召喚する事は出来ない(そもそもプログラムコードが無い)。しかしセブンが召喚した武器を叩き落とすなど、キリトがALOから持ってきた《ⅩⅢ》の武器や具現化された墓標紛いの武器を使い、何時ぞやのユイの如く援護はしている。

 ――つまりキリトの戦闘行為に、キリト版《クラウド・ブレイン》の力は未だほぼ使われていないという事である。


・MMOストリーム
 どういう訳かSAOサーバー内のやり取りもキッチリ撮っていた。
 果たしてどこから撮っていたのか。
 そもそも手引きしたのは誰なのか。
 ――サーバーの統括者なら、簡単な話だろう。


・簪
 更識邸に和人が厄介になってから勉強面の教師を務めている少女。
 最近全然いっしょに居てくれないのと和人に対する印象と姉を楽しませてたIS技術を見てモヤモヤしてたからネットサーフィンしてたら変な動画見つけちゃった和人保護者の一人。
 地味に超高速で交わされる攻防に理解が追い付いていて混乱していない辺り、キリトとセブンの身に何が起きているかを理解出来ている。
 いったいどの辺から見ていたのか。



▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。