インフィニット・オンライン ~孤高の剣士~   作:黒ヶ谷・ユーリ・メリディエス

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 どうも、おはこんばんにちは、黒ヶ谷です。

視点:ガブリエル・ミラー(アニメの暗黒神ベクタ)

字数:約八千

 前半は所々変えてるだけでほぼ原作まんまの文章です。運営対応コワひ() でもガブリエルの異常性を知るには不可欠なストーリーだから……

 ではどうぞ。




Interlude Story:魂食編 ~Your soul will be so sweet.(君の魂は、きっと甘いだろう)

 

 濡羽色を纏う()()()使()()

 少女のように細い体と、その矮躯に比肩する長大な片手剣が不思議に調和している。過去の残像たるその姿は現在カメラに背を向けるようにして――厳密には、彼方を目指して駆けているため、顔は見えない。

 だが、自分が初めて見た時点から半年以上前の頃とは言え、既に()(ろう)のように雄々しく鋭い容貌を得ているだろう。

 漫然と日々を過ごす人間と違い、命を燃やすが如き雄々しさは、何よりも輝いて見える。

 少なくとも、()()()使()()の周囲に居た青年少女達に較べれば、遥かに強い輝きだ。集団の中心になるのも当然と言えよう。人間は、強い輝きを求めて(たか)るものなのだ。

 

 ――その輝きを見た時、それを何としても手に入れたいという激しい衝動に駆られた。

 

 この眼で定めた『輝き』とは、()()()使()()の美麗な容貌の事では無い。

 (ソウル)

 ほぼ全ての宗教は、魂の概念を取り入れている。もちろんキリスト教も、人間が死ねば魂は生前の行いによって天国か地獄に送られると説く。

 しかし自分(ガブリエル)が魂の存在を信じ、それを得たいと追い求めるのは、プロテスタントだからでも、カトリックだからでもない。

 知っているのだ。実体験として、我が目で確かに見たのだ。

 己の(かいな)の中でいままさに事切れようとしている少女の額から、喩えようもなく美しい光の集合体が飛び立つさまを。

 

 *

 

 《ガブリエル・ミラー》は、一九九八年三月にカリフォルニア州ロサンゼルス近郊のパシフィック・パリセーズという街で生まれた。

 兄弟姉妹はなく、裕福な父母の精神的、物質的な愛情を惜しみなく注がれて育った。暮らしていた屋敷は広大で、遊び場には事欠かなかったが、幼いガブリエルが最も好んだ場所は父親のコレクション保管庫だった。

 《グロージェン・ディフェンス・システムズ》の前身である《グロージェン・セキュリティーズ》のオーナー経営者だった父親は、昆虫標本の(しゅう)(しゅう)を趣味としていて、広い保管庫には数えきれない程のガラスケースが並べられていた。ガブリエルは時間を見つけては保管庫に籠り、拡大鏡片手に色取り取りの虫たちを眺めたり、部屋中央のソファーに腰掛けてぼんやりと空想に(ふけ)ったりしていた。

 ――天井が高く薄暗い部屋の中、周囲を数万匹もの物言わぬ昆虫たちに囲まれていると、幼いガブリエルは時として奇妙な感慨に襲われた。

 この虫たちはみんな、在る瞬間までは生きていた。アフリカの草原や中東の砂漠、南米の密林などで、元気に巣を作ったりエサを探したりしていた。しかしあるとき採取者に捕まり、薬品で処理され、何度かの売買を経て、最後はミラー家のガラスケースに行儀よく並ぶ事となる。

 つまりこの部屋は昆虫標本のコレクション・ルームであると同時に、殺戮された骸を何万も並べた巨大墓地でもあるのだ……

 ――瞼を閉じ、周囲の虫たちが突然命を取り戻したら、と想像した事がある。

 六本の足が懸命に宙を掻き、触覚や翅が震える。かさかさ、かさかさ、という微かな音が無数に重なり、乾いたさざ波となって耳朶を打つ。

 そんな妄想に耽っていると、ふとケースの隅に留められた一体の虫が動いたような気がして、ケースに駆け寄って食い入るように見つめた事もあった。金属のように艶やかなエメラルドグリーンの甲殻、鋭い棘の生えた脚、極症の網目が浮かぶ眼。その精緻な物体をかつて動かしていたのはいったいどんな力なのか――と。

 その疑問を父親に向けると、革張りのイタリアン・チェアに腰掛けて昆虫大全を読んでいた父は、アルカイック・スマイルを浮かべ、答えた。

 

『ガブリエル。昆虫にはね、人間と違って大脳に相当するものは無いんだ』

『――なら、どこで考えているの?』

 

 幼いガブリエルが問うと、父親はとある動画を見せた。

 撮影されていたのは交尾中のカマキリだった。丸々と太ったメスのカマキリを背後から小さなオスが抑え込み、交接器を接合させている。メスはしばらく動かなかったが、ふとオスの上半身を両腕のカマで捕らえ、頭部をむしゃむしゃと咀嚼し始めた。オスはそのまま交尾を続け、自身の頭が完全に食い尽くされたところで交接器を離し、メスの鎌を振り解いで一目散に逃げだした。

 ――頭部を喪っているにも関わらず、草の葉を伝い、枝を上り、器用に逃走を続けるオスカマキリを刺しながら、父は言った。

 

『このカマキリを含む昆虫はね、大脳が無い代わりに、全身の神経が全て脳に等しいんだ。頭は感覚器に過ぎない。だからしばらくは生きていられるのさ』

 

 昆虫には、人間と違い思考や生命維持に必要不可欠な脳に相当するものが無いと知ったガブリエルは、ならカマキリの魂はどこにあるのか、という疑問を抱いた。

 頭を食べられても生きていられるなら、足を全て喪っても然したるもの台はないだろう。ならば栄養を得るのに必要な消化器がある腹か。あるいは諸々が詰まっている胸部だろうか。しかし虫たちは柔らかい腹を潰されても、ピンで胸を貫かれても、しばらくは元気にしたばたと脚を動かし続ける。

 それが脊髄レベルの反射であるとしても、人間が死んだ場合はその反射すら起こり得ない以上、虫の体はまだ生きていると言えるだろう。体のどこの部位を喪っても即死しないなあら、カマキリの魂は全体に薄く満たされているのではないか――当時八歳か九歳だったガブリエルは、家の周囲で捕らえた昆虫を使って幾度かの実験を試みた末にそのような結論を得た。

 昆虫という班機械的な仕掛けを動かす不思議な力――つまり《魂》は、どの部位を破壊されようとしぶとく器に留まろうとする。しかしある瞬間、もう無理だと諦めて器を捨てて離脱していく。

 その見解を得たガブリエルは、離れていく魂をこの目で見て、出来れば捕まえたい、と熱望した。

 

 しかし、どれほど拡大鏡に目を凝らし、慎重に実験を行っても、昆虫の体から抜け出す《何か》を捕える事はおろか、見る事さえも出来なかった。

 

 屋敷の裏手の広い林の奥深くに作った秘密の実験場で、長い時間と多大な熱意を費やしても、ささやかな望みは叶わなかった。

 自分の願いが両親、ひいては世間一般の人々に歓迎されないものであろう事は、本能的に理解していたガブリエルは、カマキリの一件以来父親には二度と同じ質問をしなかったし、実験の事も口外しなかった。

 しかし――人間は、欲深いもので、隠そうとすればするほど、その欲求は深く大きなものになっていくようだった。

 

 ――その頃、ガブリエルにはとても仲の良い同い年の友達がいた。

 

 《アリシア・クリンガーマン》という名の少女で、敷地が隣接する邸宅に住む企業家の一人娘だった。当然同じエレメンタリースクールに通い、家族ぐるみの付き合いをしていた。内気なおとなしい少女で、外で泥だらけになって遊ぶよりも、家の中で本を読んだしビデオを見たりする事を好んだ。

 勿論ガブリエルは、自身の秘密の実験の事はアリシアにも隠し通し、虫や魂の話は一切しなかった。

 ただ――考える事はやめられなかった。

 自分の隣で天使のような微笑みを浮かべながら、夢中で物語を読むアリシアの横顔をそっと覗き見ながら、アリシアの魂はどこにあるんだろう、と何度も想像した。

 ()()()()()()()()

 人間は頭を喪ったら生きられない。だから人間の魂は頭に、脳の中にあるのだろう。

 しかしガブリエルは、父親のコンピューターでネットを検索し、脳の損傷が必ずしも生命の損失と直結しない事を既に学んでいた。太い鉄パイプに(がっ)()から頭の天辺まで貫かれても死ななかった建設作業員もいるし、患者の脳の一部を切除して精神病を治療しようとした医者もいる。

 

 だから、《魂》は脳のどこか一部にあるのだ。

 

 綿毛のような金髪に(ふち)どられたアリシアの額を見ながら、ガブリエルはそう考えた。滑らかな肌と硬い頭蓋骨と柔らかい脳組織のずっと奥に、アリシアの魂は隠されている。

 天使のようなアリシアの魂は、きっと言葉に表せないほど美しいに違いない。それを是非とも見たい。

 その望みは、将来的に結婚する事になるだろうという幼い未来図を下敷きにしたものであり、一生を共にし、最後を迎える瞬間に見られるという期待を掛けてのものだった。

 

 それは思いがけないほど早く、半分だけ叶えられる事になった。

 

 二〇〇八年九月、巨大投資銀行の破たんが世界金融危機の引き金を引いた。

 不況の波はロサンゼルス郊外にあるパシフィック・パリセーズをの呑み込んだ。幾つもの豪邸が売りに出され、通りを走る高級乗用車の数も目に見えて減った。

 《グロージェン・セキュリティーズ》は堅実な経営が幸いし、影響を最小限に抑えられたが、隣家のクリンガーマン氏が経営する不動産投資会社は多大な負債を抱えてしまった。翌年の四月、家屋敷を含む全資産を喪った一家は、農場を営む親類を頼り、遠く中西部のカンザスシティまで引っ越す事が決まった。

 ガブリエルにとって、それは非常に悲しい出来事だった。

 今後アリシアを待っているであろう過酷な環境を明確に想像出来たが故のもの――しかしそれは、同い年の少女の境遇を哀れんでのものではない。いつか自分のものになる筈だったアリシアの魂が、貧困と労働の辛い日々と名も知らぬ誰かによって傷付けられ、輝きを失ってしまう事が耐え難いものだったからだ。

 

 ――だから、殺す事にした。

 

 アリシアが学校で最後の挨拶をしたその日、帰りのスクールバスから降りた彼女を、ガブリエルは自宅の裏の森に誘った。道路や家々の兵に設置された全ての監視カメラを巧妙に避け、誰にも見られていない事を確認しながら森に入ると、足跡が残らないよう落ち葉の上を歩き、密生した(かん)(ぼく)に囲まれた《秘密の実験場》へとアリシアを導いた。

 かつてそこで数えきれないほどの虫たちが死んでいった事など知る由も無いアリシアは、ガブリエルが華奢な体に腕を回すと、すぐ抱擁を返した。

 

『どこにも、行きたくないよ……ゲイブと一緒に、ずっとこの街で、暮らしていたい!』

 

 しゃくりあげながら、アリシアはそう言った。

 

 ――その望み、僕が叶えてあげるよ。

 

 少女の慟哭に、心の中でそう呟きながら、上着のポケットに右手を入れ、予め用意しておいた道具を取り出した。父親が昆虫の処理に使う木製の握りが付いた、長さ四インチの鋼鉄製ニードル。

 鋭利な切っ先をそっとアリシアの左耳に差し込み、右耳を左手で押さえてから――一瞬の躊躇もなく根元まで貫き通した。

 アリシアは、なにが起きたのか分からない様子で不思議躁に両目を瞬かせてから、不意に体を激しく痙攣させた。数秒後、見開かれた青い瞳がふっと焦点を喪い、そして――

 

 ガブリエルは、()()を見た。

 

 アリシアの滑らかな額の中央から、きらきらと光り輝く小さな雲のようなものが現れた。それはふわふわと漂いながらガブリエルの眉間に近付くと、そのまま何の抵抗も無く頭に入り込んできた。

 ――周囲を包んでいた、春の午後のうららかな陽光が消えた。

 真上から、高い木々の梢を貫いて、幾つもの白い光の筋が降り注ぎ、微かな鐘の音さえ聞こえた気がした。

 得も言われぬ高揚感に、ガブリエルは両眼から涙を溢れさせた。自分はいま、アリシアの魂を見ている……それだけでなく、アリシアの魂が見ているものさえ見ているのだ、と直感した。

 輝く小さな雲は、永遠とも思えた数秒を掛けてガブリエルの頭を通り抜け、そのまま天からの光に導かれるように上昇を続け、やがて消え去った。

 途端、周囲に春の日差しと小鳥のさえずりが戻った。

 生命と魂を喪ったアリシアの体を両手で抱えながら、いまの体験が真実だったのか、それとも極度の興奮が齎した幻覚だったのかと自分は考えた。そして――そのどちらだろうとも、自分はこれからずっと、今視たものを追い求めて生きていく事になるだろうと確信した。

 アリシアの骸は、かねて見つけて置いた(かし)の巨木の根元に開いた深い(たて)(あな)に放り込んだ。次に自身の体を慎重に調べ、付着した二本の金髪を摘まみ上げると、それも穴に捨てた。ニードルは綺麗に洗ってから父親の道具箱に戻した。

 アリシア・クリンガーマン失踪事件は、地元警察の懸命の捜査にも手掛かり一つ察剣されず、やがて迷宮入りした。

 

 *

 

『――そっちの進捗はどうだ、アルゴ』

 

 短く深い回想から、二十七歳になるガブリエル・ミラーを引き戻したのは、濡羽色の()()()使()()の声だった。

 頭上にオレンジ色の菱形カーソルを載せた者達を斬り伏せ、投降するものは監獄に繋がる光の渦に叩き込んでいた光景が続いた後の場面。なにか状況に変化が訪れるのと同時――この少年の《魂》に、より磨きが掛かる出来事なのだろうと推察する。

 その集大成が、やや離れた場所で剣を突き立て、柄頭に両手を重ねて傍観の構えを取る半裸の少年。

 VRをはじめほぼあらゆる娯楽に疎い身だが、デスゲーム――こと、命や魂を懸けた浮遊城の一幕は、僅かな間だけでも自身を深く魅了した。強大な怪物に挑む全員がそうではなかったが、一部のプレイヤー達は、現実以上の現実であるように振る舞い、リアルな感情を惜しみなく振り撒いていた。仲間を護ろうとする叫び、味方を奮起する怒号――そして、全てを喪って尚抗い、勝ちを得た剣士の慟哭。

 最後まで生き抜いた少年の魂は、きっと誰よりも強く、輝くよう収斂されたモノに違いない。

 その魂を得た時――きっと自身は、アリシアの魂を得た時のような幸福感を得られると、そう確信していた。

 そう思考していると、少年ではない人影――薄茶色のフードコートを纏った少女が、両手を上げながら肩を竦めた。

 

『全然ダメだナー。圏内・圏外の物件は全階層当たってみたけど全滅ダ。中小規模のオレンジギルドは見つけたけど、肝心の《()()()()》は見当たらネー』

 

 ラフコフ、というのが《グロージェンDS》四十三階の役員室にて自身と共に酒に興じる男――ヴァサゴ・カザルスが率いた殺人集団である事を思い出し、横に視線を向ける。

 年代物ながら安酒に分類される銘柄《Death Abyss》を喜々としながら、タンブラーに少しずつ注いで飲んでいる男は、こちらの視線に気付いたのか横目で視線を返して来た。

 

「どーかしたか?」

「……いや。話題に挙がっているラフコフというのが、お前の率いた組織だったなと思い出しただけだ」

「あー、まぁ、そうだな」

 

 タンブラーを置いて頷いた男は、次いで複雑そうに眉を寄せ、顔を顰めた。

 

「つっても、そりゃ必要に駆られてだぜ? ああいう組織作っとかねぇと、オレンジ共がバラバラに動いて、いずれ攻略組にも死人が出て、攻略が止まってクリア不能になりかねなかったからな。あんま表沙汰になってねぇだけで中層辺りは結構ヤバかったんだぜ?」

「なるほどな……」

 

 ヴァサゴの言い分では、ただの殺人快楽で組織した訳でなく、敢えて悪人を一つの組織に纏めておく事で無駄な犯罪を犯さないよう制御し、攻略が進みやすいようにしていたという事らしい。

 

「しかしそれでお前自身が殺されては本末転倒ではないか?」

「俺だってやられると思ってなかったっての。あン時のアイツが、俺の予想の上をぶっ飛んでただけだ」

 

 そう言って、ヴァサゴはタンブラーに注がれた琥珀色の液体を口に含んだ。

 

「――()()も分かってると思うがよ、コイツはヤバいぜ? 素で狂ってやがるからな!」

 

 そう言って、ヴァサゴは深い笑みを浮かべて顔を動画が映る画面に向けた。

 自分も視線を画面に戻し、少年と少女のやり取りを眺める。

 それを()()に、思考は彼方へと飛翔していた。

 

 ――《魂》とはデータ化出来るものなのか、という疑問。

 

 濡羽色の()()()使()()には、同位体とも言うべき存在が最低でも二人確認されている。デスゲーム化の黒幕《須郷伸之》を捕える際、彼が召喚した巨漢を相手取ったホロウと、彼に操られたものの自己を取り戻して絶対上位者の命令に背いたスレイブ――後の、キリカという少年達だ。

 彼らは、大本である()()()使()()の大脳を長い時間を掛けて精査し、言動のログを基に造り出されたAIという話だが、そうとは思えないほど情緒豊かであり、意志と思考の自由性を持っていた。

 ――もし。

 もし、人間の精神、記憶、果ては《魂》までもコピー出来たなら。

 アリシア・クリンガーマンの魂を見た時から己に定めた『人の魂の探求』という偉大なる旅は、大きな円を描いて、原点へと回帰出来るのではないか。

 素晴らしいのは、一人の人間のコピー・ソウルは、更なるコピーもセーブも自由自在になる点だ。壊れたり歪んだりした魂は手軽に巻き戻し、ガブリエルの好みの形へと作り上げられる。魂の成長や研究のためには多くの素材が不可欠だろうから、若く活力に溢れた若者の魂を入れ、仮想世界を用いて成長を促す手間は要るだろうが、仮にコピー・ソウルが実現のものとなれば気儘に選んだ魂を好みの仮想世界にロードし、如何様にも望むままに扱えると言える。

 問題は仮想世界を作る下地やサーバーの手配だが、それは時間を掛ければ解決する事柄である。金はあるのだから。

 

 ――ゴールは近い。

 

 ガブリエルの祖父が創業した《Glowgen(グロージェン)》の社名は、《輝きを生むもの》という意味の造語だ。祖父は幸福の課は焼きをイメージしたらしいが、後継者であるガブリエルが思い浮かべるのは、死にゆくアリシアの額から漂い出てきた金色の輝き――《(ソウル)》に他ならない。

 輝きを生むもの。すなわち魂。

 ――全ては運命なのだ。

 自身と彼の少年が邂逅するのが何時かは不明だ。しかしヴァサゴによれば、あの少年が戦場から身を引く事は、最低でも数年は先だろうという。その数年間で(あい)(まみ)える機会はあるだろう。

 あわよくば、彼の少年のコピー・ソウルである《キリカ》という存在を得たいところだ。完全自律のAI、それも情緒的な思考と自律性に富んだAIに対し、米国政府や情報機関も同様に《キリカ》や《桐ヶ谷和人》に注目しているが、仮にコピーを手に入れても譲るつもりは無い。緻密の計画を立て、徹底的に隠匿するつもりだ。

 もうすぐなのだ。アリシアを殺してからのおよそ十数年間、従軍時期を含めて何人もの人間で実験を繰り返してきたが未だに近付けない魂の本質を、もう程なくしてこの手に掴める。

 

 ――You’r soul will be so sweet.(君の魂は、きっと甘いだろう)

 

 心の中で呟きながら、かつて見た美しい光の色を脳裏に浮かべ、口元に笑みを浮かべた。

 

 





・ガブリエル・ミラー
 《魂》の探求の為に人を殺し続けるヤベー(迫真)やつ。
 原作の描写部分によって《グロージェンDS》の一役員なのか、企業の取締役なのかイマイチハッキリしないが、結構な重役である事には変わりない。
 従軍経験があるが、それも合法的に人を殺せるかららしい。

 本作では魂の輝きを見せたキリト、その魂をコピーした存在であるキリカに執着している。
 原作でアリスに対し執着したのは、かつての幼馴染《アリシア・クリンガーマン》の魂が、魂の探求の発端になったから。かつて見た美しい光景を追い求めているので、瓜二つのアリスに対し異様に執着している。
 ――逆に言えば、アリスに会っていない間は、『生』を感じさせる激しい感情、魂の輝きに対し無差別に興味・関心を示す。
 原作でも第四回《バレット・オブ・バレッツ》本戦にて、シノンに対しSAO攻略組と同レベルの興味、執着を見せているように、アリス以外にも気持ちが強い人間に対し興味を示す。
 本作に於いては種類が異なるとは言え『キリトの完全コピー体』とも言うべき存在――しかも、命令に自分から背いて見せたAI《キリカ》が、須郷伸之捕縛放映されると共に世間に知られているので、ガブリエルは二人に対し異常な執着を見せる事になった。
 好きな酒の銘柄は特に無し。


・ヴァサゴ・カザルス
 ()()()は俺が育てた(迫真)を地で行く男。
 表の兄貴分がクライン、エギルなら、裏の兄貴分はこの男。キリトが殺しの技、覚悟を持ったり、人心操作出来たりするのは、色々とカリスマを持つこの男の影響が多分にあるため。
 実は《笑う棺桶》掃討戦にて、自分を殺し得るレベルまで成長しているとは思っていなかったらしい。
 死ぬ気は無かったが、怨みを持っていない辺り、自分の予想以上の成長を見せた点には満足している模様。
 ――どう転んでもヴァサゴは愉悦する。
 好きな酒の銘柄は《Death abyss》。


・桐ヶ谷和人
 ヤベーやつに目を付けられちゃった剣士。


・キリカ
 ヤベーやつに存在ごと狙われる事が決まったAI。
 種類としては『トップダウン型AI』。既存のコンピュータ・アーキテクチャ上で単純な質疑応答プログラムに徐々に知識と経験を積ませ、学習によって最終的に本物の知性へ近づけようというもの。
 つまり独創性は無く、『Aに対しBと答える』というルーチンしか出来ない、マニュアル通りの存在。
 しかしキリカの場合、《桐ヶ谷和人》という人間の思考、精神、記憶を読みとり、SAO内での言動ログを基に形成されたAIのため、ほぼ人間そのものの情緒性を有する。
 原作風に言うなら『トップダウン型』と『ボトムアップ型』を融合させたようなAI。

 ――誓いを優先して須郷を裏切り、サチを護る事を優先した点が、ボトムアップ型の特色を有している。

 トップダウン型の部分は、《キリト(織斑一夏)》が取るだろう言動()()取らないところ(悶々とした感情を一人で抱え込んでいる点)

 その相中が、ALO編の世界樹の根元でキリトとぶつかった時のものである。


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