インフィニット・オンライン ~孤高の剣士~ 作:黒ヶ谷・ユーリ・メリディエス
すまない、本当にすまない。文字数が少ない上に全然進んでないんや() ちょっとした小話なんや()
ほら、拙作の一話って、一つのテーマを一貫して語るから……
広げようが無かった(絶望)
他の話と纏めると収まりが悪いので短いけど投稿。その代わり投稿間隔が狭まったという事で、赦して……(今後は未定)
視点:和人
字数:約三千
「今日も良い天気だな……」
二〇二五年六月九日、月曜日。午前八時。
《クラウド・ブレイン事変》から丸々一ヵ月が過ぎた今日の天気はすこぶる快晴。薄くまばらな雲が風に流され地平線へと消えゆく光景が、夏が近づき、熱量を上げてきている太陽が照らしている。
少し耳を澄ませれば、さざ波の音が耳朶を打つ。
空気を吸えば、潮の香りが鼻腔を擽る。
近代的な趣の建造物こそ目立つが、東京湾上に建造された人工島はある種大自然に囲まれた環境と言えなくもないのではないだろうか。植林作業の苦労をしのぶに余りある広大な雑木林を見てそう思う。
ただ、たゆまぬ影の努力が功を奏して、ふとそれらに目を向けた時の心地は何とも言えない清涼感を抱かせる。
人の喧騒、しがらみから解放されるような、そんな感覚。頭を悩ませる物事もちっぽけに思えてしまう。
無論、錯覚な上に現実逃避でしかない訳だが。
「ちょっと、ここまで無反応だと流石のあたしも傷付いちゃうんだけど? 天気よりあたしを見てってば」
現実逃避混じりに思考を飛躍させ、普段気にしなかった絶海の孤島特有の環境刺激に身を預けていた俺は、真横から掛けられた声で無理矢理現実に意識を引き戻される。声だけならまだしも手を引っ張られて揺さぶられてまで無視出来るほど険悪な仲ではない。
胡乱に横に視線を向ける。
「もう、やっとこっちを見てくれた! 挨拶を返さないで天気の感想とか、和人君、ちょっと失礼よ? レディに対するマナーというものがなってないわね」
そう言ってふふん、と胸を張る、長い茶髪をストレートで流す同年代の少女。薄手のシャツとスカートを纏う人物は、かつて事変を偶発的に引き起した張本人にして、今は名声を失墜させた天才少女・《枳殻七色》その人である。最近ALOで少しずつ【
現実に於いては、俺と同じ特別クラスに所属し、また《メカトロニクスコース》を選択していた唯一の同類。
――精神的に疲れているから余計疲れる……七色は、まるで嵐だな……
移動し始めたばかりなので現実逃避も実際はほんの数秒程度でしかない。
“天才”と揶揄される人物のテンションは得てして勢いが凄まじく思うのはきっと気のせいではない。
こちらの心情を顧みないで意見を言って来る様は、“天
そんな彼女はいま、絶海の孤島《IS学園》に足を踏み入れていた。
通称“《事変》”の後始末の折、裏で政府と取引を交わして厳重注意に済ませ、経歴上は前科無し、且つ日本国籍へと即座に国籍を変えるという異例の待遇をされた七色は、その取引に応じるべくIS学園に来たのだという。更に地下の拘置所を寮代わりに使うのだとか。
事態の詳細はまだ聞けていない。
というのも、七色が来たのは今朝――つまり、三十分ほど前でしかなく、俺は事前に聞かされていなかったし、顔を合わせたのはたった今。朝食を摂るべく移動していたところで後ろから声を掛けてきた七色は、朝食と学園内の説明と生徒たちへの顔見せも兼ねて学食へ移動していて、そこで合流したようだった。ちなみに俺の案内を
「……いきなりで混乱したんだよ。予想してなかったから、驚いたんだ」
ある意味年相応に無邪気な天才少女・七色に、恨みがましく反論する。
すると七色はあれ? と疑問を表情に出しながら首を傾げた。
「菊岡さんから聞いてないの? あたし、今日から和人君と一緒に過ごす事になってるんだけど」
「私達もそう聞いていたから、敢えて通達していなかったのだが……」
「菊岡ァ……!」
七色と千冬の二人が訝しげに問うてきて、楯無も首を傾げているのを見て、俺以外には知れ渡っていた事がよく分かる。だからこそ、どうしていきなり決まったかのようになったか原因が判明し、怨嗟の声を上げる。そこまで怒っている訳ではないが、大事な事には変わりない以上忘れないで通達しておいて欲しかった。
最近色々忙しそうにあちこちに電話を掛けていたし、優先順位が下の方で、忘れてしまっていたのだろう。
「次話す機会で絶対文句言ってやる……」
ひとまず今度電話した時にチクリと文句を言う事を心に決めた。
「……それはともかく、授業はいいのか? 一応とは言え生還者学校に学籍があるのに」
「通信教育制の和人君に言われてもね……忘れてるかもだけど、あたしこれでもMITを主席飛び級卒業してるからね。専門課程があったとは言え、大学課程まで修了してるあたしなら一般高校レベルはお茶の子さいさいよ。通信教育制でもモーマンタイ」
苦笑しながらこっちを見てそう言ってくる。
確かに単位未取得で通信教育制度を利用し、単位を取る事で学業を続けていられるのだ。既に課程を修了している七色が同じ対応になっても問題はまず発生し得ない。
強いて言うなら二つほどか。以前俺が登校する時の理由に使った『七色監視』関係――つまり“何か良からなぬ事を企てていないか”という疑いと、二人しか居なかった《メカトロニクスコース》のリーダーの俺が居なくなった事で立ち行かなくなった事。
「それにこうして一緒に居ればメカトロコースの実験も出来るでしょ?」
そこで、まるで思考を読んだかのようなタイミングで、七色がにこやかに笑いながら言ってきた。
「お世辞にも生還者学校の機材の質はあまり良くなかったけど、こっちは日本政府直轄の学園だもの、しっかり計画の草案を作っておけばある程度は機材を融通してもらえるようになってるの。これなら和人君との研究も進みやすい筈よ」
「融通って……そこまで話を付けてたのか」
「根回しは基本だもの、当然じゃない。政財界だろうと研究業界だろうとそこは変わらないわ」
ふふん、とまた胸を張って誇らしげに七色が言う。
まだIS学園に滞在する事を許した日本政府の思惑、ひいては七色との契約内容は定かではないが、少なくとも七色がこちらでやる事の一つは判明した。それだけメカトロコースへの熱意は本物だったらしい。
「……まぁ、それくらいでないと研究者として大成しないわな……」
しかも俺の一つ上。それで途轍もない才能を見せ付け、能力を活かしたのだから、その熱意は尋常ではない。《クラウド・ブレイン》の研究の為に邁進していた頃を思い出す。
「あ、それとあたし、和人君と同じ部屋で寝泊まりするからね」
――すぐ後に聞いた話だが。
拘置所にはそれぞれキーロックを外側から掛けられ、出入りには鍵を持っている権限者が鍵を開ける必要があるが、七色は《メカトロニクスコース》や俺の勉強を教えるつもりで居たので、いちいちそんな手間を取っていては面倒だから、同室を希望。
そして何があったのか、菊岡を含んでいるだろう上層部はそれを通してしまった。
おそらく勉強でハンデを負っている俺のサポートに最適という理由だろう。同時に、俺がIS学園に入ると決まった時、各国から向けられるだろうハニートラップを事前に防ぐために敢えて同室者を作ったという狙いもある筈だ。
無論そこに俺の意思は無い。聞くつもりもなかったのか、敢えて聞かなかったのかは不明だが、反対されては面倒と後者の対応を取ったのだと思われる。
どうやら私生活面でも滅多な事で気を抜けなくなったらしい。
俺の知らない新たな爆弾を放り込まれ、俺は再び胡乱な眼で天を仰ぎ見た。
憂鬱な気分の俺を嘲笑うかのように、
・枳殻七色
和人絶対手に入れる(迫真)ガール
暴走してても愛を囁くくらいぞっこん。和人の同室者。IS原作初期の箒枠。ただし家事能力は皆無()
倫理的に同室はアウトな気もするが、そこはそれ、政府の利害一致になって話が通った。
和人と二人きりの環境になれて内心ウキウキが止まらない。
そこはかとなく原作鈴みに溢れている気がしなくもない。
・桐ヶ谷和人
”天才”と何かと縁深い少年。
実はIS、SAO双方の天才枠にほぼ全員会っているくらい交友関係が広い(束、茅場、凛子、比嘉、須郷、七色、PoH)
前話の”別世界線和人の追体験”で精神ズタボロだが、地味に七色のテンションでメンタルが上向きに。
やっぱ人間、時には何も考えずに過ごすのがいいんやなって(しみじみ)
和人は色々考え過ぎです()
七色の人を振り回すテンションは、今の和人にとってはある意味救いなのかもしれない。つまりフラグですねわかります。