インフィニット・オンライン ~孤高の剣士~   作:黒ヶ谷・ユーリ・メリディエス

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 どうも、おはこんばんにちは、黒ヶ谷・ユーリ・メリディエスです。

 気分が乗っているとやはり調子が違います、どうにかスイッチを切り替える方法は無いものか……他に小説を書いている方々はどうやっているか知りたい今日この頃です。

 さて、今話は意味深なサブタイトルです、キリトについてのお話です。気付いている方が居たかは分かりませんが……所々で使い分けていた理由が明かされます。

 まぁ、よくある設定ですがね。

 視点は前半キリト、後半ユウキです。更にユウキ視点では半分シリアス、半分は……うん、読めば分かります。また、原作では名前だけだったキャラが出ます。

 ではどうぞ。




第二十八章 ~忌み名と二つ名~

 

 

 ユイ姉の手を引いて部屋を出た俺は、まずギンを始めとした教会に住んでいる同年代の者達に回復を祝われた。何でも俺は、レインに背負われたまま教会へ運ばれ、そのまま昨日の夕方からずっと眠り続けていたらしい。単純計算で十二時間以上も眠っている事になるので、よっぽど疲れていたのだなと思った。

 

「……リーファは?」

 

 それから教会の広間を見たのだが、リーファやレイン、サーシャ、フィリアの顔が見えなかったので、まず最も身近な存在であるリー姉について居場所をギンに問い掛けた。すると彼は、教会の一角にある部屋の扉を指し示した。

 

「リーファさんなら、あっちの部屋でサーシャ先生達と一緒にお客さんと話をしてるぜ」

「客?」

「軍の人だよ、女の人が一人」

 

 昨日の事もあり、一人とは言え《アインクラッド解放軍》のメンバーが来ていると知り、俺は少しだけ眉根を寄せた。

 しかし用件については何となく予想が付いた。恐らくだが、昨日俺が遭遇した《アインクラッド解放軍》所属プレイヤー達の《徴税部隊》の件だろう、それが抗議だか謝罪だかは分からないけれど。

 そう予想し、ギンに礼を言ってから俺は話し込んでいるという部屋にノックをしてからユイ姉と共に入った。

 

「キリト、もう動いて大丈夫なの?!」

「一晩寝たから」

「え、えぇ……? 凄い回復力だね、キリト君……」

 

 入ってすぐ、椅子に座って話していた面々の中でリー姉が一番に気付き、声を掛けて来た。それに寝たからと返せば、何故だかレインに驚きとも呆れとも付かない言葉を返される。

 部屋の中には予想出来ていたリー姉、レイン、フィリア、サーシャ、軍服を着た女性プレイヤーの他、シノンとストレア、ナンが居た。ナンはHPを除けば俺と同値のステータスを誇るので、万が一を考えて情報収集をするシノンのボディーガードとして付けていた。シリカからすれば、長時間且つ階層を跨ぐほど長距離離れるなんて普通出来ない筈らしいが、出来てしまっているのだから仕方が無い。

 

「何か引っ掛かる言い方だな……それより、そっちの《アインクラッド解放軍》の人は?」

 

 少し納得がいかない思いはあったものの、スルーして俺は質問した。

 そのプレイヤーは後ろ腰まで届くほどの長い髪を綺麗な銀色に染めている人で、女性用の《アインクラッド解放軍》の服を纏った長身の人物だった。左腰には何回か巻いて束にして帯から下げている鞭があり、珍しい武器をメインにしているのだと分かった。存在は知っていたが、《鞭》スキルは俺が習得していないスキルなので未知数である。

 その女性が俺を見て、眉根を寄せた。

 

「えっと……リーファ殿がキリトと言っていたという事は、つまりこの子が、あの有名な【黒の剣士】……?」

「……まぁ、そうだけど」

「つまり昨日《徴税部隊》を倒したのは、あなたがした訳ですか」

「そうだけど……もしかして、それで文句を言いに?」

「いや、とんでもない、むしろよくやってくれたと言いたいくらいで」

「……?」

 

 《徴税部隊》に関する事で来たのだとは思っていた、しかし俺に対してよくやってくれたと、そんな事を言って来るとは思いも寄らず、俺は首を傾げてそう言ってきた女性プレイヤーを見上げてしまった。

 その女性は《ユリエール》と言い、何でも《アインクラッド解放軍》のサブリーダー《シンカー》の付き人のような立場の人物らしい。

 ちなみに、《アインクラッド解放軍》はリーダーとサブリーダーとで役割が分割されているギルドだ。ディアベルは最前線攻略実働部隊、対するシンカーは集まった情報を纏めて情報誌として掲載したりする情報部隊のリーダーなのである、《アインクラッド解放軍》は曲がりなりにも攻略ギルドだしディアベル自身が攻略隊を率いていた事もあって彼がギルドリーダーとなっている。

 そしてそれぞれの部隊にリーダーが居るなら、当然ながらサブリーダーもいる。実働部隊のサブリーダーはキバオウであり、情報部隊のサブリーダーはこのユリエールという訳だ。

 閑話休題。

 そのユリエールの立場について知った俺は、次にどうしてここにいるのかという質問を投げ掛けた。それは予想通り、昨日の《徴税部隊》に関する事での謝罪……そして、一つの要請だった、それも俺個人に対して。

 

「無礼を承知でお願いしたい……どうか、シンカーを助けて欲しいのです……」

 

 それは、とあるダンジョンの最奥で身動きが取れないシンカーの救出依頼だった。

 事の発端はキバオウにあるらしい。約二週間ほど前から活動が始まった《徴税部隊》による《始まりの街》に滞在する者達への恐喝。そして数日前、第七十四層へ無断で自身が擁する精鋭部隊を派遣し、リーダーのコーバッツが死亡した事案。それが問題で第一層の本拠地で謹慎処分となっているにも関わらず俺を殺そうと出ている始末。

 目に余る事から、シンカーはキバオウと一対一で話し合い、自粛してもらおうと考えたらしい。すると会談場所はダンジョンの最奥、そこに武器も転移結晶なども持たないで、互いに身一つで話し合おうと返事が来たらしい。

 普通ならそんな危険な事をしないのだが、シンカーは人が好過ぎる性格で、それを真に受けて本当に身一つで乗り込んだという。何でも移動は回廊結晶で済ませたらしいから本当に最奥に身一つで行けてしまい……しかしキバオウはそのまま他の階層で活動している事から騙された事が発覚。そのダンジョンからシンカーを助け出そうと計画していたらしい。

 しかしシンカーを助け出そうにも、《アインクラッド解放軍》のメンバーは誰が味方で誰がキバオウ側か分からず、今の所信頼出来るのはディアベルのみ。しかしそのディアベルも今は攻略と最前線で起こった事件――恐らく《圏内事件》――で忙しいので手が離せない。そもそもダンジョン内部のモンスターは第六十層後半の強さで、彼と一緒に行っても帰りが辛いのは明白。

 それで悩んでいた所、頭を悩ませる問題の一つであった《徴税部隊》を叩きのめした者がいる、それは【黒の剣士】だというのを聞きつけて、此処に来たのだと言う。

 

「シンカーの反応は最奥から動いていないのですが……何時《黒鉄宮》の碑に横線が引かれるかと思うと、気が気でなくて……そこであなたの話を聞いて、協力をお願いしたいと思い、ここに……」

「……なるほどね」

 

 《アインクラッド解放軍》は第二十五層で多大な被害を被って以降、最前線のボス攻略に出る人員が減少する傾向にあったものの、第一層から攻略隊リーダーを務めていたディアベルの人徳とリーダーシップもあってか皆無になる事は一度も無かった。それでも《アインクラッド解放軍》の影響力が弱まった事は否めず、それで取り締まられていた犯罪者プレイヤー達が活気付いた事もある。

 それを戒める意味も込めて、俺はかつてオレンジプレイヤー狩りをしていた訳であるが……その際に情報を回してくれたのはアルゴだけでは無かった、治安維持の方面にも力を入れていた《アインクラッド解放軍》の情報部隊、すなわちシンカーからも情報提供があった。彼が協力してくれなければオレンジを抑える事は難しかっただろう。

 まぁ、そのシンカーと関わったのも、ディアベルが話を通してくれたからなのだけど……

 

「……シンカーは《アインクラッド解放軍》の、ひいては《アインクラッド》の要の一人だから喪うのは避けたいな……」

「……あの、そのシンカーさんは攻略メンバーでは無いんでしょう? 要っていうのはどういう事……?」

「……ああ、シノンは知らない……と言うか、多分多くの人は知らないと思うけど……」

 

 シノンやリー姉のように最近になってSAOにログインした者だけでなく、恐らく殆どのプレイヤーが知らない事だろうが、シンカーを喪う事はすなわち情報の回りが悪くなる事を意味している。

 攻略情報に関しては俺を始め、多くの攻略組がアルゴに提供するので惜しみなく出回る。しかしそれは攻略組が最も利用するものの、逆に言えば攻略組で無い者達にとっては無縁の代物と言っていい。中層以下で活動するプレイヤー達にとってすれば、最前線の状況をある程度把握出来るのなら、あとはリアルの新聞のように日々の移ろいや日銭の稼ぎ方、どんな事件があったかなどの暇を潰せる情報の方が有用なのである。

 勿論中層以下で活動している者達にとっても、過去の攻略情報、すなわちその階層の迷宮区やフィールドの情報などに関してはお世話になるだろう。しかしそれ以外では俺達はあまり情報を集めていないので、手探りで危険な面もある。

 そこで登場するのが《アインクラッド解放軍》という訳だ。

 

「《アインクラッド解放軍》はオレンジプレイヤーやギルド、レッドプレイヤー達を取り締まる治安維持活動にも力を入れているんだ。つまりそれは、地形についても熟知していなければならない。俺が最前線の情報を集める傍らで、ディアベルはその周辺や近くのダンジョンの情報を集め、それをシンカーに伝え、シンカーは情報誌としてそれを報道して注意を喚起する……というサイクルが裏で出来てたんだよ。アルゴも関わってるけど」

「そ、そうだったのですか?! 一体どこから集めて来るかと思えば、そういう事だったのですか……」

「第二十五層から《アインクラッド解放軍》は最前線に送る数を減らしてたけど、その分を治安維持、そして各階層の情報収集に回してたから集まってたんだよ。人数が減っても表立って批判されなかったのは、ディアベルの人徳もあるだろうけど」

 

 そもそも第二十五層の被害の遠因はキバオウの突貫にあったからでもあるだろう。

 第二十五層のボスは全長五メートル強の石製ゴーレムだった。矢鱈と固く、俺の愛剣もボロボロになったため途中で武器を片手棍に変えたくらいで、ヒースクリフやアスナ、ユウキといった実力のある強豪プレイヤー達も揃って攻め切れない状況にあった。それまでのボス攻略は平均しておよそ二、三時間で終わっていたが、そんな状況にあったから半日掛けても四本あったHPゲージの二本目に割り込むので精一杯だった。

 それに業を煮やしたのか、キバオウは打撃武器持ちのプレイヤーを集め、一気に突貫させたのである。キバオウも自ら長棍を持って、その一団の中に入っていた。

 その考え自体は良かったのだが、タイミングが良くなかった、丁度ボスが広範囲に衝撃波を発生させる大振りの構えを取ったところだったのである。気付いた時にはもう遅く、俺やヒースクリフの制止を聞かないで突貫した一団は全員がスタン。追撃で叩き潰しを受けたおよそ十名の――その多くが《アインクラッド解放軍》所属だった――プレイヤー達が死亡した。追撃の威力は知られていなかったので、それで恐慌を来し、一部の攻略組は勝手に戦線から離れて一度崩壊し掛かった。

 そのリカバリーには、当時から硬いタンクとして有名だったヒースクリフと、ダメージディーラーにも関わらずパリィと身のこなしの回避だけで何とか切り抜いていた俺――この時はまだ片手剣を使っていた――の二人があたり、部隊の立て直しをディアベルと《血盟騎士団》副団長としての才覚を発揮していたアスナが全力で行い、ギリギリで全滅を阻止出来た。

 人数が半分以下になったレイドメンバーでギリギリ体勢を立て直した後、ヒースクリフやエギルといったタンク勢で攻撃を引き付け、攻撃後の硬直を狙って片手棍に持ち替えていた俺や打撃武器を持っていたメンバーで関節を攻め、ダウンした所でアスナのような刺突系武器持ちのプレイヤーを含めた総攻撃を行って、丸一日を掛けてどうにか初のクォーターボスを倒した。

 その際の戦死者は途中の突貫も含めて十四名、逃亡者十五名、残留者は二十名と散々だった。LAは俺だったものの、この時ばかりは今まではあった小さな喜びすらも無かった。

 

「ああ、その話って割かし有名だよね。ボス攻略史上で最大数の戦死者と逃亡者が出たって……」

「《ビーター》に【黒の剣士】って二つ名が付けられた戦いだからねぇ」

「……そうなのか?」

「付けられた本人が知らないって、それどうなのよ?」

「そんな事を言われても……」

 

 フィリアとレインは知っている様だったが、第二十五層の戦いを契機に二つ名が付けられたのは初めて知った。気付けばそう呼ばれていたというだけだったのだ、シノンから呆れの視線を向けられるも俺は悪くないと声を大にして言いたい。

 

「とにかく、第二十五層のボス攻略戦以降の《アインクラッド解放軍》は表立っては治安維持、裏では各階層の情報収集を行ってた、それを率先していたのがディアベルだ……ボス攻略にもキッチリ出てる辺り、よく兼任出来ていると思うよ」

 

 ディアベルが最前線の迷宮区攻略には必要最低限でしか出ていないのは周知の事実である、何せ《アインクラッド解放軍》の活動そのものが中層以下に絞られているからだ。それでもディアベルやキバオウなどが出ているのは、第一層ボス攻略の時からの古参組という意地があるからだろう。キバオウの場合は俺関連もありそうだが。

 俺は数多くの事に裏で関わっているものの、各階層の攻略から外れたダンジョンの情報や主街区の情報などを集めるといった事には、今までと違ってほぼ一切関与していない。その分を攻略情報の収集に充てているからでもあるし、その余裕が無いからでもある。迷宮区のデータを完成させるのは一人だと相当な重労働なのだ、何せ出会う敵の全てと戦わなければならないのだから。

 俺が集めている迷宮区のデータは、何もマッピングデータだけでは無い。出会ったモンスターの名前とレベルの下限から上限の振れ幅を始め、敵のステータスの概算値、ソードスキルの使用の有無、攻撃パターン、特徴的な行動アルゴリズム、HPがどれくらい減るとパターンが変わるかなど、他にも数多くの情報を集めているのだ。それをおよそ三日以内に全て完成させるというのは中々骨なのである。モンスターの姿はエギルやアルゴから買い取っている記録結晶でスケッチを免れている。

 それだけの事をしていたから、ディアベルの方から協力は断られた。それではディアベルの仕事量が最前線と中層以下で半端では無いだろうと思ったのだが、そこを補うのがシンカーだったのだ。

 

「シンカーはリアルでは《MMOトゥデイ》っていう情報サイトの管理人だったらしいから、情報の扱いには長けていた。俺も目に留まったら新聞を読んでるけど、書き方がやっぱり上手いよ、あの人は…………で、話を戻すと、そのシンカーがダンジョンの最奥に居るから助けるのに協力して欲しい、と」

「はい……」

 

 表情を張り詰めさせ、俺を見て来るユリエールの顔に嘘は見られない……見られない、が……

 

「……知ってるだろうけど、俺は《織斑一夏》だとか《ビーター》だとかで、多くのプレイヤーから憎まれ、疎まれ、命を狙われている身だ。そう易々と人を信じる訳にも、ましてやダンジョンの奥地に行く訳にもいかない。裏が取れていない現状なら尚更だ」

「そんな……」

 

 心情的には助けたいとも思う、シンカーとは知らない仲では無いのだから見ず知らずの他人に較べればその気持ちは確かに強い。ユリエールの表情からもシンカーの事を心の底から心配していると分かる……けれど、安易に動くと俺は自分の首を絞め、最悪死ぬ末路に辿り着いてしまう。それがキバオウや《アインクラッド解放軍》に関係している事なら尚更だ。ただでさえ第一層に居る事も実は結構危ない綱渡りをしているというのに、そんな派手に動いてしまっては面倒な事にしかならない。

 まぁ、昨日《徴税部隊》を伸してしまった時点で、そんな事を言っても遅いのだろうけど……暫く各階層をランダムで行き来していれば、ここがロックオンされる事も無いだろうと考えていた。

 戦う理由を喪い、見つけなければならない段階である俺に、誰かを護る事も助ける事も、恐らく出来ない。そう思っていたから、一人で過ごそうと考えていたのだ。

 そこに来てこれである。正直、ユウキ達に頼んだ方が確実ではないかと思うし、ヒースクリフに連絡すれば人命優先という事で動いてくれるだろう、その間に余った人員で《圏内事件》の事を追えばいいのだ。まだ犯人は見つかっていないだろうから、それくらいする余裕はある筈である、代理でアスナを立てればいいのだし。

 

「きー」

「……ユイ姉?」

 

 だから、悪いが帰ってくれ。そう言おうとした矢先、俺はユイ姉に繋いでいる手を引かれて意識がそちらに向いた。何だと思って顔を向ければ、ユイ姉は真剣な表情で、俺を見て来ていた。

 

「その人……たぶん、うそ、ついてないよ」

 

 そして、そんな事をいきなり言われて、思考が止まった。

 

「……何で、そう思ったんだ?」

「んー……」

 

 どうしてそんな事を言えるのか、それについて激しく問い質したい欲求に駆られながらもどうにか短くそれだけ質問した。ユイ姉はそれを受け、軽く眉根を寄せて考え込むも、すぐに分かんないと言ってきた。

 

「分からないって……」

「でも、わかるの。その人、すごく苦しんでて、哀しんでるって……」

「ユイ姉……」

「きー、その人のおねがい、きいてあげよう?」

「ッ……」

 

 簡単に言ってくれる。ユイ姉に頼みを受けるよう言われた俺は、胸中でそう毒づいた。

 アルゴやシンカーから情報を貰ってオレンジ狩りを行っていた俺は、シリカのピナ蘇生に協力した辺りでそれを精力的に行っていた訳だが、そんな俺を殺そうと企んだ物達に嵌められた時もある。

 アルゴはあの時、《タイタンズハント》を監獄送りにしてくれという依頼を受けていた。その途中でシリカと会い、紆余曲折を経て依頼を達成した。俺もまた同じように依頼を受けた事はあるが、その内の何度かは偽の情報……つまり出没地域に行くとオレンジギルドのレイドが待ち構えていた事などもあった。そういった時は監獄送りにする余裕も無くて、斬り殺す事すら厭わなかった。

 あの時に向けられた殺意、善意を悪意や殺意で返された時の無力感、そして人を殺した時の感覚は未だに忘れられない。忘れてはならない事でもあるが。

 そんな過去があるからこそ、俺はそういった類の依頼を受けるのをアルゴ経由限定にしていた、シンカーからの情報すらもアルゴに裏を取ってもらっていたくらいである。俺だって死にたくなかったから、死なずにケイタ達の死を背負い続ける為に。

 

「きー……!」

「お願いします……ッ」

 

 だから受けるつもりなど無い……無い、のに……ユイ姉とユリエールが向けて来る顔が、俺の思考を鈍らせていく。

 

「…………あぁ……分かった、分かったよ、受ければいいんだろ……」

「ほ、本当ですか?!」

「昨日の疲労で倒れた後なんだ、本調子じゃないんだから助けられるか保証は出来ない、情報だって無いんだし」

「ああ、情報なら多少はあります。何でも基本配置のモンスターでも六十層台の強さらしいです。あと、奥の方に大きなボス級を見た、と……」

「六十層台のボスねぇ……」

 

 六十層台と言えば岩の鎧武者やアストラル系の人魂ボスを思い浮かべるが、一番苦い思い出の第六十七層の死神型ボスモンスターを思い出す。アレが出た場合、俺一人で戦うのは《個人戦》程とは言わないが相当な骨だぞ……鎌に当たったら何かしら状態異常が掛かったし、パリィしようにも相手の筋力値が半端では無かったからし辛かったし、移動速度も速かったから手古摺った記憶がある。

 今の俺は《個人戦》の報酬で手に入った装備のお蔭でステータスが増大しているし、状態異常にも掛からないようになっているから幾らかマシだろうが、それでもボスのステータス補正というものは侮れない。どこのダンジョンだか知らないが、一応ボス攻略メンバーに名を連ねるレベルを有するディアベルでも危ういとなれば、それなりの高難易度ダンジョンである事だから、油断は出来ない。

 

「六十七層の死神型ボスじゃない事を祈るか……昨日までならともかく、今の俺だとアレを相手にするのはキツイ」

「え、キリトでもキッツイやつだったの、その六十七層のボスって?」

「ストレアちゃん知らないの?! 攻略組が潰走し掛かったから第二十五層の悪夢再来だとかで有名なんだけど?!」

「あ、あははー、アタシって新聞読まないし、多分その間ってダンジョンに籠ってたんだよねー」

 

 割と有名な話なのだけど、それを知らないというのは俺以上に新聞を読まないのだなと思った、レベルは相当高かったし恐らく定期的にどこかのダンジョンや狩場に籠っていたのだろう。ただレベルを上げる事に執念を燃やしていれば他の事を気にしなくなるから、そう考えれば知らなかったことにも一応の説明が付く。

 ストレアについてそう考えて納得していると、ユリエールがもの言いたげな表情で見て来ていたので、そちらに視線を向ける。

 

「あの、出来れば今すぐにでも行きたいのですが……」

「ああ……俺は構わないけど」

「ゆいも行く!」

「「「「「……え」」」」」

 

 ユリエールがすぐに行きたいというのは心情からも分かる話だったし、俺としてもシンカーの安否や《圏内事件》の調査の進捗が気になっていたから早く助けに行こうと思っていたから不都合は無かった。早速行こうと思っていた……のに、その矢先でユイ姉が自分も行くと言い始めたので、空気が固まった。

 

「あの……ユイ姉、これから行くところはダンジョンなんだけど。街中ならともかく、流石に危険なダンジョンには……」

「でも……!」

「でもも何も無い。今回ばかりはダメだ、リーファ達と一緒にここで待っててくれ」

「うー……うー!」

「唸ってもダメなものはダメだ。俺も本調子じゃないし、これから行くところは危険だから護り切れずにユイ姉が死ぬ可能性もあるんだ、そんな場所に連れて行ける筈が無いだろ」

 

 向けられる抗議の視線を無視するのは心情的に辛いものがあるものの、これもユイ姉を思っての事だからと自分に言い聞かせる。実際、どこのダンジョンかは知らないが、六十層レベルのモンスターが基本配置されているのなら、それは最前線とあまり変わらない危険度を有する事になる、トラップに関しては一切分からないのだから高めに見ておいた方が良い。そんな場所に戦えもしないユイ姉を連れて行くなど狂気の沙汰なのだ。

 まだ家族になって一日しか経っていないし、そこまでコミュニケーションを図った訳でも無いものの、ユイ姉は確かに俺のもう一人の新たな義姉なのだ。家族を危険に晒したいなどとは決して俺は思わない。

 

「ねー、連れて行ってあげたら?」

「……は?」

 

 そう思っていたのに、ストレアはあっけらかんとした声音でそれと正反対の提案をして来た。一瞬何を言われたか分からず、ワンテンポ遅れて意味を理解した所で、俺は横目で睨みながらストレアに視線を向けた。何故そんな事を言いだしたのか、それを聞く為にだった。

 ストレアは俺が向けた視線の意味するところを理解したのか、それとも最初から話すつもりだったのか、すぐに口を開いた。

 

「あのね、多分だけどこのまま置いて行ってもさ、すぐに後を追い掛けると思うよ? 下手にうろつかれるよりはすぐ近くに居てもらった方が安心じゃない?」

「……その理屈は分からないでもないけど、戦力が足りない、ただでさえ俺は昨日の疲労を引き摺ってるんだぞ。しかもエリュシデータとダークリパルサーは手元にないし、新たな武器も完全には慣れていないんだ。ユイ姉自身にも戦闘能力が無い以上、不安要素が多すぎる中で連れて行くのは承服出来ない」

 

 そう、俺の相棒であるエリュシデータとリズが俺の為に鍛えてくれたダークリパルサー、あの二刀は現在《個人戦》での激闘の影響もあって罅が入る程の損耗を受けた為にリズに預けたままにしているのだ。手元に無いのである。

 《二刀流》そのものは《ⅩⅢ》でも可能ではあるが、俺の心情としては《黒鉄》と《白金》の二刀をこの世界で使いたいとはあまり思っていない。必要に迫られればなりふり構わず使うが……元が元なだけに、如何せん使い辛い。片刃なのも微妙にソードスキルに合ってないし。

 二刀の訓練はあの片刃の剣で受けたものの、今となってはSAOで得たあの二刀でこそ本領発揮出来るようになっている……これもまた矛盾の一つだろうかと、何とはなしに考えてしまった。《織斑千冬》を目指していたなら、むしろ《零落白夜》の力を有し使える《ⅩⅢ》の二刀の方が適しているだろうに。

 

「だったらアタシも行くよ。レベルは90の大台だし、アスナにも実力は認められたからさ、戦力としては十分数えられるでしょ? アタシが見てたら、キリトも戦闘に集中出来るんじゃない?」

「あ、だったらわたしも行こうか? これでもソロでトレジャーハントしてきたんだから、トラップ系の発見や解除はお手の物だし、レベルも80後半だから戦闘の手伝いも出来ると思う」

「きー……」

「……それでも、ダメだ」

 

 ストレアとフィリアの二人のレベルは、攻略組の中でもトップランクに位置すると言っても過言では無い値だ。ストレアに関しては話を聞いた事が無いので未知数だが、アスナには認められたと言うから必要最低限度の実力はあるのだろう、使用武器は両手剣と聞いた覚えがあるから《片手剣》を鍛えに鍛えた末の発現だろうし心得はある筈だ。フィリアの場合はトレジャーハンティングを一人で行っていたという実績からある程度は信用出来ると言っていい、罠が掛かっている宝箱も少なくないから発見はともかく解除は任せても良いだろう。

 しかし、だからと言ってユイ姉を連れて行っても良いという理由にはならない。万が一があるし、ユリエールの口ぶりから察するにシンカーが居るのは恐らくボス級モンスターがうろついている奥地なのだ。ダンジョンの奥まった場所に行くにつれて敵は強くなっていくし、ボス級モンスターがいる可能性も高くなるので、連れて行くのはやはり賛同出来ない。

 

「ストレアとフィリアの申し出そのものはありがたい。でも、それでユイ姉を連れて行こうとは思わない。危険なダンジョンに戦えないプレイヤーを連れて行って何になるんだ、ただ無暗に危険に晒すだけ、最悪死なせてしまう……絶対守り切れるという保証は無いし、死んだらそれまでのこの世界で、俺はそんな無謀に出ようとは思えない」

 

 

 

『うわあああああああッ?!』

 

 

 

『そんな、ダッカー……うぎゃ……?!』

 

 

 

『ササマル! くそ……ッ!』

 

 

 

『待てテツオ! 突っ込んでも意味は……!』

 

 

 

『ぐあ、ぁ……!』

 

 

 

『そ……そん、な……皆……?!』

 

 

 

 脳裏に蘇る、かつて俺が力添えしていた人達の断末魔。《月夜の黒猫団》壊滅を止められなかったのは、攻略組であり《ビーター》と明かしていた俺が、強く言わなかったからでもある。勿論制止をまともに聞かないで宝箱を不用心に開けたダッカーや同調していたササマルとテツオにも責任はあるだろうけれど、関係が壊れる事も厭わず力尽くで止めていればまだ良かったのだ。

 俺は恐れている。ああ、認めよう、俺は目の前で誰かが死ぬ事を恐怖し続けているのだ、あの日あの時からずっと。たとえサチに赦されたとしても、俺自身がずっと赦せていない、もう二度とあの惨劇を繰り返してなるかと一瞬たりとも忘れた事は無い。俺が関わった事で死の危険に見舞われた者、孤独になった者はまだ少ないが、それでも確実にいるのだから。

 だからこそ、俺はユイ姉を連れて行くという話で首を縦に振る事は出来ない。連れて行かなければ死の危険性、護れないという可能性は現れない。けれど連れて行けばその可能性が出てしまう。今まで俺の強さの根幹となっていた戦う理由を喪い、それを探さなければならない今、誰かを護る事が出来るとは思えない以上は連れて行く訳にもいかない。昨日までの俺も、同じ決断を下しただろうが。

 

「えー? アタシとフィリアが協力して、攻略組最強のキリトが加わったら一人くらいは守れると思うけどなー」

 

 最強……本当の意味では、俺は強くないともう一人の自分に思い知らされた今、その異名はただ重荷でしか無い。そしてストレアの楽天的としか言えない、この世界のプレイヤーにはあるまじき楽観的な思考が、余計に皆の断末魔を想起させ、苛立たせてきた。

 

「…………俺は散々忠告したからな……それでも来るなら、後はもう自己責任だ。勝手にしろ」

 

 そう言い捨てて、俺は皆が居る部屋から足早に退出した。部屋の外に集まっていたギン達は、最初は俺に声を掛けようとしたものの、恐らく俺が不機嫌である事が表情から見て取れたのか誰一人も話し掛けて来る事は無かった。それを良い事に、俺は教会の門扉を開き、公共施設からも出る。

 依頼をして来た時点でユリエールの実力は恐らく攻略組より劣り、救出の案内を申し出たのだから恐らくレベルは60台前後なのだろう。そしてシンカーも同程度であると記憶しているので、行きはユイ姉を含めれば二人、帰りはシンカーを含めて三人を、俺、ストレア、フィリアの三人で護衛しなければならない。一人につき一人付くのは妥当かと思われるかも知れないが、ボス級モンスターが居るという情報がある時点で、そもそも守らなければならない人員が居るだけで既に不利だ。

 まぁ、シンカーとユリエールはまだレベルが該当レベルの値にあるから、マージンが取れていないだけで頑張れば戦えるだろう。最悪俺が囮になれば逃亡は可能かも知れない。

 しかし問題なのは、第七十四層ボスのように転移が可能なボスの場合だ。もしも転移可能だとすれば、撤退すらも困難になる、最悪アルゴリズムで出入り口に近いプレイヤーから狙うように設定されていればそれで詰むのだから。幾ら俺の移動速度が敏捷に多く振っているアスナ以上だとしても、流石に数十メートルの距離を一瞬で詰める事は出来ないので、転移可能なボスだとすれば打つ手が無くなる。

 勿論転移が出来ないボスであればやりようはある。しかし人が想像する物事は全て現実になり得るのだから、最悪を想定して動かなければ取り返しがつかない事態になる可能性もある。

 それこそ、かつての《月夜の黒猫団》壊滅の時の様に……

 

「……もう二度と、あんなのはごめんなんだぞ、俺は……」

 

 この依頼で、シンカーを助け出してもユリエールが死亡すれば、あるいはシンカーを助け出せずにユリエールが生き残れば、俺は生き残った方から恨まれる可能性が高い。特にユリエールが俺に対してどのような感情を持っているか分からないし、シンカーの事を大切に想っている事からも、恨まれる可能性は前者の場合よりも遥かに高いと言えるだろう。

 《ビーター》として疎まれる、それは覚悟の上でした事だ、まさか本当に生還出来るとは思っていなかったから弊害を予期して不安を覚えているがそれはまだ自業自得だから良い。

 けれど個人的に誰かから恨まれるというのは、もう嫌なのである、それも人の死が関わっている事で恨まれるのは。そんなのは、ケイタの憎悪だけで十分だ。ケイタが最期に向けて来たあの呪詛だけで、俺は壊れかけたのだから……強さの根幹と支えを喪った今の俺がまた呪詛を向けられれば、もうかつてのように立ち直れる気はしない。

 

「来てくれるなよ……」

 

 もしも来たとすれば、勝手にしろという言葉に反するようだが命に代えてでも護り抜こうと俺は考えていた。目の前で仲間が、大切な人が死ぬくらいならば……俺が死んででも護った方が、幾らかマシだ、とも。

 それでも俺だって自ら死にに行こうとは思わない。そして家族に命を危険に晒して欲しくは無い故に、切に、心から俺は、ユイ姉が来ない事を願ったのだった。

 

 ***

 

 《アインクラッド》第五十七層主街区《マーテン》は、第五十層以上の階層の中でも恐らく最も《始まりの街》に通ずる雰囲気を持っており、メインストリートを始め武具屋やNPCレストランなど、多くの施設を有する街の一つとして数えられる。最前線は第七十五層へ移っているので、ここで売られている武具は既に自分が使うには役不足な部分もあるが、アクセサリーや食べ物といった戦闘にあまり関わらない面ではそこそこイケる街として、女子の間ではそこそこ有名になっている。まぁ、流石に《フラワーガーデン》の異名を持つ第四十七層主街区《フローリア》の人気には劣るが。

 そしてこの街は、《アインクラッド》で最も速く《裁縫》スキルを完全習得したプレイヤー《アシュレイ》が店舗を構えている唯一の街としても有名だ。まぁ、アシュレイさんが売っている服はそこそこ値が張り、更にはピンからキリまでより取り見取りなので財布に余裕が無ければちょっと買い物し辛くはあるのだが、デザインのセンスはピカイチなので選んで外れはほぼ無いと言える。また高級素材に限り、持ち込みでオーダーメイドを頼めるのも魅力的だ、デザインもその時点でラフ画を持ち込めばそれに合わせてしてくれる。

 何故そんな詳しい事まで知っているかと言えば、何を隠そう、何とボクのバンダナはアシュレイさんがまだ《裁縫》スキルを取ったばかりの駆け出しで露店で売り出した頃に、通りがかって良いなと思って購入した代物だからである。しかもお客様第一号だったらしく、その縁もあって今も懇意にしている。実はアスナや姉ちゃんにすら秘密の茶飲み友達だ。

 

「ふぅん……じゃあその【黒の剣士】クンは暫く前線から下がるのね? 何か前にも似たような事を聞いた気がするけど」

「そもそも七十五層の闘技場が異常だったんだよ、まさか休暇に入ってすぐに召喚するとか誰も予想出来なかったし、あんな出鱈目なボスが出るとは思わなかったしさ」

「【絶剣】……女性最強の剣士とまで謳われてるユウキちゃんが言うなら、よっぽどだったのねぇ」

 

 《圏内事件》について夜遅くまで調査し、ギルドホームに帰らず層の宿屋で夜を明かしたボクは、その足でアシュレイさんの店に赴いて話をしていた。内容は昨日一日の出来事である。《圏内事件》の事については、割と世俗から隔絶した感のあるアシュレイさんの事だから知らないかもと思っていたのだがやはり知らなかったので、圏内でも気を抜かないよう特に注意を喚起しておいた。ついでに知恵を借りようと思ってでもあるが、進展はやはり無かった。

 ちなみにだが、アシュレイさんは男性である。ちょっと奇抜なスタイルだし、所々でしなを作っている上に女性っぽい口調で線も細いから勘違いしやすいのだが……前開きのシャツからはそこそこ硬そうな胸筋が見えている事からも男性と分かる。初めて会話した時のカルチャーショックはちょっと忘れられない思い出の一つだ。

 まぁ、そのショックよりも、キリトほどの幼い子供が戦ってる事の方がよっぽど衝撃的だったけど。

 

「女性最強、か……正直、アスナや姉ちゃんの刺突は見切れない時があるからなぁ、堂々とそれを名乗る事は出来ないよ」

 

 それに、名乗るならSAO最強が良いと言えば、紅茶が淹れられたティーカップを優雅に傾けていたアシュレイさんが、苦笑を浮かべた。

 

「なら【紅の騎士】様と【黒の剣士】クンを倒さないといけないわね? 鉄壁を誇る《神聖剣》、そして間断無い連撃を誇る《二刀流》を前に、ユウキちゃんはどうやって戦うの?」

「一点突破! ……と、言いたいんだけどねぇ……」

「それが出来たら苦労しないでしょ。あの二人の強さはユウキちゃんの方が知ってるでしょうに」

 

 そう、そうなのだ、ヒースクリフさんの防御は的確な上に堅牢で破れないし、キリトは時折ボクを圧倒する反応速度で敵の攻撃を躱して反撃を叩き込んでいるから、仮にデュエルで対峙したとしても勝てるビジョンが浮かばないのである。特に昨日の激闘振りを見てからはキリトに勝てる気がしなくなった、あんなのボクじゃ絶対勝てないし。

 純粋な片手剣での勝負ならまだ一縷の望みはある、少なくともヒースクリフさん以上だとは自負している……が、キリトにはやはり劣るとしか言えないだろう。彼が目指している頂きは世界最強、すなわちは元実姉ブリュンヒルデなのだから。このSAOの世界に居ない以上は決して追い付く事の無い背中を追い求めている彼に敵わないのは、むしろ必然と言えた。

 

「攻略組最強の剣と最強の盾……一部はそう揶揄しているらしいわね、揃えば無敵だとも聞いてるわよ」

 

 第二十五層と第六十七層のボス戦は悲惨なものだったが、それを立て直せたのはキリトの的確な突破力とヒースクリフさんの堅牢な防御が揃っていたからこそだ。あの二人がボスを相手に大立ち回りをしてくれたからこそ、ディアベルやアスナ達が部隊の立て直しに全力を注げたのである。

 故に攻略組は、潰走の危機に瀕した事はあれど、実際に撤退を含む敗走は一度も経験していない。そうなる前に、キリトがそうなる要因を潰し、崩れた戦況をヒースクリフさんと共に立て直すからだ。《ビーター》という事で敵を多く作ってしまっているキリトだが、本当にごく一部からはその強さを受け容れられ、希望として見られてもいる。それでも《ビーター》だから、《織斑一夏》だからと見下されている事には変わりないのだけど。

 

「【紅の騎士】様はともかく、【黒の剣士】クンは色々と問題を抱えてるし……そんな子を放っておけないユウキちゃんも大変ねぇ……」

「まぁ、ね……」

 

 放っておけない。キリト自身を見て、彼の過去を知った者達が常に持っている思いは、恐らくこの一言に集約されるだろう。

 強いが、幼い。幼いというのはあらゆる経験が未熟である事を示し、精神的にもまだ未発達な部分が多い事を表している。その状態なのに攻略組でトップに位置しているキリトは、一言で言えば異常なのだ。

 別に彼が悪い訳では無い、幼いからというのを理由に全てを他人に任せるのに較べればまだまだ健全だろう、別に人に任せても仕方ない年齢だと思うけども。

 異常だと思う理由は、彼が戦う……いや、戦おうと思える動機、謂わば戦う理由だ。最強を求めているからと言って、今の年齢から世界最強と同等以上の事をしようとするその行動理念が最早常軌を逸しているのだ。そしてその異常性に気付けない事が、彼を知らぬ間に追い詰めているという証左でもある。

 第一層ボス攻略で集まった時からずっと予感はしていた。何時の日か、彼のその異常性は何かしら明確な形を持って異常を表に曝け出すと、そしてそれが彼の限界であると。正に昨日の闘技場での戦いで、彼はその異常性を明確な形で表に出した、あの凄惨な笑みや彼らしからぬ表情と口調として。アレは恐らくキリトにとっての悲鳴なのだ、少なくともボクはそう感じている。二重人格だとか細かい事は知らないが、ホロウが白い化け物と化したアレがかつてキリトの負の感情によって引き起こされたものだと知ってからは尚更そう思うようになっている。

 それらも踏まえた上で、キリトには一人で無理をさせたくないという思いを強く、また新たにしている。流石に《個人戦》はシステム的制約でどうしようも無かったが、それ以外では助けになりたい。

 彼は人一倍責任感が強いから、自身が疎まれ恨まれているとしても確かにデスゲーム生還の希望となっている事を自覚している、故に今まで休んで来なかったし昨日も戦闘に出た。事件後も疲労を押してまで話し合いに出て……昨晩別れてから倒れたとリーファからメールが着た時は、ざぁっと血の気が引いたものである。

 

「そんなにユウキちゃんが心配するなんて、【黒の剣士】クンって、やっぱり噂ほど悪人じゃないのねぇ」

「……アシュレイさんは、キリトの事をどう思ってるの……?」

「うん? んー、そうねぇ……」

 

 アシュレイさんは商売人でもあるので、基本的に人の好悪などを言わずに中立の立場を保とうとするきらいがある、この辺はエギルさんも似たようなものだ。人をえり好みしていたら商売なんて出来ねぇ……というのは黒肌禿頭の巨漢斧戦士の言である。

 そんな商売人のポリシーに反する質問を承知の上でした訳だが、アシュレイさんはそれに嫌な顔をせず、んー、と虚空を見ながら唸っていたが……暫くして、微苦笑を浮かべた。

 

「……本当は顧客のプライバシーを漏らすなんて商売人失格なんだけど、ね」

「……え? 顧客?」

 

 顧客という言い方をするという事は……つまり、それは、キリトもまたアシュレイさんの店を利用しているという事なのだろうか?

 そんな思いを乗せて視線を向けていれば、彼は紅茶のカップを左手に持つソーサーの上に置いた。

 

「情報屋のアルゴちゃんは知っているでしょう? 彼女の紹介で、この階層が開かれる前まで構えていた第二十層の店に来たのが最初の出会いよ、その時は第二十層が最前線だったわね。初めて見た時は小さな子供だと思ったけど、自己紹介で忌み名を名乗った事で、誰かは分かった。同時に混乱もしたわよ、アルゴちゃんからは客を紹介したってあるけど、その客が正に彼女の新聞で扱き下ろされている本人だなんてって……まぁ、商売人としてはお客様には変わりないし、彼も礼儀正しかったから、交渉に問題は無かった。黒尽くめの防具を新調する為に訪れた彼の依頼に応える為に、持ち込まれた黒色の素材を使って防具を拵えたわ、黒い革のコート、指貫手袋、シャツにズボンにブーツ……真っ黒ばかりだったし刺繍も一切入れなくて良いと言われて、あんまり遣り甲斐を感じなかったわね。まぁ、それでも金属を使わないといけない部分があったから、そこの色は流石にどうしようもなかったけど……」

「……それで?」

 

 話の先が見えなくて、固唾を飲みながらアシュレイさんに先を促す。彼は頭を整理するようにカップを持ち上げ、紅茶を口に含み、飲み下した。

 

「……依頼と引き取り、私が接したのは合計で十分程度の時間でしか無い二度だけだったけれど、たった二度の会話で噂に聞く程悪辣な人間とは思えなかった。いや、むしろ哀しい眼をしていたから、逆に引き込まれそうで怖くも感じたわ」

「引き込まれそうで、怖い……」

「ええ……まぁ、狂気だとか、殺気だとか、そんな危ない類では無かったのが救いかしらね……第二十五層ボス戦後に【黒の剣士】の異名を得たプレイヤーが《ビーター》だと知って、私はこう思った。『もしかして、忌み名と異名を分ける為にしたんじゃないか』ってね」

「分ける……?」

「《ビーター》は忌み名、つまり疎まれ憎まれの対象としての二つ名……けれど【黒の剣士】は、第二十五層ボス戦での戦歴から付けられた、謂わば希望の証とも取れる。そう考えると、同一人物に相反する異名が存在する事そのものが異質……だからこそ私は、もしかしてと思ったのよ。あの黒尽くめの装備は、ひょっとするとそこまで計算された上で選ばれたんじゃないか、とね。希望という正の感情と憎悪という負の感情の両方を背負う為に、呼ばれ方を二通りに分けようとしたんじゃないか、と」

「……」

 

 あり得ない話では無かった。あの《ビーター》宣言ですら、キリトは全てを覚悟した上……つまりその可能性を考えた上での行動だったのだから。

 黒尽くめの装備というのは、謂わばキリトの代名詞ともなっている、それが第一層ボスのLAである【コート・オブ・ミッドナイト】だけで無くそれまで来ていたフーデッドローブの色も含めてだ。そしてアニールブレードの魂を継承し、リペイントしていた剣の色も黒……もしもボスのLAを必ず取るというのを、必ずボスを倒すという見方に変えたなら、それは謂わば不敗の希望という事になるのでは無いだろうか。

 考え過ぎだろうと、そう思考が過ぎりもした。しかしあのキリトの事だ、そこまで計算されていたのだとすれば……そして黒に意味を持たせていたのだとすれば、あながち的外れとも言い難い。

 事実、あの難攻不落と思えた闘技場を制覇すると考えられたキリトに掛けられた期待は、《ビーター》という『チート行為をして強くなっているプレイヤー』では無く、【黒の剣士】という『確かな戦績を持つ実力者』としてのものだったのだから。

 

「まぁ、これは私のただの勝手な推測だけど……その顔を見てると、それらしい事に心当たりはあるようね?」

「……うん」

「仮にこの推察が当たっていたとすれば、その子、本当に傑物よ……何でそんな子が見下されてきたのか分からないくらいの、ね。ともすればかの有名なブリュンヒルデ以上なんじゃないかしら。ブリュンヒルデは所詮競技の世界の最強……その実力は本物かも知れないけど、人に夢を見せているというだけで実際に命を背負う重みというものは感じない。対して【黒の剣士】クンは、彼は人の命を背負い続けて戦っている……私からすれば、既にどちらが優秀なのか明白ね。まぁ、ブリュンヒルデがこの世界に居ない以上は机上の空論でしか無いのだけど」

「……案外アシュレイさんって、ブリュンヒルデの事が嫌いなの?」

「そりゃあもう。こんな喋り方してるけど男ですから、同性としては彼の事を応援したいとも思うし……半ば不可抗力とは言え、女尊男卑なんて風潮が広まった遠因でもあるんだから、男性でブリュンヒルデと天災を嫌いでは無いと言うのは珍しいと思うわよ。ファッションデザイナーをやってた私としては煽りを食った訳だしね」

「あー……」

 

 ファッション業界は女性の方が数が多い事もあって、特にそういった風潮に毒された者はISが世に出てから二、三年後に多く出たらしい。それで色々と苦しくなって、人にデザインを見てもらう機会も少なくなったため、仮想世界で人の意見を聞いて自分を磨こうとSAOを購入したという経緯があるのだと、以前教えてもらった事がある。

 現実と違って、仮想世界は装備そのものがリアルで言うコスプレに近いものの忌避感というものはほぼ無いので、人の意見を聞きやすいという利点がある。それに早い段階で着目していたアシュレイさんは実行に移したものの、デスゲームに巻き込まれてしまい……しかし落ち込むのも僅かな期間で済ませ、逆に仮想世界で感性を鍛えてやると奮起して《裁縫》スキルを鍛えていった。それがSAOトップのカリスマお針子になっているのだから、世の中どうなるか分からないものである。

 

「ところで、話は変わるのだけど」

「……ん?」

 

 このSAOはリアルと隔絶されているとは言え、少なからず女尊男卑の風潮に毒された女性が居るから偶にそういった話を耳にする、アバターに関しては男女平等なのだしISも無いのだからこの世界で何を言っても意味は無いのになぁと考えていると、ふとアシュレイさんが良い笑顔で話を区切ったので、ボクは首を傾げる事になった。

 何だろうか。アシュレイさんの笑みは、特別変なものではないのだけど……見ていると、胸がざわつくような何かが感じられた。そんな感覚を覚えながらボクは紅茶を口に含んだ。

 

 

 

「ユウキちゃんってやっぱりアレ? 【黒の剣士】クンの事が好きなの?」

 

 

 

「ぶふぅッ?!」

 

 そして、真っ向から唐突にぶっぱなされた質問に、ボクは思い切り紅茶を噴き出してしまった。アシュレイさんに掛けるのは失礼だし、周囲は売り物の服だらけだったから、床に向かって噴き出したが。

 

「げほっ、げほっ……! い、いきなり何を?! いや、それ以前に何でそう思ったのさ?!」

「えー、だって会う度にその子の事を話すじゃない? ユウキちゃんも年頃なんだからやっぱり気になってるのかなぁって思って、それに矢鱈心配してるし、恋愛に年齢なんて関係無いし。四歳差だっけ? それくらい結婚したら当たり前くらいの年齢差なんだから気にしなくてもいいんじゃない?」

「いや、そもそも好意を持ってる前提で話すのはやめようよ……」

「え? じゃあ好きじゃないの?」

「それは……」

 

 好きか嫌いかで聞かれれば当然好きだ、好きで無ければ一緒のベッドで寝たりなんてするものか、それも幼い弟のような子供と言えども異性なのだから尚更だ。

 ただそれが、異性としての好きなのか、それとも弟のように思える子を護りたいという親愛の情での好きなのかは、まだ分からないのだ。恋愛経験なんてある筈が無いし……そもそもあちらはこちらをそういう目では見てないだろう。それは余裕が無いという事もあるが、年齢的にまだ興味を持っていないという意味でもある。

 ボクから見たキリトは基本的に冷静で、偶に子供っぽい所を見せるくらいだから見た目と言動と実年齢が噛み合っていない。四つも年下の子供というのが現実だが、ボクは偶に一つ年下だとか、本当に稀に同い年かそれ以上と思った事すらある。それはボス戦での凛々しい姿を見た時が殆どだ。恰好良いな、綺麗だなと思う事は頻繁にあるし、どきりとさせられる場面も無数にあった、笑顔を見た時など一番胸が高鳴っただろう。

 そう言うと、アシュレイさんはまた笑顔となった。

 

「そんな風に思ってるならもう間違いないんじゃないかしら?」

「……でも、まだ分からないよ。それに今のキリトに恋愛だとか、そんな事をしてる暇も余裕も無いよ……一緒に居たら巻き込んでしまうって言ってギルドにも入ってないのに、恋仲になれる筈も無いし」

「ふぅん……なれる筈も、ねぇ……?」

「……何?」

「なれるなれないって話してる時点で、既に願望として持ってるっていう自覚はあるのかなぁと思って」

「……ッ?!」

 

 可能か不可能かを言っている時点で、その気があるという前提になってしまっている事に指摘されてから気付き、鋭く息を吸い込みながらボクは言葉を喪って固まってしまった。その間にも顔がどんどん熱くなっていっていくのが分かり、恥ずかしくなってくる。

 それでも脳裏には、告白して、もしも受け入れられた場合の光景が鮮明に映し出されていた。

 恋仲になって、リーファと姉ちゃんとユイちゃんとでキリトを囲んで、ご飯も一緒に作って、剣の練習も一緒にして、新聞を読んだり、お昼寝したり、一緒のベッドで寝たり……

 

 

 

 そして、神聖な口づけを交わして……

 

 

 

「ッ……!!!」

 

 そこから先も想像してしまって、ぼふっと顔が一気に熱くなった。学校で多少学んだ程度だが、諸事情によってそういう知識を同年代の子よりも確実に詳しく知っているボクは生々しくそれを想像してしまい、相手がキリトという事もあって一気に脳内がかき乱される。それにも関わらず、妄想は留まる事を知らない。

 

「ふきゅうぅぅぅ……」

「えーっと……ここまでの反応は流石に予想外…………一体どこまで妄想したのかしら、この子……」

 

 全部ですよ全部、とボクは混乱しながらも未だに頭の中で妄想を続けつつ胸中で呟いた。ちなみにこの時、既に子供に囲まれて幸せに笑っている未来予想図まで行き着いていた。妄想の中だけでも幸せそうにキリトが笑っている事ですら嬉しいと思えてしまう辺り、ボクはちょっと末期に近いかも知れない、何の末期かは知らないが。

 そこでぴろりん、と場違いな電子音が脳内に響いた。視界端を見れば、メール着信を知らせるマークが明滅していた。

 

「はふぅ……メール……?」

「あ、現実に帰って来たわね。で、メールには何て?」

「えっと……」

 

 アシュレイさんの言葉は半ばスルーしつつ、ボクはそのマークをタップして着たメールを開いた。

 

『Tittle:キリト君からの要請 From:Heathcliff

 このメールはアスナ君、ユウキ君にのみ送っている。また極秘事項であるため、ギルド内のメンバーにも他言を一切厳禁とする。許可するのは私、キリト君と彼の同行者のみである。

 唐突に申し訳ないが、《アインクラッド解放軍》のサブリーダーのシンカー君を覚えているかね? 彼がキバオウ君に嵌められ、とあるダンジョンの最奥に閉じ込められた。その彼を救出にキリト君が赴く事になったのだが、彼曰く面倒な事になっているらしい。何でも基本配置モンスターで六十層台のモンスターがおり、更に奥地にはボス級と思しき巨大なモンスターが居るらしく、その中を護衛対象ありで行かなければならないため、戦力を送ってほしいと私に要請があった。ただキバオウ君に悟られないよう少数精鋭が好ましいともあったため、彼に力添えをしてあげて欲しい。彼は第一層転移門広場にて君達を待つらしいので、そこへ向かってくれ。詳しい事情は現地で彼から聞いて欲しい。

 追伸:《圏内事件》についてはこちらで調査を進めて置く。ディアベル君にはシンカー君の事は伝えていないので、出会った場合は上手くはぐらかして欲しい。キリト君と合流した後は彼の判断に一任する』

 

 ……おかしいな。休ませる為に調査から外れてもらってるのに、何でそんな事に首を突っ込んでいるんだろうか。キリトが行く先でトラブルが起こりまくるって、最早呪いか何かかでも掛かっているのかと思ってしまうのだが。

 

「何やってるんだよ、キリトは……」

「あら? 愛しの彼に何かあったの?」

「まだ愛しじゃないし!」

「まだ、ねぇ? もう時間の問題な気もしてきたわねー」

「ッ……! もう! お茶ご馳走様! 用事が出来たからもう行くよ!」

「はいはーい、お客としても友人としても、またのご来店をお待ちしてまーす」

 

 少し失礼ではあったものの、からかってきたアシュレイさんが悪いのだと胸中で言いながらボクはカップとソーサーをカウンターに置き、挨拶をしてから店を出た。からからと心底楽しそうな声音のアシュレイさんの声が、また少し呆けた事で忘れかけていた妄想を思い出させる。

 

「ああ、もう……力になれるのは嬉しいけれど、ちょっとタイミングが悪いなぁ……」

 

 真っ赤な顔をキリトに見られたら何と思われるか、それが今一番の不安の種だった。

 

 






 はい、如何だったでしょうか。

 《ガールズ・オプス》は何かの雑誌でちらっと読んだんですが、その時に《アシュレイ》が出ていたので、うろ覚えで出しました。第一層からバンダナを巻いていた理由は、彼のお客第一号だったから、という後付け設定。最初から考えてはいましたが。こういうキャラだったと思うんですが、合ってますかね……

 さてさて……《ビーター》と【黒の剣士】という二つの異名についてのお話が今話の半分メインでした、もう半分メインはキリトの内心での葛藤です。

 原作見てて思うんですが、原作キリトと原作アスナよ、君達はユイを危険に晒すという自覚はあるのかと思っています。特にキリトは黒猫団を壊滅させてしまったトラウマがあるんじゃなかったっけ? 目の間で娘喪うよ? と思っています。マジで喪いかけてる訳ですしね……MHCPじゃなかったら全滅ルートまっしぐら。

 今回、ユイを連れて行こうの役割を楽観的なストレアとソロで動き続けていたフィリアにして頂きました……別に嫌いだとかそういう訳では無い、必要な役回りだったんです、一緒に行くよ宣言をする為にも。何気に【絶剣】と【閃光】も召喚してますけど、必要な戦力という訳で一つ。

 ユイ同行に反対するキリトの内心は非常に複雑です、何せ過去に強く反対しなかった事で壊滅を防げなかった訳ですから、コーバッツの時も含めて。その葛藤が上手く書けていたら幸いです。

 そして最後、ユウキの恋バナ……いや、偶にはこういうほのぼのとした会話も入れたいなと思いまして。だってずっとシリアスですもの。

 それにユウキ、SAOキャラの中で一番好きですし、何気にキリトの添い寝やってるし、実はリーファに並ぶくらい心配してるし……ラグーラビット仕留めた後の会話、ユウキが率先してやってるし、第一層でもすぐに心配してた訳だし。

 リーファは立派なお姉ちゃんキャラ固定で行けるし、リズもお姉ちゃんキャラだし、アスナも姉キャラで行けるし、サチもそれで行けるし、ランも似たようなものだし……あれ? もうヒロインはユウキで良いんじゃね? と書いてて思った。シリカはビーストテイマー仲間としてともだちだし。妹ポジと弟ポジだから遮るものは何も無い的な感じで。もう戦う理由はユウキでもいいんじゃないとも思ってたり。

 一応IS編(別のお話)に突入するまでヒロインは定まらない予定ですが、どうしよう、凄くグラついて来た(笑)

 まぁ、それはともかく……今後はこんな風に、ほのぼのとした会話を原作の様に挟んでいきたいなぁ……ずっとシリアスじゃあつまらないですしね。今まで申し訳なかったです。

 長々と失礼。

 では、次話にてお会いしましょう。


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