インフィニット・オンライン ~孤高の剣士~   作:黒ヶ谷・ユーリ・メリディエス

33 / 446


 どうも、おはこんばんにちは、黒ヶ谷・ユーリ・メリディエスです。

 今話はタイトルにある通り、あの死神ボスとのご対面です……そこに行くまでにちょっと挟まりますが。割と原作に近い戦闘描写じゃないかなと思います。

 視点は前半アスナ、後半キリトです。分かる人には分かるネタを次々とぶっ込んでいます……かなりグレーな所がありますがね。最近感想無いのはこれのせいかなと思っていたり。

 ではどうぞ。




第三十章 ~《The Fatal scythe》~

 

 

 ザンッ! と鋭い斬撃音が響き、すぐ後にボゥッと空気が燃え盛る音が耳朶を打った。

 そして空気を切り裂く鋭い音を引きながら、四方に刃を伸ばす戦輪が二枚、炎の帯を引きながら黒く幼い少年の両手に収まる。

 

「ハァッ……今ので終わり、だよな……?」

「うん、終わりだよキリト君。お疲れ様」

「そうか……ああ、アスナもお疲れ……」

 

 炎を纏った二枚の戦輪《エターナルブレイズ》――IS武装の名称は《焔舞輪》――を手に構えていた少年キリト君は、たった今斬り裂き、蒼い結晶片へと散らせた敵が最後の敵個体であるのを確認し、私がそれを言葉で明確に言ってすぐに肩の力を抜いた。

 がくっと前傾姿勢になり、戦輪を持つ両腕はだらんと垂れさせるその様は自然体のそれでは無く、疲労し切っている事によるものだ。

 シンカーさん救出の為に《黒鉄宮》の地下に広がる迷宮へと足を踏み入れてから、昼はとうの昔に過ぎ去り、午後四時……つまりは延べ六時間強も経過している現在、昨日の戦闘の疲労がまだ残っているキリト君は既に疲労困憊の体だった。

 それでも戦っているのは私達が強制しているからでは無い、それだけ敵の勢いが増してきているから。

 最初はキリト君は二丁のエネルギーボウガンで支援に徹し、私やユウキ、ストレアさん、フィリアさん、護衛のクラディールで前衛のローテーションが出来ていたのだが、突入してから二時間ほど経った頃から敵の勢いが増してきた。また、入ったばかりの頃は確かに敵のレベルは六十台で収まっていたのだが、今はもう八十から九十台と私達がマージンとして上げているレベル帯まで強さを上げていて、更には襲って来る数も増えて来たものだから堪ったものでは無かった。

 結果、キリト君も前衛で戦わなければ回らなくなり始めたのである。この中では最もステータスが高く、状態異常にも掛からずノックバックも受けないので――クラディールは知らない事だが――モンスターとの戦いには一番適していた。

 出現モンスターは《スカベンジトード》という四つ目の大型カエル、つまりは水棲型モンスターが殆どだった。そのモンスターには雷と炎が効くと分かったのだが、地下道は道が全体的に濡れていて、雷刀だと感電で私達にまでダメージが来ると判断したので彼は炎のチャクラムを使用する事にした。

 ただ攻撃を終える度に息を整えなければ意識が遠のくほどまでに、今は消耗していた。

 

「キリト、本当に大丈夫? もう流石に帰った方が良いんじゃ……」

「まだ戦うだけの余力はある……この中では俺が一番レベルが高いんだ、これ以上敵のレベルが高くなる事を考慮すれば居た方が良い……ここまで来て引き返すのもアレだし、奥にいるっていうボス級モンスターの事も気掛かりだ。前線で戦えなくてもチャクラムやエネルギーボウガンで支援出来るし……帰るなら、シンカーも一緒にだ」

 

 ユウキが転移結晶を出しながら先に帰還するのを勧めるが、しかしキリト君は頑なにそれを受け取ろうとしなかった。

 ここまでの強さになるとユリエールさんとユイちゃんを護りながら進むのもキツイし、彼の中・遠距離攻撃によるサポートで戦闘がスムーズにいっているのも事実。ボス級Mobが現れた時に心強いというのは確かなのだけど、疲労を押しているのだから、本当に無理しないでと私は思っていた。

 確かにキリト君は全プレイヤーでまず間違いなく――リーファちゃんからも聞いたし――最高レベルを誇っている。

 しかし、それで最強とは直結しないし、生存率が上がると言っても絶対生存とはイコールにならないのだ。

 けれど……

 

「ユリエール……シンカーの反応は、もうすぐなんだろう?」

「え、ええ……このペースなら、もう三十分も掛からないと思います……」

「だったらあと少しの辛抱だからな……シンカーを助け出してから、ゆっくり休ませてもらうとするよ……」

 

 そう、シンカーさんの反応がもうすぐ近くまで来ている事が、途中帰還という選択肢を妨げているのだ。本当にピンチになれば彼もすぐに帰るとは思うが、キリト君の性格を考えると、むしろ私達全員が撤退を終えるまで絶対に転移しない気がする。

 キリト君は押し黙った私達を一瞥し、言うべき事はもう無いと判断したのかシンカーさんの反応がある方向へ続く道を歩き出した。

 途端、すぐそこの曲がり角から再びモンスターが姿を見せる。

 レベル九十のカエル型モンスター《スカベンジトード》が五匹。

 レベル九十三の盾剣士タイプモンスター《ヘイズスケルトンナイト》が四体。

 レベル九十三の槍戦士タイプモンスター《ヘイズスケルトンランサー》が八体。

 私よりも格上のモンスターを含め、合計で十七体の群れが一気に姿を現した。

 これが私達を、そしてこれまでソロで戦い続けて来たキリト君を大いに消耗させる一番の原因。一度に現れる数も然ることながら、その現れ方がいきなり過ぎるのである、まるですぐそこで唐突にポップしているかのような錯覚を覚えてしまうくらい急に現れるのだ。

 遠くから近付いているのなら私やユウキが少しでもと上げていて、キリト君に至っては完全習得している《索敵》スキルに反応が出る筈なのに、それも無く襲い掛かって来る。

 勿論《索敵》スキルをすり抜けて襲い掛かって来るモンスターが居ない事も無いのだが、そういった存在は大抵《隠蔽》もしていてキリト君に見抜かれて奇襲が成功しない、そもそも群れないのが定石だ。

 つまりこの群れは、その存在から《索敵》を無効化させるような相手では無いのである。

 

「ッ……邪魔、だッ! 燃え尽きろッ!!!」

 

 最前に居たキリト君は、その群れを認識してからすぐに行動を起こした。

 両手に握る手裏剣の形をした紅色で縁取られた戦輪から炎を噴き出し、前方へ投擲。放られた二枚の焔輪は、まるで意思を持っているかのように蛇を思わせるうねった軌道を描きながらモンスターの群れへ迫り、容赦なく斬撃と焔の二重攻撃を浴びせた。

 それからすぐ持ち主の手元へ戻るが、まだ炎の噴出は止まっておらず、それを地面へ叩き付けるようにして彼は戦輪を放る。

 すると眼前に居る十七体のモンスターの足元から劫火の柱が立ち上った。

 

『グゲゲッ?!』

『グルルゥ……!』

「貫けッ!!!」

 

 劫火の柱の熱量で怯み、それだけでなく再び舞うように踊って炎を拭き散らしている戦輪のように、モンスター達の隙を逃さないとばかりにキリト君は更なる追撃を仕掛けた。

 モンスター達の攻勢が強まり、また唐突な出現の仕方をし始めてからは彼の周囲には、彼を守護する騎士のように風を纏った六本の槍《ドラゴニックスピナー》――彼のISでは《龍牙絶風槍》と言うらしい――が展開され、浮遊している。キリト君はその六本の槍をそれぞれ別々の敵に飛ばし、縦横無尽に槍を躍らせ、風で斬り裂いていった。

 ここまでの道中で彼が昨日手に入れた武器《ⅩⅢ》が、彼の強いイメージを反映して動かされる事は教えてもらっている、彼の手元を離れた武器は彼が脳内で最も強く思い描いた軌道に沿って動くのだと。

 あの六本の槍もまた、さっきの戦輪と同様彼の強いイメージによって動かされているのだ。

 

『グルアァッ!!!』

 

 一人で幾つもの攻撃手段を持っているのはプレイヤーとしては規格外ではあるが、それを動かしているのがシステムでは無く、人間の彼自身なのだから勿論完璧では無い。当然ながら漏れが出て来る。そもそも二枚の戦輪と六本の槍で相手出来る相手は限られているのだから、一つにつき一体だとすれば十体近くがノーマークになる。

 よって、そういったモンスターが攻撃をしてくるのも当然な話だった。

 その内の一体、レベル九十三の骸骨剣士がおどろおどろしい叫びを上げながら、右手に持つ錆び付いている長剣から薄緑の光を迸らせ、キリト君へ襲い掛かる。

 しかし……

 

「遅いッ!」

 

 空いている右手にバチバチと黒と蒼の稲妻を発生させながら、緑と黒で彩られた禍々しい柄、鍔に悪魔を思わせる黄色の眼の意匠、そして悪魔の羽の如き刀身は闇を思わせる黒色という曲剣《エンゼルイーター》――IS装備名は《ベルセリオス》――を出現させた彼は、その場で軽く跳躍した。迫り来る骸骨剣士の袈裟掛けは、それだけで空を切る。

 空中に身を躍らせたキリト君は曲剣の柄を両手で持った。すると刀身が紫色のオーラに包まれ、大上段から唐竹割りを放って骸骨剣士の頭部を叩き切り、それで止まらず地面を叩く。直後、地面からは毒々しい瘴気を思わせる靄が立ち上り、彼の眼前で怯む骸骨剣士を軽く浮かせた。

 《暗黒剣》専用ソードスキルで《タービュランス》と言うスキルらしい。

 続けて彼は曲剣を体の左に持って来て、腰だめに構え、また紫色のオーラを刀身が纏った直後右へ振り抜いた。

 《片手剣》ソードスキル《ホリゾンタル》と全く同じ軌道を描いた斬閃は空中に身を晒す骸骨剣士のHPを半分以下まで削り、それだけでなく紫色のオーラが放射状に放たれ、まるで猛火の如く骸骨剣士を襲って更に命を削っていく。

 前方広範囲を攻撃する《オニキスフレア》と言う《暗黒剣》専用ソードスキルだ。

 そのダメージと衝撃は骸骨剣士をボールのように後方へ吹っ飛ばし、続こうとしていたモンスター達をボウリングよろしく跳ね飛ばし、大きく怯ませた。

 

「くッ…………ハァ……ッ」

 

 風を纏って何体ものモンスターを斬り裂く六本の槍、炎で焼き尽くさんとばかりに舞う戦輪が大きく怯んだモンスター達に襲い掛かろうとした正にその時、それらは全て力を喪ったように地面に落ちた。

 同時、キリト君の苦しげな息遣いが通路に響く。

 これが今のキリト君の限界。十分扱えるレベルの武器数は三つまでが限度、それ以上になると脳の回転限界を迎えてキャパシティーオーバーし、仕切り直しになるどころか大きく隙を晒してしまうのだ。

 更には近距離武器と中・遠距離武器の組み合わせも難しい。近距離と近距離、中距離と中距離の組み合わせでなければ――――つまりは全体を俯瞰出来るか否かでも決まって来る。チャクラムと六本の槍のように、共に手元から離れている武器同士ならまだしも、曲剣とチャクラムといった近距離武器と手元から離れる武器の組み合わせは彼の脳が追い付かないらしい。それで全ての行動が彼の意思に反してキャンセルされてしまうのだという。

 

「もういいよ! キリトは下がって休んでて!」

 

 仲間がいると複雑なイメージを必要とするから前に出なかったユウキが、それを見てすぐに前衛に入った。

 

『グルァアッ!』

「悪いけど、全部見えてるんだよねッ!」

 

 キリト君が動けなくなった間に体勢を立て直したモンスターの中で、骸骨剣士が一体、長剣から蒼い光を迸らせて彼女を斬り裂こうとした。

 ユウキはそれに対し、余裕を感じさせる台詞を放って待ち構える。高速で袈裟、右斬り上げ、左斬り下げ、逆袈裟からなる《ホリゾンタル・スクエア》が放たれるも、彼女は言葉の通り、全て完璧に捌いて見せた。

 ただし、光を灯さず、全て自力でだ。

 ソードスキルにはソードスキルでしか対抗出来ないというのがこのSAOでのオーソドックスな考えになっているが、それが覆されたのだ。

 ソードスキルはシステムアシストにより、現実では為し得ない程の速度で剣を振るう事が出来る技だ、それをモンスターが使って来るとなれば脅威でしかない。

 それにソードスキルは、その光の色によって凡そどのスキルか予想が付く、システムに定められている以上はそれから外れた攻撃は絶対来ないからだ。

 だが、光の色によって凡そ斬撃の軌道を予測出来ても、似た色だと判断に迷う事が多々ある。

 例えば《ホリゾンタル・アーク》と《ホリゾンタル・スクエア》は、剣を体の右に持って来ている事から発動の構えがほぼ同じ、違うのは前者が斜め右下から手首を返すような状態で開始するのに対し、後者が剣を振り下ろす軌道であるという事だ。どちらも同じ蒼い光である以上、手首の返しがあるかどうかで判断しなければならない。

 また《ヴォーパル・ストライク》と《ハウリング・オクターブ》の場合、深紅と真紅という光の色を除けば、前者が強く後ろに剣を引き絞って突進の構えを取っているのに対し、後者はその場で連撃を放つべく腰を低くして剣を軽く引いているくらいしか、違いが無い。

 更に言えばソードスキルは高速故に判断も一瞬しか不可能。

 対抗する為に無数に存在するソードスキルの中から適切なものを選択し、構えを取り、スキルを立ち上げて放つまでを一気に行える者などほぼ居ない、攻略組ですらそれは困難を極める。これは片手剣使いに限った話では無い。

 故に、モンスターがソードスキルを放ってくるのは、誰にとっても等しく脅威とされる。

 そんな中、真のソロを貫いているキリト君が対策を立てていない訳が無かった。

 彼は剣士型モンスターが相手の時、回避や防御の他に、相手の剣をいなすという選択肢を作り出したのだ。システムによって動かされる相手の刃に合わせるようにこちらも剣を動かし、刃を滑らせ、軌道を逸らす事で安全を確保するのである。謂わば一種のパリィのようなものだ。

 それは言うは易しだが行うは難し。実行に移せる者など一握りしか居ないのだが、ユウキはその中の一人だった。

 何せ彼女は、少数精鋭にも程がある《スリーピング・ナイツ》が攻略組の一員として認められている最たる要因の人物であり、キリト君に匹敵、あるいは凌駕していると思えるくらい凄まじい反応速度を持つ片手剣使いなのだから。システムにただ動かされているモンスターのソードスキルの軌道が見えているのもある意味当然の話だった。

 ユウキは蒼い光と共に放たれた四連撃を、全て的確に、黒剣の刀身に滑らせるようにしていなした。

 そして骸骨剣士はガチッと、技後硬直が課されて動けなくなる。

 

「お返しだッ!」

 

 裂帛の声を合図にするようにして、ユウキが右手に握る黒剣《ルナティーク》の黒曜石を思わせる刀身から深紅の光が迸り、耳を劈く外燃機関めいた轟音を響かせながら強烈な突進突き《ヴォーパル・ストライク》が放たれた。

 それは骸骨剣士の胸骨を容易に貫き、脊柱をも貫き、大きく敵を怯ませ、後方へと吹っ飛ばす。

 それでも敵のHPは八割から四割までしか減らなかった。

 ユウキのレベルも攻略組で相当高い方だとは言え九十の大台に先ほど乗ったばかり、つまり敵の方がレベルが上なので、その分の補正が働いてダメージが幾らか低減しているのだ。

 仮に同レベルだったり、あるいは彼女の方が上だったならもう少し削っていたか、クリティカルポイントを貫いた事で削り切っていたであろう。

 

『グルォアッ!』

『グゲゲコォッ!』

「あ、やば……ッ」

 

 強烈な突進突きを放って前進したユウキは、スキルを終えた事で硬直を課された。

 彼女が貫いた骸骨剣士は大きく仰け反っているものの、それ以外のモンスターに関しては既に体勢を立て直しているので、彼女を攻撃出来る。

 技後硬直を課されているユウキは現在、飛んで火にいる夏の虫も同然の状態だった。

 

「おっと、アタシ達を忘れられちゃ困っちゃうなー!」

「もう、一人で突っ込んだらダメでしょ?」

 

 そこでカバーに入ったのが、ストレアさんとフィリアさんのタッグだった。

 二人は意気投合したのかとても息の合った連携で、次から次へとユウキに襲い掛かろうとしていたカエルや骸骨達を跳ね除け、キリト君が思い切りHPを減らしていた二、三体は強烈な一撃で倒し、彼女を危地から救った。

 それでも、流石の二人も十体余りのモンスターを一気に相手出来る筈も無く、やはりそれなりの数は漏れてしまう。更には二人の側面、あるいは背面から襲い掛かろうとするモンスターも現れる。

 ユウキも硬直から回復して戦線に復帰したと言えど、流石の彼女でもカバーし切れない数だった。

 

「全員伏せろッ!!!」

「「「ッ!」」」

「う……ぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおッ!!!」

 

 そこで、キリト君が前線で戦う三人に警告を発した。

 戦闘中に何の意味も無く伏せるのは危険ではあるのだが、キリト君の事を全面的に信用している表れなのか、三人はその意図を問う事もしないですぐさまその場で伏せる。

 直後、その三人の頭上を、蒼白い三日月が横に刃を広げながら轟音と共に通り過ぎた。キリト君は大刀を持ち出し、蒼白いオーラを纏わせた後に雄叫びを上げながら振るい、飛ぶ斬撃として飛ばしたのだ。

 凄まじい威力を内包しているのか、まだHPを半分以上は残していたモンスターの群れは、その三日月形の斬撃に呑まれて全滅した。

 《狂月剣》専用の単発ソードスキル《ソニックスラッシュ》と言うらしいそれは、技名の安直さとは反して凄まじい威力を内包しているソードスキルだった。

 両手持ちで大刀を青眼に構えると、蒼白いオーラが刀身から立ち上り始める、その後の一刀は三日月形の斬撃が飛ぶというものだ。構えを取らなければ飛ばせないし、溜めの時間によって威力と飛距離が異なるらしいのだが、ユウキが出てから数秒は時間が稼げていたから、その間に溜めたのだと思う。彼のステータスと装備を考えれば、半分以上残っているHPを一撃で消し飛ばすのも何らおかしい事では無かった。

 

「ハァ……ハァ…………三人とも、無事か?」

「う、うん……ありがと、キリト」

「今の凄いねぇ」

「ほんと、凄い威力」

「あまり乱発出来ないけどな、連射も出来ないし……本当にこのダンジョン、何でこんなにモンスターの湧きが異常なんだよ。ファーミングスポットより酷いぞ、この湧き方は……」

 

 《ファーミングスポット》というのは、通常よりも高回転でモンスターのポップが回る場所の事で、謂わばレベリングスポットの事と考えればいい。

 このSAOはデスゲームという事件で完全に外界と隔絶されており、またリーファちゃんの話から人の手もほぼ入っていない――と言うより下手に触れて全員死亡なんて事態は誰もが嫌だから関わらない――事が分かっているので、システムによってのみ運営されている。

 団長とキリト君によれば、このSAOの基幹システムは特殊な構造をしており、メインプロセッサとサブプロセッサ両方にデータが送信され、相互に閲覧を繰り返す事でエラーを発見、自動修正するというプログラムが組み込まれているらしい。

 ちなみにこれは茅場晶彦のインタビュー記事で、ほんのちょっとだけ語られていた話だという。

 そんな訳で、つまりはモンスターの湧きもプログラムによって維持されている訳であるが、では何故湧きに差が出ているかという疑問が出て来る。

 これはプレイヤーに原因があり、最初は全エリアを通して均一に経験値が手に入るよう調節――つまりはMobが全範囲均一に配置――されているとしても、プレイヤーが狩った所ではシステムが経験値を《与えた》事になり、そこの湧きを少なくする。

 代わりにプレイヤーがあまり狩りをしていない場所は、他の場所と較べて経験値を《与えていない》事から、追い付こうと湧きが良くなる。

 一階層の中で得られる経験値量を、総合的には全てのエリアで同じになるよう上手く調節しているのだ。

 つまり《ファーミングスポット》というのは、他の広い範囲でプレイヤーが狩りをしまくった結果、狭い範囲内で多くのモンスターを湧かせる事となったシステムの判断という訳である。なのでそこで経験値狩りをしまくっていれば、プレイヤーに与えた総経験値量が他の場所とほぼ同等になる訳で、そうなると敵の湧きは緩くなって高回転は消える。

 その場所は高回転なので次から次へとモンスターが出て来る訳であるが、当然ながらポップが速くなっているだけで異常という訳では無い、なので休憩時間も挟めるし倒す時間を早くすればそれだけ間も広くなる。

 エリアというのもフィールドの中で幾つか分けられており、迷宮区、ダンジョンになれば階層ごとに区別されるのが普通だ。なので同じ一つの階層で、連続して敵が襲って来るというのは普通あり得ない。さっき敵を倒したのに、すぐまた敵が出て来るというのが連続しているこのダンジョンがおかしいのである。

 

「キバオウが逃げ帰ったという話にも納得だな……これは攻略組でも無理だ……」

 

 シンカーさんを嵌めて奥に閉じ込めたキバオウが一度は自分でここに来ているのは確実である、何せ回廊結晶の位置セーブは実際にその場に行かなければならないからだ。

 むしろ私やユウキよりレベルが低いのにここまで来られたという事に、呆れと共に尊敬の念すら浮かんでくる程だ。

 この地下ダンジョンは最初キバオウが発見したらしく、《アインクラッド解放軍》の本拠地の真下にあるのだから固定の狩場に出来るのではと考えたらしい。

 それで潜ってみれば、発見した当時の最前線以上の難敵がうようよ居るわで、度々浅いところを潜って堅実に稼ぐ事にしたキバオウも、最初は深く入り込み過ぎて結晶を使い過ぎて大赤字になってしまったという。それがディアベルさんにバレていないのは、彼のポケットマネーでどうにか補填したかららしい。

 最初はキバオウを笑っていた私達だが、現状を考えると決して笑い事では無かったと考えを改めざるを得なかった。あともう少しでシンカーさんの下に辿り着くが、唐突に襲撃を仕掛けて来る群れの数があと数体増えるか、敵のレベルがあと五前後上がるかのどちらかで、私達の戦力バランスは一気に崩れる。

 具体的に言うと、その場合唯一レベルが上になるキリト君の負担が今以上に大きくなる。

 現状、ユウキの《ヴォーパル・ストライク》ですら単体のHPを四割までしか減らせなかった。《片手剣》ソードスキルの中でも上位に食い込み、最大威力と言っても過言では無い技を使った攻略組トップランカーのユウキですら、単体を倒すのに手間取ってしまうのに、十数体も一気に相手出来るかという話だった。

 不幸中の幸いなのは、私達が攻撃を受ける頻度は少ない事だろう。お蔭でポーション類の節約も出来ているので話に聞くボス級モンスターとの戦闘になった際、回復アイテムが無くて困るという事態にはならなくて済みそうだった。私達が前衛で戦っている際、キリト君がエネルギーボウガン《エナジーシューター》――IS武装名は《シャープシューター》――で敵を狙撃、援護してくれていたからだ。攻撃されそうになる度にそれを潰してくれていたので攻撃をあまり受けなかったのである。

 それからも三回ほど十数体――一度は二十体――の群れを相手した私達は、漸くシンカーさんの反応がある部屋の目前まで来ていた。

 ずっと動いていない事から恐らく安全地帯なのだと予測していたが、視線の先にある明るい光は安心感を与えるもので、アレは確かに安地っぽいなぁと安堵を覚えたものである。転移結晶が使えるか分からないが、一先ず一休みは出来そうだった。

 その部屋まではほぼ一直線の通路だった。ただし、部屋のすぐ手前には左右に分かれ道が存在しており、マップを見ればそこそこの長さがあるのか端が記載されていなかった、もうちょっと私達が進めば自動記載されるのだろうと納得しておいた。

 しかし妙な感じを受けた。

 ユリエールさんの話によれば、キバオウ達はこのダンジョンのどこかで大きなボス級モンスターを見たというのだ。しかしながら、かなり裂帛の大声を響かせていた私達の元に、大型モンスターは一度も姿を見せていない。

 これでは話が違うが、そんな嘘を吐く意味はその話をしている時には無かった筈だ。ユリエールさんに二の足を踏ませる意図があったとすれば別だが、それも何か違う気がする。

 

「シンカーッ!!!」

 

 私がそう思考する間に、ユリエールさんは漸くシンカーさんと再会出来る事に感極まってか笑みを浮かべながら駆け出した。

 その声に引かれてか、光溢れる部屋の入り口に、一つの人影が映る。

 

「ユリエールッ?!」

「シンカーッ! よく無事で……ッ」

 

 

 

「来ちゃダメだ、逃げろッ! その通路は……ッ」

 

 

 

 私も何度か会った事があるので、その男性の声がシンカーさんのものである事は分かった。

 しかしユリエールさんに対する返事の内容に、思考が少しばかり止まってしまった。

 

「く……ッ?!」

 

 その時、固まる私達の中でユリエールさんを除いて唯一動いたのはキリト君だった。彼は焦ったような表情で通路を見詰め、直後姿を煙らせて疾駆した。

 バンッ! と空気を叩くような音と余韻を残して駆け出した彼は、シンカーさんの制止が聞こえていないのか止まらないユリエールさんに後ろから飛び掛かり、腰を左腕で抱くと、右手に曲剣《エンゼルイーター》を出現させて床に突き立てた。

 ギャギャギャギャッ! と嫌な音と石を削る音が響き、彼らの前進に制動が掛かる。

 二人は左右に分かれる通路の寸前で止まった。

 直後、その通路を、右から左へ巨大な何かが通り過ぎたのを見た。

 暗いのもあったが、何より姿が薄く見えなかった為に全体像も把握し切れなかったのが大きい。

 慌ててキリト君とユリエールさんの近くに駆け寄り、左の通路を見ようとし……

 

「危ないアスナッ!」

「きゃ……?!」

 

 すぐさま左手をキリト君に引かれ、後ろに倒れ込んでしまった。

 それを彼に抱き留められるが、眼前の光景でそれどころでは無かった。何せ私が立っていた場所に、大きな鎌が振るわれていたのだから。

 

「あ……あ、れは……」

「……まさかとは思っていたけど、死神型ボスとはな。しかも六十七層ボスと同じ名前か」

『グギャギャギャッ!』

 

 大鎌を振るったのは、宙に黒い襤褸切れを纏って浮く骸骨……いや、死神だった。

 頭上のHPは五段、《The Fatal scythe》という名称だった。ボス級どころか、正真正銘のボスである。しかも、第二十五層の悪夢の再来と言われた、あの第六十七層ボスと同名だった。

 つまり、攻略組を散々苦しめたボスと、有する能力は同じであるという事だ。

 《致死の鎌》の名の通り、圧倒的な攻撃力と移動力を誇り、状態異常攻撃も駆使した難関ボスとして立ちはだかったのである。

 そのボスを見上げていると、同じく見上げていたキリト君の表情が更に険しくなった事に気付いた。

 

「全員、急いで安全地帯に退避だ! これは勝てない! コイツのレベル、一五〇だ!」

「ええ?!」

 

 一五〇。

 それは明らかに攻略組のマージンを、そして恐らく第百層に到達するとしても達しないだろう数値だった、キリト君でも恐らく届いていないだろうレベルである。

 私が見た時、レベルが表記されなかったのは余りにも実力が隔絶しているから。

 《索敵》スキルで見る事が出来る相手の能力は、ある程度同等か格下であれば開示される情報量は多いものの、各上になると最低限の情報しか明かされないのである。

 

「フィリア、急いでユイ姉を! 皆も急げ!」

「き、キリト君! ボスが!」

 

 全員に指示を出し、それに慌ててユウキ達が従って部屋へ駆け込む中、彼に抱き留められたままの私は死神の動きを唯一見れているプレイヤーだった。

 だから死神が禍々しさを感じる大鎌を振りかぶったのを見て、彼に注意を促せた。

 それで死神の挙動に気付いた彼は、空いている右手を向けて凍てつく氷の結晶から蒼い盾を出現させ、振り抜かれた大鎌の一撃を受け止めた。

 鎌の先端が盾に当たり、金属が衝突する音が響き渡る。

 

「ぐ……ぅ、がぁ……ッ!」

 

 防いだ瞬間、キリト君は苦しむように喘ぎ声を発し始めた。

 更に彼のHPが攻撃を受けていないにも関わらず、最大値から数ドット目減りし、今も尚減少し続けていた。

 それで思い出す。彼が新たに得た武装《ⅩⅢ》の耐久値は、彼のHP量と同等、つまり彼が死なない限り決して消えない無類の武具であると。それは彼が生きて戦っている間は武器を喪わない事だ。

 しかしこの現象から察するに、逆に考えれば、武具の耐久値が減ると彼のHPも減るのではないだろうか。恐らくそれにも幾らかの法則性があるのだろうし、ここまで気付かなかったのは多分彼のHPリジェネによってHP減少が分からなかったからだろう。

 

「ぐ……アスナも、早く……!」

『グォォォオオオオオオオ……ッ!』

「ぐ、ぎ……ッ?! この……ッ!」

 

 だが、HPが減る事はともかく、ここまで苦しむ理由が分からない。

 たとえ敵の圧力を受けているのだとしてもここまで苦しむ表情をするだろうかと思った。歯を食い縛って押し返そうと険しい表情するなら分かるが、泣きそうなほどに苦しげな顔は普通しないのだ。それが凄く不可解だった。

 しかし考えても詮無い事なので、すぐに起き上がって私も部屋へと駆け出した。

 大鎌と盾による鬩ぎ合いを見ながら私はシンカーさん達がいる部屋に撤退した。

 しかし、部屋に入った直後、部屋の出入り口と、元来た通路への角が六角形の障壁によって閉じられ、左右に伸びる通路一本のみにキリト君一人が取り残された。

 

「そんな?! キリト君?!」

「何これ、破壊不能オブジェクトの壁?!」

 

 すぐ異変に気付いて通路へ出ようとするも、出入り口の所には六角形のパネルが組み合わさって形成された障壁が邪魔して、私達は出られなかった。

 ユウキが剣で斬り掛かるも、それも弾かれる。

 

「キリト君、転移結晶で逃げて! 死んじゃうよ!」

「いや、この部屋とそこの通路は結晶無効化空間なんだ……結晶アイテムは使えない」

「ええ?!」

 

 撤退するようキリト君に言うが、しかしそれは苦渋の表情のシンカーさんによって阻まれた。

 何故そんな事を知っているか気になって問えば、彼も転移結晶だけはストレージに入れて此処に来たらしい。帰ろうにも帰れず、ボスモンスターから逃げられる筈も無かったから立ち往生していたのだと言う。武具の類は本当に置いて来ていたのでどうしようも無かったのだ。

 

「というかこの障壁、本当に何なの?! これじゃキリトを助けに行けないじゃん!」

「何か条件を満たしちゃったから……? でも、その条件って……」

「……何にせよ、あのボスをどうにかしてもらわない限りは我々も動くに動けないな」

 

 ストレアさん、フィリアさん、クラディールがそれぞれ言って、私も揃って死神とキリト君へ視線を向けた。

 

「ッ……斬るッ!」

 

 死神が盾を突き破ろうとしている中で、キリト君は両手に死神と似たような大鎌を出現させた。

 湾曲した黒い柄、そして金色の刃を持つ大鎌《ダリア》――IS武装名は《月華美刃》――を持ち、大きく跳び上がって大上段から振り下ろした。その際、金色の刃には黒い茨のようなオーラが纏わり付いていた。

 

「……何ですか、アレは」

 

 斬撃を受けた死神には黒い十字架の文様が浮かび、そして頭上には《999》の数字が出現する。同様にキリト君の頭上にも《9》という数字が出現した。

 

「九百九十九……となると、俺の数字は九か」

 

 ポツリとキリト君が呟いた直後、仰け反りから復帰した死神が大鎌を振るった。

 再び盾でそれを防いだ彼だったが……彼の頭上の数字が《8》になるという変化が起こった。

 

「キリト君、頭上の数字が一減ったよ?!」

「なに? ……盾で防ぐのもダメなのか。あと八回、か」

 

 あと八回。盾で防いだ事で減ったとすれば、それは多分何かの制約に引っ掛かったからだ。

 しかし、あの数字は何を表しているのかと思った。

 そう思考する私の視線の先で、キリト君は盾と大鎌を消し、両手に《エナジーシューター》を、そして背中に六本の槍《ドラゴニックスピナー》と炎の戦輪《エターナルブレイズ》を出現させた。

 それらで猛攻撃を仕掛け、攻撃が当たる度に死神の頭上に表示されている数字が凄まじい勢いで目減りしていく。

 ただしHPは一ドットたりとも減っていなかった。

 

「あ……まさかあの数字、ゼロになったら問答無用で死ぬって事?!」

「ッ?!」

 

 それを見ていたユウキが、私が疑問に感じていた部分の答えを導き出した。

 確かに、そう考えれば辻褄が合う。HPが減らない理由が、もしもそのHP量をあの数字に還元していたからだとすれば、さっき盾で大鎌の一撃を防いだ時のキリト君のHP減少が発生せず、代わりに数字の減少が発生した事にも説明が付くのだ。

 あの数字がゼロになった時、キリト君か死神のどちらかが死ぬ。HP量の多さで、恐らく死神の方に桁が多く移ったのだろう。

 つまりキリト君はあと八回、《The Fatal scythe》は残り八百回余り攻撃を受ければ死ぬ。

 ボスがそれくらいで死ぬなら安いものだとも思うが、キリト君が受けられる許容回数があまりにも少な過ぎて、圧倒的不利に立っているとしか思えない。両手に持つエネルギーボウガンの紫色の矢を断続的に射出し、弾切れを起こしては構えて再装填し、また射出しを、チャクラムと六本の槍の操作を同時に行って、死神の数字を刻一刻と高速で減らしていってるとしてもだ。

 不幸中の幸いなのは、数字の減り方がヒット数であってダメージ量で無い事だろうか。そのため一撃死の危険性は皆無となっている。

 しかしそんな事、何の気休めになりはしない。彼はこの地下ダンジョン最奥に辿り着いた時点で既に消耗し切っていたのだから。

 

「キリト、後ろッ!」

『グォオオオ……ッ!』

「ッ……!」

 

 無数の紫の矢、風を纏った六槍、炎を噴き出す戦輪の猛攻撃に襲われていた死神が、唐突にその姿を消した。そして一瞬後、大鎌を振りかぶった状態でキリト君の背後に出現した。ユウキが気付いて指摘し、それを聞いたキリト君は後ろへ振り返るが、足をもつれさせ転倒してしまった。

 しかしながら、その転倒は逆に幸運でもあった。死神の大鎌は床に倒れた彼の直上を擦れ擦れで通り過ぎて、ノーダメージで済んだのである。

 九死に一生を得た彼はすぐに上体を起こし、死神から距離を取るべく大きく後ろへ跳躍した。距離を離し、再び二丁のエネルギーボウガンを構えた彼は、死神の周囲に風の六槍と炎の戦輪を展開する。

 彼の頭上の数字は《8》のまま、対する死神の数字は《672》とこの短時間で三百と少し減っていた。

 ペースとしてはこの分だと彼の勝ちになるだろうが、今のキリト君は、これまでと違って疲労で本調子では無いし、何よりもどこか覇気が無い事から、ひょっとすると一気に押し込まれるという可能性も無くは無い。中・遠距離の攻撃手段を複数有しているし、威力こそ《二刀流》ソードスキルに劣るものの連撃能力は遥かに上回っている事からも、この勝負はまだ普段に較べてやり易くはあるだろう。

 しかし相手は、攻略組を苦しめ、第一クォーターボスの再来とまで言わしめた、あの第六十七層ボスと全く同じ。状態異常に関しては一切無効化、ボス攻略レイドのタンクのHPを大幅に削った恐るべき攻撃力も今はあまり意味を為さないとしても、さっきの瞬間移動能力を始め、ボスとして有する多くの特殊能力は、これまで戦ってきた多くのフロアボスと一線を画すものがある。

 相手の情報がまだあるだけマシなのかもしれない。

 それにキリト君はつい最近、恐るべき転移能力を有したボスと一対一の死闘を繰り広げてもいる、転移系ボスの経験は他の誰よりも上である事は間違いない。加えて今までと違って、今の彼には距離を離しても攻撃出来る手段がある。

 最悪敵から逃げながら攻撃していれば、あの数字をゼロにする事も可能だ。

 だがしかし、これまで強さに執着し、決して敵前逃亡を良しとしなかった彼が今更そんな戦い方をするだろうか?

 否、断じて否だ。キリト君は自分の命を軽く見ている、故にそんな臆病な戦い方をするくらいなら、いっそ毅然として無茶で無謀な戦い方を平然と取りに行く。

 追い抜こうとしている背中の人物が、決してその選択をしないという思考の下にそうするだろう。

 

「ッ……」

 

 まただ。また私は、見るだけしか出来ないのだ。逃亡も出来ず、安全で堅実な戦い方も恐らくはしない彼が一人で戦う様を、私は第一層の頃から何度も見て来ている。その戦いに入れないでいる。

 今はシステム的に入れなくなっているが、さっき、彼と一緒に手を引いていればまた違ったのではないだろうかと考えてやまない。

 ぎり、と奥歯を強く噛み過ぎて歯軋りの音が上がった。強く握り締めた右手を障壁に打ち付けるが、帰って来るのは無味乾燥な硬い感触だけだ。

 

「キー!」

 

 ふと、後ろからユイちゃんの声がした。

 彼女は義弟となる彼に付けた渾名を呼びながら、必死の表情でこちらに走って来た。障壁に阻まれる筈が、そのまま通り抜けて激戦地となっている通路へ出てしまった。

 

「は……はぁ?!」

「ちょ、ユイちゃん?!」

 

 入り口のすぐ前に居た私とユウキは仰天して、すぐさま連れ戻そうと手を伸ばすのだが、どういう事か私達はそのまま障壁に阻まれて出られなかった。

 その間にもユイちゃんは死神と戦うキリト君の下へと駆けて行き、その背中が少し小さくなっていった。

 

 ***

 

 死神と俺の頭上に命の数字を出した《死閃鎌》専用ソードスキル《デス・カウント》により、本領を発揮出来ない不利を僅かなりとも軽くした俺は、ヒット数と距離を離しての攻撃に長けた二丁のエネルギーボウガン、風を纏った六本の槍、炎を噴き出して追撃する戦輪を駆使して、どうにか渡り合っていた。

 戦闘開始から一分も経過していない今、死神の頭上に表示されている数字は最初の辺りから大幅に減って四百を漸く切った所だった。

 この短時間で五百回以上も攻撃回数を稼げたのは、正直《エナジーシューター》の連射性能が高い事に起因する。その分一撃のダメージ量はそこまででは無いのだが、現在重要なのはヒット数だからあまり問題にはなっていない。

 

「キー!」

「な……ユイ姉?!」

 

 三つの武器を強くイメージしているからどうにか渡り合えているし、このままなら多分勝てるだろうと僅かばかりの安堵を抱いたその時、いきなり横から聞こえた声に意識を割かれた。

 しかもその声が聞こえた距離が明らかにアスナ達が退避した部屋からでは無く間近だったので、顔も向けてしまった。

 そこには、俺に向かって両手を伸ばしながら走って来る、白いワンピース姿のユイ姉が居たのだ。

 しかし、あり得ない筈だった。

 アスナが部屋に対してからすぐ、この左右に伸びる通路一本に俺は死神と共に閉じ込められた。いや、死神に閉じ込められたと言うべきか。

 そしてアスナ達はこちらに来れないようだったから、プレイヤーは出入り不可能だと思われたのだ。ユイ姉も部屋の中に入ったのは目視しているし、通路に居なかったのは確認済みだから、あの部屋から出て来た事にはなるのだが未だに障壁が張られているのを見れば謎しか生まれない。

 何故出て来られた? そして何故、ユイ姉は戦いに割り込んできた? その二つの疑問が脳裏に浮かぶ。

 

『グルォォォオオオオオオオオオ……ッ!!!』

「チィ……ッ! ユイ姉!」

「ぁ……?!」

 

 しかしその疑問を発する暇などありはしなかった。当然だ、今はボスと一対一で戦っていたのだから。

 死神が咆哮を轟かせ、一時的に動きを止めた六槍と戦輪の包囲を抜けて突貫してくるのを一瞥して、俺は両手に握っていたエネルギーボウガンを消し、ユイ姉を両手で抱き寄せるとその場から全力で跳び退いた。直後、一瞬前まで俺とユイ姉が居た場所を、空気を切り裂く音と共に大鎌が通り過ぎた。背中に嫌なものが走り、心臓の鼓動が早まる。

 さっさとユイ姉を部屋の中に戻したい所であるが、障壁を張られているのを見るに多分無理だ。

 じゃあどうやってユイ姉は出て来たのだという話になるが実際どうやって出て来たのか、そもそもその瞬間を見ていない以上、無駄という可能性がある行動を取る訳にもいかない。

 せめて疲労困憊さえしていなかったら試す程度の余裕も持てていたのだろうが……

 ともかく現状は、ユイ姉を庇いながら戦うより他は無い。

 

「……ユイ姉、絶対俺から離れないで」

「えと……あの、キー……私……」

「……?」

 

 両手をユイ姉から離し、再びエナジーシューターを死神に構えて相対した俺に、些か聞き流せない単語が聞こえた。

 ユイ姉は今まで自分の事を指す時は《ゆい》だったのに、それが何時の間にかアスナのような一人称になっていたのだ。

 そういえば心なしあどけない口調が無くなっている気もする。

 

『グゴォォォオオオオオオオオオオオオッ!!!』

「ッ……今は気にしてる暇なんて無いな……!」

 

 中々大鎌に当たらない事に業を煮やしたのか、怒っているかのように咆哮を轟かせる死神に意識を戻す。頭上の数値は漸く三百を下回ろうとしていた。

 対する俺は盾で防いだ時以外は一撃も喰らっていないので《8》を維持している。ユイ姉を護りながら戦わなければならなくなった時点でかなり辛い事になったが、やってやれない事は無い。HPを削るのではなく、極論攻撃を当てて行けばいいのだから。

 勿論誰かを護りながらボスと戦うなんて困難を極める、たとえ相手の情報の大半を握っていようともそれは変わらない。

 俺自身、ユイ姉を護れるかという疑念を抱いている。今までと違って戦う理由や強さを求める理由すらもが曖昧だ。

 だが……

 

「……護るのに、理由なんて要らないな……」

「ぇ……?」

 

 左隣に立つユイ姉の顔を横目で見て、ふっと軽く俯きながら瞑目する。どこか俺に似た容姿を持つ義理の姉は小さく声を発したが、俺はそれを聞こえなかったかのように視線を死神へと向けた。

 戦う理由すらもが曖昧なのに、俺はユイ姉を護ろうと必死に思考を動かし、行動している。それはただ護りたい、そう思ったが故だ。そこに俺の過去だとか心情だとか立場だとかは関係無くて、ただユイ姉を護りたいと思ったから無意識に行動し、思考していた。

 俺はユイ姉を護りたい。少なくとも、今はそれが戦う理由としても十分だろう。

 

「ただ護る為に……出し尽くすッ!!!」

 

 口ではそう発しながら、同時に俺の脳裏では別の言葉が紡がれていた。

 

 

 

 ――――白いもう一人の俺よ。俺でもあり、また俺では無いもう一人の俺よ。お前が言っていた事、結局何かは分からない……けれど、今のこの理由だけは、決して否定させはしない

 

 

 

 ――――もしも見ているのなら……ユイ姉を護る為に、力を貸してくれ

 

 

 

 ――――頼む……!

 

 

 

 それはほんの一瞬の、俺の思考だった。

 もしかしたら存在しない俺の空想なのかもしれない、あるいはアレはただの俺の夢なのかもしれない。けれど、そうとは思えない何かが感じられたからこそ、俺の中にはもう一人の白い俺がいるのだと、半ば確信めいた予感を覚えていた。

 

 

 

 ――――ハッ……いいぜ、《王》よ……力、貸してやンよ。その代わり、しっかり護り抜けよ?

 

 

 

 俺の声に応えた声が果たして幻聴だったのかは分からない。

 しかし続けて発生した現象が無くとも、俺は後も、確かに存在するもう一人の俺の声だと信じ続けただろう。

 気付けば俺とユイ姉の周囲には、俺達を護るかのように細剣やアックスブレード、大鎌、曲剣など、今は防御も危ういため氷の盾を除く全ての武器が展開されていたからだ。両手に握っている武器も、何時の間にかエナジーシューターから片刃の闇と光色の二刀に変わっていた。

 当然ながら俺はそんなイメージはしていない、ここまでするだけの余力も無かった。

 ならばそれは俺では無い俺……あの白い俺がやったとしか思えなかった。

 

「これは……?!」

 

 ユイ姉が周囲を、そして俺を見て瞠目する。

 そんな義姉に微笑みを向け……表情を改め、俺を恐れているかのように僅かに距離を取り、様子見をしていた死神へと視線を向け直した。それを受けた死神は、まるで圧倒されたかのように、更にじりっと下がる。

 

「生憎本調子とは言い難いけど、俺の……いや、“俺達”の力を見せてやる!」

『調子の良い《王》だぜ、まったく』

 

 俺ともう一人の俺が力を合わせて戦うのだから、こう宣言するのが正しいだろうと口にした言葉に、白いもう一人の俺が脳裏で呆れ笑いの口調で言葉を返した。

 ここまで来ると明らかに存在している事になるが、他の皆には聞こえないだろうし、脳内での会話だけに留めておこうと心に決める。

 気を付けないと、と胸中で苦笑を洩らしながら、俺は襲い掛かって来た死神の大鎌を二刀を交叉して掲げる事で止めた。

 その間に、白が動かしているのだろう様々な武器達が黒い襤褸切れを纏う死神に襲い掛かり、頭上の数字を一気に目減りさせていく。さっきの俺は両手でエナジーシューターを撃っていたので幾らか無駄撃ちがあったが、今は一切無いせいか、まるでスピードメーターであるかのように数字が減っていった。

 

『グガァッ!』

「ハッ!」

 

 アックスブレードの痛烈で重い一撃を受け、死神が怯んで大鎌を下げた。

 その隙に軽く跳び上がり、俺は二刀を眼前の敵へと高速回転させるよう投擲した。二刀は闇と光の尾を引きながら回転し、死神を斬り刻み……そのままブーメランのように俺の手元へと帰って来る。

 《二刀流》と《投擲》の熟練度が一定値以上になった為に習得した複合ソードスキル《デュアルレイド》、前方に二刀を投擲すると発動する十連撃技だ。

 出が速く、また発動後の硬直も極端に短いという利点がある。

 

「ォォォォオオオオオオオオオッ!!!」

 

 それを合計で四回繰り返し、五回目の投擲は斜め上への投擲だった。

 すると二刀は闇と光の尾を引きながら一枚の円盤のような形を形成し、前方の上下左右全範囲を乱舞した。そして最後、俺の手元に戻って来て、それまで刀身に集めた力を解放するかのように闇と光色の旋風が巻き起こる。

 《デュアルレイド》の上位技にあたる二十連撃範囲ソードスキル《ロンドレイド》。

 

『グゴガアアアアアアアアアァァァァァァ…………!』

 

 それが死神へのトドメとなった。

 《The Fatal scythe》は頭上の数字が《0》になった為に五本あるHPゲージを一瞬でフル状態から全損し、その姿を蒼い結晶片へと散らしていく。

 《死閃鎌》専用ソードスキル《デス・カウント》の力と白い俺の手助けで何とかなったものの、どちらかが欠けていたらユイ姉を護れなかったなと、少し厳しい表情で俺はそれを見届けた。

 

「キー!!!」

「キリト君ッ!!!」

「キリトッ!!!」

『《王》、後ろだッ!!!』

「ん……?」

 

 終わった。そう思っていた所に響いたユイ姉、アスナ、ユウキ、そして白い俺の声に何事だと思って後ろへ振り返る。

 瞬間、ゴッ!!! と凄まじい衝撃が体を走り抜けた。

 視界が一気に揺らぎ、何かに衝突して止まり、また動き出して、今度こそ止まった。

 

「ぁ、ぐ……?!」

 

 起き上がろうとしても、体が言う事を聞かなかった、感覚が無かったのだ。

 痛みすら無いという事は、痛みを感じられないくらいの激痛が一気に走ったという事である。HPを見れば、これでもかなり堅実にレベリングをして一七五レベルに達している俺でも、何と今の一撃でフル状態から一割弱まで減少していた。

 加えて大ダメージによるものかスタンも付与されていた。恐らく天井に叩き上げられ、床に落ちた時の速度ダメージもあるにはあるだろうが、多分それは微々たるものなので大半は俺を吹っ飛ばした大本の一撃が原因だった。

 だが、それは一体何なのか気になり、俺は視線を上に上げた。

 

『グオオオォォォォォォ……!』

「な、ん……?!」

 

 何だと?! という叫びは、残念ながら明確に発する事は出来なかった。

 たった今倒して、蒼い結晶片へと散っていったのを確認した筈の《The Fatal scythe》を見た俺は、まともに話す事すらも難しくなっていたのだ、主に驚きで。

 次に驚いたのは新たに現れた死神のレベルだった。

 さっきの個体は一五〇、まだ俺より低かったから渡り合えはした。レベルが高ければ高いほど基礎ステータスも高くなり、行動全般に補正が掛かる。SAOのレベルが重要視されるのはここに起因している。

 新たに現れた死神のレベルは、二〇〇だった、俺よりも二五も上である。流石の俺もその差を跳ね返せるとは思わない。

 いや、そもそもスタンを喰らい、HPを危険域にまで落としている現状からの逆転劇なんて出来よう筈も無い。

 《ⅩⅢ》も、動かすのは強いイメージとは言え装備しているのはプレイヤー《Kirito》だ、俺がスタンしているためどれだけ強く想起しても、さっきまで縦横無尽に荒れ狂っていた武器達は床に落ちたままで何ら変化を来さない。

 

『ゴオオォォォォ……!』

「ッ……ユイ姉……逃げ、て……ッ!」

 

 死神は虫の息となり、また武器をさっきまでと異なって浮かす事も出来ないと見抜いたからか、離れた所でくしゃりと表情を歪め泣きそうになっているユイ姉に顔を向けた。

 ユイ姉もそれに気付き、びくりと震えながら顔を向けた。

 俺は一瞬後、大鎌に斬り裂かれ、恐怖の表情で蒼い結晶片へと砕けるユイ姉を幻視した……

 

 

 

「……大丈夫です、キー」

 

 

 

「ぇ……」

 

 しかし……ユイ姉は、怯えを消し、穏やかに微笑みながら瞑目した。

 その微笑みはどこか嫌な予感を覚えさせるもの、タイミング的にも明らかに微笑むのはおかしかった。

 

『ゴオオオオオオオオオオッ!!!』

 

 そして、死神はユイ姉へと近寄って、大鎌を大きく振りかぶり、振り抜いた。

 それは速く、重く、ユイ姉など紙のように斬り裂き、殺してしまえると分かる威力を内包していると分かる一撃。

 だが、そうはならなかった。

 バシィンッ! と乾いた何かが弾け飛ぶような音と共に、大鎌の切っ先が紫色のパネルに遮られたからだった。あり得ない筈なのに、まるでユイ姉を護るように出現したそれには、【Immortal object】と表記されていた。

 ユイ姉は、不死属性を有していたのである。

 微笑みを浮かべていた理由は、自身が決して死なない存在であると認識していたから。

 つまりは、恐らく記憶を取り戻したからだと理解し、言い知れない何かが俺の胸中を貫いた。

 

「……消えて」

 

 瞑目していたユイ姉は、瞼を持ち上げて死神を見上げ、一言そう静かに言った。

 殺せない存在に動揺しているのかじわりと死神が後退し、静謐が場を支配する中で耳朶を打ったそれは、似つかわしくない冷徹なものを感じさせた。

 ユイ姉は右手をゆったりと横に持ち上げた。すると足元から、ユイ姉の周囲を護るように朱い炎が立ち上り、それらが右手の平に収束し、長い形状へと収斂されていく。猛々しい炎から姿を現したのは一本の長大な紅い両手剣だった、その刃からは絶えず劫火を噴き出していて、戦輪《エターナルブレイズ》よりも激しい熱量を伴っているのか周囲の空間が揺らめいていた。陽炎を発生させていたのだ。

 それを両手で持ったユイ姉は、軽い体こなしで、しかし巨大な死神の顔と同じ高さ――約六メートルの高さ――まで一息に跳躍した。そして大上段から、それを振り下ろす。死神はそれを見て、大鎌を掲げて防御の構えを取った。

 直後朱い刃と黒い柄が衝突し、爆炎と衝撃波が発生した。

 未だスタンから抜け出せないでいる俺は吹っ飛ばされないように、どうにか動く右手で床に張り付き、ユイ姉と死神の戦いの趨勢を見守った。

 

『グォォオオオオ……オオオオォォォォォォォ……!』

「……消えてッ!!!」

 

 悲鳴にも近い雄叫びを上げながら死神は抵抗していた、火焔をその身に受けながらも押し返そうとしていた。戦いはユイ姉の有利で動いていたのである。

 それを押し切るようにユイ姉が一際強く先ほどと同じ言葉を口にし、両手で握る火焔の両手剣を押し出す。死神の大鎌の柄は真っ二つに折られ、真下へと剣が振り抜かれた。その切っ先をなぞるようにして火焔の波が死神の後ろまで抜けて、斬れたのだと理解する。

 一瞬の膠着。

 それは死神が再度砕け散る光景へと移る事ですぐに破られた。どこか炎に灼かれ、消滅していっているようにも見えたが、それもユイ姉が手にしていた剣を炎へと戻し、消した事で意識が外れた。

 

「……ユイ、姉……?」

「……全部……全部、思い出したよ……キー……」

 

 泣きそうな笑みを浮かべ、スタンが解けても床で俯せになったままの俺に歩み寄って来たユイ姉は、そう言った。

 記憶を取り戻した事は喜ぶべき事の筈なのに、それでも素直に良かったと言えない何かを感じて、俺は再び口を開く事が出来なかった。

 何を言えば良いか分からない、今の気持ちを言葉にする事も出来ない。

 そんな状態で固まる俺をユイ姉は抱き上げ、そして抱き締めて来た。抱擁の力は、僅かに強かった。

 唐突な事に混乱している俺は、アスナやユウキ達の声も、どこか遠く感じられていた。

 

 






 はい、如何だったでしょうか。

 死神を消し去る前後のユイの様子を若干変えております、こっちの方が家族という感じがある気がしたので。

 そして何気にキリトがチートフラグを立てました、成立したら今後キリトはほぼほぼ敵無しになります。ようやっと一夏アンチ物に多い最強物に辿り着く……弱点もしっかりあるので、無敵という訳では無いのがポイントですよ? どんどん成長していくので弱点も少なくなっていきますし、耐性も付いて行きますが。

 途中、盾で攻撃を防いだ際に苦しんでいましたが、皆さまキリトが激痛を覚える状態なのは覚えていますでしょうか? 実は《ⅩⅢ》の盾で防御すると耐久値減少=HP減少=痛み発生という等式が成り立っています。

 武器で攻撃した場合も耐久値減少は起こりますが、あくまで防御する防具で防いだ場合にのみ痛みを受けるという感じです。そうでなければ攻撃する度に痛みを覚える事になってしまいますから。

 本編で何れ語る予定ですが、疑問に思われたと思うので念のため。

 ちなみにキリトが一人通路に放り出された理由も次話にて明かされます。一応理由はキチンとあります。次話でシンカー救出劇&ユイ編終了です。

 では、次話にてお会いしましょう。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。