インフィニット・オンライン ~孤高の剣士~ 作:黒ヶ谷・ユーリ・メリディエス
どうも、おはこんばんにちは。
アンケートの結果、僅差で裏が多かったので、裏をお送り致しますゾ。
視点:??????・????
字数:約五千
ではどうぞ。
協定世界時、フランス時間《二〇二五年 七月十日 六時半》
フランス、パリ中北部、イル=ド=フランス地域圏オー=ド=セーヌ県《デュノア社》本社、IS離着陸場。
静かに朝焼けに照らされる時間帯。
フランスの大手IS企業であるデュノア社は、早くも一部分だけ明かりが点いていた。
IS操縦者とは、公の扱いではオリンピック選手のような《スポーツ選手》の扱いだが、その裏では国防力として数えられているだけあって《軍人》という二つの側面を有する特殊な存在だ。更に言えば元々は航空宇宙事業に用いられるマルチフォームスーツなので、航空宇宙工学などに関しても学ぶ極めて多才かつ多忙な職業でもある。
ファッション誌やテレビCMに顔出しするからかアイドルのようなものとして見られがちだが、むしろ一般的な側面の方が割合としては少ないのだ。
そんな職業だからこそ、いつ急に仕事が入るか予想を付けづらい。
「う~……まだ眠い……」
いつもより早く起こされたせいでショボショボする眼をくしくしと擦る。眼が傷つくのであまりしてはいけないという話だが、人間、欲求には抗い難いものである。
とは言え、仕事に行きたくない訳ではない。
デュノア社に舞い込んできた仕事はIS操縦者を登用するほどの大事だった。しかしそれは、フランス国内で起きている事に対してではなく、友好国・アメリカ合衆国で起きている問題だった。しかもそれを伝えてきたのは国際IS委員会会長《篠ノ之束》で、彼女が直接各国に救援を呼びかける程の異常事態である。
それを知らされたフランス政府上層部もかなり困惑したらしいが、気持ちは凄く分かる。フィクション映画の如く死者が蘇り、人を襲い、噛まれれば同じように
しかしその話は中継ニュースで報道されていた。ニュースアナウンサーとカメラマンが避難している様子を伝えるライブ配信もあり、それが決定打となったらしい。他国に遅れてはならない、そしてそんな事態を引き起こした”何か”を国内に持ち込んではならないとし、即座にIS操縦者の投入が確定した。軍の動員も想定しているというが、むしろ被害が広まるばかりだろうと今は保留中だ。
そこまで判断したフランス政府だが、対岸の火事として見ているのか、あるいは被害を恐れているのか。動員された戦力はIS操縦者一人だけだった。
しかも国家代表ではなく、代表
選ばれた哀れな人柱はデュノア社に所属するテストパイロット《シャルロット・デュノア》。
――すなわち自分の事だ。
「あーあ……ホント、やだなぁ……」
機体の準備が完了するまでの間にISスーツに着替え、それでも時間が余ったのでベンチに座って待っていると、嘆息を漏らしてしまう。
IS適正が高かった事から去年から操縦者となり、今年初めに国からも代表候補として認められた自分は、デュノア社の社長《アルベール・デュノア》の唯一の子だ。しかしながら、自分は
では父は自分を愛してくれたかと言えば、そうではなかった。
そもそも一年前まで、自分は父が誰か、存命しているかすら知らなかったのだ。
*
《シャルロット・デュノア》にとって実母は唯一の家族であり、最愛の人だった。物心付いた時からの母子家庭。他人に哀れみを、時に侮蔑を受けもしたが、優しい母と暮らせる幸せの前では大したことは無かった。
しかし、子供を一人育てつつ、生活を保てるだけのお金を稼ぐのは、ひとり親ではかなり無理がある。
心配させないためかおくびにも出さなかった母は、実際はかなり無理していたようで、《シャルロット・デュノア》が十三歳になる年に彼女は息を引き取った。過労と心身疲弊、そこに追い打ちを掛けるように病が襲ったのだ。
そこで、本当に唐突に、父を名乗る男が現れた。
厳密に言えば部下だったのだが、連れていかれた先は新聞やテレビでもよく聞いた《デュノア社》で、父と名乗ったのはその社長。母が死んだ事も含めて現実味が薄く、最終的に父に引き取られると決まっても認識と理解が追い付かなかった。
仮に追いついたとしても、父に引き取られる結末は変わらなかっただろう。
そしてあれから一年、未だに父との付き合い方に答えは出ていない。父に会ったのもたった二回、会話そのものはほんの数回程度。しかも本邸と別邸で生活空間も異なるせいで猶更顔を合わせない。戸籍上も娘なのは真実だから本邸まで顔を出してもおかしくはないのだが、一度呼ばれて行った時に本妻に殴られて以降どうしても行く気になれなかった。
父について知っている事は、己の実の父である事。
そして――愛する母を捨てた男、という事実だけ。
社長となるほどのポテンシャルがあるなら、女遊びの一つや二つするのだろう。
だがその一つが実母に当たり、捨てられたせいで母は苦しみ、命を落とした。そう考えると父に対する忌避感、嫌悪感が沸き上がる。同時に、母を喪った喪失感と悲哀が込み上げる。なんの因果か適正があったからテストパイロットなんてしているが、半ば惰性で生きているも同然だ。未来に展望なんて見出せない。
だから、深夜に電話で叩き起こされ、『アメリカへ飛べ』と短く言われた時。メールという形で指令を下された時。その作戦が、どれだけ命の危険があるかを知った時。
そうとしか、思わなかった。
*
「――シャルロットさん、準備出来ました」
俯き、目を瞑って過去を思い返していると、作業員の一人が声を掛けてきた。顔を上げれば、離れたところでライトに照らされたオレンジ色の機体【ラファール・リヴァイブ・カスタムⅡ】。
ありがとうございます、と礼を言いながら専用機に近付く。
自分の専用機はカスタムされた【ラファール・リヴァイブ】だが、それを施したのは全て自分だ。
とは言え、元となる機体の設計は元々非常に安定しているため、
装甲の方も手を加えている。
オリジナルの機体は濃紺色に四枚の
カスタムⅡは、背中に背負った一対の推進翼が中央部分から二つに分離し、より機動性・加速性を向上させている。胴を守るアーマーも小さめにシェイプアップされており、マルチウェポンラックはとしてフロントスカートも付属されて防御性能もある。肩部分と右腕のアーマーは無いが、代わりに左腕にシールドと一体化した装甲を着けて盾に隠れながら撃てるようにしたのでむしろ射撃の邪魔になりにくい。
ラファールには元々『飛翔する武器庫』という異名があるが、それに拍車を掛けつつ、より機敏に動けるようにした機体がカスタムⅡという訳である。
通常、ISの兵装は五つから八つが平均とされる。なぜならあまりに多くの装備を積んでいても同時には使えず、更に出し戻しの手間があり、多くても意味を為さない事の方が圧倒的だからだ。その定石を無視した形になるが、テストパイロットなので試す武装は多いしいちいち取りに戻るのも面倒だから特に問題を感じた事はない。代表候補生としての模擬戦では試合の度に武装を変えてたお陰で相手の対策を全て潰せたという事もあったほどだ。例の異名を助長した気もするが、気にすることでもない。
オレンジに染められた装甲に手を当てる。ヒンヤリとしながら、どこか熱を持っているようにも感じた。
「……よろしくね、ラファール」
ほんの少しの感慨を込め、機体を一度待機状態に戻し、すぐ再展開する。専用機だと搭乗席に乗り込む必要が無いから多少楽だ。
しかしすぐには飛び立たない。オーバーホール直後のため、起動シークエンスを入念に行う必要があるからだ。
時間にしておよそ五分。
ISで、しかもコアが自動で行ってくれるからこそその短さだが、手持ち無沙汰なせいで思考するには十分すぎる。
考えるのは、自分が選ばれた理由について。
残念ながら、自分は自身の立場についてそこまで楽観視していない。代表候補生にして専用機を持っているのは実力があるという対外的な指標の一つになるが、自分の場合、企業所属なので専用機を持つ事はそこまで珍しくはないのだ。
更にデュノア社についてよく知っている人であれば、もっと別の観点から攻めるだろう。
現在フランス国内にあるIS企業のトップはデュノア社だ。必然、コアの保有もデュノア社が多めになっている。そしてISが国防に直結する以上、それを国が支援するのは必然の流れと言える。
だが国の財源とて有限だ。これはダメだと見切りをつけ、支援を打ち切る事とて少なくない。
そしていま、デュノア社はその瀬戸際に立たされている。
欧州には現在、欧州連合からなる統合防衛計画《イグニッション・プラン》があるが、フランスはそこから外されている。
つまり国防に際し、フランスは自国だけで対処しなければならない状況にあり、第三世代機の開発は急務とされている。資本力で負ける国が最初のアドバンテージを取れないと悲惨な事になるからだ。
世界第三位のシェアを誇るデュノア社の売り【ラファール・リヴァイブ】は、各国で配備、ライセンス取得までされるほど量産機・訓練機として非常に安定した性能を持つが、所詮は第二世代。しかも最後発となったせいで、いま世界が競争している第三世代の研究・開発に取り組むことが後に後にと先送りにされていた。加えて圧倒的なデータ不足、時間不足、更に人材不足なせいで第三世代機のアイデアも中々纏まらず、結果ISの開発支援予算を大幅にカットされた経緯がある。安直に言えば、経営難だ。
《イグニッション・プラン》も二回を終え、第三回になろうとしているが、次に時期主力機の候補として名を挙げられるものを作らなければ援助を全面カットされ、更にIS開発許可も剥奪される事になっている。
もうデュノア社には後が無いのだ。
フランス政府から指令が下ったのは、デュノア社なら潰れても問題ないと切り捨てているからか、あるいは社長の方が社運のために立候補したかのどちらかだ。
あと数年の間に開発できなければ会社は潰れ、社長も社員も、当然自分も路頭に迷う事になるが――
「……ま、どうでもいいか」
母の愛を喪って。
父の愛は、元から無くて。
救ってくれる人もいない。
未来に展望はなく、生きる意味も元よりなし。
縋れるものは愛機だけ。
大切なものなど他にない。
だから、この命も惜しくはない。
『システム、オールグリーン』
「――――さぁ、行こうか、ラファール。フライトのお時間だ」
・IS操縦者
スポーツマンにして軍人にしてCMに出演する人もいればファッション誌の仕事もするし何なら教鞭も執る多彩にして多忙な業種が決まっていない職業
過労死待ったなし()
そのぶん収入もすごい
・シャルロット・デュノア
同人誌で一強を誇るほどの人気を誇る《インフィニット・ストラトス》一期ヒロインの一人。
かなりのお母さんっ子。
専用機【ラファール・リヴァイブ・カスタムⅡ】の搭乗者。
登場当初はデュノア社の経営難を立て直すべく第三世代機【白式】のデータを抜くスパイだったが、原作一夏に絆されてスパイ活動をやめた子。人当たりがよく、貴公子という風情の子だが、独占欲が強くて結構腹黒い一面がある。『ウソついたらクラスター爆弾飲ーます♪』の指切りげんまんをにっこにこしながらするのが代表例(震)
原作一夏の如く救った人がいないので精神やられて病ん病んしてる。こんな状態から『シャルの味方だ』ムーヴされればそりゃあ腹黒が似合うヒロインにもなるよねって話() 逆にそれでゾンビショックを耐え抜く可能性すらある。
気になる人はこのサイトで『シャルロット ヤンデレ』を引いてみて?(おめめぐるぐる) ニコニコ動画のチョコボレーシング、シャルも中毒性があってオススメ。
原作ではデュノア社所属の非公式パイロットながら国家代表候補という国家公認のIS操縦者というよく分からん矛盾を抱えていたが、本作では非公式ではなく、専属パイロットとして登録されている。なので今回の国外に出る指令の候補に挙がっていた。
『他国に遅れてはならない』とあるように、どうやらフランス以外にも同じ要請があったようだ。
おや……? 原作ヒロインって、一名を除いて国家代表候補でしたね?
・サクラメントとの時差(アメリカ時刻9日PM10時)
イギリス:5時間(10日AM3時)
フランス:8時間(10日AM6時)
ドイツ:9時間(10日AM7時)
中国:16時間(10日PM14時)
日本:17時間(10日PM15時)
・サクラメントまでの距離問題
イギリス: 8.032km
日本: 8,352km
ドイツ: 8,990km
フランス: 9,041km
中国:10,493km
・速度問題
原作【
原作紅椿:2,450km以上
他、原作機体2,450km以下(高機動オートクチュールを使えば一部上回る)
銀の福音以上で四時間足らず、それ以外で四時間~五時間ほどアメリカまで行くのに要する。
ちなみに宇宙に飛び立つには地球脱出速度『約 11.2 km/s(40,300 km/h)』を出さなければならないので、現行ISは約二十倍の加速力を獲得する必要がある。
そして、それに向けた機体は束博士の『黒』シリーズである。
――女権団事件でのクロエ、対【白式】戦でハイパーセンサーを使った反応速度超速の秋十が【黒椿】を見失った理由がこれである。
バイオのいいところって、犠牲になる市民達さえ抜きにすれば、国家・国境を越えての活動の理由付けが楽って事だと思います(邪悪)