インフィニット・オンライン ~孤高の剣士~   作:黒ヶ谷・ユーリ・メリディエス

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 どうも、おはこんばんにちは。

 やや短めですがユルシテ……()

視点:山田真耶

字数:約四千

 ではどうぞ。




ChapterEX:片翼の天使 3

 

 

太平洋上空

 

 

 海を飛び続けることおよそ二時間。

 事態が切迫しているため高速戦闘を重視した後付装備(イコライザ)、あるいはパッケージを使用したお陰で、通常ならもう一時間を要するところを、目的地に到着するまであともう少しというところに来ている。これだけ縮められたのは幸いだ。

 とは言え、そこはかとない不安には駆られている。

 太平洋を飛び始めてから程なく、ハイパーセンサーによって測定不可能レベルのSEの渦と大質量の岩塊――『メテオ』を認識できたからだ。

 何千キロと離れている時点でも見えるほど巨大なそれを見て不安を抱かない人はいないだろう。

 

 ――あの下で、”彼”が戦っている。

 

 自分の半分ほどの歳の子供が世界を守るため戦っている。彼にとって世界を守る事は手段であって目的ではないが、あのメテオを看過すれば彼が大切に思う全てを失う事になる。それを防ぐために命を懸けている。

 それは、あまりに分の悪い戦いだ。

 敵はISそのもの。秋十の体を依り代にしたネオ・コアのAIがVTシステムで暴走した【白式】を掌握し、立ちはだかっている。反応速度もさることながら、扱う技術は世界最強その人のデータ。データを忠実に再現するAIだからこそ脅威度は跳ね上がる。かつて《ラウラ・ボーデヴィッヒ》がVTシステムに取り込まれたが、あの時とは比べ物にもならない。

 ましてや今の彼はISを使えない。

 傷の修復も出来ないという。

 まったくの生身で、最強が操るISに挑むも同然の戦力差。

 今回ばかりは無理だろうと思った。

 

「まったく、驚きですわ。三十分も一人で持ち堪えているなんて」

 

 その結論は、道中で合流した他国の操縦者も同様に抱いているようだった。だからこそその言葉には多分の驚きと感嘆、ほんの少しの呆れを内包している。

 それを言ったのは金髪を風になびかせ、青の瞳を持つ美麗な少女だ。

 彼女は英国代表候補性《セシリア・オルコット》。

 貸与されている専用機は【ブルー・ティアーズ】。欧州連合が主導する統合防衛計画《イグニッション・プラン》に於いて、英国が研究・開発を進めている第三世代機。特徴的なフィン・アーマーを四枚背に従え、王国騎士のような気高さを感じさせる鮮やかな青の機体。

 第三世代機は往々にして《イメージ・インターフェース》を内蔵しており、操縦者の思考に応じて武装を遠隔操作出来る。英国は主に遠隔射撃――要するに移動砲台――の開発に専念していた。

 特筆すべきは『BT兵器』と呼ばれるものだ。

 無論、それは英国の独自開発の塊なので詳細は不明だ。その試験機体がティアーズ(モデル)とされる事、そして《イメージ・インターフェース》を利用した兵装である事くらいしかわかっていない。

 ともあれ彼女は、最新技術を搭載した専用機を扱う能力に加え、BT兵器を扱う力量も代表候補生達の中でトップクラスという非常に狭き門を潜り抜けた猛者という事になる。

 他にも数人は専用機持ちの候補生がいる中で彼女が選ばれたのは距離を詰めなくていい点にあると思われる。

 彼女は高速飛行を続けたまま、一枚のディスプレイを見ている。それを見てのさっきの発言だ。

 それと同じものを私も、合流した他の操縦者達も開いていた。

 ディスプレイには一つの動画が流れている。【黒椿】のハイパーセンサーの視覚ログを篠ノ之博士が中継している動画だ。国際IS委員会公式ホームページの配信枠を使ってまでしているのは、世界に迫る危機と、それに対処している現状を伝えるため。

 人が不安や恐怖に駆られるのは『未知』を恐れるからだ。それを退けたい一心で人は拠り所を求める。私達が動画を見ているのは現状把握と敵《セフィロト・マルクト》の実力を把握しておくため、ひいては『未知』という不安要素を少しでも減らすためである。

 彼女は人々の拠り所に、あの少年を定めたらしい。

 

 ――本当に、立派になったものです。

 

 およそ三年前、初めて会った時の姿が脳裏に蘇る。

 どこか弱弱しく、生気に欠ける子供だった彼は、今や闘志を燃え上がらせて最前線で戦う強者になった。不可能と言われた生身――ウィルス変異前――でISに挑む事を今もやってのけている。

 空恐ろしさを感じるのはそれだけではない。

 あらゆる人が不可能だろう事をその凄まじい身体能力でやってのけている事実だ。

 空を舞う瓦礫を足場に戦場を転々と変えていく。その最中でセフィロトが襲い来る時もあれば、隙を突いて斬りかかる時もある。

 当初に見られた防戦一方から一転し、攻防互角の状況に変わっている。

 三十分。

 ISの試合一回分の時間で、彼は互角レベルまで学習を重ねていた。

 

 つまり彼はたったの三十分で世界最強により近付いたのだ。

 

 それを、私はコアがSE――セフィロトが言うところの精神エネルギー――を取り込み、学習した結果だとは思わない。

 彼のそれは、彼自身による成長だと信じていた。

 

 

 

『――あ、ぐ……ッ!』

 

 

 

 だが、それにも限界はある。

 成長しているのは確かだ。しかし、それに耐え、力を振るうだけの体力がとうとう底を突いた。強靭な精神力で幾度となく持ち直した事は限界の先延ばしに過ぎない。長期休みの宿題のように、後に伸ばしたものはツケとなって襲い来る。

 小さな体が、グラリと揺らいだ。

 瓦礫からの転倒だけは防いだが、明確な隙が生まれる。

 瞬間、白い三日月が飛来した。

 カァンッ! と甲高い金属音。飛ぶ斬撃を防いだ音。

 そして、彼の手から両手剣が弾き飛ばされた音だった。

 

 ――互角だった均衡が崩れる。

 

「ああっ、ヤバい! 和人逃げなさい!」

 

 ハイパーセンサーの聴覚野が声を捉えた。

 砕けた日本語のそれは、しかし同じ日本人が口にしたものではない。それを言ったのは紫を基調とした分厚い機体に身を包む候補生。容貌こそ日本人と見分けが付かないが、れっきとした中国出身の少女である。

 名前を《(ファン)鈴音(リンイン)》。

 今年四月に日本から中国へ帰国し、あらゆる試験で好成績を収めた事でたった三か月で専用機を貸与された鬼才の少女。他の代表候補生に一度も負けた事がないほど腕っぷしは強いという触れ込みである。流石に代表ほど強くはないと、彼女は謙遜していたが――果たして。

 貸与されている専用機は【甲龍(シェンロン)】。

 紫を基調にマゼンタと黄色の線を走らせる分厚い装甲はその使用用途を克明に知らせてくる。特に目を引くのは肩部の非固定浮遊部位(アンロック・ユニット)だ。棘付き装甲(スパイクアーマー)を思わせるそれが、実は第三世代兵装《(りゅう)(ほう)》という衝撃砲とはデータで判明している。今は高速機動パッケージ《(フェン)》を使用しているため胸部にも追加装甲があり、砲門は四つ存在していた。

 衝撃砲は空間に圧力をかけ、空気を砲弾として打ち出す空間制圧兵器にして中距離戦闘をも可能とする射撃武器。砲弾が空気のため、中国は武装に費やす拡張領域の分――エネルギー武器のエネルギーなど――を機体の安定性に回している。あのゴツさに反し、燃費が良く、小回りを利かせやすいという事だ。

 小回りが利くという事は、操縦者の腕が非常に試されるという事になる。

 たった三か月の訓練期間に加え、それを乗りこなし、こうして出撃している時点で彼女の実力を中国政府がどれほど高く評価しているか分かるというものだ。

 そんな彼女が小さな悲鳴を上げた理由はわからない。ひょっとすると彼女は、あの少年の知り合いなのかもしれない。

 一瞬逸れた意識を戻す。

 状況は武器を失った少年目掛け、未だ片翼を使う様子がない長刀使いが距離を詰めるところだった。

 大振りながら素早い唐竹割りが少年を襲う。すんでのところで別の建材に飛び移ったため彼は事なきを得た。斬撃の鋭さは、真っ二つに割れた瓦礫を見れば分かるというもの。

 それで終わらず、後退を余儀なくされる少年目掛けて白い斬撃が連続で襲い掛かる。バックステップ、あるいは他の足場に飛び移って躱し続けながら、彼は弾き飛ばされた両刃剣を取りに向かっていた。

 両刃剣はかなり離れた瓦礫に突き立っていた。一目散に少年が駆け出す。

 ――俯瞰画面には、少年の背後まで迫る長刀使いの姿がある。

 両刃剣に辿り着くまであと十数メートル。

 彼が使を握る前に凶刃の方が先に届くだろう。

 

『ここまでだ』

 

 無慈悲な宣告。

 すんでで彼が振り向いた。眦をつり上げ、犬歯も剥き出しの表情で対峙する。

 その彼に、白刃が閃いた。

 

 

 

瞬間、翠が閃いた。

 

 

 

 画面を一瞬横切った()()()

 それが少年を切り裂かんとする凶刃を止めていた。

 

『は――ぁぁぁあああああああッ!!!』

 

 少女の気迫が放たれる。

 翠と白、交錯する二本の刀が錯綜する。

 断続的な金属音が響き、両者の間に火花が散る。刀身は残像を残すばかりで捉えられない。通信速度の問題であるとしても驚異的な剣速だ。

 程なく、ひと際大きな火花を散らし、両者が距離を取った。

 闖入者の金髪緑衣がはらりとなびく。

 

『リー姉!』

 

 両刃剣を回収した少年が喜色を露にした。ぱぁっ、と擬音が聞こえそうなほど満面の笑みだ。

 義姉と呼ばれたアバターの少女が、ふ、と微笑みを返す。

 

『お待たせ。本当に、よく頑張ったわね。ここからはあたしも手を貸すわ』

『その前に、リー姉は俺の剣を使ってくれ』

 

 長刀を構えた彼女に並びながら、少年が言った。

 自らの武器を差し出す話に、彼女は敵を見据えたまま『何故』、と短く返す。

 

『セフィロトを倒すにはコアを破壊する必要がある。そのために、《零落白夜》と同質のものでエネルギーを全損させて、バリアを剥がす事が最善だ。だが俺の体力は底を突きかけてる。それなら技術があるリー姉が使う方がいい。あとコレ、ISの補助が無いと流石に重い』

『人を怪力女みたいに言わないでよ』

 

 ふふ、と小さく笑みを零した彼女は、長刀を差し出した。

 二人の武器が交換される。

 そして、長刀を持った少年と両刃剣を持った妖精が、まったく同時に正眼へと構えた。

 

『フ――――無駄な事だ』

 

 向けられた二つの切っ先を見て、男は笑う。

 左手に持った長刀を突きつけた。その先には、割り込んできた妖精がいる。

 

『お前に私は倒せない』

『あたしにはね』

 

 男の挑発のような言葉に、妖精は笑いもしないでそう返した。

 誰でもいい、男を倒せるのなら自分でなくてもいいと、彼女はそう言っている。そしてどちらも認めている。最終的に男を倒せるのは少年だと。

 

『――まあでも、これでもあたしはこの子の師匠。無様な姿を晒すつもりはないわ』

 

 その上で、彼女は不敵に笑った。

 自分には届かないと認めた上で尚喰らいつかんと獰猛に笑っている。あの義弟にしてこの義姉ありと言ったところか。弟子の奮起に触発されて、彼女の心にも炎が灯ったようだ。

 

『和人、行くわよ!』

『ああ!』

 

 二人は頷き合って駆け出した。

 容姿も性格もまるで違う二人の剣士は、そのまま踊るように戦い始めた。

 

 






・山田真耶
 元代表候補生。
 射撃部門のヴァルキリーなので戦闘力は相当高い。有事の際は出動するため、他国の情報も頻繁に集めている。
 使用機体は第二世代機【ラファール・リヴァイブ】。
 一代分型落ちしているが安定性があり、試験機の第三世代よりは応用力に富む。操縦者の腕が試されるので実力を要する。

 ――現役を退いているのに、なぜ他の現役候補生と肩を並べているのでしょう(すっとぼけ)


・セシリア・オルコット
 英国代表候補生。
 第三世代機【ブルー・ティアーズ】を持つ。
 イメージ・インターフェースとを応用したレーザー兵装《BT兵器》を扱う射撃スタイル。
 原作ではとある理由から典型的な女尊男卑思想だったが……?


・凰鈴音
 中国代表候補生。
 第三世代機【甲龍】を持つ。
 今年四月に帰国し、代表候補生として志願し、七月現在で専用機を貸与されるほどの成績を残した鬼才。その実、努力の鬼である。
 つまり和人と同タイプ。
 原作で専用機を得た時期は不明だが、おそらく原作より速い。
 ボス戦放映の視聴でブースト掛かったから是非もなし。

 テレビは声を出して反応するタイプ。


・桐ヶ谷和人
 義姉が一番に駆けつけて内心スーパーハイテンション。
 喜色が隠しきれてない。
 流石に武器を失えば敵わなかった。斬られそうな瞬間に振り向いたのは白刃取りをしようとしていたからだが、間違いなく胴体真っ二つにされていた。
 切り札の両刃剣を渡したのはアバターはISと同格のパワーアシストを持ち、身体的疲労も無く、リーファは自分より強いので自分が使うより勝機があると判断したから。
 剣士にとって剣は魂そのものなのでこれは相手を最大級に信頼している証でもある。
 剣狂いにとって和人の無垢の信頼は救いそのものでもあるためお互いの関係が深まる事は間違いない。


桐ヶ谷直葉(リーファ)
 アバターはシルフの妖精剣士。
 祖父の剣に魅入られた剣狂い。静かに狂ってるせいで気づいている人がほぼいない密かな狂人枠。
 和人の義姉兼師匠ポジだからマトモな訳がなかった()
 世間からは『ブラコン』のイメージを強く持たれている。


 瓦礫を飛び回って戦うのは『DFFNT』映像のライトニングVSセフィロスをイメージ。
 和人と同じ構えを取るのは『ハガレン』のVS初代グリード戦のイズミ&エド共闘時をイメージ。
 最後は『CCFF7』のジェネシス&アンジールVSセフィロス冒頭をイメージ。

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