インフィニット・オンライン ~孤高の剣士~   作:黒ヶ谷・ユーリ・メリディエス

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 どうも、おはこんばんにちは。

 今話もオールキリカ。副主人公の立場だから色々とあるけど、是非もないネ!

視点:キリカ

字数:約八千

 ではどうぞ。




第四章 ~キリカのルーツ~

 

 

「ありがとうございました!」

 

 女性NPC――《Yuzuha》――は頭を下げ、礼を言ってきた。

 現在の場所はユズハが店員を務めるあの店だ。転移門で街に着いた後、安全と分かってはいるが腰抱きに抱えたまま全力で走ってきた。そして店内まで戻って下ろしたのが今だ。

 

「私が死ななかったのは、貴方のお陰です。本当にありがとうございました」

「ん……まぁ、大きな怪我も負わずに済んでよかったよ」

 

 ユズハは一度、あの野盗面のプレイヤーに殴られている。本当はそれも防ぎたかったのだが起きた事は仕方がない。

 それにそれがあったからこそあの男に狙われる事が無くなったとも言える。

 まだ始まったばかりだから何とも言えないが、オレンジやブルーカーソルになったプレイヤーの救済手段であるカルマクエストは現状見つかっていない。つまり犯罪者カラーになるとベータ終了までずっとそのままという可能性も否定できないのだ。

 通常、プレイヤーが死に戻りする場所は黒鉄宮だ。

 しかしはじまりの街は圏内であるためオレンジ達が死に戻りする場所は別に用意される。この事からあの男が今後ユズハに接触する事は不可能という事が分かる。

 とは言え圏外にも少なからず集落や村が用意されていて、相応の数のNPCが配置されている筈だ。その全てに《アンチクリミナルコード有効圏内》が適用されているとは考え難い。あの男はきっと同じような手段を今後も続けていくだろう。まあブルーカーソルのプレイヤーがオレンジプレイヤーのように圏外村を利用できるかは不明だが……

 それに問題はあの男だけではない。

 NPCやAIに対する価値観は極端なものであったが似たり寄ったりの人間は決して少なくない。そもそもユイやストレアを『義姉』や『義妹』として接している和人(オリジナル)直葉(リーファ)を異常者と呼ぶ者もいるほどだ。どこまでそれが本気かは不明だが、多かれ少なかれ似たような気持ちを抱いている人間は多いだろう。

 それだけAI(俺達)は軽視されている。尊重する思考が、そもそも無い。

 なぜなら俺達は人間の負担を肩代わりするための被造物だから。

 

 ――奴隷(スレイヴ)とは、言い得て妙だ

 

 かつての名を思い出し、苦笑する。

 あの忌み名はアルベリヒ――須郷信之によって付けられた名だ。己の従順な下僕として、手足として扱い、そして捨てる手駒。だからこそのあの名。

 その関係性が今の人間とAI。

 それが世間一般の認識。これを覆さない事には今日の事も根本的な解決にはならない。一人で救える数なんて多寡が知れているのだ、大多数の人間が相手ではどうしようもない。

 

「あの……大丈夫、ですか?」

 

 ふと、覗き込むようにユズハが見詰めてきた。

 こちらを案じる表情を浮かべている。どうやら心配させてしまったらしい。

 

「なにか悩み事が? あっ、まさかさっきの戦士様がまた来るとか……?!」

 

 その表情はすぐに恐れへと上塗りされてしまった。威圧感に晒され、最後は武器まで向けられたのだ。恐怖感を抱いてもおかしくはない。

 ここまで真に迫る処理が出来るようになるとは……と感嘆もしたが、不謹慎だとすぐ思考を止める。

 

「いや、さっきの男は、多分一か月くらいはここには来れない。ただあの男と同じような事をする輩は他にもいると思う。そこは気を付けた方がいい」

「そう、ですか……」

 

 俺の言葉を聞いて、ユズハは複雑な表情をした。嬉しいような、素直には喜べないような、沈んだ面持ちだ。

 会話が途切れる。

 俺は悩み事に思考を回すのではなく、なんとなしにユズハの背格好に意識を向けた。

 年の頃はアスナと同じ十七歳くらいだろうか。大人とは違うが、子供でもない半ばの容姿。瞳の色は茶色、同じ色の長髪はリーファと同じくアップに括られているが、耳横のびんはアスナと同じくらい長い。二人を足して二で割ったような印象だ。

 その上でメイド服を着ている。

 ……もしかしてこの世界の女性店員は殆どがメイド服を制服に指定されているのだろうか。

 服装関係で、連想ゲームのように思い出が蘇る。

 アシュレイが営む店で着せ替え人形にされた事。その中で、男女兼用で作ってしまったからとメイド服を来て、それを仲間数人――又聞きではそれ以上――にお披露目したあの出来事だ。契約上仕方なかったとは言え、同じ事は遠慮したいところである。

 そう何でもない思い出を振り返っていると、ふと意を決したようにユズハが顔を上げ、こちらを見据えてきた。

 

「あの、キリカさん、お願いがあります。このお店の用心棒になって頂けないでしょうか」

「なに……?」

 

 告げられた事は少々予想外だった。

 チラリと頭上を見てもクエスト発生の『ハテナマーク』は出現していない。つまりいまユズハはシステムによって動かされたのではなく、自身の意思一つでこの話を切り出してきた事になる。

 用心棒、となればさっき俺が言った事を警戒しての事だろう。

 発端は間違いなくあの野盗面の男の行い。それへの恐怖、死の恐れ、今後の事を考えた上で最善と思える選択をしたわけだ。

 

 ――プログラム通りに動かされるモンスターとは、やはり違う

 

 己で考え、動く事が出来ている。恐れも抱いている。それは謂わば現行のAIより進んだステージへの発露だ。遠からずプレイヤーかNPCか分からないくらいの成長を見せるだろう。

 守ってよかったと、打算的に思う。

 そんな自分に嫌悪感を抱きつつ思考を回す。

 特定個人と親しくなる事は別に構わない。問題は、ユズハだけを守っても俺の目的や願いは達成できないという事だ。

 

「……なんて、無理ですよね。キリカさんは冒険者。遠からず、この街を去る方ですから」

 

 沈思している間を何と取ったか、ユズハが諦観を滲ませてそう言った。

 

 冒険者。

 

 それはこの街のNPC達がプレイヤー達を指して言う言葉だ。戦う力と旅する意思を持つ流浪の者達、民族とも違う流れ者の集まり、それが冒険者。

 NPC達によれば、その冒険者達をターゲットにして商業を営む事でこの街は発展した――そんな設定があるらしい。だから見ず知らずの冒険者にも愛想よく振舞うし、クエストという形で個人的なお願いや生活の困りごとを助けてもらう。

 そうして栄えたのが北東の街《はじまりの街》なのだと。

 草原と林、進めば湖畔、丘陵地帯に古城など、冒険者を志したばかりの者でも挑みやすいからこそ人が集まり続け、何時しかそう呼ばれ始めたこの街は、人の流れが最も激しい。

 暫く周囲を散策し、力を付ければ他の大陸へと旅をする。

 そうして二度と顔を見せに来なかった者を、ユズハは何百、何千と見てきたのだと語った。

 

「……なら、この街に滞在している間は、度々ここを訪れよう」

 

 沈思を挟み、俺はそう申し出た。ユズハへの同情と、現地住民(NPC)の協力者を得るという感情と打算の入り混じったそれは、中々に卑怯なものだと思う。

 加えて言えば、俺は何時から何時までとか、用心棒を請け負うとか、そう明確にも言っていない。

 

「ほ、本当ですか?!」

 

 それを知らないだろうユズハが喜色を見せる。

 チクリと罪悪感で胸の奥が痛むが、それを臆面にも出さず、俺は頷いた。

 

「幸い俺は普通の冒険者と違って二十四時間こっち側に居られる。ユズハみたいに危険に晒される人がいないか見て回る事もあるから、流石にずっとここに居られる訳じゃないけど……」

「構いません。キリカさんが顔を出して下さるだけでも抑止力になると思いますから」

「……そうだな」

 

 抑止力になる、と。まさかそこまで考えているとは思わず、一瞬反応が遅れてしまった。

 まさか本当は中の人がいるんじゃ……と思うが、彼女の頭上にはNPCを表すイエローカーソルが表示されている。

 なんだかこの確認、昔もやった気がした。

 

 

 依頼の詳細を詰めた俺は、ユズハの勧めで一先ず鍛冶屋兼武具屋を後にした。

 向かう先は宿屋。眠るのではなく、様々な情報整理やアイテム整理を行うために部屋を借りる予定である。

 恐ろしい事に《SA:O》の宿部屋は宿の見た目通りの部屋数ではなくなっており、階段を上る段階でインスタンスエリアへと入る特殊仕様。つまり実質部屋数の限界が存在しない。街に宿屋が幾つか存在するのは内装の変化、グレードの違いでのサービスの変化を持たせるためだけで、それ以上の意味は無いと思われる。探せば浴室付きの個室とかもあるだろう。

 とは言え、序盤も序盤の現在そこまで資金に余裕がある訳でもないため、俺は至って平均的なグレードの宿に泊まる事にしていた。

 それはほかの仲間も同じである。

 階段を下りればすぐ合流出来るのが魅力的だと満場一致で決定したのだ。七十六層アークソフィアでの集団生活が思い返される。

 そんな経緯で取った宿は、一階がラウンジ、二階が亜空間な宿部屋という構造になっている。ラウンジでは武器、防具、そしてアイテム屋の出張店舗の他、食事を取れるスタイルにもなっており、この宿に滞在している間だけ各種サービスを受けられる。

 休息を取る前に何か軽食をと、従業員に頼んでサンドイッチとジュースを頼む。席で待っているとすぐに料理が到着した。

 一つ目のサンドイッチを食べる。シャキシャキとした葉野菜とあまり味わった事のない酸味の利いたドレッシングが味覚情報を伝えてくる。もふっとしたパンを、口に含んだジュースで柔らかくして食塊にし、そのまま飲み込んだ。

 味は、まあまあ悪くなかった。

 

「キリカ、こんなトコに居たんだね~!」

 

 そうして一つ目を食べ終え、二つ目に手を伸ばしたところで背後から抱き付かれた。柔らかい感触と共に視界が暗くなる。

 声音から分かっていたが、唐突に抱きついてくる知り合いは一人しかいない。

 

「……ストレアか」

 

 そう指摘すると、抱きついてきたままノンノン、と否定を返される。

 

「アタシの事は、レア(ねえ)でしょ?」

「それはオリジナルの呼び方だろう」

「でもキリカってば、ユイの事はユイ姉って呼んでるじゃん! アタシもお姉ちゃんなんだからレア姉って呼びなさ~い!」

 

 そう不満を表現するように抱きつく力を強めてくる。

 このやり取りは何度も繰り返された事だ。いつの間にかオリジナルは彼女を受け入れ、呼び方も家族として接するものに変わっているが、俺は頑なに愛称呼びをしていなかった。

 《MHCP-002 ストレア》。

 それが彼女に付けられた個体名称。

 そうと告げられたのは攻略が八十層半ばに至った頃だった。オリジナル曰く『調査が済んだから』と、ストレアが実はユイと同じMHCPというAIであった事実が明かされた。その時点でオリジナルとストレア、リーファやユイの関係性は構築されていたから、四人の間では話し合いが持たれていたのだろう。

 ――なんとなく仲間外れにされたようで、気に入らなかった。

 俺を弟として見るなら、どうしてあの頃に一度も相談してくれなかったのか。そんな不満がストレアへの反抗になってしまっている。あとちょっとだけリーファとユイ、そしてオリジナルにも不満がある。

 みんなが認めた呼び方を使わない、それが精一杯の反抗だった。まあ彼女を姉扱いするのはオリジナルだけだが。

 

「それともキリカは、アタシの事、お姉ちゃんだと思ってくれてないの?」

 

 ふと、顔に覆いかぶさっていたモノが除けられ、代わりに逆さになったストレアの顔が視界に入ってくる。ほんの少しの不満と不安がない交ぜになった表情。

 

「……はぁ」

 

 ため息を零す。

 どうかしたかと慌て始めた義姉を横目に席を立ち、正面から見合う。高い位置にある顔にはさっきより不安が色濃く浮かんでいる。

 その顔に、俺は弱い。

 

「あ、アタシ、悪い事したかな……?」

「……まあいきなり後ろから抱きつかれると驚くから止めて欲しくはあるかな……」

 

 悪い事ではないが、良い事でもない。

 

「俺は、ストレアの事も家族だと思ってる。思ってるけど……ちょっと、気に食わない」

「えっと、何がかな?」

「ストレアはMHCPだってオリジナルが明かした時、リー姉やユイ姉は知ってたっぽいのに、俺にはまったく知らされてなかった。家族だっていうなら教えてくれてもよかったと思う」

「……あー…………あー……」

 

 思い当たる節があったのか、指をくるくる回しながらストレアの赤い瞳が右に左にと泳ぐ。

 

「……それは、話すとなるとちょっと長い話になるかな……キリカの事も関わってくるし」

「……どういう事だ?」

 

 ユイはホロウ・エリアのスタッフNPCとして再生したし、MHCPとしての記憶を取り戻した事でストレアの素性を把握していてもおかしくない。そこからオリジナルへと話が流れ、リーファへと流れたのだとすれば、なぜ誰も俺に話してくれなかったのか――それが四人に対する俺の不満の理由だ。

 しかし、何故ストレアの話から俺に話が発展するのか。

 席に座りなおした俺の対面にストレアも座る。頼んだ飲み物が来てから、ストレアはやや考えながら話し始めた。

 

「キリトはさ、アタシがMHCPだってホロウ・エリアから帰ってきた時には気付いてた。多分キリカも同じでしょ?」

「ああ」

 

 ユイはMHCPだった。そのユイと同時期に現れた、生命の碑には無かった名前《Strea》と名乗る存在。下層、中層の実力者の殆どを把握している俺も聞いたことが無かった大剣使い。

 素性不明、経歴不明、生命の碑に刻まれていない名前――それらがユイと共通していたからこそ、俺達は別たれる以前からストレアの素性を推察していた。

 ただしユイと違い、ストレアにはカーソルやHPバー、ステータスなどプレイヤー共通のものをしっかり保持していた。シノンやアキトのように外部から巻き込まれたプレイヤーという線は、二十五層の激闘などに言及出来た点から限りなく低い。

 目的が分からず様子見していて、その間にオリジナルと俺は別たれた訳だが……

 

「当時はユイに口止めしてて、キリトには目的を教えられなかったの。理由は二つ。最初はキリトのデータを詳細に集めるためだった」

「俺の?」

「カーディナルは人の手を必要としない自律システム。でも仮想世界を大きく変化させるには、プレイヤーの存在が不可欠。あの世界を正常に終わらせる事を望んでいたカーディナルは、それでも自分では動けない……そこでカーディナルの意思を反映できる存在を作ろうとしたの」

「……まさか、それは……」

「うん。それが、ホロウのキリトだよ」

 

 サラリと、似つかわしくない怜悧な面持ちでストレアが頷いた。

 

「キリトが死んでしまった時、間違いなく攻略は停滞し、最悪プレイヤーは破滅する。そう演算したカーディナルが用意したのがホロウデータのキリトだった。アタシはホロウのキリトがオリジナルのキリトと相違ないよう、日常生活、戦闘時の他に、彼の周囲に存在するあらゆるプレイヤーのデータを集めるために遣わされた存在だったの」

 

 怜悧なまま、しかしどこか苦々しげに、言葉を紡ぎ続ける。

 

「……MHCPにはプレイヤーへの接触禁止が言い渡されてたんじゃ……」

「でも、アタシはプレイヤーでしょ?」

「それは容れ物の話じゃ……そんなのってアリなのか……?」

「う~ん……まぁ、普通無しだね」

 

 サラッと笑って否定したストレアは、でもね、とすぐ表情を改めた。

 

「それだけカーディナルも必死だったんだよ。遺棄されてたアバターの一つに無理矢理AIを突っ込んで、プレイヤーのガワを被ったAIを仕立て上げる、なんて……普通は許さない。でも許さざるを得なかった」

 

 そこで、ストレアが虚空を見上げ、目を眇めた。

 

「アタシはさ、ヒースクリフが叔父さんなのも、デスゲームの首謀者でない事も知ってた。カーディナルから聞いてたからね……そう、カーディナルは知ってたんだ。あの世界をデスゲームにした人物が自分の父親じゃないって」

 

 ストレアは言う。もしあの世界を茅場晶彦がデスゲームにしていたら、自分は存在しなかっただろう、と。

 その言葉は真実だろう。

 秋十から吐き出され、後に部分的にも共有された話によれば、”原作”に於けるSAOは本当に茅場の手でデスゲームにされ、七十五層で物語を終えたという。

 そのあとも続く話はあるが、それは須郷が関与した話。ストレアはこちらの話でのみ存在するイレギュラーな人物だと聞いている。

 つまり純粋に茅場晶彦しかデスゲームに関わらなければMHCPは本来表舞台に出る事すらなかった。カーディナルが、反旗を翻さないから。

 

「逆に言えば、デスゲームにしたのが須郷だったからこそ、か」

「そゆ事。真っ当にSAOを終わらせるための《カウンター・ガーディアン》として、カーディナルはキリトを見初めた。そしてホロウプレイヤーとして作りあげるために、ユイに便乗する形でアタシを派遣した。そうしてデータはホロウ・エリアのコンソールに集められて……」

「……俺が作られた、か」

 

 視線を落とす。

 いま思えば、思い当たる節はある。

 俺とストレアは似ている。成り立ちではなく、状態が。プレイヤー判定のアバターにAIを積んでいるという状態が、俺達は共通していた。

 須郷はストレアのデータを参考にしたのだ。

 それを、恐らくユイ姉は知っていた。

 知った上で話さなかったのは、おそらく……

 

「須郷を捕らえた後、キリトは須郷の研究データを探る中でキリカの生まれた過程を知った。アタシとユイ、リーファにも話して……それで……」

「……俺には話さないって決めた、か」

 

 はぁ、と嘆息しながら机に突っ伏す。

 なぜストレアについて俺に話が来なかったかが分かった。オリジナルの指示だ。話を共有する中で自身のルーツを知られまいと、徹底的に情報規制した結果がこれだった。

 的確な指示だ、この上なく。

 ……腹立たしいほどに。

 

「まったく、オリジナルめ……俺の事ならなんでもお見通しのつもりか?」

 

 事実、そうなのだろう。そうでなければヴァフス事変の最中にあんな事は言ってこない。俺が苦悩している事を細部まで理解していたから何を話し、何を話さないかの取捨選択が出来ていたのだ。

 そうなると、気になる事も出てくる。

 

「それで……その話、俺にして良かったのか? 口止めされていたんだろう?」

 

 突っ伏したまま見上げるように言うと、ストレアは腕組みしながら首を傾げ、うーんと唸った。

 

「まあそうなんだけど……今のキリカなら大丈夫かなって、そう思ったから」

「――――」

 

 そう、にっこり笑って言われ、俺は言葉を失った。

 

「う……ぅ~~~……」

 

 数瞬綺麗な顔を凝視したあと、両腕を枕にするように机に置いてそこに突っ伏す。今は顔を見られたくなかった。

 

「アハッ、キリカ、耳真っ赤っか~!」

「うるさい……」

 

 顔を隠しても、耳が紅くなっていて内心を悟られてしまった俺は、そう小さく言い返す事しか出来なかった。

 

 






 あまり触れられてなかったストレア、キリカの関係性のお話。

 ストレアについてはSAO編第百四章《Strea》や、第百九章《現状把握》などで伏線だけ残されていました。ユイと一緒に登場した時点でMHCPの記憶はあったとか、その辺です。当時はアルベリヒにデータを流用されていたので、ストレアの素性に気づいたキリトに事情を話せなかった

 またキリトが外周部から落下した後の幕間《暗躍スル者達》のカーディナル側での描写も伏線。『とあるプログラムとの接触』はユイではなくストレアの事だったんですね

 キリトを『デスゲームクリアの駒』として扱うようで気が引けたからこそ、ストレアは罪悪感を感じていた訳です

 これがキリカに伝えられたのは、ヴァフス事変で覚悟が固まった様子を見て、ストレアが『もう大丈夫そう』と判断したから。キリトの代わりとして用意されていたのだ、って以前のキリカに言ってたら発狂間違いなしですからね……


・キリカ
 電弟
 ヴァフス事変以前はオリジナルとの差異、いまの自分の生き方がグラ付いていたが、その時の発破から自身の立ち位置を明確化した。それを今回ストレアが感じ取ったため己のルーツを知る機会を持てた
 ストレア含め、家族ぐるみで内緒事をされていたのが気に入らなくて反抗していた。プチ反抗期の到来である
 つまり真っ当に成長しているという事ですね


・ストレア
 電妹
 エラーで偶然外に出たユイに便乗する形でカーディナルから派遣されたMHCP試作二号。その目的は、キリトが死んでもSAOを正常に終了させるためにホロウプレイヤーの容易に必要なデータ収集。偽物と知られないよう感情、記憶、戦法その他もろもろの詳細も集めていた
 それが須郷によって悪用された後は、須郷へのカウンターとして息を潜め続けていた(これの発動がゲームHF√)
 キリトを利用していた事にもなるので当時から罪悪感は強かったが、キリカへの罪悪感も強く、姉として自己主張するのはキリカの拠り所にならんが為だったりする
 天真爛漫だが、なんだかんだで義弟の事を想う良い姉をしている――とはユイとヴァベルの談


・ユズハ
 オリジナルキャラクター
 茶色の瞳、茶髪でリーファと同じ一つ括りの髪型。びんの長さはアスナと同じ。キリカは『リーファとアスナを足して二で割ったよう』と評している
 原典ホロリアではゲーム、漫画版で共に武器屋の従業員として初日のみ登場(ゲームではビジュアル不明)
 その後は彼女から男性NPCに取って代わられた事で、徐々に《SA:O》の事情が明らかにされていく
 つまりモブでこそあるが、地味にキーキャラクターでもあった存在
 今話でキリカに助けられた事で漫画版のNPC姉妹のように交流が生まれた


 では、次話にてお会いしましょう

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