インフィニット・オンライン ~孤高の剣士~   作:黒ヶ谷・ユーリ・メリディエス

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 どうも、おはこんばんにちは、黒ヶ谷・ユーリ・メリディエスです。

 前話で色々とアキトの正体(?)が察せられたようですね、感想で書かれててどう返したものかとスゲェ悩みました(笑)

 いや、感想にネタバレっぽい事を書くなって訳じゃないですけどね。送ってくれるのは素直に嬉しい。ただ単純に、どう返したら先を読まれないだろうかと悩むだけで。それも楽しいんでドンドン送ってください(笑)

 ……これ、兄の事をタグに書いた方が良いのかな……

 それはそれとして今話です。今話は前半シリアスなリズ視点、後半シリアス八割平穏二割なシノン視点です。

 何時に無く本作キリトが今までらしからぬ不機嫌さを見せます。

 一先ず次話はシリアスはあっても平穏の割合が大きいかな……今話もシリアス部分は基本的に地の文という名の心情描写ですから。

 本分は約二万一千文字。前話が多かっただけ。

 ちょっと複雑な部分があります。理解し難い時は、そうなのかー、程度で良いです。極論今後の話で分かりやすく噛み砕いて描写するので。

 ではどうぞ。




第四十八章 ~苛立ち~

 

 

 第二十二層主街区の転移門広場を、嫌な沈黙が支配していた。

 世界でISを知る者なら必ず一度は聞いた事があるだろう《オリムラ》の名を持つ兄弟の対決は、結果から言えば、出来損ないと見下されている弟が紙一重で勝利した。弟と一部を除けば全く同一の意匠の白尽くめの剣士が振るう剣を、あたしはただの一度もマトモに見切る事は出来なかったが、それでもアレがギリギリの勝利であった事は分かった。

 闘技場での激闘、モルテに攫われた時の戦いぶりからキリトの実力をある程度把握しているつもりだった。前者でユニークスキル《二刀流》、後者で《ⅩⅢ》という特殊武器の力を遺憾なく発揮していた彼は、さっきのデュエルではどちらも使わず、純粋に己の技だけで勝負していた。

 この《ソードアート・オンライン》に於いて、レベルとは絶対的な強さの指標となり得る数値だ。スキル枠、装備出来る武具の平均ステータスの上昇等様々な要素で差が付くようになっているのだ。

 故に、三週間ほど前にこの世界へ迷い込んだばかりの《アキト》が、恐らくレベル30前後辺りから鍛えただろうあの男が、一年半ずっとソロを貫き、自己強化に励んでいたキリトと互角以上の力量を見せるだなんて、予想だにしていなかった。

 

「……」

 

 実際に刃を交えたキリトは、自身の兄が立ち去った転移門へ未だに視線を向けている。その顔に浮かべられている表情、眼つきはどんなものか、こちらに背中を向けているからあたしには見えないし、その心情を推し量る事も出来ない。

 多少苦戦する程度は予想していた事は戦闘中の言葉で察せたが、よもや剣戟だけであそこまで圧倒する程のプレイヤーが居るとは思わなかっただろう。

 そしてこの一年半の努力を粗方全て否定されたような気持ちになっているのかもしれない。

 かつて自身を捨てた兄。幼い頃から自身を虐げ、自身の上に君臨していた兄へと向いた牙は、辛うじて届いたものの、これまで彼が費やしてきた心血に較べれば遥かに些少に過ぎた。

 そして去り際に放たれた、『黒猫』の一言。更にはサチを見ていた事。

 この二つの事実から、あの男がキリトのトラウマでもある《月夜の黒猫団》壊滅の事を知っているのは明らかだ。

 だが、不可解だ。

 そもそもあの男がこの世界に来たのは三週間ほど前という話。それはリーファとほぼ同時期である事からも間違いないだろう、キバオウとの繋がりもその頃からあるし、何よりそれ以前に居たならもっと早くに尻尾を見せていた筈だ。

 仮に外部から内部をモニターする事が出来るのだとすれば分からなくも無い。

 キリトはデスゲームが始まった頃から最年少でも単独行動を取り続け、第一層ボス攻略戦の時で既にレベルは20オーバー、つまりぶっちぎりのレベルを持つプレイヤーだった。

 その事実により、SAOを内部から攻略出来る有力プレイヤーとして政府やら何やらが目を付け、情報を公開していた……という線も考えられなくは無いのだ。

 だが、リーファの話から、恐らくそれは不可能だと判明している。

 ISを発明した世界最高峰と言える技術者の篠ノ之束ですらハッキング出来ないレベルのセキュリティを誇るらしいし、キリトのレベルについて彼女に教えたという《SAO事件対策チーム》もアカウントのログを追う程度でしか把握出来ていないとも聞いている。

 つまり『何時レベルが上がった』や『何時どのプレイヤーと接触した』は分かっても、何を話したか、何をしているのかとかは分からないのだ。

 仮に内部データを映像として確認出来るとして、現在の家族であるリーファにならともかく、ほぼ赤の他人であるあの男に情報が行くとは思えない。よしんば行くとしてもあの男は自ら弟を切り捨てたのだ、知ったところで然程興味を持たないだろう。

 あの男の、キリトを虐げる徹底振りはかなりのものだ。あたしはそれをキリトと鉱石を取りに行った日の夢として見た記憶で知っている。

 加えて先ほどのデュエル中の態度……アレはどう見ても、兄としての態度では無い。

 いや、それ以前にキリトが《織斑一夏》であった頃からそうだったが。

 現状SAO最強と言えるキリトを超える驚異の実力と、去り際に不穏な事を言い捨てた神童についてそう思考していると、ふと転移門を見て立ち尽くしていたキリトが、一歩右足を踏み出した。

 その向かう先には、神童が姿を消した転移門がある。

 

「何処へ行くつもりかね?」

 

 無言のまま、どこか危うい雰囲気を纏うキリトを止める為か、ヒースクリフが一番に声を掛けた。それを聞いて、キリトは続けて踏み出そうとした左足を止める。

 それでもやはり、彼はこちらに振り返らない。

 

「……もう試験は終わったんだ。何処へ行ったって良いだろう」

 

 数泊の間を置いて帰って来た声は、何時もの柔らかさが雲散霧消して固かった。どこか投げやりで、棘を感じられるそれは、先のデュエルで響かせていた咆哮と同じく、常のキリトには無い感情から発せられていた。

 それにあたしは思わず眉根を寄せてしまう。

 誅殺隊に追い掛けられ、《聖竜連合》にデュエルを吹っ掛けられ、闘技場で心無い言葉を吐かれ、モルテやグリムロックの狂気に触れ……何よりも、本当に血が繋がっていると思えない兄に虐げられて尚怒りを見せなかったキリトが、苛立ちを滲ませているのだ。

 それを何に、誰に対して向けているのかは明白だが、何故浮かべているかは分からなかった。

 兄がキリトにとってのトラウマに、タブーに触れたからか、あるいはさっきの勝負に納得がいっていないからか。

 あるいは、己の力量が不十分だと、自虐しているのか。

 

「確かにそれはそうだが……まさかと思うが、彼を追うつもりかね?」

 

 どれかは分からないが、とにかく何時も穏やかで冷静な彼らしからぬ様子に、僅かに息を呑んだヒースクリフは、しかし流石の精神力ですぐに持ち直した。更には言及し辛い事まで言ってのける胆力には、付き合いから多少慣れたあたしも感嘆せざるを得ない。

 その踏み込んだと言える問いがキリトの何かに触れたのか、ずっとこちらに背中を向けていた黒尽くめの少年は、左の横顔が見えるように肩越しに振り返った。

 その眼は、何時に無く鋭く、光を呑み込むような底無しの闇を想起させる色合いをしていた。

 

「そのつもりだが。流石に看過出来ない事を言われたら確認したくもなる」

「ふむ……その気持ちは分からなくもない。しかし、君とて自身が使う剣と同じ形状のモノが現れたのだ、そちらも気になるのではないかね? 仮に問い質しに行ったところであの性格では素直に口を割るとも思えないが」

「…………」

 

 心情としては、明らかに冷静さを欠いている状態のまま行かせては取り返しがつかなくなるのではと思ったから、引き留めようと思ったのだろう。

 しかし馬鹿正直にそれを伝えても今のキリトがそれに素直に頷くとは思えないため、搦め手に打って出たのだ。

 エリュシデータは第五十層ボスのラストアタックボーナス、最前線が第七十五層になった今でも通用するという破格の性能を持った魔剣という一点物。

 それと色違いなだけで全く同一の形状を有するという特徴だけでもかなり気掛かりだろう。

 少し前に来たばかりで、あたしの店に剣を購入しに来たのを直に見た事もあって、キリトも相当気になっているのは間違いない。

 

「…………分かった」

 

 神童本人へ直接問い質す事と目の前にある物を確認する事、どちらがより確実に情報を得られるか凄まじく迷ったようだったが、長い黙考の末、キリトはこの場に残留して神童が残していった白剣を調べる事に決めたらしかった。

 元々無駄を省く行動を良しとする行動理念、そして問い詰めたとしてもまず間違いなく口を割らないという容易に想像出来る予想から、時間の無駄を省ける方を取ったのだろう。

 渋々、凄まじく不本意と顔を見れば分かるくらい眉根を寄せるという何時に無く険しい表情を浮かべるキリトは、すぐ離れた所に突き立ったままの白剣へ向けて歩き出した。あたし達もそちらへ移動する。

 近寄って見てみれば、やはりどれだけ見てもキリトがずっと愛剣として使っているエリュシデータと同一のものとしか思えない程、それは酷似していた。ギアを思わせる鍔とそれから飛び出ている数本の棘、柄に巻かれている革、剣身の幅から刃の幅、厚み、刃渡り、どれをとって見ても同一だ。

 キリトのエリュシデータは刃部分だけは白いので、それを考えれば全て真っ白なこれは全く色が正反対とは言えないのだが、それでも正反対と言いたくなる程に真っ白だ。恐らく《鍛冶》スキルが高いプレイヤーあるいはNPC鍛冶師にリペイントを依頼し、色を変えたのだろう。

 ちなみに、リペイントの依頼でプレイヤーとNPCの間に発生する差は、実行するのに必要な素材の数が違うだけだ。そもそもリペイントは武器製作と同じく成功しか無いので、その差くらいしか無い。

 これが武器製作になれば、製作される武器のスペックや耐久値にも関わってくるのだが。

 地面に対して少し斜めに突き立つ白剣を、誰もが微妙な眼を向けて手に取ろうとしない中、痺れを切らしたか僅かに雰囲気が固いキリトが左手を伸ばし、一気に地面から引き抜く。

 それから鞘に納めて背中に吊り直していた黒いエリュシデータを右手で抜き、左右で眼前に翳して見較べ始める。幾度か手元を揺らして剣の具合も確かめていた。

 それから更に眉根を寄せ、ポツリと言葉を洩らす。

 

「……見た目だけじゃ無いな。重さまで同じ……いや、白い剣の方が重い」

「それ、本当?」

「ああ。エリュシデータは長年の愛剣、流石にその重さを間違えはしない。アキトが使っていた剣の方が僅かだが確かに重く感じられる」

 

 あたしの問いに、キリトはすぐに断固とした口調で答えた。

 これがリアルだったら鼻で笑っているだろうが、この世界は生死が隣り合わせの世界だから決して笑えない。この世界で戦う者にとって武器は己の命を預ける半身、その重みは手で持ってもまるで重さを感じない程に、自分の体と一体化するレベルにまで融合している剣士もいるのだ。キリトやユウキ、アスナ達などハイレベル剣士がその筆頭である。

 そしてあたしはキリトが言った事実を聞いて、他の面々と同様に眉を顰める。

 武器の重量は武器のグレードと比例していると言える。基本的に重量がある武器の方が攻撃力や耐久値など、諸々のパラメータは高く設定されているのだ。

 この原則と照らし合わせると、アキトが使っていたこの白剣エリュシデータは、最前線でも通用するキリトの愛剣エリュシデータよりもパラメータとしては強いという事になる。

 だがそれは妙だ。

 あたしが知る限り、第五十層のLAである魔剣エリュシデータを超える《片手剣》は一本だけ。すなわち、あたしがアキトをあしらった時に出した逸品、ギリシャ神話で『死の国』の名を与えられた漆黒の片手剣エリュシオンのみ。

 ダークリパルサーもあたしの最高傑作だったのだが、第七十四層のボスドロップである鉱石をキリトから買い取ったエギルに、それなりの値段はしたもののレア度から考えれば格安で購入させてもらって鍛えた事で完成したエリュシオンに抜かれてしまった。

 アレを鍛えた時の事は特別なのでちょっと思うところはあるが、流石に《クリスタライト・インゴット》が手に入る第五十五層から十九層も上のボスドロップ品で出来上がる剣が劣っていてもそれはそれでアレだからと思って納得している。黒色の部分でキリトが思い浮かんだので、ちょっと微笑ましく思ったりもした。

 それはともかく、エリュシオンの値段を五千万コルに設定したのは、あの時に言った通り装備の面で最強になってしまう事を考慮しての事だ。レア度、装備面最強、そしてPKプレイヤーがこれを持ったら危険な事この上無いからこそ、あたしは攻略組がいの一番に購入出来るよう、逆に言えば他の者達には手を付けられない額に設定した。

 最前線の攻略組プレイヤーが使う《両手剣》をも超えるスペックを誇る事でその値段になったエリュシオンは、未だ最前線で通用している事から魔剣と謳われるエリュシデータをも超えている。

 とは言え、エリュシデータとて決して弱い訳では無い。

 流石に《両手剣》や《両手斧》を相手に真っ向勝負が出来る程では無くなってきているが、それでもかなりの筋力値を要される――筋力値七振りのプレイヤーでもレベルは最低70必要とされた――剣なのだ、重量はともかく攻撃力といったパラメータの面では決して引けを取っていない。

 敏捷値七振りのアスナやユウキでも恐らく今ならどうにか持てるレベルの重さ、攻撃力は彼女達の武器に較べて歴然とした差がある。

 なので、エリュシオンが異常なだけである。

 そんなスペックを誇るエリュシデータに優る《片手剣》が、よもやエリュシオン以外にあるとは思わなかった。あの男がキリトより強いと思わなかった事もあって、更に器の程から低く見ていたので、自然とエリュシデータより弱いと思い込んでいたのだ。

 ……一年七ヶ月の年月を一月足らずで埋められたのだから、キリトの経歴を考えると、本当にあの神童は何者なのか気になる。

 ここ最近になって落ち着きを持ち、一昨日と昨日は日帰りで最前線攻略に言っていると言えど、少し前までは普通に『迷宮区がホーム』と言われる程までに迷宮区塔内で夜を明かしていたキリトに追い付くほどのレベリングを、一体どこで行っていたのだろうか。

 そしてこの剣。一体誰が鍛えたものなのか……

 

「キリト君、その剣の製作者の名前は確認出来るかい?」

「待ってくれ、鑑定してみる」

 

 ディアベルが問うと、キリトはエリュシデータを鞘に納めた後、空いた右手で白剣の柄をタップした。それによって横の長さ三十センチ、縦二十センチ程の白いウィンドウが表示される。

 それは装備の説明テキスト、基本的に誰にでも見えるように設定されていたからあたしにも文字は読み取れた。

 そのウィンドウから読み取った剣の名称は《ホロウ・エリュシデータ》。

 

「ふむ……ホロウ……またホロウか」

 

 その銘を見て、ヒースクリフが呟いた。

 剣の名称は予想外だった。レプリカだとか、そういう贋作という名を予想していたのだ。

 あたしも鍛冶師なので見た目は同一だが性能が違うというのは見た事があるし、下層でレアだった剣の見た目だが性能は格別というものも見た事がある。その場合、大抵下層の剣は名称の後半にレプリカかレプカとあった。

 だがこれには『ホロウ』。意味は『虚構』や『虚ろ』だとか、そういうものだった筈だ。『虚構』の場合は比喩的表現で『もう一つ』とか、そういうものにも取れる。

 その単語は以前、あたし達は二度見た事がある。闘技場の《個人戦》と《レイド戦》の最後に出て来た、キリトの過去らしい白い化け物《The Hollow seized with Nightmare of past》だ。

 コレが闘技場で手に入った代物ならまだ納得はいくのだが、あの男が持っているというのはやはり不可解過ぎる。

 暫くその名称を見ていたキリトは、それから右手を振ってメニューウィンドウを呼び出し、幾らかの操作を始める。

 分類としては生産系、俗称で商人系スキルとも言われている中の一つ《鑑定》というスキルは、その名の通り、対象アイテムを調べる為のものだ。

 ダンジョン内で手に入る武具やアイテムの中には名称不明の品が存在し、攻略階層が一桁の頃はレア物に限定されていたが、今では普通に宝箱やモンスタードロップのものの多くが鑑定を要する品ばかり。

 要さないのは素材アイテムと、レア度の低い二束三文でしか売れない武具くらいなものである。

 そんな訳で、ある程度攻略が進んできてから人気且つ必須スキルとなった《鑑定》スキルは、店を持つプレイヤーの大半が習得している。

 故買屋のエギルも値段を付けるのにはアイテムの詳細を知らないといけないから取っているし、あたしも武具の買い取りはインゴットへ鍛え直したり、スキル値を鍛えたりするのに使うためにしているから取っている。

 攻略組御用達と言えるプレイヤー商人は現状、凡そ九百前後のスキル値はあるだろう。あたしは少し前にコンプリートした。

 恐らくトレジャーハンターを自称していたフィリア、隠れたマスター鍛冶師で露店売りもしているらしいレイン、そしてソロで活動しているキリトも十中八九持っている筈だ。

 この《鑑定》スキルをフィリアやキリトが持っているのは、宝箱にトラップがあるかないかの鑑別に用いれるからだ。更にそのトラップを解除するには別に《罠解除》という副次系スキルが必要になる。

 ちなみに、トラップ系の解除にしか使えないと思われる《罠解除》は、セットした時点でクリティカルダメージアップや移動速度上昇などの、およそフィリアのようにクラウドコントローラーやスカウト向きのModが自動で追加されていたりする。

 使えないと思えるスキルも戦闘で使える辺りが副次系と言われる所以である。組み合わせによってはクリティカルダメージでポンポンダメージを稼げるらしいので、やりようによっては相当強い……と以前新聞で読んだ事があった。

 更に、ダンジョン内に散見されるトラップを見つけるなら別に《発見》というスキルを取る必要がある。ダンジョンで自然復活するタイプのそれらは見破った段階で解除される。このスキルはフィールドに散見される採取ポイント発見にもボーナスが掛かるため、生産職には持って来いだろう。

 この辺は索敵や斥候を担うスカウト系プレイヤーに向いていると言える。

 閑話休題。

 幾らかの操作をし、恐らく《鑑定》スキルの行使決定ボタンをタップしたと思われた直後、白剣が一瞬だけ光り、既に表示されていたウィンドウの横に小さなウィンドウが出現した。

 このウィンドウはスキル使用者にしか見えないので、あたしには何も書かれていない白いパネルにしか見えていない。

 

「どう?」

 

 あたしの簡潔な問いに、キリトは目を伏せながら小さく横に首を振った。つまり製作者無し、キリトの黒いエリュシデータと同様にモンスタードロップ品であるという事だ。

 SAOのフロアボスが時間で再出現するタイプだったなら、性能は低いもののLAの複数同時存在というのはあり得ただろう。だが残念ながら、NMはともかく、LAが存在するフィールドボスとフロアボスは再出現しない設定だ。だからこそLAは誰もが死に物狂いで求めるのである。

 まぁ、結局その全てをキリトが掻っ攫っているのだが。

 

「……まさかと思うが、あのアキトというプレイヤーは闘技場を攻略したとか……?」

 

 ふと、それまで黙って事の経緯を見ていた《聖竜連合》のリーダーリンドが、微妙な面持ちでキリトに向かって言った。その口調に刺々しさは無く、敵愾心も感じられない。表情からどういう感情を浮かべているかもあたしには読み取れなかった。

 思わぬ人物から敵愾心抜きの疑問を投げられた事でキリトは僅かに瞠目したものの、すぐに表情を改めて真剣な面持ちになった。

 

「それは恐らくないだろう。《パーティー戦》の報酬に関して俺は知らないが、少なくとも《個人戦》と《レイド戦》の報酬にこの剣は無かった。それにアキトが挑戦出来るのは規模と難易度からして《個人戦》くらいなものだろうが、俺以外にアレをクリアした者が居るとは聞いていない」

「……だよな……」

 

 キリトの予測は正論で、話に聞いていた以上にリンドはそれを納得の表情で受け容れていた。

 

「とは言え……」

 

 何だか不気味だなぁと思っていると、キリトが言葉を続けた。リンドはそれに再び視線を彼に向ける。

 キリトはその視線を受けても特に反応は見せず、どこか苛立ちを抑えるかのような険しい面持ちで口を開く。

 

「認めるのは非常に、凄く、甚だ遺憾だが、アキトは闘技場を突破した俺と同等以上の実力があるからその可能性も絶無では無いだろうな……その場合、最前線で多くの人が居る中で噂にならないよう何時どうやってクリアしたのかという疑問は残るんだが。特に《個人戦》は闘技場の上空に暗雲が出るし、狂戦士は五月蠅いし、最後に出るホロウも周囲に影響を与える攻撃を多く持つから否が応でも目立つし」

「確かに……」

 

 キリトが付け加えた言葉に、あたしは思わず言葉を洩らしながら同意していた。

 何せあのボス達は隕石群飛来やら大声を発しての猛攻撃、更には闘技場を覆う程の結界を張って戦闘するといった常識外の連中だったのだ、あれだけ目立つ戦いをしたのに噂が立たないというのはかなり妙だ。

 ヒースクリフとユウキですら狂戦士が登場したところまでがいいところで、他のプレイヤーは初戦の堕天使で敗れるらしいのだから、注目度は高い。

 まぁ、キリトとあれだけ渡り合えるのなら堕天使とは戦えるだろうが、狂戦士に敵うかと問われると微妙と言わざるを得ない。不可能では無いだろうが…………たった三週間でそこまでの実力を付けられる神童の異常さにはほとほと驚かされるばかりだ、キリトとは完全に別方向で。

 あとキリト、あれだけ啖呵切って押されたのを気にしているらしい。物凄く認めたくなさそうだ。

 いや、単純に神童の方が強いのを認めたくないのだろう。彼の経歴を考えればそれも当然の事だが。

 とは言え、自分の勝利だからと言って相手の方が弱いと決め付けず、強い部分を認めるその姿勢は素直に尊敬する。よくもまぁ、あそこまで勝手に言う相手の事を認められるものだ。あたしなら多分認めないだろう。

 ……そもそも戦おうとしない気がするが。

 

「ふむ……ではキリト君、次はこの短剣を鑑定してもらえるかな?」

 

 ヒースクリフがそう言って差し出したのは、デュエル後も往生際悪く喚いたアキトが取り出し、ランによって弾き飛ばされた《短剣》だった。

 およそ実用的でない稲妻を連蔵させるフォルムの刀身、禍々しい紫色の柄と鍔の短剣を見たキリトが、さっきの光景を思い出してか僅かに目を眇める。

 

「それは……分かった」

 

 しかしそれも一瞬の事で、すぐにキリトは頷き、白剣を地面に突き立ててから短剣を受け取った。

 すぐに同じ要領でキリトは短剣をタップ、それから開いたままだったメニューウィンドウをタップして《鑑定》を行う。

 その間に短剣の名称を確認した。表示されていた銘は《ルールブレイカー》。

 ……先の光景を見た後だと嫌な名前に思えてしまう。

 

「どうだね?」

「……《鑑定》、出来はしたんだが…………妙だな。バグか?」

「どうしたのよ?」

「《鑑定》スキルを持ってるなら分かると思うけど、武具を鑑定した場合に製作者が居るならそのプレイヤー名が、無いなら《無銘》と表示される。なのにこの短剣の製作者名部分はバグなのか、塗りつぶされた四角やハイフンだとか……まるで意味を為してない文字列なんだよ。文字数は四文字だけど……」

「四文字……」

 

 バグか何かで表示が出来ていないのだとしても、それは表示するためのコードがバグっているだけ、すでに入力されている情報は合っている筈だ。だから文字数は元のものを維持している。

 それで考えると、四文字である時点で《無銘》は無いし、アキトでも、《鍛冶》スキルを持っている中でもあたしでもレインでもキリトでも無い。

 文字数からして考えられるのはリーファ、フィリア、ストレア、クラインくらいなものだろうが、この三人はまず違う。リーファは生産系スキルを取れるほどのスキル枠が無いし、クラインは純粋な戦闘タイプの攻略組だから取ってる筈が無い。

 フィリアはダンジョン内でも武器の耐久値を自力で回復する為に取っているかもしれないが、多分作り手ではないだろう。

 ストレアは分からないが、クラインと同じ理由で取ってない気もする。

 そもそも製作者名の部分はおろか、情報データの集まりであるアイテムの表示でバグが出現するなど初耳だ。

 考えられるとすればALOから持ってきた武器だからバグっていたという可能性だが、しかしそんな強い武器があるなら何故あたしの店に来たのか分からなくなる。それにリーファの装備は一つたりともバグっていなかったらしいからその部分でも引っ掛かる。

 というかあの男、あたしが鍛えた剣は何処にやったのだ。確かに粗悪品だったが跡形も無いではないか。

 ちなみにあたし達には見えないので、可視モードのメモで同じ字を打ち込んでもらったところ、短剣の製作者部分に表示されているのは《■_〇γ》というものだった。

 うむ、訳わからん。

 ともかく、これで二つの剣を確認した訳である。結局分かった事は碌に無いのだが。

 

「さて……これで確認は終わった訳だが」

「「「「「……」」」」」

 

 何れ来てしまうだろうなと思ってはいたが、ヒースクリフがキリトを止める為に使った理由がこれで効力を失ってしまった以上、同じ理由でこのまま留める事は出来ない。

 かといってキリトをこのまま行かせるのは少しマズい。明らかにアレはキリトに対する挑発だ、このまま特攻を仕掛けるのは相手の思う壺のような気がする。キバオウ程度ならキリトの実力で逆に食い破れるだろうが、そこにあれほどの実力を持つアキトが加わるとなれば流石のキリトでも太刀打ち出来ないだろう。

 素人の予想でしか無いが、あれほどまでに悔しがっていたアキトは、少なくともまだ余力は残していた筈だ。絶技と言っていたがまだ奥の手を隠し持っている気しかしない。

 対するキリトは見るからに全力全霊、死力を尽くした末にギリギリで勝利をもぎ取るのが限界だった。

 幾ら《二刀流》を始めとするユニークスキル、《ⅩⅢ》による圧倒的な物量戦が可能と言えど、流石にあの神童を相手に通用するとは思えない。アレに勝つなら、システムでは無くキリトが見せた素の実力による技こそ勝利のカギを握ると思うのだ。

 キリトは決して弱くない。弱くないが、多分今は神童の方が幾つも上手だ。そんな相手に真正面から勝負を仕掛けるのは下策も下策、愚策に過ぎる。

 だがデュエルが始まる前から何時に無く感情的になっているキリトに、そう説いても、理解はしても納得はされないだろう。

 どうするべきかと悩んでしまった。アスナ達も同じのようで、キリトの心情を理解出来るからこそどう言えばいいか言いあぐねている感があった。キリトに対して微妙に態度が軟化している気もするリンド達がいるのもあって、何時もの面々だけなら言える事が言えないのもあるだろう。

 どうしようと悩んでいると、そんなあたし達の考えを見透かしたかのようにキリトは苦笑を浮かべた。

 

「そんな顔をしなくても、アキトの所に特攻を仕掛けはしないよ。今のやり取りで幾らか頭も冷えた」

「……本当かね?」

「ああ。死者を愚弄する言動に腹を立ててはいるが、さっきみたいに激情に身を任せたら勝てる戦いも勝てなくなるのは身を以て味わったからな……何故知っているかを訊く程度、死ぬ前なら何時でも出来る。完膚無きまでに叩き潰す次にでも問い質す事にするよ」

 

 キリトの中では、次遭った時も戦う事は決まっているらしい。そしてその時はさっきと違って逆に押しまくる気でいるようだ……あれほど一方的にやられていたというのに、どこからそんな気力が湧いてくるのだろうか。

 そう思考していると、キリトは左手に短剣を、右手に白剣を手に取り、ヒースクリフを見上げた。

 

「この二つは俺が持っていてもいいか?」

「それは構わないが……何故かね?」

「元はと言えば俺のか……元家族が騒動の種なんだ。捨てられた身だが、それでも血が繋がった弟である以上、これ以上他の誰かに迷惑を掛けるのは忍びない」

 

 皮肉げに苦笑を浮かべながらキリトは両手に持った剣を白いウィンドウに乗せ、アイテムストレージへと格納した。

 それからすぐに歩き出す。その方向は東、この階層で湖が幾つも点在する側への出口だった。

 

「……君は、今日はこの後どうするつもりかね?」

 

 転移門では無く、東側に歩き出した事にまさかホームに戻るのかと思ったあたしの疑問を代弁するかのように、ホームの存在を知らないリンド達に配慮して明確な言葉を避けてヒースクリフは問い掛けた。

 その問いにキリトは、しかし再び足を止めはしなかった。

 

「そうだな……マッピングは八割方済んでいるし、ボス攻略レイドメンバーの強化も必要だから今日は休むよ、自分でしておいて何だがさっきのデュエルでもうクタクタだからな…………何かあったら、遠慮無くメッセージを飛ばしてくれ。特に【白の剣士】関連の事は、必ず」

 

 キリトは足を止める事無く、黒い外套をはためかせゆったりとした足取りのままそう言い、村から出て行った。

 嵐のように去った神童の兄、静かだが有無を言わせず立ち去った弟……人間性は完璧に真逆だが妙なところで似ているなと思う行動だった。多分気を静める為の行動なのだろうが。

 この後、微妙な空気にはなったもののまだ午前九時半にもなっていないという一日の始まりであったため、各々攻略に赴いたり、レベリングに励んだりする為に三々五々に散る。

 そんな中、非常に微妙な面持ちになっていたリンドと、物憂げな表情を浮かべたリーファとヒースクリフが非常に印象的だった。

 

 ***

 

 各々が目的を持って解散した後、私は一人キリトの後を追った。フレンド追跡を拒否されていないのでフィールドマップで反応を追えたから出来る事だ。

 彼の義姉リーファが居ないのは、今はそっとしておきたい、そう言って後を追う私の誘いを断ったからだ。

 それなのに私を引き留めなかったのは……キリトに対して、何か負い目を感じているからなのかもしれない。元々このゲームをするレーティング内に無かったキリトを止めなかった過去からか、あるいは彼の力になる程の強さが無い事を悔しく思って会わせる顔が無いからか、そこまでは分からないが。

 ともかく私は一人でキリトを追った。

 そしてすぐ見つけ出す。あの主街区から東に出た先には杉林の間に広がる草原と湖畔が複数あるくらい、さして距離が離れている訳でも無いし、キリトも走っている訳では無かったから、そこまで時間が掛からないのも道理だった。

 キリトは手近だが、そこらの湖畔よりも圧倒的に大きい湖の近くに腰を下ろし、釣り竿を手にしていた。少し近付けば、陽光を反射してキラリと光る細い釣り糸が湖面に垂らされているのも見えた。

 

「……シノンか」

 

 《隠蔽》なんて使わず、隠れる気も無いまま普通に近付いていたら、こちらを見る事無くキリトが名前を言い当てて来た。その声音は普段に較べればやはり少し固く聞こえる。

 

「後ろを見ないでよく分かったわね。普通リーファだと思わない?」

「歩き方には人それぞれだからな……草の踏み方で、誰かは大体分かる」

 

 苦笑しながら問えば、やはりこちらを振り返らないままそう言われた。言外に、リー姉の足音を聞き間違えはしない、と言っている。

 その聴覚や人の足音を聞き分け出来る感覚には驚かされるが、キリトと会ってから何度も驚かされていたから、何となく慣れてしまった。出来ると言われるまで思わないが、逆に出来ると言われても納得してしまう程だ。

 

「それで何の用だ?」

「ん……大した事じゃ、無いんだけど。何をするかと気になってね」

 

 キリトの問いに、私は少し真意を暈して伝えた。

 私がキリトの後を追ってきた理由は、さっきから彼の様子がかなりおかしい事で引っ掛かっていた為。 

 世界最強の姉と神童の兄の背中を追い続け力を求めているキリトが、虚構では無い本物の兄と、仮想現実世界と言えど直に刃を交えた。

 結果としては勝利だから良かったが、それも薄氷の上のもの、更には決闘の最中に見た兄の様子と言葉で何も思わない筈が無い。あの男は明らかにキリトを殺そうとしていた、ただ見切りを付けて捨てただけでなく明確にキリトを殺そうとしていた。

 言動からもそれは真実であると分かる。

 そしてあの男は、この世界に生きる、あるいは過去既に死んだ人々の想いを……キリトが助けられなかった仲間達、目の前で己を憎んだらしい一人の男の想い全てを踏み躙る発言をした。

 キリトにとってトラウマであり己を憎む呪詛も、紛れも無くこの世界で生きていた人の想いそのもの。

 彼は《ビーター》としてこの世界で生きる人々の負の想念を一身に受け止め、同時に【黒の剣士】としてこの世界で生きる人々の希望を一身に受け止めている。負と正、悪と善の両方を彼は呼び名と行動で、この世界にて体現している。それらは全て、この世界の秩序を護り、プレイヤー全てを護ろうとする意思によるものだ。

 恐らくデュエルをキリト自ら仕掛けたのは、それらを貶された怒り故。

 人々の想いと、人々を護ろうとするキリトの想いを軽んじられ、貶された事に怒りを覚えたのだと思う。

 それでも、キリトはとても人を心底から憎む人間性では無いから、あんな兄でも心底から憎いとは恐らく思っていないだろう。目標として掲げている時点で、追い越したいと求めている時点で、自分が悪いのだと卑下している時点で、それは明らかな真実だ。

 流石にキリトも人間、聖人君子を謳われる聖人では無いのだから多少憎く思ってはいるだろう。先の怒り、何時もの彼なら抑えられるだろう侮蔑一つで彼は爆発し、剣を抜いた。

 それを私はまだ良い方だと思っている。

 『好き』の反対は『嫌い』、それが一般的に多い見解だろうが、実際は『無関心』であると私は思う。相手に対してただ無関心、何も感情を向けなければ……それは、感情を向けている『嫌い』というものよりも余程酷く醜いものだろう。

 実際、私が他人に対してしてきた事がそれ。信じれば裏切られる、好意を向けても嫌悪と侮蔑を返されるなら、それなら無関心を決め込めばいいのだと、そう決めて今まで生きて来た。

 だからキリトの心情は、全てでは無いが確かに分かるものがある。

 キリトはデュエル直後こそ過去を貶され人々の想いを貶された事に怒りを滾らせ、すぐさま後を追おうとしていた。多分事と次第によっては斬り捨てる事も厭わない覚悟だったと思う。

 それをヒースクリフが止め、多少時間を置く事ですぐに頭を冷やした彼はすぐに私達の前から立ち去った。

 その行動を見た私は、ひょっとすると自己嫌悪に陥っているのではないか。そう考えていた。

 私なら、何も知らないで宣われ蔑まれるのは仕方ないと思う。それを私は受け容れている。過去に人を殺した私が受けるべき罰なのだと思っているし、その苦しみも当然味わうべきものだとも思っている。

 自己嫌悪と言う名の陶酔に浸る訳でも傷の舐め合いをしたい訳でも無い、誰かに慰めてもらいたいとも思っていない。苦しむ事で正当化しようとも思っていない。

 ただ、人を殺した時点で、周囲から受けるモノは私が受けるべき罰なのだと、そう悟っている。法が私を裁かない時点で、私は人によって裁かれるのだと。

 だがキリトはその苦しみを受ける必要など無い。私のように明確な理由がある訳でも無いのに虐げられ、正当な理由が無いのに論を封殺され、この世界に最初から生きる人なら誰もが抱くだろう怒りを代弁したキリトは、自己嫌悪する必要などある筈が無い。

 正当性は、あの時はキリトにあった。

 そんな状態が長く続けばキリトの心は何れ潰れる。

 想定していない状態で実兄に会っただけで、信じている人が居なくなる恐怖だけで崩れる程に、キリトの心は脆くなっている。もう既にボロボロになっているのに、必要無いものまで抱え込んでいては、本当に折れて死んでしまう。

 だから私はキリトを一人にしてはならないと思った。複雑な心境を整理させたいと思ってそっとする、そう考えるのも良いと思うが、今は一緒に居てあげたいと思った。

 キリトと私は同じ人間ではないし、過去も違うが、似ている部分がある。

 だからキリトの事が少しは分かる。欲しいと思うものが、少しだけだが分かるのだ。

 ずっと溜め込んでいては潰れるから……だから、少しは吐き出して欲しい。

 とは言えキリトの問題は大きいのに比例して非常にデリケート、おいそれと人に話せるような事では無いし、キリト自身が私に話したいといきなり思う筈が無い。リーファならまだ可能性はあるだろうが、家族でも無い私に話したいと今思いはしないだろう。

 だからこそ、何も言わず一緒に居てあげようと思った。

 私の時は居なかった、居て欲しいと思う時に居てくれなかった存在として。

 これが私の思い過ごしなら良いが、そうでない場合行動しなかったら後悔する気がした。だから私は彼を追って此処へ来た。

 その想いを胸に秘めながら先の言葉を口にすると、そこでキリトは、漸く私の方へ肩越しに左眼を向けて来た。

 光が薄くなっている黒い水晶が一つ、私を射抜く。

 その視線からは得も言われぬ圧力というものが感じられて、少しだけ私の心は怯えた。まるで今のキリトは私を信じていないような……そんな気がしたから。信じられていないと思う事がこれほど恐ろしいとは、久しく感じていない、ともすれば初めて感じるものかもしれない。

 数瞬、あるいは数秒ほど黙って視線を向けてきたキリトは、そのまま何も言わず顔を再び湖面へと向けた。

 

「……見ての通り、釣りだよ。昨日の夕食、今日の朝食は振る舞えなかったからな。せめて今日の夕食は出したいんだ」

「そう……」

「それに鍛錬にもなる。集中力を鍛えるのにも、気を落ち着けるのにも、釣りというのは最適だからな」

 

 (つっか)えるように、何かを堪えるように最初は詰まっていたが、その後はすぐにスラスラと言ってきた。

 恐らくどちらも本音だが、今だけは後者の理由の方が大きいだろう、気を落ち着けるという観点を含むならば。それ以前に私達が来る前はほぼ最前線に籠り切りだったらしいのだから、集中力云々は取って付けたようにしか聞こえない、彼が鍛えたのは実戦の中と知っているから尚更だ。

 何とも誤魔化し方が下手だなと苦笑しながら彼の近くの青草の上に腰を下ろす。チラ、と視線を向けて来たが、すぐ彼は何を言わないで湖面に小さな波を立てる釣り糸の先へ視線を戻した。

 釣り糸を垂らす彼と二人きりで、私は静かな時間を過ごした。

 

 *

 

「……釣れなかったわね……」

「…………」

 

 数分置きに彼は釣り竿を持ち上げて針を戻し、村で購入済みだったらしい虫やら何かの種やらを付けて糸を垂らし、を繰り返す事およそ二時間程が経過した時、最後の餌を付けた針もやはり何も無い状態でキリトの手の上に戻って来た。

 この二時間の釣果は見事なまでにゼロである。聞いたところ、既に《釣り》のスキルレベルは六〇〇を超えているらしいのだが……

 

「…………やってられるか……」

 

 元々気を静める為に始めた釣りも、流石に何も釣れないとなれば却って苛立ちを募らせるだけ。わざわざ購入した餌が入った箱も空になるとなっては尚更だろう。

 それでか、元々苛立っていたキリトも何時に無く荒い言葉で吐き捨てた。心無しやさぐれて鋭くなっている双眸も無駄に大きな湖面へ向けられている気がした。

 

「素潜りが出来たら楽なんだがな……」

「出来ないの?」

 

 システムとしては可能だとは思う。アスナから聞いた限りこの世界にもお風呂があって入れるのだから、多少《ナーヴギア》のスペック的にリアルほど再現出来ていないと言っても水に入れるのなら出来なくは無いと思う。水中で動くのは、リアルと違ってまた別のコツが必要そうだが。

 そう思って問うと、キリトは難しい顔で目を伏せた。

 

「《水泳》スキルがあれば不可能では無いが、生憎俺もそれは取ってない。そもそも攻略で使う機会はほぼ無いからな、取得の必要性が低い上に攻略と並行して鍛える機会も無いなら取る気は起きなかった。素潜りが出来なくても別に《釣り》スキルがあるなら取る必要すら無いし」

「……ほぼ、と言う事は、攻略で必要になる機会もあるにはあったのね」

「第四層のボス部屋は勝手に閉まって内側からは開かないタイプでな、更にボスは亀タイプ」

「あ、察したわ」

 

 大方ボスが水棲タイプなのを良い事に水没させるギミックがあったのだろう。どうなったのか訊きたいところだが、こうして攻略されているという事は何かしらの手段で打ち勝ったという事だろうし、敢えて訊かない事にした。

 

「釣れますかな」

「ッ?!」

 

 そうこう話していると、ふと背後からいきなり声を掛けられた。低めの声からして男性だ。

 驚いて振り返れば、そこには壮年の男性がいた。

 麦わら帽子、簡素な白シャツと臙脂色のズボン姿のそれはどこか農業関係の仕事についている人の服装を思わせるが、右手で持って肩に担いでいる長物は釣り竿、左肩から提げているものはキリトが購入していたものより幾らか立派な餌箱。恐らくこの階層でよく姿を見かける釣り好きな人なのだろう。

 その男性の顔にはこのゲームをプレイする年齢層には当てはまらないくらい皺が刻まれていて、眼鏡を掛けている男性は好々爺といった風情の雰囲気を纏う柔和な顔つきだった。恰幅があるのもそれに拍車を掛けている。

 丸鍔の麦わら帽子から僅かに見える髪は白。色素抜けと言うよりは自然と白髪になった色だろう。

 不躾と分かってはいたが、気付かず背後から声を掛けられたのだから警戒して全体をジロジロと見てしまった。

 そうしていると、私に見られている男性は柔らかく苦笑を浮かべる。

 

「NPCじゃありませんよ」

「え……」

 

 そして言われた事が、少し予想を外れていたから、私は素っ頓狂な声を洩らしてしまう。私はプレイヤー前提で警戒していたのだが……

 

「まぁ、勘違いされるのも無理はありません。私はこの世界に居るプレイヤーでは恐らく突出して最高齢に位置するでしょうし」

 

 続けて言われた事で漸く理解する。

 確かに若年層向けのVRゲーム、それも年寄りがしそうにないMMORPGというオンラインゲームにこの男性ほど歳を重ねた人はほぼ居ないだろう。むしろ私が以前受けたチェーンクエストの店主のように、NPCの方が多いと思う。

 だから私がジロジロと見たのが、『いきなり声を掛けて来たクエストNPC』と勘違いされているとこの男性は考えたのだ。さっき苦笑を浮かべた理由もやっと分かった。

 それはともかく、理由以前に声を掛けられたならまずは挨拶をしなければならない。私が見ていた理由をこの男性は勘違いしているが、むしろもっと酷い理由だから丁寧に教えられる筈も無いし、男性が導き出した理由でなくとも失礼なのは同じだ。

 

「あ……えっと、ごめんなさい……」

「いやいや、構いませんよ。慣れっこですからな」

 

 わっはっは、と快活に笑う男性は、見た目通り柔和で穏やかそうな人格をしているようだった。

 まぁ、これが演技では無い可能性も否めない……と考えるのは、かなり失礼だろう。とは言え赤の他人というのは変わりないから若干の警戒心は持たせてもらうが。

 

「えっと……初めまして、私は、シノンです。こっちの子はキリト」

「おお、これはご丁寧にどうも」

 

 少し機嫌が悪いキリトも含めて自己紹介をすると、男性は柔和に微笑みながら土手を降りて来た。キリトの名前に反応しなかったというのにはちょっと引っ掛かったが、わざわざ藪をつつく必要も無いだろうと思って流す。

 その男性は土手を降りてきた後、隣失礼します、と言ってからキリトの近くに腰を下ろし、慣れた手つきでメニューを操作して釣り針に餌を取り付ける。それから綺麗なフォームで釣り竿を振るい、湖面に釣り糸を垂らした。

 

「私の名前はニシダ、リアルでは東都高速線という会社の保安部長をしとりました。名刺が無くてすみませんな」

「東都高速線……?」

「アーガスと提携していたネットワーク運営企業だ。つまりこのSAOのオンライン通信を保っている企業だな」

 

 まさかのリアルの職種まで明かしてくるとは予想外だったが、その企業名に聞き覚えがあるような気もして首を傾げると、すぐさまキリトが視線を向けてきながら解説を入れてくれた。どうやらそういう事らしい。聞き覚えがあったのは、恐らくニュースで耳にした事があるからだろう。

 つまり、そこの保安部長をしていて、わざわざそれを言ったという事は……

 

「じゃあ、ニシダさんは、もしかして……」

「一応、責任者という事になっとりましたな」

 

 柔らかな微笑……と言うよりは、どこか苦笑を思わせる笑みを浮かべたニシダさんは、私の言葉を引き継ぐ形で疑問を肯定した。

 つまりこの男性は、業務上という形でこの事件に巻き込まれたという事になる。リアルの仕事もあるのだし、このSAOで回線切れが起こったら一気に死ぬのだから、それも含めると相当複雑だろう。リアルに戻った時に企業は残っているのか、とか、退職金はあるのかとか。

 そんな思いもある筈だが、それを感じさせない柔らかな雰囲気でニシダさんはわははとまた小さく笑った。

 

「いやぁ、何もログインまではせんで良いと言われてたんですが、自分の仕事は最後まで見ないと収まらん性分でして。年寄りの冷や水がとんだ事になってしまいました」

「それは、また……」

 

 本人だからこそ笑い話に出来るが、他人である私は全く笑えない事である。

 そもそも私はまだ学生だからリアルに戻っても学校生活が待っているが、この男性は自らの手で仕事を手にして働かなければならない立場、庇護されている私が無責任に笑っていい内容では無い。

 

「私の他にも何だかんだでログインしたいい歳のオヤジが二、三十人ほどおるようでしてな。まぁ、大抵は最初の街で軍から仕事を貰って日銭を稼いで日々を大人しく過ごしておるようですが、私は三度の飯よりもコレが好きでしてなぁ……」

 

 言いながら、ニシダさんは釣り糸を垂らしている竿を少し揺らして笑う。

 

「他に釣り場は無いか、もっといい釣りが出来る場所は無いかと探して彷徨っていたら、気付けばここまで登ってきてしまいましたわ」

「なるほど……ここはモンスターも出ないから釣り場としては最適ですね」

 

 私の言葉に、しかしニシダさんは肯定の言葉も口にせず、何やら意味深に笑みを深めただけだった。

 

「それで、ここより上の階層で良いと思えるポイントはありますかな」

「え、と……すみません、私はよく知らなくて……」

「……第六十一層の《セルムブルグ》なんかは、まぁ、《アインクラッド》の構造的に厳密には湖だが、一面水場だから釣り場には最適だろうな。確か一時間単位で借りられるボートもあったし」

「ほうほう! それは一度行ってみなくては! ……む?」

 

 どうやら本当に釣り好きらしいニシダさんが絶好と思える釣りポイントを聞いて嬉しそうな声を上げた直後、水面に顔を出している浮きが、一瞬で水面へ沈んだ。竿が撓り、垂らされていた糸がピンと張る。

 

「嘘……一度も引っ掛からなかったのに……」

「餌のランクが違うんだろうな……あと釣り竿」

 

 私が唖然と呟くと、キリトがニシダの持つ釣り竿と傍らに置いている餌箱へ視線を交互に向ける。

 言われてみれば、餌箱は見た時からキリトのより上だと気付いたが、釣り竿もキリトが持っている簡素な造りのものと比べて圧倒的に逸品だと分かる代物だった。まず竿の輝きというか、同じ木製でも質感というものが違う。

 これが武具などを見れば分かるランクの差、それだけデータが『重い』というものなのだろう。

 恐らく釣り竿のランクが上である程、引っ掛かる確率と釣れる確率が上がるのだろうなぁと思っている間にも、ニシダさんは悠然と慣れた手つきですぐに釣り竿を引いた。それから水面でバシャバシャと足掻いていた銀色の魚が空中へ引っ張り上げ、勢いよく水上へと姿を現す。

 それは糸を引く力に従ってニシダさんの下へと落ちていき、彼の手許で幾らか跳ねた後、蒼い光に包まれて姿を消す。恐らく自動でストレージに格納されたのだ。

 

「凄い……」

 

 二時間糸を垂らしたのに引っ掛かりすらしなかったこの湖で、ニシダさんは一分足らずで引っ掛かり、綺麗なフォームで釣り上げて見せた。その様はスキル値や物だけでなく本人の長年掛けて磨き上げた熟練の技を感じさせた。

 それに感嘆して言葉を洩らすと、ニシダさんは照れたように頬を掻いた。

 

「いやぁ、この世界ではスキル値と使うモノ次第ですから、リアルに較べれば簡単です。それはともかく、釣れるのは良いんですが食べる方が問題なんですよね。この世界の調味料はどれも洋食のものばかり、それもリアルには程遠い味付けばかりですし、魚にも合いません。やはり醤油が恋しいですよ」

「醤油……」

「……」

 

 ニシダさんの哀愁漂う口振りに、さっきからほぼ黙りこくっているキリトへ視線を向けてしまう。それの意味を悟ったらしいキリトは微妙に半目になった。

 彼が言わんとする事は分かる。醤油を始めとした各種調味料など、リアルで私達が長らく触れ合っているものはキリトの手によって再現されて久しいものの、未だに一つたりとも世に発信されていないのだ。何か考えがあっての事だと思うので私も特に口出しをしていない。

 加えて今のキリトはホームを誰にも知られないようひた隠しにし、攻略していない間も雲隠れを貫こうとしている身だ。

 だから私が醤油――の味がする調味料――の存在がある事で口を滑らせるのは、してはならない事だ。

 それでも、存在を知っているから思わず目を向けてしまうのは許して欲しい。この世界に来てすぐリアルに等しい料理を食べ続けている私には分からないが、アスナやユウキ達、一層の教会に住む子供達の様子を見た後では、どれほどリアルの味が切望されているのか知っているのだ。

 いや、まぁ、キリトがそれを作り出した理由を考えると、彼もそれを知っているのは分かるが。

 

「……そういえば、もうそろそろ昼食の時間だな」

「え? え、ええ……そうね」

 

 デュエルが終わったのが午後九時半ごろ、釣りを開始してから二時間と少しが経過しているのだから確かに昼頃だ。今から移動して用意し始めれば丁度良いくらいだろう。

 しかしいきなり何故そんな事を口にしたのか。ニシダさんは人が良いとは言え赤の他人なのだから、出来るだけ早く別れたいと思っているのだろうか。

 そう思っていると、キリトの眼は微妙な表情で哀愁を漂わせているニシダさんへと向けられる。

 

「ニシダさんは、昼はどこで?」

「む、お昼ですかな? この後《ペルカ》の宿で食べるつもりですが」

「宿か……ならそこでオレ達も食べよう。ついでに、ここで会ったのも何かの縁、さっき釣った魚で《料理》スキル完全習得の腕を披露するよ」

 

 何と、キリトの方から関わり始めた。これは魚という単語から察するに醤油を使う気だ……

 しかし、何故? 人と関わり過ぎるのは後々で問題に発展するんじゃ……

 

「え……か、完全習得ですか?! おお……それは、期待出来そう……ですが、よろしいのですかな? 姉弟水入らずで食べる方がよろしいのでは?」

「えっと、私とこの子は姉弟じゃないのだけど……」

 

 《料理》スキル完全習得者は表向き存在しないので驚くのも無理は無いと思っていると、いきなり姉弟と言われ、首を傾げてしまった。思わず素で言葉を返してしまう。

 

「なんと。髪と眼の色も同じで、雰囲気も似ているからてっきり姉弟だとばかり……失礼しました」

「い、いえ……気にしないでください」

 

 頭を下げながらの謝罪に、居心地の悪さを覚えながらそう言う。いや、キリトと姉弟と見間違われた事自体はそれなりに嬉しくはあるのだが。

 ……まぁ、本当に姉弟だったらちょっとアレだが。

 それに義姉のリーファが物申してきそうな気もする。何だかんだでお義姉さんやってる彼女は結構なブラコンだからなぁ……境遇が似ているという理由でユイちゃんを家族に引き入れただけで、私が義姉になるというのは流石にアレだろう。

 でもやはり嬉しい。

 その後、ニシダさんが十匹ほど釣ってから移動を開始した。

 私は《ペルカ》への道のりを、キリトに視線を向けながら気になった事を考えていた。キリト自ら、しかも今まで世間に知られないようにしていた醤油といった調味料を振る舞うのを決めた事への意図だ。

 とは言え、彼が考えている事を私程度が読める筈も無いので、それも数分で諦め、二人の後を追った。

 その間、さっきまでと違っていやに機嫌がいいキリトを、訝しく思いながら。

 

 






 はい、如何だったでしょうか。

 今話は全体的に難産でした。何せ愚兄とガチで殺し合った後ですからね、更にシリアス感を倍増させる為に殆どのキャラが喋ってないという……アルゴやシンカー達なんて一言も喋ってないですからね。

 その代わりリンドが何気に目立った……(笑)

 更に今話ってキリトが別行動するまでは普通に書けたんですが、その後、つまりシノン視点が悩んだ。誰を行かせるかで。実際キリトに続いてリズ、アルゴ、シリカ、リーファ、クラインと書いては消してます。

 そんなこんなで、怒り狂ってやさぐれて落ち込んでるキリトには、かつて同じ気持ちを味わったであろうシノンが最適かなと思い至って書くと、書き上げられた。

 件のKIBTのようなキリシノ小説にあるように、シノンってある意味アスナより包容力あると思うんです……過去が過去だから冷静だったら人の心情察せそう。特に今のキリトは子供らしく不機嫌なので、全然理由が子供っぽくないけど。

 という訳で、『静かな愛』を主張するように黙って傍に居続けました。シノンの場合はこれが一番似合ってそうだったので。如何でしたかね。

 次に第七十五層到達から漸く登場したニシダさん。

 良い年配キャラです、キリト&アスナと別れるシーンのアニメを見た時はニシダさんの優しさに泣いた。そうでなくとも凄い良い人だと思う。

 まぁ、登場の仕方は原作通りでした……会話が殆どシノンなんて微妙にセリフも違ってます、気を付けなければ分からない程度ですがね。

 このニシダさんとの関わり、原作部分は変わらずですが、その後はどうしようかなーと考え中です。第七十六層以上に来させるか否か……悩む。

 案外エギルと一緒に商売に勤しんだりして(笑) エギルが攻略に行ってる間の店番で、釣り場が見付かったらキリトと一緒に行く孫大好きお爺さんみたいな感じで(笑)

 そして。

 気付いた人も居るであろう、キリトの様子について。

 分からなかった人は、ニシダさんが来てからのキリトのセリフを読み返せば分かります。

 その間で一回だけ出た一人称……!

 文面だから違いが丸分かりますが、会話相手のキャラの方は雰囲気じゃないと悟れないので……その辺を上手く描写していけたらなと思います。露骨な口調変えはあまりしない予定。あくまで予定。

 長々と失礼。

 では、次話にてお会いしましょう。


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