Fallout 3 -Lyrical edition-   作:クラッチペダル

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Vault101のアイツ、言語の壁にぶち当たるの巻き。


02 Vaultのアイツと暴走体

男は空になったドラムマガジンを銃身からはずし、フルに弾が込められたドラムマガジンを先ほどまで空のドラムマガジンが納まっていた場所にたたきつける。

そのまま銃身前方のレバーをいじり、初弾を装填。

彼の今までの戦いにより、それらの動作は体にしっかりと染み付いており、最早彼はその動作を目を瞑っていようが、意識が飛んでいようが失敗させる事無く完遂できるだろう。

そのまま再び銃口を彼がケンタウロス新種と勝手に呼んでいる生物に向け、トリガープル。

銃口から放たれた9個の小型の鉄球が、対象の体を削り取るなどという生易しい物ではとどまらず、ごっそりと消し飛ばす。

しかし、相手は消し飛ばされた場所を蠢かせ、すぐさまその損傷を治してしまう。

最早先ほどから何度も繰り返された光景だった。

 

「くそっ! こいつは何時になったら殺れるんだよ!?」

 

悪態をつきながらも、彼の動きは止まらない。

相手の攻撃に捉えられない様に動き回りながらも、その指はトリガーを引き続ける。

それでも倒れないそれに、男はある二種類の敵をのことを思い出した。

一つは見上げるほど巨大な体躯を持つ緑の巨人、スーパーミュータント・ベヒモス。

もう一つはサイズはそれほど大きいわけではないが、それでもベヒモス以上の力と強力な銃火器を扱い追い詰めてきた、スーパーミュータント・オーバーロード。

いや、それらよりもむしろ厄介だと彼は考えている。

なにせ、先にあげたその敵は、今目の前にいる敵のように再生したりはしなかったからだ。

 

ちらりと腕輪についている画面を見やる。

画面にはまだ膨大な数の弾薬が残っていることを示す数字が見えるが、問題はその隣にあるバー。

それは今現在扱っている武装の耐久度を示しており、そのバーは徐々に短くなっている。

まだまだ限界と言うわけではないが、おそらく限界は弾がなくなるより早く来るであろう事は容易に想像できた。

 

ただ硬いだけならいくらでもやりようがある。

しかし再生する相手の対処法は、少なくとも彼は知らなかった。

いや、正確には一つ……いや、二つだけ対処法があったのだが、それは今のタイミングでは自身も危険なので考えから除外していた。

 

『誰だか知りませんがそれじゃ奴は倒せません! あいつは魔法じゃないと!!』

 

こいつをどう始末しようかを男が考えていると、ふと誰かに声をかけられた。

しかし、それは男の知る言語ではなく、どう反応を返したものかと悩んでしまう。

 

そうこうしている間も彼は狂った機械のように此方に突進をしてくるケンタウロス新種(仮)にショットシェルを撃ち込んでいる。

身に染み付いた行動が意識を思考に割いていたとしても行われているのだ。

 

(いっそヌカグレネードでもぶちかますか?)

 

やがてじれったくなったのか、彼はふと先ほど除外した考えを再び浮かび上がらせる。

ヌカ・グレネード。

簡単に言ってしまえばハンディサイズ核爆弾である。

名前は原料に使われているとある炭酸飲料からとっている。

飲み物が凶悪な兵器になるという、いわばブラックジョークが込められた名前だ。

 

ハンディサイズとは言え核は核。

この化け物をきっと跡形もなく吹き飛ばしてくれるだろう。

そう彼が思い、腕輪を操作し始めたときだった。

彼の体の横を、桜色の太い光線が通過していった。

 

「……うぉわ!?」

 

彼は思わずその場を飛びのく。

脳裏に浮かぶのは立ちはだかる敵をビームでなぎ払うあの鉄の巨人。

しかし振り向き光線の発生源と思われる方向を見ても、居るのは少女一人だった。

 

「ワォ……シャレにならねぇ」

 

--ドッグミートやフォークスでもない限りあれは耐えれないだろ。

 

思わず彼の背中を汗が伝った。

 

『大丈夫ですか!?』

 

その少女は、男に向けて心配そうに声をかけている……が、如何せん、男は少女が何を言っているか分からない。

当然、分からなければ答えようが無いので、必然的に彼は黙っているしかない。

 

『あの、そのぉ……大丈夫だったら返事をして欲しいかなぁ、なんて……思ったり……その、えっと……』

 

そのだんまりをどう捉えたのか、少女は涙目になり始める。

思わず空を見上る。

子供との会話は、彼はむしろ得意ではあった。

だが、それも言葉が通じなければ意味は無し。

そうして二人であたふたしていると、ふと少女の傍から、しかし少女とは別の声が聞こえてきた。

 

「あの、もしかして彼女の言葉が分からなかったりしますか?」

「っ! あんたは英語が話せるのか!?」

 

その声に、男は大きな反応を見せる。

なぜなら、その声の主が話した言語は多少聞き取りにくい部分があるが、男が知っている言語だったからだ。

しかしその声の主はどこに居るのやら。

声はすれども姿は見えず。

男は思わず周囲を見回す。

 

「やっぱり……ミット語とは微妙に違うけど、大体似てるな……じゃなくて! あの、こっちです、足元です」

「足元……お前か?」

 

声の指示通りに男が足元に目を向けるとそこにいたのは彼を見つめる一匹の動物。

その動物をつまみ上げ、男は自分の目線とそいつの目線を合わせた。

 

「……お前、うまそうだな」

 

脳裏に浮かぶのは初めの頃はなかなかの強敵、しかし今では唯の食料源であるモールラッド。

モールラッドの肉は臭みがあり、しかも固いため胃の中で跳ね回るような感覚があり、非常に評判は悪い。

それに比べて、目の前の小動物の肉のなんと旨そうなことか。

ちなみに、彼は臭みなどまずさの原因を取り除いたモールラッドの肉の加工品を現在持ってはいるが……それは極少数であり、大部分は彼の拠点に置いてきているので手持ちがそれほど無かったりする。

あの場所、ウェイストランドは、おいしい物が食べれる機会は驚くほど少ない故、なるだけ残しておきたかったのだ。

そんな事を思いながらその動物を見ていると、その動物は慌てたように……実質慌てているのだろう。

とにかく手の中でじたばたと暴れだした。

 

「おいしっ!? ぼ、僕を食べてもおいしくないですよ!! っていうかやめてください!!」

「こいつは驚いた。しゃべる動物か」

 

だとしたら食うのは話を聞いてからでも遅くない。

結局後で食うことは確定事項としつつもそんな事を考え、とにかく彼はこの動物の話を聞くことにした。

 

「はぁ、はぁ、まさか食べられそうになるなんて……」

「すまなかったな。だがそれよりも聞きたい、あれは何だ? どれだけ撃ち込んでもまったく効きやしない」

 

そう言って先ほどケンタウロス新種が光線に飲み込まれた地点を見ると、そこには不気味な肉塊がぶよぶよと蠢いていた。

あれだけのビームを喰らっても再生すると言う光景を見て、男は本気でヌカグレネードをばら撒きたくなる。

 

「あれはジュエルシードの暴走体です。あれを倒すには核になってるジュエルシードを封印しないと」

「シュエルシード? 暴走体?」

 

その動物から聞いた話を男はほとんど理解していなかったが、少なくともあれが放っておいたら厄介な物だということは分かったようだ。

 

--はてさてどうしたものか。

 

この中で唯一事情を知っているあの動物は、目の前の少女となにやら言葉を交わしている。

なにやら相談しているみたいだが……

 

「あの、よろしいでしょうか?」

「ん? ああ、何だ?」

 

一通り話が付いたのか、男の方へ動物が向き直る。

しかし、未だに男につままれた状態の癖に後ろを向いて話したりなどなかなか器用な動物である。

 

「彼女がジュエルシードの封印をします。その手伝いをあなたにして欲しいんですけど……」

 

要は囮になれということである。

 

その発言を彼以外のウェイストランド人に言ったらまず脳みそに直接弾丸をプレゼントされるだろう。

自分が生き残るために他者を利用しなければならないとは言え、利用される側とて死にたくは無いのだから。

しかし、それでは結局あのケンタウロス新種……ジュエルシードの暴走体を倒せず犬死するだけである。

 

--ウェイストランドの奴ら、変に短気だからなぁ。

 

当然、彼にその提案を断る理由も無く快諾する。

 

囮になると言うことで、早速装備を考える。

遠くからチマチマやってる最中に目標を自分からからあの少女に移されたらまずい。

というわけで近接武装……

 

「……あ、こいつがいいか」

 

ああだこうだ考えながら腕輪……Pip-Boyをいじり、取り出したのは一本の剣とそれにつながっているガソリンタンク。

その剣を引き抜くと刃が炎に包まれる。

シシケバブという、簡単に言えば相手を燃やすことが出来る剣だ。

決して肉の串焼きの事ではない。

 

背中にガソリンタンクを背負わなければならず、端から見ればかっこ悪いの一言に尽きるが、威力はお墨付き。

何より相手を燃やすことで普通に切るよりはるかにダメージは大きいのだ。

 

「何も無いところから物を取り出した!? しかも魔力が感じられない……」

 

後ろから聞こえる呟きを無視し、彼は炎に包まれた剣を1~2回振り回す。

Pip-Boyに表示されたコンディションは最大値。そしてそれに間違いは無いようだ。

 

既に再生を終えた暴走体は、シシケバブの炎を警戒しているのか近づいてはこず、いつでも飛びかかれるように身構えてはいる。

しかし、向こうから向かってこなかったのは好都合。

 

シシケバブを握りなおし、暴走体へ向かって駆け出す。

それに反応してか、暴走体も男へと向かって来た。

 

『今のうちです! 心を静めて、封印のための呪文を!』

『あ、はい!』

 

背後から聞こえる声が何を言っているのか、彼には相変わらず分からない。

しかし自分が何をすべきかは彼ははっきりと把握している。

仮に忘れたとしてもPip-Boyで調べなおせばいい。

 

「さぁて、生きるか死ぬかの戦いだ」

 

もっとも、向こうはすぐさま再生するし、封印でないと倒せないというチートもいいところろだが。

 

それしか能が無いかのように突進してくる暴走体に、そのままシシケバブをたたきつける。

シシケバブの刃はそのまま暴走体の体を切り裂き、それだけにとどまらず暴走体に自身がまとう炎をおすそ分け。

それにより暴走体は熱さにもだえ苦しむかのように地面を転がり始めた。

 

見ると、先ほどまでだったらすぐさま治っていたあらゆる傷も、治る兆しが見えない。

おそらく、治った傍から焼かれているため、再生が追いつかないのだろう。

とは言えこの炎もずっと燃えているような物ではない。

しばらくすれば消えてしまう。

 

せっかくなのでもだえてる暴走体にダメ押しの一撃を当ててもうしばらく燃やしておくかと思った彼が、シシケバブを片手に暴走体に近づいたときだった。

 

『リリカル・マジカル!! ジュエルシード、シリアル21!! 封印!!』

『sealing』

 

彼の背後から少女の声と、今度は今まで聞いたことが無い女性の声……ロボブレインのような合成音声が聞こえてきて、次の瞬間、背後からピンク色の光の帯が彼の脇を通り抜けて暴走体に絡みつく。

暴走体はその帯を振り払おうと蠢くが、光の帯が離れることが無く、そのまま光を強めていく。

 

あまりのまぶしさに彼は目を腕でかばい、しばらくしてから腕をどける。

すると先ほどまで暴走体がいたはずの地点に暴走体はおらず、代わりに青いひし形の宝石が宙に浮いていた。

 

「……こいつは?」

 

その宝石に男が触れようとした瞬間、それは宙を滑るように移動し始め、彼の脇を帯が来た方向を逆行するように通り過ぎ、少女が持っていた杖の先に付いている赤い宝石に吸い込まれた。

 

「……これで封印完了です。協力していただきありがとうございました」

「いや、別に構わないが」

 

その代わりいろいろ聞きたいことが増えた。

先ほどのあの宝石は何か?

あれを封印する際のあの光の帯はいったい何なのか?

 

それを聞こうと、彼はあの動物に声をかけようとして……その音が耳に入った。

 

「ん? なんだこの音」

 

それは遠くから聞こえてきていたが、じょじょに音が大きくなっているということはこちらに近づいてきているということだ。

 

『あ……』

 

この音の正体を知っているのか、少女はその顔に汗を大量に流していた。

そこでふと気づく。先ほどと服装が違うのはどういうことなのだろうか?

見たところPip-Boyをつけている風ではない。

 

男の疑問をよそに、少女はしばらく汗を流した後、ふと肩に乗せているあの動物に何かを話している。

それを聞いた動物も、その顔に汗を流し始め、彼に焦ったように声をかけてきた。

 

「あの! 今はここを離れましょう! 警察がここに近づいているみたいです」

「警察……?」

 

彼にとって警察といえば、核戦争の前まで居た法的機関の一種だった。

しかし今のウェイストランドに警察などと言う組織は存在しない。

それに似たような事をしているらしい、実際はただ胸糞悪い自称正義の味方なら居たが。

それを聞いた時点で、ここは自分が知る場所ではないこと男はを理解した。

 

『は、はやくここから離れないと! すっごく怒られちゃいます!!』

「えっと、とにかくこんな場所じゃ落ち着いて説明も出来ませんし、早く離れましょう!!」

 

別に男はその警察が何をしてこようと切り抜けれる自信はあるのだが、なにやら少女と動物の様子を見るに、そんな簡単な話ではないらしいということを理解した。

なので別に提案を断るメリットも無く、彼は慌てて駆け出した少女の後を付いて行くように駆け出した。

 

『ごめんなさ~~~い!!』

 

その途中、少女がなにかを叫んでいたが、やはり男はなんと言っているのかはさっぱり分からなかった。




さすがに公式で既にチートなアイツでも、ジュエルシード封印は出来ませんでした。

でも多分粉々に破壊する程度なら出来ると思うんですよ。
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