Fallout 3 -Lyrical edition-   作:クラッチペダル

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まず皆様にこの場を借りて謝らなければならない事があります。
この小説には、独自の設定が盛り込まれているのに、タグに独自設定ありと入れるのをすっかり忘れていました。
大変申しわけありませんでした。

なお、その設定とは主にPip-Boy関係です。
この小説では、言ってしまえばPip-Boyは四○元ポケット的な物としています。
ゲーム中、膨大な量のアイテムをどうやってしまってるのかと言う事がいまいちはっきりしなかったため、こういう設定とさせていただいてます。


03 Vaultのアイツと次元世界

警察に見つからないように逃げ出した後、彼らの姿は公園にあった。

未だに響くサイレンに、男は耳を澄ます。

そして、自分達の方に近づいていないことを確認すると、ベンチに座っている少女に近寄った。

 

「……さて、まずはそのお嬢ちゃんが大丈夫か聞いてくれ、小動物さんよ」

「あ、はい。なのはさん、大丈夫ですか?」

『う、うん。大丈夫……多分』

「一応大丈夫だそうです。本人曰く」

 

本人はそう入っているが、息も荒く、顔もやや青ざめているという点を見ると、まったく大丈夫そうに見えない。

その様子を見た男はPip-Boyを操作。

すると彼の右手にペットボトルが現れた。

 

「おい、これを飲めって伝えてくれ。水だ」

「え? あ、はい、分かりました」

 

そのペットボトルを、男は小動物に声をかけられ顔を上げた少女に手渡す。

渡されてすぐは自分が渡されたそれをしげしげと眺めていたが、小動物が何かを言うとその瞳を輝かせて蓋を開け、一気に飲み干す。

 

彼が渡したペットボトルに入っていたのは唯の水。

しかし男が居た場所、キャピタルウェイストランドではその唯の水の頭に『非常に貴重な』という言葉がつく。

なぜなら、ウェイストランドではほぼ水が放射能汚染されており、彼が少女に手渡した水のように汚染されていない、クリーンな水と言うものはそうそうお目にかかれないのだ。

手に入れた水が汚れた水だった……そんなことはよくあることである。

もっとも、彼の場合は自分の家にいるロボットから数日置きに五個ずつもらえるため、それほど綺麗な水に困っていはいなかったりする。

 

ちなみに、渡した水は家の冷蔵庫でしっかりと冷やしておいたものをすぐPip-Boyに収納したものであり、Pip-Boyの持つ『収納した物のコンディションを、収納したときの状態で常に保つ』と言う効果により常にキンキンに冷えている状態だったりする。

あの炭酸飲料と違い、冷えていたところで効果が変わるわけではないが、やはり飲むなら冷えた飲み物を、と言う男のちょっとした贅沢な我侭故だった。

 

『んぐっ、んぐっ……ぷっはぁ!! あ~、体に水分が染み渡るの』

 

水分を補給できた少女が、幾分か顔色をよくしそう呟く。

それを見て、男は思う。

 

唯の水一つで、これだけ人を幸せにすることが出来る。

だから、きっと自分の選択は間違っていなかったのだ、と。

今では荒野は、命の水にあふれていることだろう。

 

(……出来ればドッグミートやフォークスたちと、一緒に水を飲みたかったぜ)

 

今は傍に居ない、大切な仲間を思い、男は空を見上げる。

見上げた空は、やはり男が知っている夜空よりも星が見づらかった。

 

 

※ ※ ※

 

 

しばらくし、完全に少女の呼吸が落ち着いた後、彼らは情報の交換と相成った。

 

「さて、いろいろ聞かせてもらいたいことがあるんでな。説明してもらうぜ?」

「わかりました。まず自己紹介を。僕はユーノ・スクライアって言います」

『私は高町なのは。よろしくね? ユーノ君。それで、あなたは……?』

「彼女の名前は高町なのは……彼女はあなたの名前が聞きたいようです」

 

ユーノと名乗った小動物を通訳に、男と少女……なのはは会話を試みる。

ユーノから伝えられたなのはの言葉に、男は顔をなのはに向けて答える。

 

「タカマチか……不思議な名前だ。俺はアキって言うんだ。よろしくな」

「あ、多分高町は苗字……ファミリーネームだと思います」

「おっと、ならナノハか。悪い悪い。改めてよろしくな、ナノハ」

 

ユーノを通じて男、アキの言葉を聞いたなのはは笑顔を浮かべながらアキに握手を求めてくる。

それに対し、アキも笑顔でそれに応えた。

しかしその内心で彼は思う。

 

絶対ナノハの使っている言語、覚えよう、と。

 

ユーノが通訳をしてくれているためコミュニケーションに問題はないのだが、なにせ通訳を交えた会話ではレスポンスが遅い。

当人同士直にコミュニケーションを取れるなら、それにこしたことは無いのだ。

そして実際に、こういう説明をする場合、片方に説明し、一旦区切ってさらにもう片方に説明では相当面倒なことになる。主にユーノが。

故に、アキはユーノに、なのはへの説明を先にしてもらい、自分はそれが終わってから説明してくれと言う旨を伝えた。

初めはそんなに面倒ではないと言って遠慮していたユーノだったが、アキの説得により納得したのか、なのはへの説明を開始した。

スピーチスキル100がキラリと光る瞬間だった。

 

なお、なのはへの説明の間、彼は手持ち無沙汰になったため、先ほど使ったクサンロングとテリブルの整備を始める。

まずクサンロングを取り出し、その後で中国軍アサルトライフル、通称中華アサルトを取り出す。

そして中華アサルトを、いつの間にか取り出した工具で分解し、磨耗などが少なく、まだ使えそうな部品をキープ。

その後、クサンロングを分解して磨耗した部品などを取り替えた。

ニコイチ修理である。

その作業を今度はテリブルショットガンとコンバットショットガンでも繰り返し、クサンロングとテリブルの修理が終わった頃には、既に説明が終わっていたのか、なのはとユーノが恐る恐ると言った様子で修理が終わった銃火器を見つめていた。

 

「ん? 終わったのか」

「ええ、終わりましたけど……それ、質量兵器……ですよね?」

「質量兵器……?」

 

アキにはあまり聞きなれない言葉だった。

まるでそれ以外の種類の兵器があるというような、そのような言葉。

しかし、そんなことよりも先ほどの暴走体などについての説明の方が重要。

クサンロング達をしまうと、ユーノに向き直る。

 

「まぁそれは今はいい。とにかくさっきのあの化け物はなんだ? あの宝石は? いろいろ説明してくれ」

「はい、分かりました」

 

その後、ユーノに聞かされた話は彼でなくとも、聞かされたところで信じられないようなことだった。

彼の知り合いであるラジオパーソナリティの言葉を借りれば、『ジェットをキメたような』、まさにそんな話である。

当然、そんな話をいきなり言われてもそう簡単に信じれるわけが無い。

 

「僕はこの世界の住人じゃないんです」

「この世界の住人じゃない? と言うと何か? お前は宇宙からきたエイリアンってか?」

 

アキの脳裏に浮かぶのは何の前触れもなく人をキャプチャーし、しょっぱなでレーザーメスのような何かで人の体を切り開いたあのしわがれた皮膚を持つエイリアンだった。

それと比べると、目の前の小動物はあまりにもエイリアンらしくない。

 

「えっとエイリアンとかじゃなくて、なんと言えばいいのか……世界と言うのは無数にあるんです。次元世界と言って、次元空間と言う広い宇宙のような場所に本当に無数に。例えるなら炭酸飲料ですね。泡が次元世界で、液体部分が次元空間と言うわけです。そして僕は今こうしている泡とはまた別の泡で生まれた存在なんです」

 

ユーノの言葉で言われたとおりに想像する。

確かに、ある程度分かりやすくはある。

実際に世界が無数にあるというさまを見た事が無いので実感は沸いていないが。

だがしかし、世界が無数にあるという言葉、そしてユーノ自身が別世界の住人だという言葉で、アキはある事を考え付いた。

 

「……なぁ、ユーノ。お前がこの世界に来ているということは、その次元世界? とやら、互いに行き来はできるのか? 出来るとして、その方法は?」

「え? あ、はい。僕の場合は次元航行船でここまで着ました。もっとも、管理外世界……これについては後で詳しく説明しますが、そこに行くということでかなり審査とかは厳しかったですけど。あと大規模な転送魔法とかでも別の世界には行けます」

「OK、なら次の質問だ。望んでもいない奴が、その方法以外で別の世界に行っちまった……なんて事はあるか?」

「……ええ、あります。時空管理局……次元世界を管轄とする警察みたいな組織なんですけど、そこでは毎年結構な人数の人が保護されてると言う話です。そういった人々は、次元漂流者と呼ばれてます」

「そう……か……」

 

その話で確信した。

自分の見慣れないこの場所がそうなのではないかと、先ほどからうすうす感じてはいた。

Vaultの映写室での映像でしか見た事が無かった、道を電灯が照らし、高くそびえる建物が乱立した場所。

そこを少し外れれば背は低いがそれでも立派な建物がそこかしこに建っている。

そのどれもが、崩れていたり柱しかないなどと言うことは無かった。

明らかに、アキの知っている場所とは、それこそ世界が違うといえる光景だ。

 

しかし、そんな事はありえないだろうというアキの中の常識が、その答えから思考を遠ざけていた。

しかし、こうして明確な答えが突きつけられてしまったら、それを認めるしかない。

 

「はは……いや、いざ認めるとなると……想像以上にキツい……」

「アキさん?」

 

思わず天を仰ぎ、目を手のひらで覆う。

そんな様子を見て、ユーノもなのはも心配そうにアキを見つめる。

やがて、心の整理が出来たのか、アキが手のひらを下ろし、呟いた。

 

「なぁ、ユーノ……もしかしたら、俺も別世界の人間の可能性アリだ」

「えぇ!?」

「あぁ、参った、クソッタレ、いったいどういうこった?」

 

死を覚悟し、浄化装置を作動させ、死んだと思えば生きていて。

生きてはいたが目が覚めたらそこは見たことが無い場所。

挙句の果てにそこは自分が育ってきた世界とは完全に別の世界だった。

 

アキでなくとも、そのような状況に放り込まれれば頭が混乱してくるものだ。

周りに理由なく当り散らしてもおかしくは無い。

しかし、傍目から見ればアキは冷静だった。

いや、冷静ではないのかもしれないが、少なくとも周りに当り散らすということはしなかった。

それは、ウェイストランドと言う世界そのものが理不尽の塊で出来たような世界だったから。

要するに、理不尽な事態には慣れきってしまっているのだ。

それが、果たして幸せなのか不幸なのかはアキ自身にも分かったものではないが。

 

思わず頭を抱えたアキの視界が急にぶれる。

何事かと思うと今度はそのまま体に大きな倦怠感がのしかかってきていた。

この感覚を、彼は知っている。

彼が慣れ親しんだ感覚の一つだ。

もっとも、これだけには慣れたくない、と言う類のものだが。

 

先ほど使った注射器二つと吸入器……サイコとMed-Xとジェットの効果が切れたのだ。

一時的に戦闘能力を上昇させてくれるこれらの薬品は非常に便利な反面、効果が切れた際の反動とも呼べるものが大きいのだ。

 

「顔色が悪いですけど、大丈夫ですか?」

「あぁ、問題ない。そのうち治るさ」

 

心配そうに見上げてくるユーノにそう言って、アキは顔を上げる。

まだ少々顔色が悪いが、ほんの数秒の間でだいぶマシになっていた。

アキはユーノに説明の続きを催促すると、ユーノは未だにアキの顔色を心配しながらも説明を再開した。

 

「僕がこの世界に来たのは、ジュエルシードを回収するためなんです」

「さっきのあの青い宝石の事か?」

 

ユーノの話によると、件のジュエルシードを先ほどもちらりと出た時空管理局に輸送している途中、輸送船が事故に合い、ジュエルシードがばら撒かれてしまったようだ。

ばら撒かれたジュエルシードは、現在彼らがいる世界に流れ着いているらしい。

 

「なるほどね……で、お前さんはそのジュエルシードを回収しに来たって事は、さしずめ時空管理局のエージェントか?」

「いえ、僕は時空管理局員じゃありません。スクライア一族といって、遺跡発掘などの考古学的な分野を生業としてる一族の物です。まぁ、遺跡調査などで管理局の手を借りたりするので、まったく無関係と言うわけではないですが」

「は? なら、何でお前がわざわざここに? ここまで聞くと、管理局の奴等が来なきゃおかしいだろ」

 

アキの言葉に、ユーノはしばらく俯いた後、答える。

 

「……ジュエルシードは、僕が主導して発掘したものなんです。僕が発掘した危険な物が別の世界にばら撒かれている。だから、責任……みたいなものでしょうか」

「ふ~ん……」

 

ユーノの話を聞き、アキは考える。

今の話を聞いたところで、彼が責任を感じる必要性というものがあまり感じられなかったのだ。

確かにジュエルシードは彼が発掘したのかもしれない。

しかし、ジュエルシードは彼の不手際でばら撒かれたのではなく、彼の手から離れた、つまり輸送業者に引き渡された後にばら撒かれたのだ。

ならば、責任すでにユーノの手から離れ、業者に移っているのだ。

 

どのような状況でどのような事故が起こったのかはわからないが、それらの事故を想定し、安全に輸送するのが輸送業者という物ではないのだろうか?

少なくとも、アキが居たウェイストランドではそういったアクシデントは対処できない者が悪い。

そしてそんな者共が払う代償は、大抵命だ。

これは極端な例かもしれないが、少なくとも今責任を感じるべきはユーノではないとアキは感じている。

 

「……俺は運んでた奴等の手落ちだと思うんだがな」

「そうでしょうか? 僕はどうしてもそう思えません」

「けどよ……いや、忘れてくれ。たぶん俺とお前さんとだと考え方が違うんだろう。俺の感覚で言っても納得できないだろ?」

「はぁ……分かりました」

 

ちなみに、時空管理局が警察のような組織なら、このような場合には管理局が来るものなのではないかと言うアキの疑問には、この世界が管理外世界と言う、次元航行技術を持たぬ世界ゆえ、管理局が「原則不可侵」と定めている世界と言うことで、来るまでには遅れが生じるという説明を受けた。

落ちてきた物の危険度の癖にずいぶん悠長な、とアキは思ったのだが、これも自身の感覚ゆえの考えのため、それを口に出すことは避けた。

実際に見た事が無い、今のところ想像の中にしかいない彼らを非難することは愚の骨頂でもある。

 

考えの相違から、やや落ち込んだような空気になったが、そえでも説明は続く。

その中でも、魔法に関してはアキの興味を大いに引いた。

 

「魔法か……ずいぶんファンタジーじゃないか」

「と言っても、ようは科学ですよ。あらゆる現象を解析して、それを術式と言うプログラムに書き換えて、魔力を使って形とするんです」

「それでもだいぶファンタジーだ。俺にもそれは使えるか?」

「そ、そうですね……さっきちょっと調べてみたんですけど、リンカーコアはあるんですが、それが小さいんです。簡単な魔法なら使えると思いますが……」

 

ユーノの返答に、思わず肩を落とすアキ。

聞くと、さきほど少女が放ったあの光線も魔法らしい。

それが使えるなら武器の耐久度などを気にせず戦えるなどとアキは考えていたのだ。

 

もっとも、あの荒野に帰れるのかどうかも分からず、そもそもウェイストランドに魔力があるのかどうかも定かではないのだ。

 

「説明としてはこの程度なんですが……アキさんはこれからどうするんですか?」

「俺か? 俺は……」

 

ユーノに聞かれてはたと気づく。

自分はどうやら次元漂流者なる世界規模の迷子。

行くあても、戻るあても無いのだ。

 

「……まぁ、行くあては無いが、何とかなるだろう」

「そんな適当な……」

 

ユーノの言葉はもっともだった。

しかし、アキにとって当ての無い旅という物は珍しくもなんとも無い。

あの荒野の中を、情報も何もなくとりあえず駆けずり回っていたものだ。

 

あの瓦礫の荒野と違い、青々と生い茂る緑を見回しながら、アキは昔を懐かしむように、そんな事を考えていた。




Vault101のアイツ、説明を受けるの巻。
アイツに大きな魔力持たせたら無双してしまいそうなので、あくまで簡単な魔法が使える程度の魔力にとどめました。

魔法とかばかすか撃ったら、Falloutっぽくないですしね!
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