Fallout 3 -Lyrical edition-   作:クラッチペダル

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今回はアイツの海鳴生活初日の様子を。

ちなみに今更ですが、アイツの名前、アキとなっていますが、これは筆者のFallout3の主人公の名前です。
由来はプレイし始めた季節が秋だったから。
安直で申し訳ない。


04 Vaultのアイツと異世界生活初日

さわやかな朝を、小鳥の鳴き声が演出する。

その音で目が覚めたのか、その人物はしばらくその場でもぞもぞと蠢いていた。

やがてその動きを一旦止めると、その人物は上体を起こし、寝ている間に凝り固まった身体を軽くほぐし始めた。

 

「くぁ……はぁ、久々にこんなぐっすり寝たぜ」

 

その人物、アキはそう誰に聞かせるでもなく呟くと、先ほどまで寝ていた寝ていた場所から立ち上がる。

 

「しかしやっぱあの荒野で寝るのとはずいぶん違うな。やっぱ草生えてるからか」

 

彼が寝ていた場所。

そこはただ草が生い茂っている場所であり、そこには古ぼけたマットレスが敷いてある。

そしてマットレスの脇にはなにやらいろいろ詰まっているのか、膨らんだ袋が置いてある。

そう、アキはあの後なのは達と別れると周囲を探索。なぜか落ちていたマットレスを拾い、そのまま公園の奥まった場所にそれを敷いて野宿をしたのである。

 

いくら行く当てが無い異邦人とはいえ、一般人から見れば野宿をするのはどうなのかと思うところだが、あいにくそんな常識は彼や彼がすごしてきたキャピタル・ウェイストランドでは一切通用しない。

寝れるのならばそれで上等なのだ。

 

「冒険の最後あたりはロクにメガトンに帰ってなかったから、いつも野宿だったか……いくらマットがあるからって背中いたくなんだよなぁ。それに比べたら、ここはだいぶ寝心地がいいぜ」

 

草によって多少なりとも固さが軽減された地面で眠ることが出来、彼の機嫌はなかなかに良いものだった。

それに、マットレスを拾うついでにいいものも拾えたため、機嫌のよさには拍車がかかっている。

そのいいものは、マットレスの脇の袋の中にある。

アキはそれを上機嫌で取り出す。

取り出した物は……洋服であった。

 

昨夜、なのはに服装の事を指摘され、自分の格好がこの世界ではおかしいという事を知ったアキが、以前ウェイストランドで行っていたようにあちこちに落ちている物でなにか有用なものは無いかと探した結果である。

 

ちなみに、彼はゴミ捨て場でこれらの洋服を拾ってきており、それは下手すれば犯罪なのだが、悲しいかな彼は異邦人。それも物はどこぞで拾えが当たり前の世界からの迷子。

この世界の法律は分からないと言うこともあり、自分の行いが犯罪だとは考えていなかったりする。

 

閑話休題

 

ともかく、それら洋服を取り出したアキは、早速それらに手を加えていく。

捨てられていたということは、すなわち捨てられた理由がある。

たとえば、どこかが破けていたりなど。

ならばその破れなどを直してやればいい。

 

その考えの下、アキは集めた洋服の中で自分が着れそうなサイズの服を何着か選び、サイズが合わない服から布を切り出したり、ボタンなどを取り外したりし、洋服を修繕していった。

洋服のニコイチ修理である。

やがてアキは直した服を実際に着用してみる。

彼が選んだ服装は、ジーンズに白いTシャツ、Tシャツの上には皮のジャケットと言う物だ。

ジャケットは破れやほつれがあった訳ではないので、捨ててあったものを水で洗っただけだが、ジーンズとTシャツに関しては彼が修繕している。

だというのに、継ぎ接ぎした跡が目立たないとはいったいどういう技術なのだろうか。

彼のリペアスキルが遺憾なく発揮された結果だった。

 

「……あまり防具としては使え無そうだが、見た目は悪くないな」

 

これならば服装面では違和感はあるまい。

そう判断したアキは先ほど修繕した他の服をPip-Boyに仕舞い、修繕の際に残った端切れは袋に戻す。

その袋を持ったまま、彼は公園から立ち去り、街へと向かっていった。

途中のゴミ捨て場で、端切れの入った袋を捨てながら。

 

 

※ ※ ※

 

 

アキが公園を出てから数時間後。

彼は何故か街の路地裏から出てきていた。

 

「どいつもこいつもこれをもってやがる。戦前の金に似てるってことは、これがこの世界の金なのか?」

 

その手には野口さんが十五枚、福澤さんが六枚。

そして今は見えないが彼のジャケットのポケットには各硬貨が入っている。

 

「ま、お前らが突っかかって来たんだ。命とられなかっただけマシだと思っときな」

 

そして彼がそういいながら振り向いた先には、気絶しているいかにもガラの悪そうな青年が五人。

彼らこそが、アキが路地裏から出てきた理由だ。

簡単に言えばアキはカツアゲの被害に合いそうになったのである。

しかし、チンピラもカツアゲしようとした相手が悪かった。

何せ相手はレイダーと呼ばれる凶悪なならず者、スーパーミュータントなどの化け物、エンクレイブという敵対してくる兵士などと幾度と無く戦い、そしてそれらに勝利し生き抜いてきたいわば猛者。

そんな猛者相手に、たかが悪ぶってる街のチンピラがいくら束になった所でどだい敵うはずが無かった。

現に、不用意に近づいてきたチンピラAはアキの拳を顔面に受け一発K.O。

それを見て頭に血が上ったチンピラB、C、D、Eもアキの拳一発ずつで見事ノックアウト。

結果、五人仲良く路地裏で気絶中と言うことだ。

 

そして、勝利した相手からさまざまな物品を回収していたアキが、気絶してる彼らを放って置くわけが無く、哀れ彼らは着ている服以外を彼にしっかりと回収されてしまったのであった。

具体的には、財布の中身とか。

 

もちろん犯罪なのだが、彼の中では先に手を出してきたのは向こうなため、自分は一切悪くないと思っている。

以前も言ったようにこの世界の法律を知らないが故の判断だった。

ちなみに、彼が突っかかってきたチンピラを気絶させるだけで済ませたのは、単に人気の多い街の中だからである。

これが人気の無い場所だった場合は……チンピラの不運を哀れむしかなかっただろう。

 

「さて、これが金だと仮定して、金も手に入った。だったら……この街を見てみるか」

 

そう呟いたアキは、多くの人が行き交う街を見つめていた。

 

 

※ ※ ※

 

 

今日一日街を探索し、アキが思ったことはただ一つだった。

 

「……何この楽園」

 

そう、彼にとってこの世界はまさに話でした聞いたことが無いような楽園だったのだ。

道を歩けば数分おきといっていいくらいに食料品や雑貨品を取り扱っている店に遭遇する。

そしてその中では何種類もの食料品や飲料などが所狭しと陳列されているのだ。

初めその店に入ったとき、思わずアキは入り口で棒立ちしてしまっていた。

その品物の種類と数に圧倒されていたのだ。

特に飲料。

アキがまるで見た事が無いような色の飲料などもあり、そこでもまた唖然とした物だ。

 

崩れていない建物。

豊富な食料品。

道を行き交う多くの人。

 

それはまさに、彼の中では楽園の中の物に見えた。

 

「ドッグミートとフォークスにも、この光景を見せてやりてぇなぁ……」

 

今はもう会えないであろう友の姿を思いうかべる。

果たして、自分がいなくなった後のあの世界で、彼らはうまくやっていっているのだろうか、と。

 

そんな事を思いながらとりあえず仮の拠点としているあの公園に戻ろうとしていたときだった。

アキの耳が、誰かの声を聞いた。

それは女性の声で、普通に誰かと話している声ではない。

甲高く、まるで周囲に響かせるような声……そう、悲鳴だ。

 

「こいつの上か?」

 

アキが周囲を見回すと、ふとある一点で目を留める。

そこにあるのは長い石段。

悲鳴はそこから聞こえていた。

 

すぐさま石段を駆け上がる。

これでも、彼はウェイストランドでは人々を助けていた最後の希望と呼ばれた人物。

その悲鳴の主を放って置くという選択肢は選ばなかった。

そして石段を登り終えたところで視界に入り込んできたのは、昨夜見た暴走体に似ている化け物と、その化け物に今にも襲われそうな一人の女性。

 

それを見たアキはPip-Boyを操作、一丁の拳銃を取り出し、それを構える。

細いバレルに、トリガー前部にボックス状の部分を持つボディ。

通常の拳銃のようにスライドは見受けられない。

 

そんな変わった形状の銃を構えると、Pip-Boyに接続されている神経を通じてある指令をPip-Boyに下す。

瞬間、世界の動きが止まり、アキの思考のみが動いているような感覚にとらわれる。

 

そのまま、アキは女性を襲っている暴走体にのあちこちに視線を向ける。

そして、しばらくの後、感覚上では世界がゆっくりと動き出すと同時にアキの身体はトリガーを引いた。

思考のみが加速している現状では、自分の身体がトリガーを引ききるまでの時間さえもがもどかしく感じられる。

それでも、指はしっかりとトリガーを引ききり、構えている拳銃から一発の弾丸が発射される。

そしてその弾丸は、暴走体に着弾すると……発火。

暴走体の身体で炎が燃え始める。

その炎により、暴走体はひるみ、女性に飛びかかろうとしていた勢いはそのままに、軌道のみを変えて女性の脇を転がった。

そんな暴走体に銃口を向けなおしたアキの身体は、もう一発、もう二発と銃弾を暴走体へ浴びせていく。

その数、六発。

やがて、アキが感じる時間が通常の時間に戻る。

多少ふらつきながらも銃身上部からクリップを用いてリロード。

再び暴走体に銃弾を浴びせ始めた。

 

彼が使った銃は、ウェイストランドでもよほどの事が無ければ使われない銃火器のユニーク品だ。

一部の人間には「存在がもはやロマン」「なんか残念な銃」「どうしてこうなった」「ユニークなユニーク武器」「さすが! (相手が)なんとも無いぜ!!」などと酷い言われようのこの銃の名前は……ズー・ロンv418中国軍ピストル、略してズーロンピストル。

何が酷いといわれれば、威力があまりにも低すぎるのだ。

元が見た目以外最弱と呼ばれる中国軍ピストルの改良品なだけあり、威力はお察しくださいレベル。

モーゼルC96と呼ばれる銃火器の見た目を模したその銃は、確かに見た目はいいのだが……少なくとも、ウェイストランドではレイダーの下っ端ぐらいしか持ち歩かないような、そんな悲しき銃の改良品だ。

しかし、それはウェイストランドでの話。

 

昨夜の暴走体との銃撃戦で、暴走体というのは再生はするが、身体の頑丈さはウェイストランドの生命体ほど無いのではないかと推察した。

何せ、例外はあるがこちらの存在に気づいていればテリブルの直撃も最低一発は耐えれたのだ、あの世界のほとんどの生命体は。

しかし、あの暴走体は一発でごっそりと身体を持っていかれていた。

つまり耐久力はかなり低い。

ならばこのズーロンピストルも日の目を見れるのではないか?

 

その結果、暴走体は着弾と同時に着弾点の肉をえぐられ、そこからさらに炎で燃やされるという展開となった。

もっとも、仮にここでもズーロンが役に立たなかったとしても、炎によるダメージでひるませることぐらいならできるだろうと予想して撃っていた為、これは嬉しい結果ではある。

 

ちなみに、わざわざズーロンでなくとも他の銃火器でも良かったのだが、昨夜の暴走体に炎が有効だったため、今回も相手を燃やそうと思い、離れた相手を燃やせるズーロンを採用したわけだ。

なお、彼が何故こんな銃を持っているかといえば……ひとえにロマンである。

 

閑話休題

 

アキが女性をちらりと見ると、どうやら気を失っているようだ。

アキにとってこれは好都合。

下手にこれを見られて大騒ぎされてはかなわない。

 

「さて、見た目からしてこいつも暴走体か……ナノハ達、来てくれっか?」

 

ズーロンをPip-Boyに収納したアキは、また別の銃火器を取り出した。

昨夜も暴走体相手に用いた銃器、テリブル・ショットガンだ。

 

「ったく、デスクローの方がまだマシだぜ。あいつらは再生しないから……なっ!」

 

悪態をつきながらも、アキはテリブルの銃口を暴走体に向け、引鉄をためらい無く引いた。

 

 

※ ※ ※

 

 

もうすぐ日が暮れるであろう時刻。

アキの当初の予定では既に仮拠点の公園に戻っているはずの時間。

何故かアキは車椅子を押していた。

その車椅子には一人の少女。

 

「ホンマおおきに。いつもはあんなんならへんのやけど、油断してしまいまして」

「災難だったな」

 

アキにはやてと名乗ったこの少女は、アキが仮拠点の公園に戻る途中で車椅子ごとひっくり返っていたところを助けた少女だ。

どうやら車椅子の車輪が石に乗り上げ、そのままころりと倒れてしまったらしい。

ここであったのも何かの縁。

ウェイストランドに生きていて縁は貴重なものと捉えているアキは、なし崩しにはやての車椅子を押し、はやての家へ向かっている最中なのだ。

もっとも、縁は貴重と言っても、いい意味か悪い意味かはまた別の話だが。

 

なお、暴走体は後からやってきたなのは達の手によりしっかりと封印されている。

アキがやっていたことといえば、暴走体が肉塊(ミンチ)になろうと、なのは達が来るまで再生しないようにテリブルを撃ち込み続けたくらいである。

相手は暴走体とはいえ、アキにとってはウェイストランド最強にして最凶のクリーチャー、デスクローに比べたはるかに弱いものだったらしい。

なお、暴走体の状態を見たなのはとユーノが顔を青褪めさせたのは当然の事である。

 

「ここが私の家です」

「ほぉ、ここが……」

 

はやてが指差す方向を見ると、そこには立派な一軒の家が。

もっとも、アキにとってはこの世界の建物全てが立派な建物に見えるのだが、それはこの際置いておく。

 

「それじゃ、ハヤテを送り届けた事だし、俺はこれで」

「あ、ちょっと待ってください、アキさん」

 

はやてが乗った車椅子を玄関前まで移動させると、アキはそのまま立ち去ろうとする。

しかし、立ち去ろうとした背中にはやての声が飛んできたため、アキははやての方を振り向いた。

 

「せっかくですし、お礼くらいさせてください」

「別に気にしなくてもいいんだがな」

「気にします。ささ、遠慮せずに入っててください」

 

普通の人間なら、ここまで言われても遠慮して立ち去るところなのだが……

 

「……じゃ、お邪魔させてもらうぜ」

 

アキに自重という言葉は無かった。

 

「いやぁ、しかし家に外人さん招待することになるなんて思いもよらんかったわぁ。英語の本読む為に英語独学で学んどいたんが思わぬとこで役に立ったって感じや」

 

ちなみに今更だが、アキははやてと普通に英語でコミュニケーションをとっている。

読書好きなはやてが、あれこれ本に手を伸ばしているうちに、英語の本にぶちあたったので、独学で英語を学んだのだ。

それゆえ、多少聞き取りにくいところもあるが、会話は成り立ってはいる。

 

「俺も出会って初日の奴の家に招待されるなんざ思いもしなかったぜ」

 

互いにそういいあい、笑いあうと、アキとはやては家の中へと入っていった。

 




と言うわけで、神社での封印はサクっと終わらせ、はやてと出会わせてみました。

今回出てきた銃火器は、別な意味で有名なズーロンさん。
あれ一丁でウェイストランドを生きようとするのは絶対無理な一品です。
見た目はかっこいいんですけどね、ズーロン。
それでも、ロマンのためにこれを持たせました。

ちなみに、ゲーム内でも自分はこれ持ち歩いてます。
何でかって? ロマンのためさ!
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