Fallout 3 -Lyrical edition- 作:クラッチペダル
前回更新から三年も経ってたのか……
気が付くと時が経つのは早いものだ……
アキがカチャカチャと金属音を立てながらA3-21プラズマライフルの修理を行う。
そしてそれをはやては脇でじっと見つめていた。
はやては時折、「ほうほう」や「ほへ~」などと何やら呟いている。
初めのうちは努めて気にしないようにしていたアキも、さすがに気になり始めたのか、修理の手を止めてはやての方へ向き直る。
「……なぁ、ハヤテ」
「ん? なんや、アキ兄」
「なんつーか、その、気になるんだが、ここまで近くで見られると」
「せやかて、気になるんやもん。これおもちゃか?」
そういうとはやては修理のための部品取り用に傍においてあったノーマルのプラズマライフルを持ち上げようとする。
が、実際の銃は重いもの。
むしろプラズマ技術を用いたパーツなどを使っているプラズマライフルは普通の銃よりも重い。
「ん? むむむ、これ思ったより重いで」
「なっ、馬鹿! やめ……っ!」
はやてからプラズマライフルを取り上げようとしたその瞬間、アキの顔の脇を緑の光弾が通り抜ける。
光弾はそのまままっすぐ飛んでいき、壁にかけてあった掛け時計に命中。
哀れ、八神家の時を知らせていた時計は緑の粘液へとその姿を変えてしまった。
「……なんぞこれ」
「……ハヤテ」
「な、なんやアキ兄」
「[speech, 100%] ……お前は何も見ていないし何もしていない。いいな?」
「あ、はい。私何も見とらんよ? 何もしとらんよ? うん」
アキの言葉にはやては多量の汗をかきながらもよどみなく答える。
それはアキの放つ威圧感ももちろん理由だが、先ほど時計が緑の粘液になると言う自分の常識ではまずありえない出来事を脳内から抹消したいというはやての脳の無意識の防衛行動だった。
事実、この出来事から数分後にははやてはこの出来事をすっかり忘れてしまっていた。
人間の脳の神秘である。
※ ※ ※
さて、先ほどの一幕はアキがはやての家に住む様になって早2週間程の間に起きたものである。。
この話を見ている諸兄は、はたしてアキが他にどんなトラブルを起こしたのか、と疑問に思っていることだろう。
かたやこの世界の常識を知らない次元世界規模の迷子にして、殺伐とした世紀末の世界を生きていた存在。
かたやこの世界で不幸に見舞われながらも普通に暮らしているとはいえ、まだまだ子供。
そう考えるのも無理は無い。
が、この二人、案外まともに暮らしていけているのだ。
初めの頃は、もちろんこの世界の常識を知らないアキが様々な問題を起こしたり、先ほどの一幕のような事もあったが、はやてがそんな彼の足りない常識を教え、アキはアキで車椅子生活をしている以上はやてには絶対不可能なことを代わりに行うなどという事をしており、二人はなかなか相性がよかった。
そして……
「お! アキくんいらっしゃい!」
「おっさんち~っす。なんかいいモン仕入れてる?」
「おう! 産地直送の新鮮な野菜各種! 見てってくれよ!!」
はやてから教えを受け、日本語をマスターしたアキは、はやての家どころか近所の商店街にもしっかりと溶け込んでいる。
常識も手に入れた、円滑なコミュニケーションのためのスキルも身に着けた、そもそもカルマ善だから常識さえあれば問題など自ら起こさない気質……やはり、やや喧嘩っ早いというか、物騒な部分もまだあるが、それでも今のアキは十分に今の生活に溶け込んでいるだろう。
それに、壊れた機械を直してとか、そういった類の頼まれごとをこなしたりもしていることもそれに拍車をかけているだろう。
「お、アキ兄や、おーい! アキ兄!」
「はやて? 何でここに?」
持ち前のBarterやSpeechのスキルを活かし、八百屋の店主と値切り交渉をしていると、ふいに背後からはやてが声をかけてくる。
あの日、はやての家に厄介になった日からアキさんからアキ兄に呼び方を変えたはやての声に振り向くと、やはりそこにははやてと、はやての車椅子をおしている一人の少女の姿が。
「ん? すずかの嬢ちゃんもいるのか。いつもはやてがすまねぇな」
「いえ、私もはやてちゃんにオススメの本とか教えてもらってたりしてますし」
はやての車椅子を押しているのは月村すずかと言う、はやての友人である少女だ。
以前から名前だけははやてに聞いており、はやていわく「ものごっついお金持ちのお嬢様」とのことで、初めはあのいけ好かないテンペニーのような奴かと身構えたものだが……蓋を開けてみればなんとも礼儀正しく、自分の立場をひけらかさない、相手を見下さないなどと言う、ウェイストランドでは既に絶滅したであろう、正しき上流階級の人、と言う印象だった。
すずかはすずかで、あきらかに堅気とは思えない雰囲気を持つアキに思わず泣き出しかけたが、というか泣いたが、決して悪人ではないと分かってからはなかなかにアキになついている。
そのなつき度合いは少々違和感を感じるが、まぁ不具合は無いのでよしとしている。
不具合がでてきたら……その時はその時だ。
「あ、それと前言ってたお茶会なんですが、考えてくれました?」
「あー、一応はやての付き添いで行くつもりだけどよ……場違いになるだろうなって思っててなぁ」
最近では、自分の家で定期的に行うお茶会に誘うくらいには、アキに心を許すようになっている。
どうにも、Child At Heartの効果だけでは考えられないくらいのなつき度合いが加速しているが……
「そんな事無いと思いますけど……」
「ガキんちょの群れに大人一人だろ? 場違いにも程がある」
ちなみに、このようにアキはお茶会への参加にそれとなく躊躇いを感じている。
話によるとそのお茶会、すずかの小学校の友人を招いてのお茶会だそうで、つまりはやての付き添いでそのお茶会に行ったとなると、小学生多数の中、明らかに年齢が上の自分が一人。
……間違いなく気まずい。
というか何を話せばいいというのだ?
この世界の流行など正直興味もないため、知ってるはずも無く、ならウェイストランドでの冒険でも話すか?
……血、陰謀、裏切り、その他諸々が混ざり合った、コールタール並にどろどろな話になるであろう事は間違いなく、そんな話は小学生の教育上非常によろしくない。
流石のアキでもそれをこの世界の子供相手に話すのはまずいという事は分かる。
それでも、はやてを一人で向かわせるという考えをとらない選択をするぐらいにははやてに愛着は持っているので、お茶会に顔を出すという事自体は承諾している。
「まぁ、さっきも言ったとおり行くには行くさ。確か明日だったか?」
「はい。えっと、良かったら迎えの車出しますよ?」
「なら、そうしてくれ」
すずかの提案は、アキにとって渡りに船である。
別に自分が車椅子押して向かってもいいのだが、できる限り早く合流したほうがはやても楽しめるだろう。
そのまま迎えの時間などの取り決めを行い、すずかからはやてを引き取ったアキはそのまま商店街での買い物を済ませ、はやてとあれこれ話しながら家へと向かった。
……なお、帰り道の途中Pip-Boyに赤いマーカーが見えたため、そちらの方向にコッソリ消音器付き10mmピストルを射撃して見たりと言う事があったが、まぁそれほど大事では無いだろう。
「や、やっぱりあいつ私の居場所を……」
「魔法は使ってない……わね、うん、使ってない。使って無いのにこっちに飛んできたわね、銃弾」
なお、その銃弾がとある猫達の顔面スレスレを横切って行ったりしたが、別に当たったわけでは無いのでこれもどうでも良いことだろう。
……多分。
※ ※ ※
世界は広いようで実はめっちゃくちゃ狭い。
分かりきっていたそんな事を、アキは改めて実感した。
先日約束した月村家でのお茶会。
すずかの学校での友人も誘われていると伝えられては居た。
だから自分はなんだかんだ理由を付けて隅っこでただはやてが友人と談笑している様を見ていようと思っていたのだ。
思っていたのだが……
「アキさーん! アキさんも一緒にお話しましょー!」
いつぞやの夜に出会ったツインテールな不良(とアキは勘違いしてる)娘と某フェレットが来るなんて聞いてない。
しかもその娘がせっかく無駄にSneakingスキルを駆使して部屋の隅に陣取ったと言うのに、こちらに向かっておもっくそ手をぶんぶん振って呼んでくるのだから手に負えない。
つか何ゆえそんな満面の笑みでこちらを見ているのだ?
そんなに懐かれているのか? そんな懐かれるような事したか?
やはり、これもChild At Heartの力か……
無視しても良かったが、なのはが涙目になり、それを見た他の子供達がじとーっとした目でアキを見つめだし、中でもアキと初対面の少女は今すぐにでも噛みつきそうな位な表情(もっとも、アキにとっては子犬が必死に威嚇してる程度の表情だが……)だったため、アキはため息一つつくと少女達が座っているテーブルへと近付いて行った。
「ったく、友人同士の語らいを邪魔しない様にと言う俺の心遣いを無駄にしやがって」
「アキ兄はそう言っとるけど、本音はめんどくさそうだからとかやないの?」
「2割ほど合ってる。が、残りはマジで邪魔しないようにしてたのと、ガキんちょ共にまぎれるとか肩身狭いどころじゃねぇって考えだな」
「誰がガキんちょよ!!」
「いや、お前さん達だよ」
実際、19歳である自分からすれば9歳の少女達は十分ガキんちょと呼べる存在である。
それは揺るぎ無い事実なのだが……どうやらこの初対面の
「アリサちゃん! 落ち着いて! 明らかにアキさんは私達より年上だから!」
「子供扱いは妥当だよアリサちゃん!!」
すずかとなのはにしがみ付かれ、やれ離せそれ離すものかと騒ぎ出す少女達。
それを尻目に、アキは少女達の分とは別にいつの間にか用意されていた紅茶を一口。
「……そうやって騒ぐのがガキなんだよなぁ……」
「アキ兄、かっこつけるのええけど、そもそもアキ兄のせいやからな? この現状」
※ ※ ※
あれからしばらく騒ぎ続け、その後はなのはが連れてきたユーノを弄くり回し何とか機嫌を直したらしいアリサ。
哀れ、フェレットは犠牲になったのだ。
一人の少女の心の安寧、その犠牲に。
『た、助けてくださいーーーー!!』
なお、その際めっちゃくちゃに弄くり回されている為、この場で念話が通じるなのはとアキにユーノは助けを求めたのだが。
『えっと、アリサちゃんこうなったら絶対離さないと思うし』
『美少女に弄くり回されてんだ。粋な御褒美って奴じゃねぇか』
誰も助けてくれなかった。
むしろ弄くり回されてるユーノを見て、アキはゲラゲラと笑いを上げる位だ。
そうして、ユーノという尊い犠牲により、お茶会は何事も無く進んでいく……かに思われたときだった。
「……?」
ふと、首筋にちりちりとした感覚を覚え、思わず首筋に手を当てる。
だが、特に何かが付いていたわけでもなく、手はそのまま肌に触れる。
しかし、未だに首筋を刺激するその感覚は消えない。
それどころか感覚は徐々に強さを増している。
(……んだよ、この感じは……!)
その感覚は、ただ単に次第に強くなるどころか、まるで引っ張られるかのような感覚さえも加わってきた。
そう、窓の外に引っ張られるような……
感覚につられて外を見る。
すぐさま視線を窓から引っぺがした。
「……!?」
マテ。
誰にも急かされてるわけではないけどマテ。
今窓の外から見えた『アレ』は何だ?
幻影か? 幻影なんだな? 幻影であってくれ俺は今はジェットをキメて無いんだぞ!?
もう一度、ちらりと窓の外を見る。
……やっぱり、『ソレ』はいた。
それはもう悠々と月村家の敷地内にある森の中を我が物顔で闊歩している。
それは、一見すると猫である。
が、あれを猫と認めるわけにはいかない。
……そこら辺に生えている樹木より遥かに大きい獣を、猫と断じて認めるわけにはいかない。
キャピタルウェイストランドでさえ、あんな奴居ない。居てたまるか。
……なのはを見やる。
やはり彼女も感じたのか、バッチリ窓の外の『アレ』を見ていた。
あんぐりと顎が外れるくらい口を開けている。
他の面子は、どうやらあの感覚を感じて無いせいか、外は見て居ないようだ。
……否、アリサたちと談笑しながらも、はやてが先ほどからやけに首筋を触ったりしている。
(まさか、はやてにも魔力とやらがあるのか……?)
が、今はそんな事はどうでもいい。
今は『アレ』をなんとかしなくては。
「…………」
幸い、先ほどまで隣に居たはやては、アリサたちと離すために隣に居らず、それどころか今アキに背中を向けている。
アリサとすずかも会話に夢中でアキの方を見てすらいない。
誰にも見られていないうちに、さりげなくPip-Boyを弄り、服装を変える。
着替えたのは、体にぴったりと張り付く黒い特殊アーマー。
頭部も、頭部全部を多い、顔面部分はバイザー状になっているフルフェイスヘルメットで覆われる。
そして一瞬で着替えると同時にその場でしゃがむ。
すると、まるで空気に溶けるかのように、アキの姿が消えた。
アキはそのまましゃがみ歩きで部屋の扉まで行くと、ゆっくりと、音を立てずに扉を開き、そして部屋の外に出ると、これまたゆっくりと扉を閉めた。
部屋の中の誰もが、アキが外に出た事に気付いていない様だ。
……アキが着用したアーマーこそ、手に入れれば文字通り世界が変わる一品。
中国軍ステルスアーマーだ。
その場でしゃがめばあら不思議、あっという間に姿は消える。
しゃがまなければステルス機能は作動しないが、その欠点を差し引いても余りに強力な効果を示す代物である。
自分が部屋を出た事がばれてないとはっきりした所で、アキはしゃがんだまま廊下を疾走し、外を目指す。
とりあえず、あの巨大猫(仮)を何とかするために。
と言うわけで、三年ぶりのこの作品の更新です。
いやぁ、まさか三年も前回更新から経っていたとは……
さて、今回アキ君が使ったのは中国軍ステルスアーマー。
これを入手するためにDLCを購入したという人も多いのでは?
公式チートと言っても過言ではない代物です。
というか、これを一度使っちゃうと、もう他の防具使えない……
それぐらい快適になりますね、ウェイストランドサバイバルが。
まぁ、言った通り、これ以外の防具使えないのと、常にキャラをしゃがみ移動させてないと違和感を感じるようになるという弊害がありますがね……