17号は戦艦霧島に憑依するようですよ? 作:榛猫(筆休め中)
side KIRISIMA
「それで、あなたはどの鎮守府からいらしたんですか?」
先導を任せ、前を走るイオナに問いかける。
「あっはい! 私、佐世保の鎮守府から来ました!!」
また違う鎮守府の名前が出てきたね、今度はどんなひどい話が聞けるやら......
「佐世保の所属なのですね、ではイオナさん、今の佐世保の状況を聞かせてもらえますか? あなたのような小さな子一人で海に出させるような鎮守府の様子を」
「...うん、私のいた佐世保はね......」
そう聞くと、俯いた彼女の口からでた話は予想通り、胸糞悪くなる程に気分の悪いものだった。
彼女の所属する佐世保鎮守府はこそかなり優秀だが、その内情は酷いを通り越して劣悪なものだった。
出撃すればS評価を取ってくるのは当たり前、出来なければとんぼ返りで再び出撃させ、入渠はおろか補給すらもさせない......
小破出撃などは当たり前で、中破だろうが大破してまともに動けなくとも構わず出撃させ、そこで轟沈しようと関係がなかった。
さらには提督からのセクハラ、モラハラ、パワハラは日常茶飯事で、少しでも抵抗すれば解体されていったという......。
そんな中でも艦娘たちは人を恨むことなく数々の激務や虐待に耐えながら気丈に振舞っているらしい
「そんな中でも扶桑お姉ちゃんや他の艦娘の皆さんは私に良くしてくれて、出撃をした時も、必死に守ってくれました......」
そう悲しそうに俯きながら話すイオナの足元には幾つもの小さな波紋が水面に出来ていた。
『子供に...こんな小さな子になんてことをッッ......』
中の奴の声が震えている。
あぁ、本当に許せないね...これまでもいろんな鎮守府を見てきたが、どうしてこうも人間ってのは醜いのか......
私もこの姿になる前はいろいろやってはきたが、ここまで醜悪にやったことはないよ......
『そういえばもう一人の私のことは私もよく知らないですね』
まあ、話してないから知らなくても無理はないさ
『いずれあなたのことも教えてくださいね』
あぁ、その時が来たらね、さて、今はこっちの問題をどうにかしないとね
「さあ、佐世保までの案内はお願いしますね、道中の敵は私が倒していきますから」
「はい! 護衛よろしくお願いします!! 案内はまかせてください!!」
元気に返事をして前を走るイオナの後を追って私たちも移動を開始する。
空を飛んだほうが明らかに早いけど、変に怪しまれるわけにはいかないから艤装で行くとしようかね......。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「見えてきました!! あそこが佐世保鎮守府です!!」
そう声を上げるイオナの視界の先には大きな建築物が見えている。
あそこが今回逝ってもらうクズのいる場所か......
一先ず、潜入して艦娘たちから話を聞こうじゃないか
「イオナさん、こちらに私と同じ霧島さんはいらっしゃいますか?」
一番怪しまれない方法で入り込む方法をとるため、前を走るイオナに問いかける。
「あ、はい!いますよ! よく勉強を見てくれたりしてくれます!!」
なるほどね、劣悪な環境にあっても幼い子への教育はしようと努力してるわけか......
「では、イオナさんは先に一人戻って霧島さんを呼んできてもらえますか? 私はこの付近で待っていますので」
「え? 一緒に行かないんですか?」
「えぇ、少しそのまま入ってしまうと面倒なことになってしまいそうなので」
そういうと、イオナはキョトンと首をかしげたが、すぐに頷いてくれた
「分かりました!! すぐに霧島お姉ちゃんを呼んでくるので待っていて下さい!!」
そう言って元気に帰っていくイオナの背中を見送る。
さて、一先ずは
そうしてイオナが霧島を連れて出てくるのを私は感知されない様に岩陰に身を潜めて待つのだった